入力するのメンドクサイ
補講が終了し、休む暇なくテニス部の合宿。
ねぎまに会えない。
LINE送っかな。お土産渡そっかな。うーん。
ももしおがCNPと連絡先を交換したことは心配ではある。が、当初の目的は終わった。相談に乗り、石爺からCNPを探り、恵比寿に行き、ももしおはめでたくCNPと喋った。つまり、もう、ももしお×ねぎまはミナトとオレに用はなくなったわけだ。
利用されて捨てられた感はあるが、これも人生経験。
何よりも、女の子と2×2で大人な店へ行ったんだ。よしとしよう。
ねぎまに会いたい。
いきなり個チャでLINEしたら引く? ねぎまにだけお土産渡したら変?
「去年も思ったんだけどさー、なんでサッカー部と合宿が一緒なわけ?」
小田がぼやく。
「昨夜も、女テニの部屋にサッカー部のヤツラ、遊びに来てたんだってさ」
「どーゆーことだよ。オレらを差し置いて」
「だったら女子の部屋行けよ。お前が行くならオレも行く」
「サッカー部じゃねーから、歓迎されねーだろーなー」
「くそっ」
「あいつらに比べたら、オレらなんて草食動物だよな」
カノジョがいるくせに、女子の部屋には行きたいらしい。テニス部の女子には可愛いくて脚の綺麗な子が多い。
「宗哲、せっかくカノジョ作るチャンスなのに、残念だな」
「別に。ってか、なんでオレにだけゆーわけ? ミナトだっていねーのにさ」
「それはほら、ミナトは自分でなんとかできる男だから」
どーゆーことだよ。
そんな不毛な時間を過ごす夜、いきなりLINEがあった。一瞬、心臓が体から飛び出るかと思った。
マイ『合宿どーですか? 今、最終日用の花火の買い出し中』
「トイレ行ってくる」
さり気なく部屋を出て、自販機の前でガッツポーズ。
「よっしゃー!!!」
4人でくっちゃべっていたときに聞いた。1日ずれて、バドミントン部も合宿があると。
『花火するんだ? オレらも最終日は花火とスイカ割り』
マイ『今は何かしてた?』
『部屋でみんなで喋ってた』
マイ『1日の反省とか?』
『まさか。雑談』
マイ『そっか』
『なんか、入力するのメンドクサイ』
マイ『ごめんね』
即行電話。
「元気? 今、大丈夫?」
『宗哲クン、うん。大丈夫。なんだぁ』
「なんだって?」
『"入力するのメンドクサイ"って着たから嫌なのかと思った』
「丁度さ、思い出してた」
『恵比寿?』
ねぎまのこと。
「まあ」
『恵比寿でね、ご馳走になったままだから、合宿終わったら、今度は私たちが何かしたいねってシオリンと話してて。映画観に行かない?』
「行く」
即答。
『じゃ、ミナト君にも伝えておいて』
「わかった」
『明日も頑張ってね』
「ねぎまも」
『おやすみなさい』
「おやすみー」
ぷっ
よっしゃー! 踊り出したい気分。明日、頑張ろう。
ぶぶぶぶー ぶぶぶぶー
あれ? 電話だ。
「はい」
『あ、おにーちゃん?』
妹だった。
「なんだよ」
『すぐに電話に出たってことは、女の子と一緒にいるわけじゃないんだね』
「うっせーな。切るぞ」
『あー、待って待って。あのね、お兄ちゃんの部屋で寝ていい?』
「はあああああ。ダメに決まってるだろ」
『だって、私の部屋、エアコン壊れたもん』
「ダメダメ。客間で寝ろよ」
『布団の用意と片付けが面倒』
「ぜーったいダメだからな」
『うん。じゃ、ちゃんと報告したってお母さんに言っとくね』
「おい、こら、ダメだから」
『お兄ちゃんって、木は森に隠すタイプなんだね』
「は?」
『CDの間にエッチなDVDあったよ』
殺す。
せっかく気分⤴⤴だったのに。でもま、ねぎまと電話したのは事実。にまあーっと自然に口元が緩む。
ぱちん
自分の頬を叩いてだらしなくなっているだろう顔を引き締める。
部屋に戻るとミナトと目があった。ちょいちょいと指で呼び、伝言。
「へー。グループLINEでよくね? それ。電話?」
「あ、LINE着たから、オレから電話した」
「オレにはなかった。ふーん」
ミナトがにやにやと横目でオレを見る。へへ。どんな目で見られようとOK。
「オレ、ねぎまにお土産買ってこっかなー」
「待て、取りあえず、2人からお菓子かなんか渡そ。ももしおちゃんがむくれる」
「だな」
「たださ、水を差すようで悪いけど、もし、宗哲が何かプレゼントしたらさ、それって、意思表示の決定打じゃん? だから、上手くいくかもしんねーけど、不発の覚悟もしとけよ」
そーじゃん。例えばいかにも女の子仕様の何かをねぎまだけに渡したら、それは「好き」ってこと。「ごめん、そんなつもりじゃなかったの」なんて言われたら、一気に奈落。その状態で4人で映画を観に行くことになる。
「やっぱやめとく」
「宗哲、まじで?」
「友達じゃなくなるじゃん」
「友達は友達なんじゃね?」
「ムリっしょ」
「どーゆーつもりで、ねぎまちゃんは宗哲だけにLINEしたんだろな。単に日にちを決める前に断られないかどうか反応を見ただけかも。ほら、いきなり提案するとさ、断りにくかったりするじゃん。だから気を遣って」
「そっか」
さっきとは打って変わって、どんどん気分が落ちていく。
「取り敢えず、次会ったとき、嬉しかったってのは伝えとけよ。女って押されると気になるらしいから」
「さっすが。経験者はちげー」
「ももしおちゃんの方が簡単そうなのに」
「は? おっさんのこと好きなのに?」
「あんなん、小学生んときに憧れてただけじゃん。そっからももしおちゃんは成長してねーってことじゃん」
「ねぎまは?」
「なんかさ、色気あんじゃん。ねぎまちゃん。そこがいーんだろーけど」
「まあ。////// 」
「どんな恋愛背負ってても納得だよな」
「えーーーー」
落ちた↓。
気にしない。しょうがない。どうしようもない。
そんなこんなでヘタレのオレは、ミナトと2人でお菓子を買っただけだった。てかさ、女の子に渡したいものってのがピンとこなかった。一緒に暮らす祖母、母、妹でさえ、好みは三者三様。おまけに渡すとなると、こちら側のセンスも問われる。まして、カノジョじゃない。ハードルが高い。
家へのお土産も買っておいた。妹には絶対食わせん。
「ありがとー」
「美味しそう」
「ワフッ」
帰宅して出迎えてくれたのは、常に家にいる母とコリー犬の諭吉。それと、いつもは部活と塾と友達つき合いで出歩いている妹だった。
「お前は食うな」
妹をきっと睨む。
「どうしたの? 宗哲。またケンカ?」
「コイツ、オレの部屋入るなって言ってるのに」
「だってぇ」
妹が母の後ろに隠れる。
「二度と入るなよ!」
「ワン、ワンワンワンワンワンワンワン、ウーッ、ワン」
くっそう。妹に怒ると諭吉がオレに向かって吠える。こいつは必ず妹を味方する。
「宗哲ったら。いいじゃない、入ったくらい。すぐにエアコンのリモコンの電池切れって分かったの」
「なんだ、オレのベッドで寝たわけじゃないのか」
「……」
妹が無言で視線を逸らす。寝たんだな。
しっかり寝たらしい。羊の抱き枕、お菓子の粉、ネイル、中学生の塾のプリント。ま、かわいいから羊の抱き枕は貰っておこう。
秘蔵DVDを確認すると。割れてる。割ったのか?! なんで? せっかく小田が作った男テニセレクト集なのに。テニスオンリーの表セレクトは無事。18禁の裏セレクトが破損。
抗議に行きたいところだが、母と一緒にいやがる。
つまり、これが勝手に漫画を読んだことの報復ってこと? チーズで終わりじゃねーの?
許せないことだが大人になろう。
『男テニ裏セレクト集見れなくなった。USBにダウンロードさせて』
小田に送信っと。これでOK。
横浜で集まって、ももしお×ねぎまとミナト、オレの4人で映画を観た。
サイゼリアで喋ってお土産を交換した。
「さんきゅー」
「オレらにも? ありがと」
「ありがとー」
「ありがとう。嬉しい」
これで恵比寿でのお返しも終わった。4人で会う必要はなくなった。
みんなで会えなくなるのが残念な気持ちと、こうなったら告るしかないって気持ちが心の中でマーブル模様になる。
「夏休みって嬉しー。株ができるもん」
ももしおは今日もがっつりと食いながら言った。
「へー。株っていつもはできないんだ?」
よく分からないから聞いてみた。
「うーんとね、値段を指定して予約しておくってことはできるの。でもね、私が好きなのは、値段が上下しているときに売買することだから」
聞いてもやっぱり分からん。
「シオリン、学校あるときはできないって言ってたもんね」
「平日の9時から11時半と12時半から3時までなの」
「昼休みあるんだ。よかったね、ももしおちゃんは食べないとね」
「どんな感じ? テレビのニュースで映るみたいな、パソコンのディスプレイががんがん並んだとこでするの?」
「そんな本格的じゃないよ。私のお金じゃないもん。ささやか。パソコンとスマホだけ。大学生になったら、本格的にやってもイイって言われてるの。信用取引はまだダメだけど」
「シオリン、自分で気づいてないかもしんないけど、株のこと話すとき、分からない専門用語いっぱい使ってるよ」
「ごめん」
「オレさ、恵比寿でいろいろ話聞いてさ、やってみたいと思ったんだよね」
ミナトがぽろっと発言した。
「マジで? ミナト」
「なんかコメカブクラブの人ら、カッコよくなかった? インテリジェンスっつーのあって」




