表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの青薔薇の少女は静かに雪に消えていった。  作者: 如月 莉乃(白玉ぜんざい)
2/3

髪飾り

ナチュレが髪飾りを着けると、僅かに震えて、音が鳴り始めた。意識していないと、鈴の音に聞こえる。不思議に思いつつ、ナチュレはその音に耳をすませてみる。

「ここに…たし……め…はな…」

かすれて弱々しい声が髪飾りから聞こえる。

「ひゃああああああソルっ!?これ!これ声が聞こえるよ!?」

流石に驚いたナチュレは、思わず飛び上がって声を上げた。「ここに」や「花」ははっきりと聞こえた気はするが…するとソルは、ナチュレの耳元から髪飾りを取り上げ、自分の耳に押し当てた。そしてナチュレと同じように驚く。ナチュレに返そうとソルが手を出すと、偶然手を滑らせて、からん、と音を立てて髪飾りが落ちてしまう。するとどうした事か、くるくると回り出し、やがて花の飾りの方を北東に向けて止まった。

「何処かを、指している…?いや、偶然だよな。」

そう言ってソルが髪飾りを拾い上げ、手のひらに乗せて軽く回す。またしても髪飾りは、花の飾りを北東に向けて止まった。

「何かに、呼ばれている気がする。行こ、ソル」

「何を根拠に言ってんだ?」

そう尋ねられたナチュレは、真剣な顔を思わず崩し、まるで会話をすぐにでも終わらせたいかのようにさらりと言う。

「魔法属の、魔女の勘」

何だそれ、頼りになんねえなあ…と言いながらも、ソルは髪飾りを片手に、北東の方角へ歩いていく。正直言って、ソルもナチュレの勘を信用していた。魔法や魔術に関係する事なら、魔法属は敏感に感知することができる。それを知っていて、ソルはナチュレの言葉を信用したのだ。

北東へ進んでいくと、街からは外れて森が広がっていた。遠くの方に、草のような何かが見える。近くへ寄ってみると、それは花畑のようだ。白い花が広がっていたので、雪に紛れて葉の部分しか見えなかったようだ。円形に広がっている花畑の真ん中に、雪にまみれた人のような白い塊が落ちている。慌ててナチュレが駆け寄り、雪を払うと、それが確実に人であることは分かる。ふわふわとしたウェーブのかかった長い銀髪に、青い薔薇の飾りだろうか…を付けた少女のようだ。寒さのせいかは分からないが、肌は真っ白だ。ナチュレは魔法で軽くして抱え上げ、ソルに目配せすると、人目を避けるようにして来た道を歩いていく。


家に着いたナチュレは、2階にある自分の部屋のベッドでは無く、一階の居間の3人がけ程のソファにそっと寝かせると、自分の部屋だろうか、二階から毛布を持ってきて、少女にかける。

「なあ…ナチュレ。治癒魔法とか使えねえのか?」

ソルに尋ねられ、ナチュレは力無く首を横に振る。

「意識が無い状態で、身体に直接変化を与える魔法は非常に危険だから…」

そう言ってナチュレが湯を沸かしていると、ソファのそばに置いた椅子に座っていたソルが何かに気づく。少女が目を覚ましたようだ。ナチュレが駆け寄り、顔色を確かめた。肌はまだ真っ白だが、深い青の瞳は、少し伏せ気味だがぱっちりと開かれていた。

「ここは…?私は、一体…。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ