表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

1 夫婦喧嘩のはじまり


場の雰囲気がピリピリしてきた。

嫁さんは苛立たしげにカツカツと指をテーブルに打ち付けている。

俺は腕組みをして嘆息する。

俺のため息に嫁さんは綺麗に整っている眉を片方ぴくりとさせた。


「若くないからって言い訳して、本当は私との子供が欲しく無いんでしょ?そうなんでしょ?」


「んん?」


流石にカチンときた。

俺はちゃんと説明しているだろ。歳には逆らえないんだ。しょうがないことなんだよ。


「俺は人間だ。嫁さんとは時間の流れが違う。それはわかってるだろ?」


「ええ。それが?」


「わからない奴だな!俺は無力なジジイなっちまったんだよ!」


ドン、と鳴りテーブルが悲鳴をあげる。俺はテーブルに落とした拳を見つめ、やはり若い頃よりか細くなっていて、それがまた俺を苛立たせる。

そして無性に悲しくなってきた。


ちらりと嫁さんを見る。嫁さんは俺が若い頃と同じ姿で、衰えなぞ知ったことかとどこ吹く風だ。


それも俺には悲しくて悔しくて眩しくて愛しくて、いろんな感情が溢れ出してきてしまった。



「…嫁さんが羨ましいよ」


「そう」


「…俺も出来るなら英雄になって嫁さんと子供を作りたい」


「そう」


「…でも──」


溢れだした感情は涙となって俺から流れ出した。


「──俺にはもう出来ないんだよ…」


俺はそう言葉に出した後、寝室である二階に向かった。




それきり嫁さんは家を出て行き、家はおろか村でさえ見なくなった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ