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降魔の系譜  作者: 凡仙狼のpeco
《七殺》の久遠〜日本国警視庁降魔課の男〜
22/26

叶の捜査②


「東屋を追うだけでいい?」

『ああ。いや正確には、東屋を追う必要もないかも知れない』


 降魔課で、東屋を探すヒントがないかと書類を見返していた叶に。

 20分も間を置かずに再度掛けてきた久遠は、先程と違い迷いのない口調で告げた。


 しかし叶には意味が分からない。

 久遠は、自分の直観を裏付ける何かを思い付いたのだろう。


 彼はあらゆる物事の答えを、最初から知っている。

 今の久遠の口調は自分の答えが正しいと確信した時の口調だと、幼い頃から久遠を知る叶は感じた。


「説明して」


 叶はそれ以上余計な疑問を挟まずに、ルーズリーフを一枚抜いてペンを手にした。

 久遠は、淀みなく話し始めた。


『考え方が逆だった。何故、カマイタチを与えたのか、じゃなかったんだ……東屋は、カマイタチを与える相手を探していたんだ』

「何故」

『自分の身を守る為だ。事の起こりは……』


 久遠の話す時系列を、叶は走り書きで用紙上に書き留めていった。

 東屋の事件、その理由、植村くんに符を与えて、起こした事件の意味。そして最期に襲われた深井翔の母親に関する傷害事件と、発生場所から考え得る目的の推測。


 話し終えた久遠に対して、取ったメモを見返しながら、叶は口を開いた。


「東屋が襲われてから一ヶ月以上間が開いていたのは、そういう事……」

『そう。力を蓄えていたんだ。奴が怪我をしたのは、植村くんが不登校になるよりも前だろう?』

「ええ」


 植村くんが犯人だとしたら、存在するはずのない被害者。

 旧字体の漢文が意味するところも、この久遠の話を裏付ける根拠になる。


「マズイ状況ね。今まで考えていたよりも、ずっと。でも、追わなくていいというのは何故?」

『自分から現れるからだ。それまでに人を襲う事はないだろう。……奴は自分が追われている事に気付いている』

「力をさらに蓄えようとするとは思わないの?」


 叶の危惧に対して、久遠ははっきりと告げた。


『ない。奴は美香の呪力を察知したんだ。これ以上騒ぎを起こすよりも、静かに忍び寄って美香を襲えば奴の目的は達成される』

「近くにいる、という事?」

『見つけ出せれば確保して欲しいが、そこまで待つよりも待ち伏せた方が早い。奴が動くとすれば、今夜だ……叶。家まで仮面を届けてくれ。方法は……』


 久遠の口にした言葉に、叶は眉をしかめた。


『そう上手くいく?』

「俺は呪力を周囲に放つ。奴は俺という護衛者を察するだろう。そこで俺が家を出れば、好機と見る。そこを押さえる』

「事前に確保する方が安全よ?」

『出来るならやってくれ。だが、仮面は準備しておいて欲しい』

「こちらを信用出来ない?」


 あえて皮肉にいう叶に、久遠は重く答えた。


『俺の家族に手を出すというのなら、万全を期して滅するのが俺の役目だ』


 久遠は冷静さを失っていないと、叶は判断した。

 美香を襲われそうになって視野狭窄を起こしているのではない。


「分かった。人払いは私がやるわ」

『ああ、頼む』


 通話が切れ、叶は大きく息を吐いた。


「周辺に潜んでいるのなら、間に合えばいいけど」


 久遠が直接対峙するという事は、『神降ろし』を行うという事だ。

 危険と隣り合わせの技を使わせる可能性を減らせるのなら、降魔課の人員を借りる理由になる。


 東屋の外見は割れている。

 後は、呪力の気配さえ察知出来れば良いが、そちらは期待薄だろう。


 しかしやれるだけの事はやらなければならない。

 久遠の家族を守る事は、降魔課の優先事案でもあるのだから。

 

 叶は人を借りる為に、降魔課長の元へと向かった。

 


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