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51、魔素だまりの怪物たち

『プレイサとテイラ!右から回り込め。パラケルススとハンニバルは左だ!』


 俺たちは今、モンスターの発生源である魔素だまりを破壊するためにオートマタを使ってモンスターと戦っている。


 それは以前は石ロボと呼んでいたもので、俺が適当に命名したのだが、ある程度の機体数を手に入れた今、隊として運用ができる規模になったのを機にオートマタと呼ぶことにしたのだ。

 

 マポの港にあったデュシーツの軍艦からさらに数体のオートマタが発見され、俺たちが現在持っているのは全部で9体。

 

 魂を封じた石を使うオートマタ型バラムセーレが1体、魔術を使って操術するゴーレム型ラウムガープが5体、人が乗り込んで操縦するロボット型のアメミットジズが3体。


 バラムセーレには俺とリリス、肩にサタニキアとフレデリカが座って魔力補充をしている。パラケルススとアリアはラウムガープ、プレイサとテイラ、ハンニバルはアメミットジズを操術、操縦している。


 それ以外にSランクとAランクの冒険者がパーティーを組んで、サポート役として随行している。SとAのみで構成されたそれは、通常ではありえないくらい豪華である。


『アキト君、激化型トロールは全部で3体だ。1体は私が仕留めた。報告にあったように通常の倍以上の強さだぞ』


 パラケルススが周辺にいる大型亜人種のうち、激化型モンスターの種類と数を伝えてきた。


『了解だ。アリア、ついてきてるか?』

『少し離れてるけど大丈夫』


 最近、魔素だまり周辺に突如現れるようになった強力なモンスター。

 その強さは通常の倍以上であり、俺たちはそれを激化型と呼んでいる。奴らの特徴は強さ以外にもある。それはある程度の知能を有していることだ。


 群れを形成し、連携して攻撃してくるモンスターも存在するが、奴らの場合は組織的に動いたり罠を仕掛けるといったこともしてくる。対人戦をしているのとさほど変わらない。

 

 最大の特徴は冒険者から奪った武器を使ったり、最近ではそれを模した武器や防具を作ってる形跡があることだ。


 魔素だまりの中、あるいは森のどこかに奴らの村がある可能性も考えられる。


 俺たちは今、そんなモンスターを相手にしているが、これは一般的な装備の冒険者では倒すことが難しくなってきている。そこで俺たちがオートマタを使って戦っているわけ、なのだが……。


『アキト、これ使いにくいぞ!私は元の姿で戦わせてもらう』

『私もだ。本物の剣を握って戦った方がやりやすい』


 オートマタを乗り捨てた2人。プレイサは剣を握り、テイラはフェンリルになってモンスターと戦い始めた。既にトロールを1体仕留めている。


 イメージスキルを用いて動かすバラムセーレと違い、アメミットジズは操縦する腕が必要になる。彼女たちはまだそれに慣れていないのだ。


 この機体の操作性には確かに問題があり、思う通りに動かないのが欠点である。この点に関してはパラケルススが改良を試みているが、テイラとプレイサが納得できるものになっていない。


『貴重な機体を乗り捨てるな!』


 とパラケルススが叫ぶが、2人は既にオートマタを捨てている。


『この調子ならすぐにでも魔素だまりを破壊できそうねアキト』

『油断は禁物だぞ』


 気が付けば周囲をモンスターに包囲されていたなんてことがあるかもしれない。


『アキト君、トロール1体が森の方へ逃げて行ったがどうする?』


 俺たちの周辺にはトロール以外にも激化型の亜人種が多数おり、テイラとプレイサが冒険者と連携して奴らを蹂躙している最中だが、モンスターから見れば同胞は今でも多く残っているはず。


(なぜ森に逃げる…)


 先ほど、逃げるトロールを少し見たが恐怖を感じたというよりも、冷静に辺りを見たうえで行動しているように見えた。


 だとすれば、応援を要請しに行った可能性はないだろうか?

 森の先に何がいるのか、あるのか、調べる必要がありそうだ。


『リリス、フェニックスをトロールが向かってる先へ飛ばして何かないか調べてくれ』

『分かった』

『パラケルスス、ハンニバルと一緒にトロールを追って仕留めて欲しいんだ。あれは助けを求めにいっているんじゃないかと思うんだ』


『奇遇だな、私も君と同じことを考えていた。奴は冷静に私たちを見ていた。こっそり追跡して何があるか調べたい気もあるが、今は仕留めることを優先しよう』


『よろしく』


 パラケルススたちはトロールを追って森へ入って行った。心配が杞憂に終われば良いのだが…。


 残された俺たちは目前の敵に集中した。


  ◇ ◇ ◇


 今から1週間前、俺たちはエスターシアの首都からテハスに戻り、3週間ぶりにジルと会った。

 彼女は俺たちの留守中に司書スキルを活用して文献を漁りまくった。そして、領地として相応しい場所を探してくれていたのだ。


 しかも、ギルドにクエストの依頼をして実際に現地まで赴き、調べていたのだ。

 事前に候補地は幾つか挙げていたが、俺が推していた旧ソッサマン領の隠し鉱山南側の地域が、地形、気候、資源ともに有望な場所らしい。


「アキトさん、やはりこの場所しかありません。私は現地へ赴き調べたので間違いないです。パトリックさんにも出発の準備をするように伝えてあります」

「流石はジルさんだ。仕事が早いね」


 俺は今、サタニキアの実体化魔法のおかげで体を持った状態だ。

 ジルには念話が通じないので、普段は声魔法を使ってアリア経由で会話をするが今日は俺自身の声で会話をしている。


 彼女が地図上で示した場所はテハスから2日程度の距離にある。途中ドーラの宿場町を経由するが嵐に巻き込まれない限り野宿する必要がないので、距離的にも申し分ない。


 では、なぜ今まで開拓されなかったのか、その理由はモンスターの多さだ。

 以前の場所探ししているとき、この地域については調べたのだが確かにモンスターが多い。


「この地域のモンスターですが、とんでもなく強いです。Aランクの冒険者を多数動員しても歯が立ちませんでした。犠牲者まで出しちゃって…」


 ジルの表情が暗くなる。


 彼女は冒険者10名とパーティーを組み調査に出かけた。

 そこで出会ったのが、後に激化型と呼ばれるようになるモンスター達だ。


 結果、冒険者4名が命を落とす大惨事となった。生き残った6名も重症で、ジル自身も背中を裂かれ一時は危なかったそうだ。


 幸いパーティーの中に腕利きのヒーラーがいたのでジルは今ここにいるのだ。


 その後、事態を重く見たギルドはSランクの冒険者を集めて討伐に乗り出したが、無駄に犠牲者が増えるだけであった。


 そんな矢先、テハスに俺たちが戻てきたわけだ。

 パラケルススはギルドの責任者であったこともあり、部下から報告を受けた後、俺たちに緊急クエストの命を下した。


「アキト君たちは遠征の準備を1週間以内にして欲しい。オートマタの修理と改良もそれまでに終わらせる」


「そんなに早くできるのか?」

「やるしかない。何かの拍子で激化型が最寄りの宿場町にやって来たら大変だ」


「それはそうだけど…、あと誰が動かすんだ?」

「私が同行して性能の確認を激化型で試すことにする。部下のハンニバルも連れて行く」


 本来、パルケルススはそのような場所に来るような立場ではないが、オートマタのテストも兼ねていたので、自らが下したクエストに参加することになった。


「ぶっつけ本番だな」

「そうだ。Sランクの冒険者でも歯が立たないのだ、今はこれを使うしかない」


 1週間後、遠征の準備を整えた俺たちは激化型の討伐に乗り出した。


  ◇ ◇ ◇


 今日のボウケンシャはとても厄介だ。

 石のバケモノを操り、狼のバケモノまで連れて来た。


 仲間のトロールは既に倒されている。

 他の仲間たちは数多く残っているが倒されるのは時間の問題だろう。

 今は一刻も早くあの方にボウケンシャのことを知らせないといけない。


 とても美しく、知的で、まるで女神のようなお方。

 

 今までトロールを含むモンスターは、ボウケンシャや動物を見たら本能のままにただ襲うだけだった。だが、あのお方はモンスターに知恵と知識を授け、本能を理性で抑え、自ら考えカイゼンやカイケツすることを教えてくれた。

 

 今や彼らは、問題が起これば自ら考え行動することができる。日々カイゼンやカイケツを行ってきたからだ。


 トロールは今、逃げながら考えている。

 ボウケンシャのことを知らせる必要がある。だが、彼を追ってきている厄介なボウケンシャをあの方のところへ連れて行くわけにはいかない。


 どうすればよいのか…。

 普通に戦えば確実に負ける。考えろ考えろ。

 奴らはトロールの仲間を倒したのだから少しばかり油断しているはずだ。


 そしてもうすぐ隠れ家に通じる穴に到着する。迷っている場合ではない。


 彼は決断した。

 

  ◇ ◇ ◇


『パラケルスス様、もうすぐ追いつきますがいかがしましょうか?先ほどのように左右から仕掛けますか』


『そうするとしよう。知能があるといっても所詮はトロール、動きは同じだろう』


 パラケルススとハンニバルは先ほどトロールを倒した時と同じ方法をとることにした。

 

 それは二手に分かれてモンスターの視界にわざと入り、混乱した隙を狙って同時に攻撃するシンプルなものだ。


 トロールに追いついた彼女たちが二手に分かれた瞬間。


『なっ!』


 トロールは意外な行動にでた。


本日から三章に入ります。

同時にタイトル変更しております。


この章は領地づくりが中心となります。

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