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43、坑内対戦

 テイラもサタニキアも騒ぎの拡大を抑えるため、鉱山内にいる奴らの動きを封じるために行ってしまった。

 

 サタニキアは麻痺魔法を使い、テイラはフェンリルの姿で逃げる奴らを張り倒して気絶させている。

 2人は圧倒的な力をもって逃げる人たちを蹂躙していった。

 見ているこちらが思わず心配してしまうほどだ。


 そして俺とリリスは魔力切れで動けなくなったオートマタ型のバラムセーレにポツンと取り残されている。


『リリス、もうフェニックスを呼び寄せてもいいんじゃないか?このまま取り残されるのも不安だし、こいつの資料を見たって文字がわからないもんな』

『うっさいわね!読める文字もあるわよ!サタニキアより少しだけ知らない文字があるだけよ、少しだけね!』


 あくまでも差は少しだと主張するリリス。

 古代魔法のスペルは大体読めるのに、同じ時代の古代文字が読めないのは何故だろうか。


 古代のそれは、アラビア文字とキリル文字を混ぜたようなもので、スペルのほうは前者の方が多く含まれている。

 

 逆に普通の古代文字、バラムセーレの説明文などはキリル文字っぽいものが多い。


 ひょっとしてリリスはキリル文字が苦手なのだろうか。

 俺は探索スキルで見た映像を再び映し出してリリスに読めるかどうか尋ねてみた。


『わからん!』

 

 結果は俺の読み通り。

 もう一つ不可解なのはローマ字が混ざっていたことだ。

 これは以前から俺が思っていたことだが、古代文字の時代に俺の世界から連れてこられた人がいる可能性がますます高まった。


 その人たちが石ロボの開発に携わっていたのではないだろうか。

 バラムセーレの説明画面だって、どことなく俺の世界のロボアニメに出てくる操縦席の表示画面に似ている。


 この世界との関連性がとても知りたい。

 そして同じ世界から来た人がいるならぜひ会ってみたい。


 俺は、今思っていることをリリスにぶつけてみた。


『神や私たち悪魔に関しては、前々から名前が同じだってアキトは言ってたもんね』

『そうなんだよ』

『文字のことも聞いたら私も知りたくなってきちゃったな。私が苦手なキリル文字だっけ?あれが少し分かるようになったのは司教を吸収してからなのよ』


 司教が研究していた内容にリリスはアクセスすることができる。同居している俺は無理だが…。


 彼が古代文字を研究していたおかげで、リリスも少し読むことができるわけだ。

 ということは、サタニキアを吸収すれば…。これは彼女が明確に敵にまわった時に考えよう。


 考えが一区切りした頃、フェニックスが飛んできた。

 俺たちを石ロボから取り外すとサタニキアの後を追って坑道を飛んで進む。

 ここから先の坑道は天井がやけに高いのが特徴だ。高さな10メートルはありそう。


 そして通路上には意識を失った人たちが倒れて体を痙攣させていた。

 

 そこからやや進むと前方からサタニキアとテイラが急いでこちらに向かってきた。


『アキト君戻って!こっちこないで!!』


 大声で叫ぶサタニキア。

 何事かと思えば、彼女の後方から炎を放つ石ロボが現れたのだ。

 魔術師の姿は無いので、オートマタかロボット型だろう。


 よく見るとテイラの尻尾が燃えている。


『リリス、水系の魔法で消火できないか?』

『もう詠唱済みよ、今それを放つタイミングを見ているの』

『待たずに放てよ、テイラが丸焼けになっちまうぞ』

『分かってるんだけど、魔力を抑えないとフェニックスちゃんのコントロールも危ないのよ』


 そういうことだったか。

 事情を察したのかフェニックスはテイラに近づいてくれたので一発で消火に成功。


 よく見るとテイラの毛はあちこちが焼けて縮れていた。

 後方から追ってくる石ロボはそれほど強いのだろうか。視線を後ろに向けると高さ9メートルほどのそれが炎を吐きながら迫っていた。


 例のアニメに出てくるモビルスーツの半分程度の高さだ。

 坑道の高さは、どうやら石ロボに合わせていたようである。

 

 ということは、これ以上大きなものは無いということだろう。

 石ロボは地面に倒れている仲間を容赦なく踏みつぶしながら俺たち追いついてきている。


『おいおい、仲間を踏みつぶしてるぞあいつ…』

『教会の奴らみたね』


 確かに教会ならやりかねない。

 それにしてもあの石ロボ、早さも尋常ではない。徐々にだが差が縮まっている。


 追いつかれる前に元の場所に戻った俺たちは、フェニックスが首筋の窪みに石をはめ込み、サタニキアが肩に乗って俺たちに魔力を供給。


 バラムセーレを再起動後戦闘態勢に入る。


『リリスちゃん、アキト君、わたしの魔力も心もとないので攻撃はあなた達に任せるわ。わたしは魔力の供給に集中する』

『頼んだサタニキア』

『リリス、フェニックスに石ロボを攻撃するように伝えろ』

『分かったわ』

『テイラ、戦えるか?』

『この広さがあれば問題ない、本気でいける』


(尻尾が燃えてたのに本気を出さなかったのか?いや、出せなかったのかもしれないな)


 指示を出し終えたところで石ロボが俺たちの前にやってきた。

 視界に相手の名前が表示される。


『そいつの名称はアメミットジズ、人が操縦するロボット型だわ。見るの初めてよ』


 サタニキアの声は少し興奮気味であった。

 所見なので気持ちが高ぶっているのだろう。俺も同様だ。男なら一度は乗ってみたい人が操縦するタイプ!


 搭乗者を麻痺させてロボを生け捕りにする方法はないものだろうか。


『リリス、麻痺魔法使えるか?』

『もちろん使えるわ』

『詠唱した状態で待機してくれ、俺が剣で斬りつけるとき同時に放って欲しいんだ』

『分ったわ』


 相手も剣で簡単に破壊されるほど軟な耐久ではないはず。

 先ほどリリスが破壊したゴーレム型のラウムガープは魔法攻撃が通じていたので、麻痺も効くはずだ。


 普通に魔法を放つと大気中で威力が拡散し若干弱まるが、剣を通じて直接放てば一か所に集中するため通常攻撃より威力は増す。


 ただし、攻撃を受ける範囲は狭まる。


 俺は剣を構えるとアメミットジズめがけて跳躍した。

 目標は胴体中央にある扉のような部分だ。そこに人がいると思われる。


 だが相手も簡単にはやらてくれない。こちらの剣が届く寸前、盾を作り出して攻撃を防いだ。

 

 激しい衝撃と共に、こちらの剣先が少し欠けテイラめがけて飛んで行った。

 彼女は寸でのところで交わしたが、自慢の狼の毛が宙を舞い、剣が触れたところはバリカンで刈られたようにハゲていた。


『なんてことをするんだアキト!自慢の毛が…』


 涙目で必死に抗議するテイラ。

 獣人になった時、どのような影響がでるのか少し心配である。


『すまん、今のは事故だ。その怒りは石ロボにぶつけてくれ』


 テイラは怒りのためか、体をひとまわり大きくしてアメミットジズに向かって駆け出し、前足で物理攻撃をくらわしていた。

 一瞬だが、石ロボの意識がそちらへ向く。


 その瞬間を利用して俺は足払いをお見舞いしてやった。それは見事に当たりアメミットジズを地面に倒すことに成功。

 

 今俺が動かしているバラムセーレは、相手に比べれば小型なので小回りが利く。

 さっき宙返りの試した時に、ある程度の運動性のは理解したので試してみたのである。


 倒れたアメミットジズは、起き上るのに少し苦戦していた。

 先に体勢を立て直した俺は、再び中央部に向けて剣を突き刺す。

 気づいた相手が盾で防御を試みるが、わずかに俺の方が早かったため剣が胴体を直撃。同時にリリスの麻痺と電撃の混成魔法が剣を伝って放たれた。


 電撃魔法はリリスの独自判断だ。

 寸刻後、石の中から人の悲鳴が聞こえアメミットジズは動きを止めた。


 ◇ ◇ ◇  

 

 その後、坑内に残っていた奴らをすべて拘束し、俺たちは鉱山の制圧に成功した。

 石ロボは俺たちが動かしていた物を含めて3体で、他の個体は発見されなかった。


 魔力も少なかったため、ローブの奴らの中でも責任者の立場にある者など数名を調べた結果、彼らの正体はラフィエル教の一派であることが判明した。


 一番最初に吸収したリゲル司教同様、古代の魔法や技術を研究している集団に属している。


 この鉱山は30年前に採掘を終えており、最後に発見されたのが例の石ロボ3体だ。


 ソッサマンは、初代領主の時代から隠し鉱山の開発を行い、領内の港から他国へ密輸して巨万の富を得ていた。


 輸出先の大半がデュシーツであった。


 発見された石ロボの表面には、古代の文字が描かれていたが解読できる者は領内にいない。


 そこで親交のあったデュシーツの教会に相談したところ彼らが派遣され、以後鉱山は教会の管理下に入る。


 稼ぎ頭の鉱山は、既に別の場所に移されていたのでソッサマンの収入が細る心配もなく、旧鉱山は教会に貸す形となっているので賃料も入る。


 ソッサマン領の収益は、ライドランド公爵のそれに迫る額ではないかと思われる。


 そこまで探ったところで、気絶させていた責任者の男の意識が戻った。

 男は目を見開くとサタニキアと獣人の姿になったテイラを睨みつける。

 

「私の記憶を探りましたね?下等悪魔と獣人風情が女神ラフィエル様の加護を受けている私に逆らうとは分をわきまえなさい。あなた方は地獄の業火に焼かれ永遠の苦しみを味わうことでしょう」

「下等とは失礼ね、私はサタニキアよ。それはわたしの台詞なんだけどな」


 サタニキアが不敵な笑みを浮かべローブの男に言った。


「それは失礼」といって、男は笑みを浮かべ話を続ける。


「どうせ町で広がっている病気のことも調べたのでしょうが、もう手遅れですよ。ここにあった古代兵器も大半は運び出しましたし…おっと。話過ぎましたね。これ以上探られても困ります」


(このおっさんまさか!)


『サタニキア、おっさんを気絶させろ命を絶つつもりだぞ』

『なっ』


 サタニキアは急いで詠唱するが、男は器用に笑みを浮かべたまま絶命していた。

 口内に毒でも仕込んでいたのだろう。


『他の奴らも口に布を突っ込んで自害できないようにしよう』

『そうね』


 サタニキアとテイラは手分けしてローブ野郎の口に布を突っ込み始めた。


 男が言っていた手遅れという言葉が気になる。

 俺たちは2人を指示を出した後、フェニックスにくわえてもらい、町へ急ぎ戻ることにした。


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