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42、太古の遺物

 突如目前に現れたゴーレムと思われる石のロボット。


 周囲には、先ほど町で探していたローブを纏った奴らがいる。その数5人。


(こんなところにいやがったのか…)


 それと奴隷と思わし人達が、奴らに指示されてゴーレムを掘り出していた。表面には古代魔術の文字が刻まれているので当時のものであろう。


『リリス、このでかい人形見たことあるか?』


 ロボットと言っても通じないだろうし、ゴーレムかどうかも謎だし、人型をしているので人形といった方が通じるかもしれない。


『これは見たことないわね』

『テイラはどうだ?』

『わたしも初見だ』


 ふたりとも知らないようだ。となるとフレデリカか、書物をよく見ているアリアに聞いてみるしかなさそうだ。


『この世界にゴーレムって存在するのか?』

『聞いたことあるけわね。それがどの様なものなのかは見たことないけどね』

『わたしは初めて耳にする』


 どうやらゴーレムは存在しているようだ。テイラは初めてのようなので、この世界ではあまり有名なものではなさそうだ。

 その時、どこからともなく聞き覚えのある声がした。


『あれはゴーレムの一種よアキト君』

『うわ、いきなり出てくるなよ!』『急に驚かさないでよ!』『全くだ』

『この声はサタニキアか?』


 念話に突然サタニキアが入って来たので驚いてしまった。


『ごめんなさい、驚かすつもりはなかったのだけど、こんなところで姿を見せるわけにはいかないじゃない』


『どこにいるんだ?』

『ゴーレムの上よ、認識阻害使ってるから誰にもわからないわよ』


 俺はゴーレムの上に視線を向けたが誰も見えない。ただ、陽炎のような現象が起こっていた。


 ひょっとするとこれが認識阻害の見分け方なのかもしれない。意外な発見。

 それよりもサタニキアはこんなところで何をやっているのだろうか?


『お前ってさ、あのローブ着てる奴らの関係者か?』

『違うよ!なんか怪しい奴らがいたから、つけて来たらここにたどり着いたのよ』


『そういうことか、疑って悪かった。それで何か判ったこととかあるのかな?ゴーレムのこととか、よければ教えて欲しいんだ』


『うーん、推測を混ぜてもいいのなら話すわ』

『それでもいいよ』


『あれは相当古い物ね。わたしも悠久の時を生きる者だけど、あれが動いているところは数回しか見たことがないの』


 サタニキアの年齢は不詳だが、リリスがあれを見たことがないのだから500年以上前のことだろう。


 彼女は推測も混ぜて話をつづけた。 


『リリスちゃんが生まれるはるか昔、具体的な年数は忘れたけど1000年くらい前かな。古代魔法を扱う者たちの間で大きな戦いがあったの』

『1000年ってまじかよ!』


(見た目は20代後半おねーさんなのに…)


 その戦いは他の大陸を巻き込んだ大戦で、そこで使われたのが目の前にあるゴーレムだ。


 ゴーレムはいくつか種類があり、魔術師が命令を出して自動で動くものと、人が乗り込んで操縦するものがある。


 前者をゴーレム、人が操縦するものをロボットというらしい。それ以外に魂を封じた石をはめ込んで動かすオートマタもある。


『ロボットってあるのか?』

『わたしは見たことないけど存在していたらしいの、数は少ないはずよ』


 作られた順はゴーレム、オートマタ、ロボットだそうだ。

 ロボットに関しては大戦末期に登場したのと、操縦士を育てるのに時間を要するので、乗り手の関係で機体数が少ない。


 大戦で魔術師が不足してきたので、人が操縦する方式に変更したというのがサタニキアの読みだ。


 通常なら開発を進めてより高性能な物を作るはずが人海戦術に切り替えた、言い方を変えれば劣化したということになる。


『俺たちが見ているこれは、どのタイプなんだ?』

『ぱっと見た感じゴーレムだと思うのよね…、いやオートマタかな』


 サタニキアも正確には分からなさそうだ。個人的にはロボットタイプの方が好きなのだが…。


『それよりもこっちに来なよ、ちょっと見てもらいたいところがあるのよ』

『そんなこと言って私たちを騙そうとしても無駄よ!』

『リリスちゃん疑い過ぎだってば。今はあなたにイタズラしている場合じゃないことくらい分かってるわよ』


 過去にどんなイタズラをされたのか少々気になる。また機会があれば聞いてみよう。

 

『テイラ、ゴーレムのところまでなんとか行けないか?』


 テイラは視線を天井付近へ向け、ゴーレムまでの道のりを確認する。

 幸いなことに上の方は岩の削り方が雑なので、突起物が多い。これならばネズミでもいけそうだ。


『特に問題ない』


 確認を終えたテイラは自信に満ちた声で答えた。

 ちなみにフェニックスは変身ができないので、住居エリアの手前で待機している。

 

 テイラは器用に手足を動かし、難なくサタニキアが居ると思われるゴーレムの上に移動した。


 到着したとたん、サタニキアはテイラを掴んで認識阻害の内側に引き寄せた。

 これで彼女の姿が見えた。


『ヤッホ、わたしのリリスちゃん』

『何がリリスちゃんよ…。いつまでもおもちゃみたない扱いしないでよね!』

『お楽しみ中のところ悪いが、見せたいものってなんだ?』


 サタニキアはゴーレムの首にあたる部分を指さした。が、テイラがいくら頑張っても見えない位置にある。


 素掘りの壁と違って、ゴーレムの表面はつるんとしているため、下手に覗き込むと踏み外して落下する可能性があるからだ。


 それを察したサタニキアがテイラを掴んで見える位置に腕を伸ばしてくれた。

 今、下からゴーレムの頭を見れば、ネズミが宙に浮いているように見えるだろう。


 奴らに見つからないよう願うばかりだ。


 ゴーレムの首には石をはめ込むような窪みがあった。


(石を使うってことはオートマタか…、ってまさかサタニキアの奴…)


 嫌な予感は的中した。テイラから俺たちを取り出すとゴーレムの窪みに俺たちをはめ込んだのだ。


『おいサタニキア!何しやがる!!』

『やっぱり企んでたんじゃない!これだからサタニキアは……』

『まーまー落ち着いて。アキト君そこでスキルを使ってみて』


 俺たちの抗議は無視され、スキルを使えと指示が飛んできた。

 一瞬「だが断る」というお馴染みのフレーズが頭に浮かんだが、もしオートマタが動いたとしたら面白いかもしれない。


 今は好奇心の方が上回っていた。


『ちょっとアキト、サタニキアの言う通りにするんじゃないでしょうね』


 リリスが言ってきたが、俺は既にスキルを発動させていた。

 見えてきたのは起動画面と思われるものと、続いて操作方法が書かれていると思われる古代語の文字列だ。さっぱり分からない。


『リリスの出番だぞ』

『ちょっと待ち待ちなさいよ、そこまで私は詳しくないって!』

『わたしの出番ね♪』


『サタニキアは分かるのか?』

『完璧にマスターしているわけじゃないけど、リリスちゃんよりは分かるわよ』


 サタニキアによると、オートマタの名称はバラムセーレといって、イメージスキル保持者の石であれば動かせる。

 

 動作に関しても、操縦者が思った通りに動くらしく、スキルのランクが高いほど細かな動きができるそうだ。


(俺のイメージスキルEランクなんだよな…)


 起動に関しては(動け)と念じるだけなので、ランクが低くても扱えるのが特長だ。

 

『アキト君、動かしてみようよ』

『無茶いうなよ。奴らに見つかってしまうぞ』

『それは気にしなくていいよ。あたしがなんとかするから』


 悪魔の(なんとかするから)という言葉ほど怪しいものはない。

 リリスのようにクレーターができるほどバカな魔法を放たないことを祈る。


 しかし、こんな鉱山の奥深くでロボットに出会えるなんて想像もしていなかった。

 俺の世界のアニメにあった、宇宙で使うロボットとは全く違うが、それでも人型を動かすのは楽しそうだ。


 さっそく俺は(動け)と念じてみた。すると視界に何やら赤色の文字が浮かび上がったが、当然読めない。


『あ、なるほど。リリスちゃん達の魔力が少ないのよ。あれはね、魔力不足を示しているの』


 教えてくれたのは文字がある程度読めるサタニキアだ。


『ということは、こいつは生きてるってことだよな?』

『そうなるわね。魔力なら、わたしのを融通してあげる』


 といって、サタニキアは俺たちに魔力を分けてくれた。

 以前も味わったが、魔力が入ってくるときの心地よさは格別だ。

 逆にリリスに盗まれるときは何も感じない。だからこっそり使われることが多々ある。


 本当に酷い悪魔だ。


『もう一度念じてみて』

『おう』


 サタニキアに言われたので再び念じると、先ほど探索スキルで見た時と同じ起動画面が視界に現れた。


 魔力不足の表示は消え、その上に緑色でReadyという文字が現れた。


(え、なんで英語表記がここにあるんだ???)


『サタニキア、これなんて書いてるんだ?』

『古代文字よりさらに昔の文字かな…、なんとなくだけど準備できたって感じかな』


『実はそれ俺の世界の文字で、サタニキアの勘の通り準備完了って意味なんだよ。なんでここで表示されるんだ?』


『それ本当?なんでここで使われているのか、わたしにも分からないわ。あ、奴らが異変に気付いたよ』

 

 言われて視界を下に向けるとローブの奴らが奴隷たちに指示を下しているところだった。


 とりあえず奴らのことは後回しにして、動かしてみよう。


 俺が歩行をイメージすると、オートマタはゆっくりと動き始めた。

 人を踏まないように避けながら歩く。

 ただ、足が地面に着いた時の振動を吸収するような仕掛けが一切ないため、乗り心地は最悪であった。


 サスペンションの一切ない車に乗っているような感じ。


『アキト、酔っちゃうわよ。これ最悪じゃん』

『確かに衝撃が半端ないよな…』


 次に運動性能を確認する。跳ねる、走る、横に移動、宙返りなどを試したが、最後意外は全て思い通りに動いてくれた。


 宙返りは失敗して地面に激突し、今オートマタは地面を転がっている状態である。

 イメージしてから寸刻のズレが生じるが、これはスキルが上がれば改善するに違いない。 


 逆にズレを加味して動けば問題なさそうだ。


『アキト君、あっちから何か来るわ』


 サタニキアに言われた方向に視線を移すと、もう一体の石のロボが現れた。

 それは魔術師と思われる奴が本を見ながら操作している感じだ。説明書であろうか?

 

 魔術師がいるなら、あれはゴーレムになる。


 俺は視界に入ったゴーレムに向かって(知りたい)と念じたら、目の前に一行の文字が浮かび上がった。

 おそらく相手の名称だろう。


『サタニキア、なんて書いてるんだ』

『これなら私も読めるわよ!』


 リリスが負けまいと割り込んできた。


『ラウムガープという名称のようね』 

『それだけ??』

『そうよ』


 これも何かスキルを駆使すれば相手の情報が引き出せるのだろうか…。もしくはイメージスキルのランクアップが必要なのかもしれない。

 

 俺は起き上るところをイメージし体制を整え、ラウムガープの前に移動した。

 相手は体から石でできた剣を作り出すと、いきなり俺をめがけて突き刺してきた。

 寸でのところで交わしたが相手の動きも意外といい。


「お前らゴーレムが暴走しているぞ、なんとかして止めるんだ」


 近くではローブ野郎が奴隷に命令していたが、ツルハシやスコップしか持っていない彼らは、なす術がないといった感じで立ち尽くしていた。


 まだ俺たちが操作しているとは気づいてないようだ。


『おい、攻撃してきたぞ。どうやって応戦するんだ?剣をイメージしたけど反応がないぞ』

『操縦する者のスキルに依存するってあるわね』


 サタニキアは、俺の探索スキルで得られた情報を解読しているようだ。

 しかし俺に戦闘スキルはなかった。念切りは持っているが、イメージしても出現しない。

 剣を使って物理攻撃か魔法じゃないのダメなのか?


(いや、待てよ。使えそうなスキルはまだある。それにリリスの魔法も使えるかもしれないな)


『おいリリス、なんか魔法を使ってくれ。派手なのはダメだぞ!』

『分かったわよ』


 リリスが出力を絞ったファイヤーボルトを放つと同時に、俺はスティールスキルを発動した。相手の剣を盗むために…。


 目論見は成功し俺の手元に剣がやってきた。

 それを握って瞼を閉じ、剣で攻撃を加えるところをイメージした。

 だが、だが再び開くと目に飛び込んできたのは熱で体の半分が熔けた無残な姿のゴーレムだった。


 当然機能は停止している。

 ゴーレムを操っていたローブ野郎も何が起こったのか分からない様子だ。


 それを見た奴隷たちはローブども制止を無視して一斉に逃げ出した。

 一瞬にして鉱山は混乱状態になる。


『わたしの出番だわ』言ってサタニキアは認識阻害を解除し、本来の妖艶な容姿の女性が姿を現した。


 サタニキアは麻痺系の魔法を使ったようで、その場にいた人達と次々と行動不能にしていった。


『おいリリス、出力を抑えろって言ったよな?』

『魔法の制御って意外と難しいのよ!こんな人形を介して魔法を使うのは初めてなんだから仕方ないじゃない!』

『それもそうか…』

『でしょー』


 正直なところ、もう少し戦ってみたかった。どこまで戦闘に使えるのか試してみたかったのだ。

 

 今見た限りの性能では、せいぜい開拓地での開墾とモンスターを追い払う程度しか使えない。


 そして一番の問題点は魔力消費量だ。

 俺が動かしていたバラムセーレは、魔力不足で機能停止している。

 Readyの文字は消え、再び赤色のガス欠マークが灯っていた。


テイラの気配がないなーと思ったら、フェンリルの姿に戻って暴れてるし…。

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