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35、サタニキアの方略

 リリスは自分の胸を揉んで本物かどうか確認をしているようだ。

 どうやら俺たちは体を得たようなのだが…。


『わ、、、私の体おかえり!愛しかったよ私の体!この胸の大きさと弾力、本物だわ!!アキトも体戻ってるじゃない、なんだかパッとしないわねあんたの容姿』


『うるせーよ、キモ顔で悪かったな!』


 俺も体が戻っていたのだが、滑落した時に出来た頭の傷は無かった。

 どうやら元の世界にある体を持ってきたわけではなさそうだが、衣装は同じものであった。オシャレさは皆無だ。


 確かにモテる顔では無かったし、年齢=彼女いない歴なので容姿に関する指摘には反論できない。


 それよりこの体は本物だろうか?神経も通ってるし違和感もない。でも魔法と言ってたな…。


『サタニキア、これは本物の体か?』

『ざんね~ん、実体化の魔法で作った義体よ。でも本物っぽでしょ?臓器もちゃんとあるから食事もできるわ。もちろん夜の生活もバッチリよ!最大の特徴は不死身ってこと』


 食事も夜の生活も出来るとは高性能な体である。

 不死身の理由は、俺たちが石に入っている霊体だからだそうだ。


 幽霊に対してもこの魔法は使えるらしい。ただし悪霊化している者に対して使用すると、魔物を生み出しているのと同じことになるので要注意。


 実体化と言えばパラケルススが言っていた幻の魔法だ。

 これは是非とも伝授してもらわなければなるまい。

 ここまで幾度となく体があれば……、という出来事に遭遇している。


 やはりこの世界で活動するなら体は必要なのだ。


『その魔法、俺に教えてくれないか。今後のためにも必要なんだ』

『気持はよくわかるけど、ダメよ。というか実体化は教えられるものじゃないの。錬丹術でスキルを錬成して創り出すのよ』


 意外にも自分でスキルを創出するらしい。

 パラケルススも知らなかったスキルの入手方法が明らかになった。

 しかしなんだろう、まるでモンスターを配合して新種を作るゲームみたいだな…。 


『スキルの錬成ってどうすればいいんだ?』

『異なる2つのスキルを融合させるのよ。ただし、それが出来るのはSランク同士で、成功すれば元のスキルは表向き消えるわ』


 俺が持っているもので例えるとスティールとイメージスキルを錬成して新たなスキルを創出することになる。


 そして、新スキルはスティールとイメージの両スキルを含んだものになるらしい。

 元になるスキルが消えてしまうとなれば大変なことだが、そうではないので錬丹術は優秀なスキルと言っていいだろう。


 これならば探索と錬丹術を融合も気軽にできる。Sランクまであげるのが一苦労しそうだ。


『どれを組み合わせれば実体化スキルになるのかな?』

『それは人によって違うわね。でもねユニークスキル同士の方が確率はいいわね。アキトくんの場合だと、探索とイメージ、それに錬丹術がニークスキルに該当するわね』

『なるほど』


 イメージもユニークスキルだったんだな。


 ここで、胸をほぐし終えたリリスが会話に入ってきた。


『私も質問なんだけど、アキトのスキルを利用できるから私も錬丹術が使えるのよね?』

『使えるわよ』

『私は錬金術と錬丹術両方使えることになるのか…』


 何故か俺はリリスのスキルを使うことが出来ないのだ。とても不公平である。


『わたしはそこに注目して、あなた達に期待していることがあるの』


 サタニキアは、俺たちが錬金術と錬丹術を両方持っていることに注目している。

 彼女の知る限りでは、この世界に両方を持つ者は存在していない。ゆえに将来的な成長性は未知数。そんな俺たちに何を期待するのか。


 サタニキアは自らの方略、考えを語り始めた。


『わたしはね、アキトくんに魔族を率いて欲しいと思っているの』

『え、それは俺が魔王に?単なる石ころだよ、俺は…』


 さっきサタニキア達、魔族の王になるのも悪くないと確かに考えはしたが…、唐突過ぎる。


『体に関しては大した問題じゃないわ。要はあなたのやる気よ』

『魔王というものに憧れがないわけではないが突然言われても困る。しかも俺は魔族じゃないぞ』

『魔族じゃなくても大丈夫よ。誤魔化す!』


 誤魔化すって…。魔族じゃないとダメなんじゃないか…。


 しかし、サタニキアは俺に世界の支配者にでもなれということなのだろうか。

 いや、世界は大げさだな。英雄王カトマイを倒して大陸の支配者ってところかな。


『魔族は魔王ルシファーを失ってバラバラになっている。統制もとれていないわ。リリスちゃんが吸収したアスモデウスのように、好き勝手に動いて自滅している奴らが多いのよ』


 ルシファーの設定も俺の世界とは微妙に異なっている。

 魔王とは名乗ってなかったはずだが、ポジション的には似たようなものだったかな。

 

 そのルシファーだが、今から100年前にアケメネスの勇者によって討伐され、倒した勇者も30年前に他界していた。


 サタニキアはルシファーの下で将軍の地位にあり、他にアガリアレプト・ベルゼブブ・アスタロトの3悪魔が将軍だった。勇者との戦いでベルゼブブは倒れ、アスタロトは行方不明、アガリアレプトはサタニキアのように魔族の復興を目指して動いている。


『あなた達も聞いているかもしれなけいど、大陸の最北の地にアンデッド王が誕生し力をつけてきているわ。彼らはやがて南下してくるでしょうね。そして南には英雄王カトマイ率いるデシューツが大陸の支配を目論み北への攻撃を考えている。海の向こう側の勢力も動きが怪しいわ』


『俺たちが居る場所って挟み撃ちになる可能性があるってことだよな』

『そうよ』


 海の向こう側の勢力ってなんだ?初めて聞いたぞ。南北に加えて外の勢力まで出てくるとか、どれだけ物騒なんだこの世界は。


 女神ラフィエルめ!こんな地獄みたいな世界に送り込みやがって、いつか一発殴ってやる。


『そうなれば魔族も含めて多数の死者がでることは間違いないわ。それに備えて魔族をまとめておきたいのよ。将軍のわたしやアガリアレプトが王に就こうとすれば、派閥争いが起きることは間違いない。そんな時間はないの』


『だからと言って、石ころの俺が魔王になったって誰も認めてくれないだろ。いい笑い者じゃないか』


『誤魔化すって言ったじゃない。容姿は魔法でなんとでもなる。あとは圧倒的な力を見せつければ魔族は従うわ』


『アガリアレプトよりも強くなれと?』

『いえ、彼女とは話がついてるから、そこそこ強くなってくれれば、あとはわたし達がサポートする』


 ここに来て急展開だ。

 まずは村を作って収入を確保して、デシューツを倒す力をつけようと思っていたのに…。

 

 この事態、パラケルススも知らないんじゃないのか?

 あとでリリスの式神を通じて報告しなければならない。


『わたしがアキトくんに期待しているのは他にもあるの。実際に会って分かったけど、異世界から来たことと女神の加護を受けているところよ』


『女神の加護を受けた魔王って、おかしくないか?』

『カトマイ王だって女神の加護を受けているわよ。彼のほうがやっていることは魔王らしいけどね』


 この世界に来てずっと思ってるのは、デシューツに限れば人の方が悪魔っぽくて、リリスを見ていると悪魔の方が善人のような存在に見えてしまう。

 あの教会だって狂信者の集まりだ。


『話はわかったわ。で、アキトはどうするの?』といってリリスは椅子に腰かけた。


『しばらく考えさせてくれ。話が急展開過ぎてついていけない』

『それもそうね』


 今は正直なところ村づくりを優先したい。それにはマギアに向かうのが賢明な選択だろう。

 

「今すぐに答えてって訳じゃないから、じっくり考えてみて?」


 体を一時的に得た俺たちは念話をやめ、普通に話すことにした。


「そうさせてもらうよ」

「あとね、この魔法だけど明日の朝までは持つから、それまで久しぶりの体を味わうといいわよ。私は奪った人たちを元に戻してヤンに関する記憶を消すわ。それが終わればみんな動き出すから2人きりの時間をせいぜい楽しみなさい。頑張るのよリリスちゃん!」


 意味深な発言だな…。真剣な表情だったサタニキアは、突然ニヤけた顔になった。

 そしてリリスに視線を向け、親指を立てると外に出て行った。


「ええ、もちろんよ」とリリスは答えた。


 あのグッドラックを意味する手振りはなんだろう…。

 それが分かるのは数瞬後であった。

去り際のサタニキアの笑顔が気になるな。 

絶対なにか企んでやがるな。

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