34、悪魔と契約した者の末路
ヤンとドローポーカーで勝った俺たちは、サタニキアに約束を履行させることにした。
『ヤンがあなた達とした約束は守るし、わたしがヤンと交わした契約も実行するわ。本当は口約束なんて守る必要はないけど、リリスちゃんがいるから特別よ』
リリスが居なければ口約束なんて反故にすると言わんばかりだ。
悪魔の基準では約束は破るためにあるものなのか…。悪魔との口約束は要注意。
しかし、サタニキアもリリス同様淫魔の類なのだろうか、一挙手一投足が美しくてついつい見とれてしまう。
リリスもいつだったか彼女本来の姿を映像で見た時は妖艶な雰囲気を醸し出す女性であった。
既に石に吸収されているが、アスモデウスも美形の部類だ。この世界の悪魔は美人が多いのかもしれない。
彼女たちを従えて、魔族の王になるのも悪くはない。
せっかくの異世界なのだから、男なのだからハーレムを一度は体験してみたい。
管理は大変そうだが…。
『アキト、またエロいこと考えてるでしょ?私に体があれば慰めてあげれるのに…、ごめんね』
『だから俺の心を勝手に見るのはやめてくれ!』
油断も隙もない。この石にプライバシーなんて洒落たものは存在しない。
『2人とも仲がいいのね。それよりあなた達よくやったわね。まさか龍脈自体に細工を施すとは驚きよ。一か八かの賭けだったのでしょ?』
『うん』
サタニキアの指摘通りだ。
成功する保証なんて全くない。
俺はフレデリカに怨念のスキルを龍脈にぶち込むように伝えていた。
彼女のそれはSランク。500年近く閉じ込められた恨みの負の力は想像を絶するものだろう。
それと怨念という謎のスキルがどのようなものなのか知っておきたいという好奇心もあった。
うちのメンバーは戦士に特化したプレイサを除いて、みんな個性的なユニークスキルを持っているが、それがどのような力なのか把握しきれていない。
今後のこともあるので、機会があれば試すべきと思っていた。
『龍脈ってね、下手に刺激すると反撃されるのは知っていた?』
『どういうこと?単なる気の流れなのに反撃するのか?』
『あれは一種の生き物なのよ』
龍脈が生き物だとは驚きだ。
サタニキアによると、龍脈(地脈ともいわれる)は、植物や大地からわずかながらの力をもらって生きている。
その力を使えるのは、人では錬丹術や錬金術を持った者で、龍脈と意思の疎通ができる者でなければ利用できないらしい。
となるとフレデリカはどうやったのだろうか。少し心配になってきた。
そもそも無事なんだろうか…。
Sランクの怨念を食らった龍脈がどうなったのかも気になる。
『え、そうだったの?今まで知らなかったわ』
『だからリリスちゃんは下級悪魔なのよ。甘いのよ』
『私は下級じゃないわ、大悪魔よ!』
『ええ、以前よりは強くなってるのは認めるわ。もし魔王様が健在であれば、あなたは幹部クラスに入れるでしょうね』
『・・・』
リリスが不満そうにしているのが俺にも伝わってくる。
彼女自身が一番分かっているのだろう。
サタニキアとリリスの関係が気になるが、敵というわけではなさそうだ。
それよりも俺が知りたいのは龍脈だ。
『話を戻して悪いが、俺はフレデリカに怨念を龍脈にぶち込むように言ったのだが、龍脈がどうなったか分かるかな?』
『そういうことだったのね。龍脈は瀕死よ…』
『それってまずい?』
『この辺りの龍脈はしばらく使用不能ね。10年くらいしたら戻ると思うから気にしなくていいわよ』
それって、どう考えてもダメだろ。
龍脈を攻撃することは今後控えるとしよう。龍脈ハンターなどという奇天烈な称号を頂いても困る。
これから錬丹術を鍛えようって時に、龍脈側からお断りされたら非常に困る。
『ところでヤンはどうするの?』
俺が龍脈のことを聞いている間に、気持ちを切り替えたリリスがサタニキアに尋ねた。
『ヤンの魂は契約に従って食らってやったわ。不味かったけどね。それに比べればリリスちゃんはとても美味しそう。一緒に入ってる殿方も含めてね』
俺かよ!
気をしっかりと持たないと、食べられてしまってもいいと思いそうになってしまう。
魅了のスキルでも持っているのだろうか。
『彼女は美を司る悪魔よ。気をつけないと虜にされちゃうわよ』
『それって、まるで女神じゃないか』
俺の世界のサタニキアとは設定が全く違っていた。
『冗談よ。そういえば、なんてお名前なのかしら?』
そういえば自己紹介をしていなかった。
彼女の美しさに見とれたのと、龍脈の正体に気をとられて忘れていた。
『俺は黒松明人。異世界からやって来た廃道探索家さ』
『アキトくんね。わたしはサタニキアよ。リリスちゃんは私の妹みたいなものよ』
『失礼なこと言わないで頂戴、何がおもちゃよ!』
2人の馴れ初めについてはあとで聞くとして、次に俺はヤンとの契約が気になっていたので、内容を尋ねてみることにした。
『ヤンとはどこで?』
『そうね、ヤンと知り合ったのはマギアという町よ』
マギアは俺たちが目指しているソッサマン領の中心になっている町だ。
ヤンは、船で異国からやってきた魔術師で、目的はデシューツへ行き教会の魔術師として雇ってもらうことらしい。
わざわざエスターシアに入ったのは、手土産代わりの情報収集とスキルの錬成を行うために錬丹術を覚えることだったそうだ。
しかし、スキルの保持者がすでに他界していて覚えることができなかった。
それを見ていたサタニキアが彼に手を貸したのだ。
契約内容は、ポーカーで勝った相手からヤンはスキルを奪い、サタニキアは対戦者の精気を少し頂く予定だった。しかし、ヤンが人体を使った錬丹術の実験をしたいと言いだしたので対戦者の家族、とくに若い女性や子供を賭けの対象にしたのだ。
『実をいうと錬丹術を与えたのはわたしなのよ。かなりの劣化版だけどね』
『ということは、他界した男とも契約を?』
『そうよ、その男とは20年契約をしていた。』
なるほど。期間が満了となったので、契約に従い命とスキルを回収しに来たのだろう。
その男が他界した原因はサタニキアだ。
『その錬丹術師は何を目的にあんたと契約したんだ?』
『あまり目的に興味はないのよね。だから詳しくは知らないの。うーん、でもスキルの錬成が目的だったと思うのよね』
スキルを錬成して何に使うのかまでは分からないままだった。
『あなたも錬丹術を覚えたいのなら、彼の抜け殻を吸収するといいわ』
『それで覚えられるのか?』
サタニキアは俺たちをヤンの抜け殻の前に置いた。
間を置かず石は彼を吸収し始めた。よりによって俺が最も嫌なパターンで…。
ヤンは血しぶきをあげながらコンパクトに折りたたまれていく。以前、司教を吸収した時と全く同じだ。
幸いなのは既に魂を食われているので、痛みを感じていないというところだろう。
立場が逆であったらと考えるとゾッとする。
できれば見たくなかったのだが、瞼を閉じることが出来ないので最後まで見届けることになった。
これは吸収する側の義務かもしれない。
悪魔と契約した者の末路はあっけなく終わった。
『黒松明人はレベルが上がりました』
『錬丹術のスキルを覚えました』
『リリスはステータスウインドが上がりました』
=====
名 前:黒松明人
種 族:石
職 業:廃道探索家
レベル:10→11
経験値:231
体 力:110→130
魔 力:95→105
幸 運:100
知 性:F
戦 術:E
速 さ:F
防 御:S
器 用:F→E
スキル:念斬りE・スティールD・探索A・吸収C・イメージE・錬丹術C
称 号:爆弾魔→下級錬丹術師
=====
=====
名 前:リリス
種 族:石
職 業:魔術師
レベル:100
スキル:魔法S・魅了S・エナジードレインS・錬金術A・薬学A・治癒A・ステータスウインドB→A
称 号:魔術マスター
=====
やっとレベル11か…、長かったな。
地味に器用が上がっている。
リリスもスキルが上がったようで、ステータス画面に若干の変化がみられる。今までと違って上昇した箇所が分かりやすく表示されている。
しかし、スキルの系統が見事にバラバラだ。戦士なら戦術に特化したスキル構成になるが、俺の場合は違う。
使用頻度の低いスキルを保管しておく場所…、まるでスキルの倉庫だ。
スキルに関しては、リリスと共有しているフシがあるので、俺は彼女にとって倉庫的な存在ともいえる。
『私もスキル上がってるじゃない。しかしヤンのやつ、スキルを錬成してCランクまで上げていたのね。大した奴だわ。そのまま引き継げて良かったじゃない』
『宿場の人達のスキルを犠牲にしているから、なんだか複雑な気分だ』
『あんたもリリスちゃんと似たところがあるのね。もっと気楽に考えなさいな』
サタニキアのいうことも一理あるのだが、俺の良心が素直に喜ばせてくれないのだ。
他人を犠牲にするというところが苦手だ。
『そうだわ、レベルアップしたお祝いに魔法をかけてあげよう』
サタニキアが詠唱をすると、俺たちは煙に包まれた。
悪魔がタダでお祝いなんて怪しくないか?何か裏があるような気もするが、既に魔法は発動している。
視界が奪われ、やがて体中が何かに覆われるような、包まれるような感覚に襲われた。
パラケルススが俺たちを試作の体に入れた時に似ている。
やがて視界が戻ると、俺の中からリリスの気配が消え、隣を見るとピンク色の髪をした女性が胸を揉んでいた。
え?これって…
サタニキアのスキル構成も気になるな。
あとでこっそり調べてみるか。




