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2 たんこぶできた!

 あたしが住んでるこの町、土井中町は、超がつくほどド田舎なのでして。

 ろくな名産もなく、観光資源といえば、この美しい星空くらいなものなのです。

 そして今、あたしが立ってる、ここ! このなだらかで小さなお山は、昔はお城が建ってたらしくって。何度も攻められたり、受けたり、やられたりを繰り返して、それはそれは多くのお侍さんが、屍になってしまったそうです……って、歴史の先生が言ってた。

 歴史って言えば、郷土の歴史の授業って、ほんとつまんないよね! 退屈! あんまり退屈だから、隣のかよ子とデブバイブ・ガンシャインの推しメンの話で盛り上がってたら、歴史の先生に「コラ!授業をちゃんと聞け!」って怒られちゃってさー、もーホント最悪~!

 ……って、脱線しすぎたね、ごめんごめん。

 とにかくあたしは、心が読めるエスパー女子と、満天の星空のもと、出逢ってしまったのだったのでした。



 えっ、えっ? 心の声が聞こえるって……どーゆーこと!?

 なにこれなにこれ、これが未知との遭遇ってやつ!?


「未知との遭遇じゃないわよ。……そうね、どちらかというと、コンタクトって感じかしら」


 エスパー女子は、イラマハン……じゃなくて、ツインテールの右束を、右手でふぁさっと持ち上げたあと、パッと手を離して髪束を落として見せて。いかにも「私、才女なの」といった仕草をしてみせるのです。

 ヒッ……やっぱりあたしの思考が読まれてる! これって、なんだか、なんだか、……ギモヂワル~イ……。


「やめてやめて! わかった! あたし喋るから! 心を読まないで~~っ!」


 あたしは初対面のナマイキエスパーになぜか卑屈に謝りながら、心では別のことを考えていたのです。それは……。


「ね、ねえ……エスパーさんって……まさか……幽……」

「違うわよ」


 ぎゃわあああああ!!!

 いつの間に接近されていたのか、急に耳元で囁かれて、小心者のあたしは思わず飛び上がって、草むらに転げ回って、落ちていた石に頭をぶつけてしまったのです。

 痛い! 痛い! 頭がカチ割れんばかりの勢いだったので、こぶがみるみる大きくなっていきます。


「もう……オーバーね。ほら、こっちおいで」


 エスパーさんは地面に膝をついて座り、あたしを手招きすると、自分のふとももにあたしの頭を乗せてくれて、ぶつけた箇所を右手で優しく撫でてくれました。


「いたいの、いたいの、とんでけーっ」


 エスパーさんはその幼い見た目と声に似合わず、まるでおかーさんみたいに、ドジな子供を慰めてくれたのです。

 ああ……なんか……落ち着く……。女の子のふとももって、こんなにやわらかくって、温かかったんだ。同性なのに、なんかドキドキする。

 それに……エスパーさんのふともも……なんだか……いい匂い……。


「あ、あのですね、エスパーさん。このおまじないに、治癒効果は……」

「ないわよ」


 エスパーさんのドヤ顔、ローアングルで初めて見ちゃった……。


「ですよね~」


 やっぱり本物のエスパーにも幽霊にもそうそうお目にはかかれないものでして。

 あたしの腫れ上がったたんこぶは、ますます大きくなる一方なのでした。


「それとね」

「はい?」

「私の名前、エスパーじゃないから」


 どこからか、涼しい風が吹いてきて、膝枕をキメてるあたしとエスパーさんの肌を、ふわりと撫でました。


「……セナ。……私ね、流セナっていうの」


 ながれ……せな……。

 懐かしいような切ないようなその響きは、あたしの胸をトクンと波打たせたあと、どこか遠くへ消えていってしまいました。

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