ひとつになる世界
――世界を、変える。
その言葉が持つ響きに、誰もが惹きつけられる。世界とは、代わり映えのないもの、何の変化もないもの……。イレンディアは、長年そのようであった。
過去人間は世界に溢れるほどいたし、怪物がどれだけいても、人間が負けるほどではなかった。
街を結ぶ道が造られ、街から街へ旅人や商人が自由に移動し、活発な交易があった。
だが人間が意味の無い戦に明け暮れた結果、バランスは破壊され、人間は怪物を抑えきることができなくなった。そうして人間は、怪物から逃げるように暮らすようになった。街に高い城壁を造り、街に閉じこもって暮らすようになった。
そこで人間の活動は頭打ちになった。交易は護衛を雇うことのできる、裕福な者に限定され、格差が助長された。それぞれの街は、閉じ込められた空間のみで、限定的な発展をするに留まった。
――世界は、変えられないもの。
それが、現在におけるイレンディアの常識となって久しい。殆どの民にとって、世界とは街そのものだ。現状を変えられないからこそ、これ以上怪物に変えられないよう、必死になって守っている。
「待ってくれ、仲間を呼んできてもいいか?」
シューブレンは、立ち上がったバラルを引き留めた。
「もちろんだ。スノウブリーズ」
バラルは、敢えてシューブレンをそう呼んだ。
◆◆
「すまん、待たせた」
暫くしてシューブレンは、スノウブリーズの仲間を連れて戻ってきた。
「やあやあ! 何だか凄いことがある? らしいじゃねーか!」
ナザクスが元気に宿へ入ってきた。
「プライドの問題だぁ、じゃなかったのぉ?」
ミアニルスが、妙な組み合わせに驚いている。
「なんだ、説明してなかったのか?」
バラルは、待ち時間に再び火を入れたパイプを吹かしている。
「とにかく急いで連れてきたからな……ちょっと説明させてくれ」
シューブレンは、スノウブリーズが八級冒険者となった後からこれまでの経緯を、掻い摘まんで仲間に聞かせてやった。
「お、お前ら……なんてことをしてくれたんだ!」
ナザクスは椅子から立ち上がった。
「ふ、はは……わあっはははは! 最高だ! おれがそこに居られなかったことは、本当に本当に残念だが、こんなに気分の良い日は久し振りだ!」
興奮した様子でナザクスは、部屋を行ったり来たりしている。
「あたしたち、自由になれるのかなぁ?」
「今いる冒険者管理委員まで追い出せたら、おれたちどころか、グランメリスもロウメリスも自由だ!」
ナザクスは興奮を隠しきれない。
「さて、では本当に行くか」
バラルは再び、パイプの灰を落として立ち上がった。
◆◆
バラルはグランメリスの城壁の外側へとやってきた。一面の白銀と、雲が殆ど無い真っ青な空が広がっている。そしてそこには、もう一人の魔法使いがいた。
「ようやく来ましたか。もうやるべき事は全てやってあります」
もう一人の魔法使い——ヘンラーが言った。
「寒いところ待たせたな、ヘンラー」
「我々のやろうとしていることに比べれば、些細なことです」
「では始めるか」
バラルは、街との距離を見ながら、適当な場所を探して歩いた。
「この辺で良いかな……。マーシャ、ここの雪を全部溶かせ」
バラルは雪面に足で円を描いた。
「地面が見えるまで?」
「そうだ」
「はあい。じゃあみんな離れててね」
マーシャが持つ杖に、強い炎が渦巻いた。
「ああ、魔法を使えるって、いいわあ……」
マーシャは杖の炎を見て、恍惚の表情を浮かべる。
「早くやらんか」
バラルが杖でマーシャの頭を軽く小突いた。
「えへへ。つい嬉しくて……。それっ」
マーシャの炎が狙った場所に到達し、大きな火柱を作った。火柱は、みるみる付近の雪を溶かしていく。あっという間に地面が露出し、地面の石が弾け飛ぶ音が聞こえ始めた。
「やりすぎだ。地面が焦げているぞ」
マーシャの頭に、再びバラルの杖がコツリと当たった。
「はい、おしまい!」
火柱が細くなって消滅し、雪の下に埋まっていた草などが燃え、黒い地面が顕わになった。
「ご苦労。次はわしらの番だ」
バラルは地面に杖で陣を描いて、懐から取り出した青白い粉をサラサラと陣に沿って撒いた。
「その粉なに?」
スネイルが興味深そうに、その作業を覗き込む。
「これは、マナの欠片を粉にした物だ」
「何すんの?」
「まあ見ておれ」
「見ておる!」
バラルは粉を撒き終えると、その中心に記録石を配置する。
「では、始めましょうか」
「さあ、世界が変わる瞬間だ!」
全員が見つめる中、バラルとヘンラーは、杖に魔法を込めた始めた。二人の杖が青白い光に包まれ、二人も青白い光に包まれていく。
「さあ、ここが最終地点だ。世界よ、一つになれ!」
青白い光に包まれた二人は、記録石をお互いの杖でコンコンと叩いてから、その杖を空へ向かって同時に高く掲げた。
陣に撒かれたマナの欠片の粉が、陣に沿って青く輝きを放ち、軽い地鳴りと共に地面からゲートが立ち上がった。それは、バラルが何度か使ったゲートの魔法よりも力強く、そして更にはっきりとした物であった。
「おおぉ……!」
皆が口々に感嘆の声を上げる。
ゲートがしっかりと立ち上がると、岩が崩れたような衝撃音が辺りに広がった。
「これで、イレンディアは一つになった」
バラルがそう言った。
「どういう事なんだ?」
「ゲートに入ってみれば分かる」
ナザクスの質問に、バラルは素っ気なく答えた。
「ゲート?」
「こいつのことだ」
「入るって意味が分からねぇな」
「言葉通りだ」
「ふうむ……」
ナザクスはゲートの周りをグルグル回って、ゲートを観察している。
「ラグリフのことはどうするの?」
ジャシードは気になって聞いた。
「なあに、既に手は打ってある。あとは奴が自滅するのを待つだけだ」
「自滅?」
ジャシードとマーシャは顔を見合わせた。
「そう。自滅だ」
「このゲートって奴は何だかよく分からねえが、あの糞野郎の自滅ってのは、言葉を聞くだけで楽しそうだな」
バラルの言葉を聞いて、ナザクスはゲートを背にし、顎に手を当てて考えている。
「恐らく、お前にとっては自滅の方が楽しいだろうな」
バラルはニヤリとして見せた。
「このゲートって奴は、いつまであるんだ?」
「この先ずっとだ」
「なるほどな。よし、自滅を見とどける事に決めた。どこに行けばいい?」
「街のどこにいても良いぞ」
「それもまた意味がわからねえが、酒でも飲みながらのんびり自滅を味わうか。お前らどうする?」
ナザクスは仲間に問いかけた。
「もちろん、自滅だろう」
「そうね!」
シューブレンとミアニルスに続いて、レリートが頷く。
「よし決まりだ! お前らはどうするんだ?」
ナザクスは、ジャシードに顔を向けた。
「あんな変態の行く末なんか、どうでも良いわ! どうせ自滅するんでしょ」
マーシャは吐き捨てるように言う。
「それに、私は湯浴みをしたいわ。いつまでも叩けば埃が飛ぶような姿でいたくないの」
マーシャは、汚れたローブを摘まみながら言う。
「僕は自滅にも興味あるなあ」
ガンドはぽつりと言った。
「おいらもアネキを襲った奴の自滅を確認してくる! アニキ、アネキをよろしく!」
スネイルは、ガンドを連れて街へと向かっていった。
「バラルさんは?」
「わしとヘンラーは、まだここでやることがあるんでな」
「手伝いは必要?」
「いや、いい。手伝いは呼んであるから、間もなく来るだろう」
「わかった。じゃあ僕たちは、ひと足先に行くよ」
ジャシードとマーシャは、ゲートの方へと足を踏み出した。
「一応言っておくが、お前たちが、わしとヘンラー以外で初めての『ゲート旅行者』だ。こっちのことは気にせず、楽しんでこい」
バラルはそう言って片手を上げた。
「ありがとう、バラルさん」
ジャシードはバラルに片手を上げ返し、ゲートへと向かった。
「せーの、で飛び込むわよ!」
マーシャは興奮した様子だ。
「マーシャが先に行きなよ。初だよ、初」
「もう、そうじゃないの! 一緒に入るの!」
「わかった、わかったから……」
「せーの!」
二人は同時に、ゲートの中へ消えていった。
「き、消えた……」
軽い気持ちで成り行きを見ていたナザクスは、キョロキョロと辺りを見回し、再びゲートに視線を戻した。
「今頃彼らは、ロウメリスだ」
バラルは得意気に言った。
「ロウメリスの先は……どうなっているの?」
ミアニルスも仰天しながら言う。
「ロウメリスには、ネクテイル行きのゲートがある。ネクテイルからは、ドゴール。ドゴールからは、レムリスだ」
「そ、それって……それってもしかして……」
ミアニルスは、バラルとヘンラーの二人を交互に見ている。
「そう。もう街と街は、別々の土地ではありません。今まさに、少なくとも我々の住む世界は、ひとつになったのです」
ヘンラーは真顔で言った。
「何て……何てことだ……」
シューブレンは呟いた。
「おっさんたち、すげーな! かっこいい!」
スネイルは、彼なりに最大限の賛辞を送った。
「凄い。歴史に名を残したね……」
ガンドは、恐れ入ったという様子だ。
「さあ、次はラグリフだ。酒場にでも行くとしようか」
バラルは記録石を片手に持ち、雪原にゲートを作り出した。
「ほれ、酒場行きだ。入れ」
「入れば良いのか?」
「そうだ。踏み込んでみろ」
バラルに言われ、ナザクスは恐る恐る、ゲートに踏み込んだ。ナザクスの周囲の景色が、一瞬にして酒場の周辺に変化する。
「お、おいこれ、便利すぎるだろう……」
「何か文句でもあるか?」
「ないない! あるわけない!」
ナザクスは、続いてきたミアニルスやレリートと同じく、夢から覚めたばかりのように辺りを見回した。
先にゲートを体験したシューブレンは、その様子を少し楽しげに眺めている。
「これ、おれたちも使えるようになるか?」
「いや。暫くはアントベア商会の『旅行業』のために独占される。街から街へは行けるが、そうでない場所に行くには、専門の人間に金を払う必要がある」
「くぅーっ! アントベア商会! 金の亡者め!」
「まあそう言うな。金稼ぎにも、目的があるのだ」
「へっ! て言うかあんたたちも、アントベア商会の息が掛かっていたとは……。色々上手くいかなかったわけだ……はぁ」
ナザクスはチカラが抜けて項垂れた。
「では、私は扉を開けに行きましょうか」
「ああ、後でな。お前も酒ぐらい飲めたらよかったが」
バラルは、ヘンラーの背を見送った。
『ゲホッ! グハッ……!』
突然、街中に咳き込む声が響き渡った。
「お目覚めのようだ。早く席に着こう」
バラルは楽しそうに、懐から緑色のクリスタルを取り出しながら、宿のレストランへと急いだ。
『な、んだ……。これは! クソ! あのガキどもめ! ぐああっ! 痛えっ!』
ラグリフの声が響く度、街中がざわついているのが分かる。何の騒ぎだと外に出てきては、同じように出てきた近隣住民と会話している。
「あんたたち、本当にあのラグリフを?」
宿の主人が酒を運んできた。
「ああ。正確には、ヒートヘイズと言う冒険者がやったんだ。それを助けたのは、ここに居るスノウブリーズだ」
バラルが酒を受け取りながら言う。
「い、いやちょっと、おれたちは……」
ナザクスが慌てているのを、バラルは片手を上げて落ち着かせる。
「ご主人! ラグリフ失脚で悲しむのは誰かな?」
バラルは酒の入ったカップを高く掲げた。
「誰も居ないさ! みんなアイツに搾取されて腹が立ってんだ。いい気味だ!」
宿の主人は、そう言うと、自分のカップを高く掲げた。
『誰かいないか! おい! くそ! どいつもこいつも、役立たずばかりだ! 痛……え……』
『お久しぶりです。ご機嫌いかがですか、ラグリフ様?』
ラグリフの喚く声に続いて、別の声が響いた。
『お、お前は……!』
『随分趣味の悪い部屋にいらっしゃる。ここは、遙か昔に私が捕まって、拷問を受けた場所に似ていますね』
「ヘンラーさん、あっちに行っていたんだ」
ガンドは、運ばれてきた鹿肉ステーキを半分切ってスネイルに渡し、自分も肉にかじり付いた。
「ヘンラーは、ラグリフに因縁深いのだ」
バラルは、鹿の干し肉を口に放り込んだ。
『何故お前が、生きているんだ! エクスに放り込んだのに……生きて再び私の前に現れるとは、貴様化け物か!? はぐっ! ……な、何をする!』
『あなたは自分の思い通りに行かないと、容赦なくエクスに送り込むような、酷い人間だからです』
『ふざけるな! だ、誰がグランメリスの長だと思っている! 街の長は、街の王だ! それを貴様は足蹴にしたのだぞ! この後、どうなるか……がぁぁっ! や、やめろ下衆が! うぼあっ!』
「ヘンラーさん、すごく……怒ってるね」
「エクスと言うのは……」
「島の中心に向かって水が流れる、脱出不能の場所なんだよね」
「何だ、ガンド知っておるのか」
「ナザクスが教えてくれたよ」
「なるほど、さすが地元だな。それでヘンラーは、風の魔法で空を飛ぶことを思いついた。極限の飢えと枯渇していく生命力の中、ヘンラーは湖面と身体の間に風を生み出して、ようやく脱出に成功したのだ。そしてその後、命からがらネクテイルに辿り着き、魔法に磨きをかけた」
「ネクテイルの魔法はすごいもんね」
「うむ。そしてその能力を認められて、エルウィンで魔法研究をすることになった。結果的に飛行魔法は完成を見たし、こうして世界を変えるに至り、仕上げとしてラグリフを失脚させる事を目標にしてきたわけだ。まさに今、奴にとって最高の時間だろうよ」
『げほっ、がはっ……お、お……覚えて、おれ……か、必ず……他の、奴らと……同じ、よう、に……殺し、てやる……』
『すぐに分かりますが、グランメリスにはもう、あなたの居場所など有りはしません。そう、エクス辺りが丁度良いのではないでしょうか。もちろん、それまで生きていれば、ですが』
『な、なんだと……。や、やめ、ろ……』
『おやおや……。他人は平気で殺したり、エクスに流すのに、いざ自分の番となったら命乞いですか。見苦しいですね……。さあ、私の番は終わりました。次の方々がいらっしゃってますよ』
ヘンラーの言葉の後、たくさんの足音と、怒声が聞こえてきた。
『婚約者の仇!』
『家族を返せ!』
『おれの畑を返せ!』
『親友を!』
『財産を!』
『……!』
クリスタルを使った、グランメリス全体への音声伝送は、ここで打ち切られた。
「凄い事になったわね……どうなってたの?」
ミアニルスは、食事に手も付けずに呆然としている。
「ヘンラーは、ラグリフを置いてきた牢屋へのゲートを開いて、奴に恨みがある者たちを呼び寄せたんだ。音声を止めたのは正解だったな。これから、ラグリフは究極の苦しみを味わうことになる」
バラルはパイプの煙をふかし始めた。
「究極、どんな感じ?」
スネイルが肉を頬張りながら言う。
「生かさず、殺さずだ。治癒魔法が世の中にあることを、ラグリフは恨むだろうよ」
バラルは煙と共に、恐ろしい言葉を吐き出した。
「う、わぁ……。想像しちゃったよ……」
ガンドは渋い顔をする。
「もう音声は来ない。我々の勝利と、メリザスの解放、そしてひとつになった世界に乾杯しようではないか」
バラルがカップを高く掲げると、周りの皆もそれぞれの飲み物を高く掲げた。
◆◆
ジャシードとマーシャは、繋がっているゲートを辿って、ひと足先に旅行を楽しんでいた。
レムリスでは、セグムやソルン、フォリスに顔見せをして旅の成功と終わりを伝えた。我が子の元気な顔を見て、セグムたちはひと安心していた。
マーシャはレムリスで、埃まみれのローブを洗濯して魔法で乾かし、湯浴みをして身なりを整えた。マーシャは我が家が最高だと、上機嫌に言っていた。
レムリスからメンダーグロウを経由してエルウィンへ行くと、エルウィンからは対岸の山間の村ウェルドへ、ウェルドからは海の近くの小さな街メルナーへとゲートが繋がっていた。
メルナーからは大陸で最も西にある街アーマナクルへ、アーマナクルからは、最も南にあり砂漠のオアシスでもあるオフィリアへと繋がっている。
それぞれ、ゲートが無かったら何日も旅をしなければ行けなかった場所だ。これからは、街と街との繋がりも強くなって行くことだろう。
ゲートの繋がりはオフィリアで終わり、二人は生まれて初めて、全ての街を訪ねて歩いた。その頃には陽が傾き、夕方に差し掛かろうとしていた。
二人は夕焼けを見ようと、アーマナクルへと戻ってきた。アーマナクルは、西側に海があり、夕焼けが綺麗に見えそうだったからだ。
「ここならよく見えそう!」
マーシャはジャシードの手を引いて、早足で街の西側へとやってきた。海辺に据え付けられているベンチを見つけ、隣り合わせに腰掛ける。
「わあ……。すごいなあ」
目の前には一面の海が広がり、穏やかに立つ水面が夕日を反射し、橙色の道を作り出している。
「綺麗ね……」
海を眺めて、マーシャが呟く。
「こんな所があったなんて。レムリスにいたら、城壁の上でも見られない景色だね」
ジャシードはそれ以上言葉にならず、黙って海のきらめきを眺めていた。
「ねえ、ジャッシュ」
「ん?」
「助けてくれて、ありがとう」
「はは……。当たり前じゃないか」
「嬉しかったの。すごく」
「間に合って良かったよ。ホッとした」
マーシャは、ジャシードの顔を見てニッコリした。
「……ねえ、ジャッシュ」
「ん?」
ジャシードが海を見ながら言うと、マーシャはジャシードの袖を引っ張った。
「ん?」
「好きよ」
マーシャの両手が、ジャシードの頬に触れ、少しずつ首の方へと移動していく。
「ま、待って!」
ジャシードは、マーシャの手を掴んで止めた。
「今回、マーシャが襲われて、よく分かったんだ」
不満そうにしているマーシャの頬に、マーシャの真似をして優しく触れ、マーシャの瞳をまっすぐ見つめる。
「僕も、好きだよ。マーシャ」
頬に当てた手をそっと後ろへ動かし、髪を手で梳くように指を差し込んで、軽く引き寄せていく……。
「ジャッシュ……」
夕焼けが輝くアーマナクルで、二人はそっと、キスをした。
幾多の戦いを乗り越え、世界に根ざす闇がひとつ消えた。
多くの人々が支配から解放され、新たな一歩を踏み出す。
ひとつになった世界は、これからどんな未来を紡ぐのか。
未来は常にその人の行く先に、人々の行く先にあるのだ。
第四章「ひとつになる世界」 完




