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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第参章 悪魔の目論見
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第94話 友人との再会

 ——人里。そこでは奇妙な事件が起こっていた。女子供が次々と安らかな笑顔で眠るという、なんとも奇妙な事件だ。眠っているだけで死んだ訳ではなく、人々は驚いたとのこと。そんな事件が起こる中、一人の青年が人里に訪れる。


 ある二人の特注品、防弾、防刃、対魔法性が高い基本スーツを身に纏い、そのスーツの内ポケットは"スキマ"で自室の武器庫に繋がっていて武器庫の武器をいつでも出せる代物である。


 その下には、ハンドガン——シグザウエルP226とナイフと特殊警棒を装備している。そして、元人間で今は蓬莱人であるその青年の名は、佐山さやまりょう。彼は、この世界に迷い込んだのだった。








 〈佐山亮〉



「おかしい……僕が知っている人里じゃない……」


 辺りを見渡しながら、一人呟く。それに、あまりよろしい空気とは言えない。あちこちから泣き声、悲鳴が聞こえてくる。だが、決して襲われたという訳ではなさそうだった。


 一つの家を覗いてみると、安らかな笑顔で眠る女子供を見て泣き噦る家族が目に入る。一体何が起きているんだ……?


「貴方も異変だと思いますか?」


 隣には見覚えのある少女がいた。彼女は確か、東風谷早苗だったか。僕は直ぐにその場を去ろうとした。だが、彼女とは別の人物に呼び止められた。


「ボクの相手になってくれないかな?」


 後ろを振り向くと、普通の人間とは思えない雰囲気を漂わせた子供がいた。その子の後ろには早苗がいる。


「断る」


「どうしてだい? ボクは暇なんだけど」


「そんな事、僕には知った事じゃない」


 僕はそう言い捨て、そそくさとその場を去る。だが、そうもいかなかった。奴が高速で近付いて、刃物を腹元に刺してくる。だが、無駄だ。


「生憎、僕は蓬莱人なんでね」


 奴の首を握りしめ、侵食しようとする。しかし、奴の姿はスーッと消え、気配を悟って見上げると、その姿は上空にあった。咄嗟の判断でHK416を構え、銃弾を発射する。


「……ここじゃ目立つ。場所を変えよう」


「そうこなくっちゃ」


 僕は奴の後を追いかけ、森に入って行った。






 森に入ると、追っていた奴の姿が消えた。だが、こちらにとっては有難い。奴の死角から狙い撃つことができる。


 偶然持っていた暗殺等の仕事や戦闘の際に使用する黒のボディスーツを着用。胸や腕、膝等に装甲(アーマー)が付いていて、これもあの二人の特注品。


 手首に新型スキマポケットを装備し、環境追従迷彩、いわゆるステルス迷彩を装備。



 ——姿を現せ。



「……ここだ」


 M40A5の引き金を引き、銃弾を発砲する。銃弾は奴に直撃。身柄は確認しなくていいだろう。早くこの場から立ち去ろう——その時だった。


「ぐっ……」


 急にブーメランが飛んできた。奴の味方か、それとも新手か……


 そうこう考えていると、見覚えのある男が目の前に立っていた。


「……アンタ、只者じゃないね」


 明らかに姿が見えている。一体なんなんだ、この子供は……


「そりゃそうだもん。ボク、神だもん」


「……は?」


「だーかーらー、ボクは神なんだよ」


 神様? なんで神がこんな所で遊んでいるんだ。


「いや〜今日は宴会があってね〜、それまで暇なんだよ」


 なっ……⁉︎ この人、僕の心を読んで……!


「そう警戒する事じゃないと思うよ?」


「警戒する事ですよ。まあ、もういいでしょう。僕は帰る手立てを——」


 子供に背中を向け、人里の方に帰ろうとした時、バク宙で飛んで行手を阻んでくる。厄介な神様だな。


 僕は子供を横切って人里に戻ろうと足を早める。だが、やっぱりチョッカイを出される。


「あの、いい加減に——」


「あ、さっきの人!」


 さっきの人と呼ばれ、僕は再び前を振り向く。すると、そこには早苗がいた。よく見ると、買い物籠を持っている。買い物中なのか……そういえば、僕も買い物中だったんだ。


「なんでしょうか。僕は早く戻りたいんですが……」


「今日宴会があるんですが、よろしければ守矢神社に来てください! それでは!」


「は? あのちょっと……」


 彼女は一方的に言って、去ってしまった。全く、見ず知らずの筈なのによく招待状を送れたもんだ。そうこう思いながら後ろを振り返るが、さっきの子供の姿は無かった。


 僕は煙草を吸いながら、人里に戻った。






 再び人里に着くと、先程までの異様な景色とは一転し、外には女子供たちが元気に遊んでいた。元凶はあいつだったのか?


「あれって……おーい、そこの人〜」


 また誰かに呼ばれる。それに聞き覚えのある声。そう、この声は……


「幻真……」


「久し振りだな。元気してたか? てか、なんでここにいるんだよ」


「それは僕が聞きたい。紫さんを呼んでもらえないかな? あの人に聞くのが手っ取り早い」


「私を呼んだかしら〜?」


 噂をすれば影がさす。通りかかったわけじゃないんだろうけど。


「貴方が亮ね。話は色々聞いてるわ」


「またこの展開……」


「それで、原因は?」


「ちょっと次元が歪んだだけよ。戻ろうと思えば戻してあげれるわ」


「じゃあ、今すぐ——」


 帰ろうと言おうとしたその言葉を遮り、幻真が可笑しなことを言い出した。


「亮も宴会に参加しようぜ」


「で、でも藍さんたちに迷惑が……」


「大丈夫よ、あっちに伝えてあるから。それじゃあ、明日また呼んでね〜」


 思いもしなかった。次元が歪んだだけだからすぐ帰れると思ったが、幻真にまさか宴会に誘われるとは……早く帰りたかったのに……


「そうガッカリするなって亮。美味いもんは出してくれると思うからさ」


「そういう問題じゃないんだ……」


 と言っても、他に行く当てもないし……おとなしく宴会に参加するとしようか……


 煙草を吸おうと箱を取り出すが、中身は空。少しイライラしながら、幻真に煙草を持っているか聞こうとしたが、持っていないだろうと思って何も言わなかった。








 〈幻真〉



 まさかこっちに亮が来ているとは思っていなかった。それにしても、なんで仕事用の服を着ているんだ? 確か、あの時もこの服だったよな。


「亮、時間はまだあるからさ、ちょっと人里(ここ)でゆっくりしていかないか? 俺の奢りだ」


「構わないけど……」


 少しイライラしていたのは、煙草が切れたからだろう。ある店に寄る前に煙草屋に寄って、一箱買ってやった。少し機嫌が良くなったかな?


「ここって……」


「甘味処だっけ。俺あんま来たことないからさ。ちょっと食っていこうぜ」


 亮はみたらし団子を、俺は大福を頼んだ。


「亮って、みたらし団子が好きなのか?」


「いや、大とまではいかないが……そう言う幻真はどうなんだ? 大福を食べているようだが……」


「俺も大好物ってわけじゃないぜ。まあ、狼っていう奴の大好物だけどな」


 そんな話から始まって、そこで少し雑談をして行くことにした。


「そういえば亮、さっきなんで仕事用の服を着ていたんだ? この世界まで暗殺しに来たのか?」


「いや、厄介毎にあったんだ」


「……厄介毎?」


 俺はお茶を飲んだ後、問う。


「そこまで深刻な話じゃない。ただ、神様にあって。それに、中々自由気ままな神様だった。それもどうやら、女子供たちが安らかに眠らさせていた元凶だったらしいな」


「それ、桃花っていう奴だ」


 俺がその人物の知り合いである事を話す。そうこう話しながら、太陽のある方角に視線を向ける。時刻は夕方頃。確か宴会が始まるのは、太陽が沈んだ後からだったか。


「少し白玉楼に行ってもいいか? 知ってる人だと思うけど、紹介したい人がいる」


 亮は承知してくれた。






 白玉楼に着き、妖夢を呼ぶ。異変解決後にまだ帰ってなかったからな。なんだか久し振りな気分だ。


「紹介しよう。俺の彼女だ」


「か、彼女……」


 妖夢は顔を赤らめていた。まあ、俺も若干顔を赤くしていたけどな。亮は又もや意外な目で見てくる。なんか謎ばっかだよな。


「そういえば、幽々子さんは?」


「先に守矢神社へ向かいました。こちらの方は?」


「ああ、紹介がまだだったな。別の世界からやって来た、佐山亮だ」


 二人はお互いに頭を下げる。だが、亮はどこと無く寂しそうな様子が見受けられた。


「わかるぞ、亮。俺も他の世界に行ったとき、そんな気持ちを持っていた」


 俺は亮にそう言う。彼は喉の調子を戻して口を開く。


「そろそろ行こう」


「ああ」


 俺は亮と妖夢と一緒に、守矢神社へと向かった。

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