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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第参章 悪魔の目論見
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第92話 恨み

完全にキャラ崩壊。

 〈博麗霊妙〉



 彼等を見つけた時には、既に勝負は終わっていた。幻真は悪者であろう者を葬っており、もう一人の子供は欠伸をしながら退屈そうにしていた。直ぐに彼らに駆け寄ると、こちらに視線を向けた。


「霊妙さん、遅かったですね」


「ここの基地、結構入り組んでたのよ。で、そっちの子と、床に転がっているのは?」


 幻真が紹介しようとすると、幼子が自ら名乗ってきた。名前は山神桃花というらしい。名前通り山神。そして、床に転がっているのが幻真の能力などを持ったクローンらしい。このクローンは天狗の学者か、或いは河童の仕業だという事。とにかく、解決して良かったのだが……


「まだ終わってないんですよ」


「と言うのは?」


「あの妖怪……朝霞悠飛をぶっ飛ばしに行く」


 朝霞悠飛? 知らない名前に、妖怪……私はその人物の詳細を詳しく聞く。どうやら華やかで可愛らしく、アイドルに似ているらしい——その人物、私も見たじゃない。


「その人物の事なんだけど……」


「何か知ってるんですか⁉︎」


「いえ、そうじゃないんだけど……その人物の他に、後二人いなかった?」


 私の質問に、彼は首を傾げる。彼は朝霞って人が発言していた内容を思い出しているようだけど、そういった情報や姿は見聞きしなかったとのこと。私の質問から予想して、見た事があるとわかったらしいわね。


「お二人さん、ちょいといいかな。こっちに三人程の気が近付いて来ているよ」


 桃花が欠伸をした後に流したであろう涙を拭いながらそう伝える。耳をよく済ますと、足音が響く音がする。一体誰だろうか。一番可能性が高いのは、あの三人組……


「ねぇねぇ千代〜。なんでこんなに荒れているの?」


「わからぬ。悠飛の過ちで天狗達に連れていかれた男だけの仕業ではなさそうだが——って、あ……」


 あの時見た三人組に間違いない。確か悠飛、千代、刹那だったか……


「あ、この人この人! この男の人だよ!」


「お前は悠飛——」


「忝い! 悠飛が大それた過ちを犯して……!」


「え……あー、えっと……取り敢えず、顔を上げてくれ。俺は幻真。名前、教えてくれないか?」


 順番に朝霞悠飛、安倍あべの千代春ちよはる夕霧ゆうぎり刹那せつなと名乗った。どうやら、千代というのはあだ名だったらしい。


 彼女たちは昔からこの山に住んでいて、三人共仲がいいらしい。それに戦闘力も高く、千代春は玉藻前と呼ばれた大妖怪でもあるらしい。


「ふあ〜……龍使い、ボクはまた神隠しをしてくるよ。それじゃあ、元気で」


 桃花の姿がスーッと消える。不思議な人物だった。悠飛たちもそろそろ山の中に戻るらしい。私たちは手を振って別れた。


 残ったのは、幻真と私とクローンの跡。


「俺は後から霊夢たちを追います。霊妙さんは阿求さんの所にでも。急に来られたのでしょう?」


「……悪いわね、気を使わせちゃって」


 ニッと幻真が笑うと、基地を後に山中へと走っていった。私も阿求とお話ししに行こうかしら…






「クソッ……あの龍使いぃぃ! 次会った時は必ず殺し……俺がホンモノになってやる!」








 〈博麗霊夢〉



 魔理沙と山奥に進むこと数分。又しても立ち塞がる者が現れる。その者は白髪に短髪に、山伏風の頭襟を頭に乗せていて、手には剣と紅葉が描かれた盾を持っていた。


 上半身は白色の明るい服装、下半身は裾に赤白の飾りのついた黒い袴を履いている。また、足元は裸足だった。


 白狼天狗……山を巡回していたのかしら。


「あやや、侵入者と聞かれて捜索していたら、まさか貴方たちだったとは……それに、椛までいるじゃないですか」


 上空から聞き覚えのある声がする。そう、射命丸文……ブン屋の厄介な烏天狗だ。それに、椛と呼ばれる白狼天狗は文のことを睨みつけている。仲が悪いのかしら。


 魔理沙にどうするか聞こうと後ろを見ると、箒をクルクル回して立ち塞がった二人へと向けた。


「霊夢、どっちと戦うんだ?」


「もちろん文屋よ。あんたは白狼天狗をお願い」


「承知したぜ!」


 私は空中に行き、魔理沙は椛と呼ばれた白狼天狗と間合いを取る。文は片手にカメラと紅葉を別々で持っていた。その気なら、全力でいかせてもらうわよ。


「霊符『夢想封印・散』」


 全方位に赤色のお札弾とバラマキ白中弾、そして文を狙う灰色お札弾を放つ。時間が経つに連れて弾幕はどんどん濃くなっていく。


「『幻想風靡』」


 文は超高速で上空高く飛び交いつつ、大量の米弾を降らせてくる。お互い交わしたり、お札弾と弾幕がぶつかって破裂したりして美しい様子を描く。再びスペルカードを構えるが、先に越されてしまった。


「風神『風神木の葉隠れ』」


 自身を覆い隠すほどの緑色の木の葉のような米粒弾を全方位に発射してくる。私は苦戦するもなんとか避けるが、いくつか被弾する。文は不吉な笑顔を見せた。私は顔を顰める。


「そんな顔なさらないで、もっと楽しみましょうよ」


「変ね、いつものあんたじゃない気がするわ。霊符『夢想妙珠』」


 十二個の陰陽玉を交差しながら展開し、文にホーミングする。彼女は早いため、ホーミングでもすんなりと躱され、上手いこと陰陽玉をぶつけさせる。ムシャクシャするわね……


「霊夢さん、怒りがダダ漏れですよ?」


「煩いわね! 夢符『封魔陣』!」


 全方位に赤色のお札弾が途中で分かれる完全パターンのワイヤーと、私が小弾を撃ってワンクッション置いて鱗弾に変化させる。文が避けるのに少々手こずっているところを、もう一度お札弾を放つ。


「しまっ——」


 お札弾は直撃。文はひょろひょろと落下していく。魔理沙の方は大丈夫かしら?








 〈霧雨魔理沙〉



 この白狼天狗、速すぎる……それに、あっちは近距離戦法だ。私と相性が悪すぎる。


「こうなったらスペルを——」


「もらった!」


 宣言しようとする最中に、白狼天狗が腹部を狙って斬り掛かってくる。避けられないと諦めて私は目を瞑ったが、ギリッと刃が交わる音が聞こえた。


 ビクビクしながら目を開けると、目の前には見慣れた男が白狼天狗の攻撃を受けていた。


「……幻真!」


「わりぃ、色々あって逸れちまった。この白狼天狗の相手は任せろ。刀剣を使う相手とは手合わせ願いたくてな」


 私は半泣きで大きく頷き、霊夢の様子を見に行った。


「相手してやんよ。白狼天狗さん」








 〈幻真〉



 実は、さっきの基地で奇妙な資料を目にした。クローンの速さの正体は、白狼天狗の"犬走椛"と言う者の速さを加えたの事。だが、椛が連れ込まれた時の記憶は無くされ、更に洗脳もかけたの事。そして、強化薬も飲まされ、天魔を暗殺すると言う策も練られていたらしい。そして、俺は今その椛を見つけた。


 俺は縮地で椛の背後に回り、真神剣を突き付ける。すると、彼女は急に笑い出した。何がおかしい、と聞いたが、その理由はすぐにわかった。


 腹元が熱い。急に身体が震えだす。震えながら腹元を見ると、そこは真っ赤に染まっていた。そして、彼女の持っていた剣が突き刺さってるのを目の当たりにした。


 剣を抜かれると同時に、身体が地面に叩きつけられる。意識が遠退き、瞼が閉じようとする。


「貴方も処理しろと言われましてね」


 逃げた天狗か……クソッ、完全に油断した。こんな過ちを犯すなんて……これで死ぬなんて——




 ——くそダセェ。


「想符『アクセルモード4』」


 その場に突風が起こる。俺は赤と金が混じったオーラを纏い、更には髪の毛がオーラと同色の赤毛に癖がある部分が金色となった。


 腹の傷はみるみると塞がり、落とした真神剣を拾って手に取る。そして、真神剣にもアクセルモードと同じ色のオーラを纏わせる。


 超技術の一つ神風により、椛の真横を縮地による応用で通過し、風による斬撃を与える。真神剣を鞘に仕舞うと、彼女の体から血が噴射する。俺は唸る彼女に足を歩める。


「手荒な真似をしてすまないな。目を覚ましたら傷は治る。それじゃあ、俺は行かせてもらうよ」


 背中を見せて、その場を去ろうとする。だが、椛が言葉を発していることに気付いて言葉を聞いた。


「貴方の……名前、は……」


「……幻真だ」


 決めポーズをしながら名乗る。椛はフッと笑って、目を閉じた。


「絶対に許さないぞ、裏組織……」

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