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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第参章 悪魔の目論見
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第91話 エンジニアとクローン

 〈博麗霊妙〉



 私は今、先程来た天狗の後を追跡中。だが、何やら向かう先から爆発音が聞こえてくる。この天狗は最初、何事かと首を傾げていたが、ある程度近付いた所でただ事では無いと悟った様子で走って行ってしまった。


「こんな所に入り口が……」


 天狗たちのアジト。恐らく、裏組織といったところかしら。爆発音も酷くなっているし、用心して行かないと……


 入って最初に目撃したのは、血を一滴も流していない死体(・・)。興味深く観察してたけど、時間はあまり無いので先を急ぐ。それにしても、奇妙ね。こんな安らかな笑顔で死んでいるなんて。


「や、やめてく——」


 誰かの声が聞こえたかと思うと、ドサっと倒れる音と共に言葉が途切れた。急いでその現場に行くと、案の定先程から見ている死体と同じ死体があった。でも、この辺からは血を流している死体もある。二通りの殺し方……二人いるのかしら。いるとしたら、幻真と——




 ——殺気!


「ぐふっ……」


「天狗ね。私の隙を狙ったみたいだけど、甘いわ」


 考えていても仕方ないわ。早く幻真を探さないと。それに、あの三人組の正体も突き止めないといけないし。








 〈博麗霊夢〉



「ここは……滝?」


 気付けば、開けた場所に出ていた。目の前には滝があり、恐らくここは山の中腹辺り。目的地まで後半分といった所かしら。それに、敢えて気付かないフリしてたけど、河童がビクビクしながら私を見てるのよね。


「わ、私は河城かわしろにとり……こ、ここから先には行かせない!」


「何ビクビクしながら言ってんのよ。説得力が無いわ」


 私は呆れながら言うが、にとりと名乗る河童は真剣な目付きだった。


 因みに、彼女はウェーブのかかった外ハネが特徴的な青髪で、赤い珠がいくつも付いた数珠のようなアクセサリーを付けていて、髪型はツーサイドアップだった。瞳の色は青色である。


 白いブラウスに、肩の部分にポケットが付いている水色の上着を着ており、裾に大量のポケットが付いた濃い青色のスカートを着用している。


 靴は長靴のようなものを履いていて、胸元には紐で固定された鍵がついていた。背中には、大きいリュックを背負っていた。


「そのリュックの中には何があるのかしら?」


「お前には関係ないよ! 光学『オプティカルカモフラージュ』!」


 何かしらの技術を使って透明になった彼女は、ライン状と交差の二つの形をした座薬弾を発射してくる。私は弾幕を躱しつつ、スペルカードを宣言する。


「境界『二重弾幕結界』!」


 二重の結界を展開し、白丸弾をばら撒く。それが彼女の着用していた物に被弾し、姿が見えるようになる。彼女は違和感を感じて私の顔と自分の体を交互に見比べる。


「あれ? もしかして見えてる? ——ああ! 弾幕が被弾しちゃってる!」


 予想以上のショックを受けているわね。早くケリをつけましょうか。


「これで終いに——」


「洪水『ウーズフラッディング』!」


「ちょっと! しぶといわね!」


 彼女は左右を横切るように光弾を展開しつつ、丸弾を放射状に発射してくる。咄嗟に結界を展開して、その攻撃を防ぐ。中々しぶとい相手じゃないの。


「河童『お化けキューカンバー』!」


 彼女は座薬弾を波紋状に発射しつつ、全方位に緑色のレーザーを飛ばして来る。私は霊符『夢想妙珠』で十二個の円状の陰陽玉を交差しながら展開して、彼女にホーミングして爆発させるのと、座薬弾にぶつけて爆発させる。


「これで終わらせてやる! 河童『スピン・ザ・セファリックプレート』!」


 にとりを中心に、円形に大量の弾幕をばら撒くと同時に、私に目掛けてばら撒き弾を放って来る。あっちがその気なら、私も決めさせてもらうわ。


「神霊『夢想封印・瞬』!」






「——おっ、霊夢。あれ? 今終わったのか?」


「そうよ。この河童、中々しぶとくてね。困っちゃうわ〜」


「でもよ、妖怪たちの親切心は感じられるだろ?」


 魔理沙の言葉に、私はゆっくりと頷く。妖怪たちの伝えたい思いが明確ではない為、半信半疑であった。


「早く行こうぜ〜」


「言われなくてもわかってるわよ」


 私たちは更に山奥へと足を歩ませるのだった。








 〈幻真〉



 全く……ここのアジトの天狗たち、どんだけいるんだ? 倒しても倒しても湧いて来やがる。桃花なんていくら暇潰しだろうと、長時間はキツいんじゃないか?


「ボクを嘗めないで欲しいな」


「わ、わりぃ……」


 ちょっと甘く見過ぎたか。桃花だって神様だし、体力なんて関係ないか……ん? どこからか強い気を感じるな。なんて言うか、俺と同じ気……?


「桃花……」


「うん、君の気だね」


 桃花も気付いていたか。どうやら俺以外のモノから俺の気を感じるようだ。角を上手く利用しつつ、慎重に行動する。その正体を調べるために。


 気を感じた部屋に侵入すると同時に、真神剣を構える。構えながら周囲を見渡すが、これといったものは見当たらない。いや、まだ姿を現していないだけだった。




 ——俺の幻力を使って。


「君の力を使われているね」


「ああ。恐らく、コイツを作った天狗共は逃げただろう。さっさとぶっ壊してやるか」


 実際見えないが、感じるのは機械のような金属品。簡単に言えば、ロボット版の俺のクローン。自分の力を利用されるのは気に食わないな。


「取り敢えず、これで如何かな?」


 桃花が指を鳴らすと同時に、クローンの姿が現れる。俺はへぇと、声を漏らした。


「能力封じ、ってね」


「能力か?」


「実力だよ」


 この神様、只者では無いな。さっきも心を読んできたしな。


 そんなこんな考えていると、クローンがロボットの龍を出現させる。よく見ると、額には赤い炎を灯していた。これは炎龍だろうか。すると、同時に火を吹いてくる。ロボットと言えど、嘗めていたら殺られる。


 ふと思ったが、"龍を操る程度の能力"は封じれなかったのか? さっき能力封じをしたと言っていたが……


「暇潰しのために龍の能力は封じなかったんだよ」


 また暇潰しか。


 桃花はロボットの龍を掌を向けただけで破壊し、指を使って銃の形を作ってクローンに向ける。


「終わりだ」


 ボンッと破裂したような音が聞こえた。そのロボットは床で電気を発しながら倒れている。終わったと、一件落着した気分の俺だったが嫌な音が聞こえた。機械が動く、ウイーンという音だ。


 みるみると破壊されたクローンは合成し、眩い光を発する。気が付けば、目の前には俺と同じ姿に化した先程のクローンが立っていた。


「フ、フフフ……フハハハハ!」


 クローンの笑い声が響き渡る。すると、奴は一瞬にして俺の目の前に移動し、刀を振ってきた。


 超技術の縮地か……いや、それにしては遅かった。他の何かの能力も加わっているのか? 妖怪の山で速い天狗は——


「どうするんだい、龍使い」


「……とにかく倒す。それだけだ」


 なぜか待っていてくれたクローンに対して、火を纏った真神剣を振る。奴は空中に飛んで避け、手に持った刀を縦振りで切ってくる。それを素早く避け、反撃を狙う。しかし、隙などなかったため距離を開けた。


 続いて、超技術による縮地でクローンとの距離を一気に詰め、スペルカードの焔雷『墳雷砲(ボルケーノサンダー)』を放つ。雷を纏った炎のレーザーの中に、奴は飲み込まれた。


 撃ち終わると、奴は変わらぬ様子でそこにいた。どうやら、奴は結界を張っていたらしい。クローンはニヤリと笑うと、素早く移動してきて俺の首を掴み、強く握りしめてきた。


「ぐ、あ……」


 掴まれながら上に挙げられ、息が苦しくなる。苦しみながらも、脱出するためにアクセルモードを発動する。クローンは発動した勢いに飛ばされる。


 俺は水色のオーラを纏い、クローンを睨みつける。相変わらず奴はニヤニヤと笑ったまま。腹が立ち、縮地で距離を一気に詰めて首を切り落とそうとした。しかし、刃を指で止められ、そのまま力を入れられて刃にヒビが入る。俺は焦って距離を開け、刃を見つめる。


「くそっ……短刀を使うか」


 真神剣を鞘に仕舞い、腰に備えていた短刀を抜く。役五十センチ程で、真神剣より短いが、戦えないことはない。


 短刀に火を灯し、再び縮地でクローンとの距離を詰める。先程と同じように斬りかかるが、尽く受け止められる。この片方が空いた隙を狙って、奴の横腹に拳を入れる。唸るような声が奴から聞こえた。クローンでもダメージは与えれる。


 俺は一度距離を取り、短刀を構え直してクローンに斬りかかる。先程のダメージが効いたのか、避けようとはせず攻撃をモロに食らった。


 奴が怯んでいる間に、スペルカードを唱えた。


「終わりだ。終符『終末之光線(ファイナルレイ)』」

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