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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第参章 悪魔の目論見
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第89話 秋姉妹と三人の少女

今回は、とある先生の三人のキャラが登場します。口調が心配ですが…

 一夜が明けた。


 俺は妖夢と幽々子さんに挨拶をしてから白玉楼を出る。冥界を出てからの道中、魔理沙と合流して共に博麗神社へ到着した。


「おはよう、霊夢。よく眠れたか?」


「おはよう。なかなか早いじゃないの。まあ、眠れたわよ」


「霊夢が早起きだなんて珍しいな。笑っちまうぜ」


 魔理沙の言葉にムッと顔を顰める霊夢。皆準備は出来ているということで、早速妖怪の山を目指して飛び立った。






「——それにしてもよ〜霊夢」


「何かしら?」


「あの巫女、確か早苗だっけ? あの上に、まだ何かいると思うんだよなー」


 魔理沙は自分の意見を述べる。上というのは、彼女に付く何者かの事であろう。実は俺もそんな気がしていた。霊夢みたいに巫女一人で背負っているわけではない。神主とかがいるのだろうか。そうなると、戦う時に厄介だな。


 そんなこんな話をしていると、妖怪の山が見えてくる。そして、ある程度近付いたところで麓に降りた。空を飛んでいくと、見張りに見つかって何をされるかわからないからな。


 俺は何度か妖怪の山(ここ)に来た事はあるが、天狗たちには見つかったことがない。寧ろ、狼や文以外の天狗を見た事がない。恐らく、見つかれば戦闘。力量もわからぬ相手にどう戦うかだが……


「あら珍しい。人間が自ら来るなんて」


 突如、目の前に二人の少女が現れる。




 口を開いた一人は前の方向にカールしたボブの金髪で、瞳は赤色である。


 帽子は赤色の鍔が広い帽子で、前面には立体的な蔓付きのブドウの飾りをしている。だぼっとしていて、肩と袖のふくらんだ黄色い上着を着ており、上から付けているように見えるオレンジ色のエプロンには、稲穂や五穀のような植物の意匠が黄色で施されていた。


 裾は少し横の方まで続くフリルで、肩と腰のヒモは黒色である。また、黒色ロングスカートを履いていて、裾には白い鉤模様があり、首には黒く細いチョーカーを付けていた。




 もう一人の人物の髪は、ウェーブのかかったボブの金髪に、瞳は金色である。


 さっきの人物とは対照的に、細いシルエットをした赤い上着にボタンと、白い胸ポケットの部分がある。上着はスカートの赤色より少し暗く、茜色や臙脂色といったところか。裾に向かって赤色から黄色へと移り変わるグラデーションの生地をしている。そして、その裾は楓の葉を思わせるような形の切り欠きになっていた。


 また、頭には彼女のトレードマークであろう三枚セットの楓の髪飾りを付けていた。


 そして二人共、靴や靴下を履いていなかった。


「悪いんだけど、私たち急いでるの」


「侵入者って事ね。ならば問答無用! 秋符『オータムスカイ』!」


 話しかけて来た少女が、赤色と青色の米弾で構成された、ばらけた交差弾を円形状に放つ。 俺たちはその弾幕を華麗に避け、木の陰に隠れる。霊夢だけは隠れなかったけど、戦うのかな?


 すると、先程隣にいたもう一人の少女が寄ってくる。だが、小さい声で囁く程度に自分の名前と、戦っている星の名前を言った。


 この人はあき静葉しずは八百万やおよろずの神々に当たる一柱のうちの一人、紅葉の神らしい。そして、もう一人の名前が秋穣子(みのりこ)。彼女もまた、八百万の神々に当たる豊穣の神らしい。


「魔理沙、この山には神様が沢山いると思うか?」


「さあ、どうだろうな。もしかしたら、早苗の上に神様がいるかもしれないな」


 霊夢と穣子の弾幕ごっこを見ながら考える。と言っても、実際のところ上に行くまでなんとも言えないが——




 俺はふと、振り返る。


 今、背後の草叢で音が聞こえたような気がする。誰かいるのか? 横では静葉が呆れたように観戦している。魔理沙もまた、腕を組んで観戦。俺はコッソリとその場を離れた。






 暫く草叢を掻き分けながら進むと、開けた場所に出た。よく見ると、そこには一人の少女が立っていた。俺に気付いた彼女は、こちらに体を向ける。ぱっと見アイドルのような見た目であり、華やかで可愛い。年齢は見た目だけなら十八歳くらいだろうか。


「お前は誰だ?」


「私? 私は朝霞あさか悠飛ゆうひだよ!」


 無邪気に自己紹介する、悠飛と名乗る少女。なんだコイツは……考えが読めない。それに、妖力を多量に感じる。まさか妖怪か?


「俺は幻真だ。お前……妖怪か?」


「ピンポーン! 正解だよ! よく見抜けたね。ちょっと急な話で悪いんだけど、私と一戦やらないかな?」


 一戦するだと……? 更に何を考えているか、わからなくなってきた。このまま戦っても大丈夫なのか? 警戒はするものの、彼女が何か仕組んでいたりする訳でも無さそうだが。


「どうしたの?」


「……なんでもない。遠慮はいらない。全力で——」


 気付いた時には、彼女の持っていた剣が俺の喉元寸前にあった。これは——




 ——油断したら死ぬ。


「私の能力は"速度を操る程度の能力"と"集中力を高める程度の能力"だよ。あと一つあるけど、全部言うと面白くないから言わなーい」


 彼女は自分の能力について説明をする。どうやら三つあるみたいだが……


「あ、この剣は天現渡剣あまのうつつわたりのつるぎ)って言って、折れず、刃こぼれせず、劣化しないという特殊効果を持つよ。あらゆる物を切断することができるという概念を付与されているから〜、首なんてスッパリ!」


 何気に怖い発言をしていて焦る。彼女は俺の首元から剣を下ろし、距離を遠ざけて剣先を俺に向けてくる。俺も雷刀ゼニシアを抜き、彼女と対峙する。


「雷かぁ」


「苦手か?」


「別に。『空飛翔・風薙』!」


 彼女の持つ剣に、風の刃が付与される。それが振られると、広範囲への残滅技が起こった。やけに高火力だ。


 だが、やられっ放しも気分が悪い。俺も超技術の一つ、縮地によって距離を詰めて『連切』を行う。だが、彼女は分かっていたかのように攻撃を避け、木の枝の上に飛び乗る。


「その攻撃は麻痺させる為に使ったんだよね? 違う?」


「……なぜわかった?」


「簡単な事だよ。私の三つ目の能力、"全てを見通す程度の能力"のおかげ。それに、集中力を高めて反射神経も上げてるから、そんな攻撃効かないんだよね〜」


 クッ……今までまともにやり合った中で、一番の強敵かもしれない。こうなったら、身体強化だ。


「想符『アクセルモード』!」


 俺は水色のオーラを纏い、速さなどの身体能力を上げる。彼女も感心して俺の様子を見ていた。遊びは終わりだぜ!


「と言っても、どうせお前は俺の技とか全部分見抜いてるんだろ?」


「そうだよ〜。まっ、やるだけやってみてね!『天飛翔・星之勾玉』!」


 彼女は妖力の塊である勾玉を大量に作り出す。それが木に触れると、勢いよく爆発した。その爆発力は一発一発が巨木をなぎ倒すほどであり、更に大量に襲いかかって来ている。しかも彼女の能力の影響で、無駄に速い。


 なぜか彼女はニヤリと笑った。俺は不審に思いながらも勾玉弾を弾くが、直ぐにその訳が分かった。


 彼女の勾玉弾が止まると、周りには警備であろう大量の白狼天狗たちが武器を構えて俺を取り囲んでいた。そう、あれは仲間を呼ぶ為の策であったのだろう。まんまと嵌められた。考えてみればそうだ。こんなに大きな爆発音が起こったら、直ぐに誰かが気付くに違いない。


 霊夢たちは大丈夫だろうか……そうか! これを利用して俺が囮になればいいんだ。なんて賢い案だろう。


 俺は両手を後ろに回され、手錠をかけられる。リーダーであろう天狗を先頭に、どこかへと連れていかれる。振り返ると、いつの間にか悠飛の姿は無くなっていた。霊夢たちに危害を与えなければいいが……








 〈博麗霊妙〉



 突然、妙な胸騒ぎがした為、今は霊夢たちがいるであろう妖怪の山へと急いでいる。私の娘に何もないといいんだけれど……


「霊夢の霊気……ここで交戦したのね」


 まだそう上には登ってないはず。でも、幻真の気が別のところから感じ取れる。その気を追うべく、草叢の中を掻き分ける。


 すると、開けた場所に出た。そして、何かの影響によって倒れた木が目に映った。ここで幻真は交戦したのかしら?


「気配がするわね……」


 私は咄嗟の判断で木の後ろに身を隠す。すると、一人の若い少女と、着物を着た美少女がやって来る。注意深く耳を澄ますと、話の内容が聞こえてきた。


「どうだった? 千代」


「うむ。裏でこの山の天狗たちに強力しているが、博麗の巫女と白黒の魔法使いには危害を加えなくていいであろう」


「そうだね〜。私は幻真って男を通報しといたよ。なんか、わけ分かんなかったし〜」


 笑い声が響く。すると、もう一人少女がやって来た。


 黒髪をショートボブまで伸ばした美少女で、服装は迷彩柄。その背中にはスナイパーライフル、腰には短剣と二丁の拳銃があった。


「千代、巡回してきたよ!」


 彼女もまた明るい性格なのか、無邪気さが目立つ。千代と呼ばれる少女は話を聞いて頷いた。すると、奥の方から一人の白狼天狗が歩いてくる。咄嗟に三人は三方向に散らばり、何事もなかったかのようにしてその場は空気となった。


 取り敢えず、霊夢たちには危害を加えないらしいけど、幻真は無事かしら? 通報したって言ってたし、恐らく天狗たちの基地にいるのかしら。とにかく、探しに行くわよ。

久々に長く書いた気分です。

霊妙の久し振りの活躍。もしかしたら初めてかもしれませんね。

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