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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第参章 悪魔の目論見
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第88話 営業停止命令

風神録、始動。

 博麗神社——それは、幻想郷の東の境界にある寂れた神社である。


 里居を忘れた妖怪がここを寝床にしているかの様に、いつも人間以外の生き物で賑やかであった。


 妖怪の多い神社に人間の参拝客などいる筈もなく、神社におわす神様は信仰心不足に悩んでいた。


 そんな神社にも、転機が訪れたのである。








 〈幻真〉



 オッス。この視点は久々だな。まあ、あまりメタいことを言うのはやめて……


 俺は今、博麗神社に来ている。別に妖夢と来ているわけでもなく、ちょっくらお出かけ程度でやって来た。そして、縁側で霊夢と魔理沙の二人と一緒にお茶をしている。霊妙さんは買い物に出かける序でに、阿求さんの所へ行っているらしい。


 すると、表から声が聞こえて来た。聞きなれない女性の声だ。霊夢が少しイライラしながら見に行く。俺も後ろからついて行って、その女性を見た。


 その女性は胸の位置ほどまである緑のロングヘアーで、髪の左側を一房髪留めで纏め、前に垂らしている。瞳の色は黄色だった。


 衣装は白地に青の縁取りがされた上着と、水玉や御幣のような模様の書かれた青いスカート。霊夢とは違う巫女装束を着ているが、もっとも特徴的な腋の部分は同じだった。


 頭に付けた蛙と白蛇の髪飾りは、彼女の特徴ともいえる程のアクセサリーであった。


 俺が盗み見ていると、魔理沙もひょこっと顔を覗かせた。


「見かけない顔ね。それに人間。もしかして、参拝かしら?」


「いえ、すみませんが参拝では無いんです。勿体ぶるのも迷惑なので、早速言わせていただきますね」


 彼女は少々間を置いてから、霊夢に告げた。


「——この神社の"営業停止命令"を出しに来ました」


 霊夢は背中を向けているので表情を伺えなかったが、怒った感情が伝わって来る。


「営業停止命令って、なんだ?」


「静かに」


 魔理沙は俺に聞いてくるが、盗み見ていることがバレないためにも注意する。


「へぇ、営業停止命令ねぇ……なんの目的か知らないけど、固くお断りよ。帰って」


「こ、困ります!」


「困るのはどっちかしらねぇ?」


 霊夢、怖いな。あの緑髪の女の子、涙目だし。魔理沙もビクビクしながら話を聞いてるし。


「まあ、名前だけでも聞いておこうかしら? どうせ私の名前は知ってるんだろうし」


「あ……申し遅れました! 私は東風谷こちや早苗さなえです。妖怪の山にある"守矢神社"の者です」


 守矢神社……? 聞いたことない神社だな。それに、妖怪の山にあるだって……?


「とにかく命令に従ってください!」


「しつこいわね! 帰らないのなら力付くで追い返すわよ! 霊符『夢想封印』!」


 霊夢の先制攻撃。スペルカードを使って攻撃を開始。対する早苗もスペルカードを取り出し、宣言する。


「秘符『グレイソーマタージ』!」


 早苗を中心に星型の弾幕が一面に拡散する。久し振りに弾幕ごっこを見たが、美しいものだ。魔理沙も霊夢を応援して、その気になっていやがる。


「へえ、やるじゃないの。次はこれよ。霊符『夢想妙珠』!」


 霊夢は十二個の円状のモノを交差させながら展開する。更には、ホーミング機能付きだ。


「これならどうでしょう。奇跡『白昼の客星』!」


 早苗は全方位に花のような配置で交差弾を発射しつつ、自身の左右に灯る光源から星明かりを思わせるレーザーを発射する。


 早苗の弾幕が霊夢の弾幕を撃ち落とす。霊夢はムッと顔を顰めると、別のスペルカードを構えて宣言した。


「神霊『八方鬼縛陣』」


 高速度で完全パターンの赤いお札弾、黄色いお札弾を放ち、更には小弾で撃った後、ワンクッション置いて赤鱗弾に変化する全方位バラマキを行う。


「そう来ましたか……開海『海が割れる日』」


 早苗の左右に海をイメージしたレーザーが発生し、波を描く様に凹凸する。更に、早苗周辺を弾源とする槍のような形をした霊夢を狙った弾が発射される。



 ——これで決まるか?



 そう心の声で思うと、大きな爆発がその場で起こった。爆風が一面に吹き荒れ、爆煙によって視界が奪われた。


 暫くして爆風が止むと、あう〜と言いながら地面に倒れている早苗が居た。霊夢は呆気ないと、溜息を吐いた。


「つ、次は負けないですから! それと、守矢神社でお話をしましょう。お待ちしておりますので、よろしくお願いします!」


 早苗は逃げるかのように帰って行った。そのタイミングを見計らって、霊夢に駆け寄る。魔理沙はテンション高めに感心していた。霊夢はその様子に又もや呆れていた。


 俺は話を切り出した。


「それで霊夢、妖怪の山に行くのか?」


「その事なんだけど、お母さんに話してから行くことにするわ。取り敢えず行って、早苗と話すって感じかしら」


 俺たちはお茶を飲みながら、霊妙さんの帰りを待った。






 数時間経っても霊妙さんは帰ってこない。もう日も暮れ始めている。魔理沙は帰り、俺と霊夢だけになったが、自分もそろそろ帰らなければならない。


「お母さん、泊まるのかも」


「多分そうだな。俺が帰りに話しておくから、明日にでも行こう」


「わかったわ。ありがとう」


 霊夢に手を振って、博麗神社を後にした。向かう先は、人里にある阿求さんの屋敷。久々だな、こうやって行くのも。






 人里は夕暮れ時であるせいか、人影が少ない。そんな中、俺は阿求さんの屋敷へと足を急かす。その道中で、慧音と遭遇する。彼女もまた、阿求さんに会いに行くようだった。


「ごめんください」


「はーい、ただいま〜。あ、慧音。それに幻真さん! お久しぶりですね。お元気でしたか?」


「ああ。でも、今日は霊妙さんに用があって…申し訳ないんだが……」


「大丈夫ですよ。すぐにお呼びします」


 阿求さんが慧音と奥に行くと、変わって霊妙さんが出て来た。


「お客さんって貴方の事だったのね。それで、どうしたの?」


 単刀直入に、昼にあった出来事を話す。そして明日、妖怪の山にその者たちに会いに行くと伝えた。


 霊妙さんは迷う事なく許可してくれた。確か霊夢もあの時、お母さんなら絶対にいいって言ってくれるだろうけどって言ってたな。親子の絆って奴か。


「それじゃあ、俺も帰ります。妖夢たちが心配しているかもしれないので」


「ええ、気を付けて」


 俺は阿求さんの屋敷を後にした。人里を抜けるまで少し歩き、冥界に向けて飛んで行く。それにしても、なんだか嫌な予感がする。予感だけで済んでくれればいいのだが……

次回はいよいよ妖怪の山へ突入。

幻真、霊夢、魔理沙の三人なので結構話は進みやすいかなと。

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