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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第壱章 龍使い
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第9話 空を染めた紅い霧

紅霧異変、始動。

 幻想郷は、予想以上に騒がしい日々を送っていた。謎の来訪者に、夏の亡霊も戸惑ってるかのように見えた。そんなすべてが普通な夏。 辺境は紅色の幻想に包まれた。


 少女たちと青年は、情報を頼りに湖へと向かった。


 湖は一面妖霧に包まれていた。 普通の人間は三十分はもつ程度の妖気だったが、普通じゃない人も、やはり三十分程度はもつようだった。


 妖霧の中心地は、昼は常にぼんやり明るく、夜は月明かりでぼんやり明るかった。 霧の中から見る満月は、ぼやけて数倍にも膨れて見えるのだった。


 もしこの霧が人間の仕業だとすると、ベラドンナの花でもかじった人間であることは容易に想像できる。


 中心地には島があり、そこには人気を嫌った、とてもじゃないけど人間の住めないようなところに、窓の少ない洋館が存在した。


 昼も夜も無い館に、彼女はいた。








 〈幻真〉



 俺が霊夢と魔理沙のふたりと弾幕ごっこをした日を節目に、数日が経った。


 目が覚めた俺は、布団から出て襖を開けにいく。だが、いつもなら明るいはずの空が紅く染まっている。目がおかしくなったのかと自分の目を擦ってみた。しかし、空は紅いままだ。まるで、真っ赤な血で染まっているかのように。


「れ、霊夢!」


 俺は霊夢を揺さぶり起こすが、寝言を言って起きない。すると、俺が霊夢を起こしていた声が大きかったのか、霊妙さんが目を覚ました。


「どうしたの——って、この空はもしや……」


 霊妙さんがなにかに気づいたかと思うと、立ち上がって言った。


「異変よ」


 一言だけ述べた言葉は『異変』。だが、異変についてはなんの知識も無い。俺はそれについて尋ねる。


「異変……とは?」


「異変っていうのはね、幻想郷規模の広範囲に渡る事件のうち、発生時点が原因不明なもののことよ」


 霊妙さんの説明が終わった後、タイミングよく外からだれかが入ってきた。


「勝手にあがらせてもらうぜ。霊夢、異変だ! 早く起きるんだぜ!」


 その正体は魔理沙だった。彼女は焦った様子で霊夢を揺さぶり起こす。霊夢は体を大きく揺さぶられたせいか、不機嫌そうに起きる。


「も〜なによ……あら、魔理沙じゃないの。いつからそこに——って、なによこの空は⁉︎」


 霊夢は外を見て言った。






「—―さて、異変を解決しに行くわよ」


 霊夢に宛てはあるのかと聞いたが、帰ってきた答えはノー。こけそうになる俺に対し、彼女は勘にしたがっていれば大丈夫と言った。心配だ……


「幻真は飛べるのか?」


 突然魔理沙に問われ、なぜそんな事を聞くのかと疑問に思ったが、とりあえず飛べると答えておいた。そう答えたと同時に、彼女が俺にその質問をしてきたのは俺も連れて行くためだと察した。


 俺自身行くのは構わないが、足でまといにならないかと不安の気持ちを漏らしたが、霊夢の答えはむしろ来てほしいとのこと。彼女の本当の狙いは、楽になるためらしいが。


 不安の念にかられながらも、霊夢から境内を飛び立ち、魔理沙と俺も彼女に続く。霊妙さんに見送られ、俺たちは神社を後にした。






 道中、闇に包まれた何かがこちらに向かって飛んでくる。俺たちは警戒して立ち止まった。飛んできた何かの正体は、少女だった。そして、その少女は口を開く。


「あなたたちは食べれる人間?」


 彼女はおそらく人喰い妖怪だろうと推測する。人間だったらあり得ないし、第一、こんなこと言うわけないだろう。


「私たちは食べられないわよ」


 霊夢が答え、その少女は残念そうな表情を浮かべ、ある一言を述べる。


「そーなのかー」


 いったいなんの言葉なのかと疑問符を浮かべたが、その少女は続けて言った。


「なら、弾幕ごっこするのだー」


 弾幕ごっこで勝てば、この先に行かせてくれるのだろう。この弾幕ごっこは俺が引き受けた。


 霊夢たちより前に出た俺は、彼女に自己紹介をした。それを聞いた彼女もまた自己紹介をし、ルーミアと名乗った。


 自己紹介を終えた俺たちは、さっそく弾幕ごっこを始める。


「まずはこれからなのだー。月符『ムーンライトレイ』」


 彼女は弾幕をバラ撒き、さらに左右からレーザーを飛ばして挟んできた。俺はその攻撃をギリギリで躱す。


「おっと、危ない危ない。じゃあ俺はこれだ。夢符『勾玉弾幕(ジュエルバラージ)』」


 俺は勾玉の形をした弾幕を彼女に飛ばす。ちなみにこれは、霊夢のスペルを参考にしたやつだ。


「しまったー、油断したのだー」


 弾幕はルーミアに直撃した。






 ルーミアを倒して紅魔館を目指している道中で、魔理沙が俺に聞いてきた。


「あんなスペルあったか?」


「作ったんだよ。魔力をあまり消費しないように考えたスペルってところかな」


 魔理沙は感心していた。


「ねえ、なんだか肌寒くないかしら?」


 霊夢が寒そうに露出した腕を摩る。霊夢のその格好だと寒くなるだろうと思ったが、さすがに俺も肌寒さを感じた。辺りを見渡すと、近くに湖が。いや、湖は湖だが——


「凍ってる!」


 俺たちは凍った湖へと向かう。そこには、氷でできた羽のようなものをもった水色の髪の少女と、緑色の髪で変わった羽を持つ、見た感じ妖精のような少女がいた。


 近づいて聞こえてきた会話だが、緑色の髪の少女が水色の髪の少女に対して何か説得しているのが聞こえた。


「チルノちゃん、やめとこうよ……」


 どうやら、水色の髪の少女はチルノというらしい。止められたそのチルノはというと……


「大ちゃん知らないの? あたいは最強なんだよ?」


 チルノは生意気だと確認。チルノがもうひとりの少女のことを大ちゃんと呼んでいただけで、ちゃんとした名前はわからなかった。そして、その大ちゃんと呼ばれる妖精が俺たちに気づいて声をかけてきた。


「あ、どうも。皆さんはどうされたのですか?」


 とても丁寧な口調だった。その質問に、霊夢が答える。


「この紅霧を発生させた犯人を探しているのよ。なにか怪しいものとか見なかった?」


 霊夢の問いに、大ちゃんは何かなかったかと必死に思い出していた。しばらくして、思い出した彼女は有力な情報を与えてくれた。その情報は、どうやらこの湖の先に赤く染まった館――紅魔館があるらしい。その館はかなり大きく、門番もいるらしい。


 一通り話した彼女は、思い出したかのように自己紹介をした。どうやら彼女の名前は大妖精というらしい。


 俺たちも同じように自己紹介を終えると、やっとこちらに気づいたチルノが声をかけてくる。


「ん? なにやってるんだ?」


 彼女は興味半分に聞いてくる。その質問に俺は答えた。


「異変を解決しに行くんだよ」


 それ聞いたチルノは、さっきより興味をもったのか、なにやらおかしなことを言う。


「なら、あたいを倒してから行くんだな!」


 俺は心の奥で、あまり相手にならなさそうだと思った。そして、これまた俺が引き受けることに。


「冷気を操るなら、俺のほうが有利だな」


 俺は炎を扱うのだから。だが、炎はあえて使わない。


「くらえー! 氷符『アイシクルフォール』!」


 チルノは隙間なく黄色い弾を放った。これは避けられない。炎龍を使うのは大人げないし……


「なら、これだ。 霊符『一筋弾幕(ストレートライン)』」


 魔理沙のマスタースパークには及ばないが、それぐらいの弾幕を一点に集中させてチルノに放つ。弾幕はそのまま直撃した。


 しばらくして、ボロボロになったチルノが爆煙の中から現れる。


「……悔しいけど、負けを認めてやる!」


 チルノは拗ねてしまったのか、どこかへと飛んで行ってしまった。大ちゃんはこちらに礼をしてから、チルノを追いかけていった。

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