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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第弐章 異世界の者たち
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第83話 馬鹿騒ぎな大宴会

コラボ16話目。

多分年末まで連日投稿となります。

 異世界から来た者や、この世界の住人たちが博麗神社の境内に集まる。すると、ある姉妹が手を挙げ、ある方向を指差す。その先には何もなかったが、突如として一人の女性が現れた。


「着いた着いた……って、皆さんお集まりのようで?」


『桜様〜!』


 そう、現れたのは安倍あべのさくら。嘗てこの世界に訪れた事がある人物でもある。そこにいた者たちは、彼女が持っていた大量の食材と酒を見て喜びの声を上げた。


「ねぇねぇ桜様」


「わかってるわ。終作、時龍、絢斗はどこにいるかしら?」


「俺はここだよ〜、桜ちゃ〜ん」


 その声の主は、絢斗だった。彼は社の河原に座りながら手を振っていた。その様子を見た磔は、自分の居場所をなぜ明かすのだと呆れていた。良太もまた、絢斗はいったい何をやっているのかと、彼の考えが読めなかった。


「ちょっと降りて来てくれるかしら?」


「え〜、桜ちゃんが来てよ〜」


 絢斗の頼みに桜は溜息を吐くと、地を蹴って河原に上り、絢斗の隣に立った。


「で? なんの用かな〜?」


「私の使い魔と遊んでくれたお仕置きよ」


 桜は不吉な笑みを浮かべると、武術による蹴りを絢斗にお見舞いした。桜は何事も無かったかのように降りて来ると、なぜ自分が来たのか、一部話した。


「関係があるのはこの世界の……そう、幻真たち」


「え? 俺たち?」


「ええ。霊斗はここにいるでしょ?」


 その問いに答えたのは終作だった。


「いるよ〜。でも、今は神社にいない」


「終作!」


「あ、これヤバい奴? にっげろ〜」


 終作は次元の狭間から顔を出して覗いていたため、直ぐに顔を引っ込めて狭間の中に姿を消した。桜は終作を逃してしまい、少し残念な気持ちになるが、話を戻す。


「そういえば、霊斗いないよな。どこ行ったんだ? 一部の連中も居ないし」


 幻真は不自然だと思い、周りの者たちに問う。その事情を知っている者はどうしようかと焦るが、事情を知っている者の一人、ニックがその問いに答えた。


「霊斗さんたちは今、食材を買いに行ってます」


「でも、桜が来ることぐらいわかってたんじゃ……」


「念には念を、ですよ」


 幻真はそう言われ、怪しんでいたものの納得し、本題に戻る事にした。桜の方に視線を向け、そういう事だ、と言う。


 桜は持って来た食材や酒を周りの者たちに渡し、霊斗たちの気を探ってどこかに飛んで行ってしまった。


「せっかく来たのに、わざわざ霊斗の所に行かなくてもなぁ……」


「桜様には桜様の考えがあります。と言うわけで、桜様が仰っていた人物の一人、時龍を焼き消したいと思います」


「思いまーす!」


 時龍は社の中に隠れていたため、ここで焼かれたら神社が火事になると判断し、その場を離れて遠くへと飛んで行く。だが、時既に遅し。時龍は真っ黒焦げに焼かれてしまった。


「桜様が帰って来るまで、支度でもしておきましょう」








 桜は霊斗を探して飛行していた。とても近い。桜は下を見下ろすと、見覚えのある屋敷があった。そう、以前星弥兄弟との戦闘があった時に訪れた場所だ。そこには何人かの姿があった。


「霊斗!」


「お、桜。悪いがタッグバトルは終わったぞ?」


「私はタッグバトルをしに来たんじゃなくて、幻真たちの強化を——まあ、いいわ。それにしても……何かしら? この歪な空間の裂け目は」


 桜は目の前にある空間の裂け目を指して、そこにいる者たちに問う。龍人たち、霊斗、国下、耶麻人……彼女の質問に答えたのは、龍人のハイドだった。


「簡潔に言いますと、この空間の先に強者が居ます」


「でしょうね。今は気を感じられないけど、この先にいるのは間違いなく強敵……」


「あ、因みに言うと気を隠したのは終作だ。幻真以外の者たちはこれを知っている」


「なんで幻真だけ——なるほどね、わかったわ。それより、早く宴会にしましょ? ニックって言うフードを被った人が、貴方たちを食材の買い出しに行ったことにしてるんだから」


 桜以外の者たちは顔を見合わせる。彼らは頷いて、人里の方へと飛んで行った。その様子を、空間のヒビから覗く者がいた。自身の不吉な笑いをその者だけが聞き、歯をギリギリと鳴らしている。


「私は……もう直ぐで……神の力を得るのだ!』


 その言葉は、その者以外誰にも聞こえていなかった。








 霊斗たち一行は、一通りの買い物を人里で済ませて博麗神社へと戻って来た。彼らが戻って来ると、神社に居た者たちが待ち侘びたと言わんばかりに霊斗たちに駆け寄った。


「じゃあ、料理ができる人は中に入って。それ以外の人たちは他にできることを探してちょうだい」


 霊夢がその場に居た者たちに声をかける。霊斗は霊夢の姿を見てデレデレするが、霊夢はその様子を見て身を引き、無視して他の者たちを中に入れて行く。霊斗は無視されたことを悲しんだ。


「まあまあ霊斗。俺たちも行こうぜ?」


「そうだな……」


 霊斗は幻真に慰められ、最後に中へと入って行った。






 料理が出来る者は台所へ、他の者は広間で食事の準備や雑談をしていた。


 台所へ向かったのは、霊斗、幻真、桜、霊妙、活躍、火御利の六名だ。桜は料理術を霊妙と火御利に教え込んでいた。幻真はなぜ二人に料理術を教えているのかと、頭に疑問符を浮かべながら見ていたが、霊斗に肩を叩かれ我に返る。


 彼の方に視線を向けると、その奥で活躍がレシピ表を見ながら、正に危険といった料理を行っていた。炎がメラメラと燃え上がり、辺りに火の粉を散らしていた。幻真と霊斗はその場所から距離を取っていたが、流石に暑さを感じていた。


 桜は霊妙と火御利が料理を行なっている間、チラッと活躍に目を向けたが、彼らしい料理術だろうと思った。


 幻真も負けじと食材を取って、霊斗に習いながら料理を開始した。






 アルマとパルスィは、縁側に妖夢を呼んで色々な話をしていた。アルマたちの世界の事や、妖夢と幻真の関係。幻真の話になると、妖夢は顔を赤めて話していた。アルマはそれを見るなり、ニヤニヤしながら話していた。


「ねぇ……」


「大丈夫さ。弄るぐらいなら幻真も怒らないだろう」


 妖夢が顔を真っ赤にして俯いている時、アルマとパルスィはヒソヒソと話していた。一旦落ち着いた妖夢が、アルマたちに目を向ける。


「アルマさん……?」


「ああ、わるいわるい。続けようか」






 社内にて、狼と想起、緋闇とサテラは酒などの飲み物を飲みながら雑談をしていた。サテラと狼は気が合い、また想起と緋闇は気が合っていた。


「そういや、サテラは洋菓子が好きなんだよね?」


「うん! 食べる?」


 そう言って、彼女は皿に乗せたショートケーキとフォークを一緒に渡す。狼は一口食べると、余りにもの美味しさにフォークを落とし、帆を両手で抑えた。


「そんなに美味いのか?」


「美味しいですよ! 想起さんもどうです?」


 狼は欠けたショートケーキを想起に渡す。試食したところ、想起も美味しさに驚きを隠せなかった。


「いっぱいあるから、いくつかあげる! みんなで食べてね!」


 サテラは箱に入ったホールケーキを積んで、狼と想起に渡した。狼は喜びのあまり、言葉が出なかった。


「ありがとな。この先起こることが終われば、文と親密を深めたいな……」






 和正は、国下やハイドたち龍人と酒の飲み比べをしていた。だが、ハイドは既に酔い潰れていた。まだ食事が出ていないというのに。だが、宴と言えば酒だろう。


「みんな〜ご飯できたわよ〜……って、もう酔ってる人がいるじゃないの。早すぎよ」


 料理をしていた者たちが両手に料理を持ち、広間へと運んでくる。どれも美味しそうな物ばかりで、皆の食欲を湧き立たせる。


「さあ、どんどん食べてね」


「お父さん、あれ食べたい!」


「ほら。いっぱい食べろよ〜」


 磔と春姫が食事ができたと聞いて、料理が並べられている場所に座り、それぞれ食べたい物を取っていく。たくさんあるため、どれを食べるかつい迷ってしまう。


 耶麻人にアデル、ホロウ姉妹も並べられた料理に目を輝かせる。それとは裏腹に、端っこにて怪しい雰囲気が漂っていた。


 時龍、絢斗、終作はイヤらしい話をしたり、写真を見せ合ったりしていた。そして、終作が秘蔵写真を遂に明かそうとしていた。


「これがサテラちゃんの——」


「あんたたち、まーた変な事してるんでしょ?」


「お、桜ちゃ〜……んッ⁉︎」


 絢斗が桜に飛びつこうとした瞬間、蹴りを入れられアルマたちの間を通って吹き飛んでいった。良太は飛ばされた絢斗を回収しに行った。


「おいおい、なんだ今の。桜か? あまりやりすぎないでくれよ?」


「その辺は大丈夫よ。さて、終作……いい加減にしなさいッ!」


 桜はそう言うと、終作に向かって殴る。だが、実際に殴ったのは時龍で、終作は次元の狭間から爆笑しながら顔を覗かせていた。時龍はH.S同盟の仲間だから謝らなくていいだろうと思った桜は、彼に謝ることはなかった。


「ちょっと、私の神社で暴れないでくれる?」


「ごめんなさいね、霊夢」


「あなたは別の世界から来た人ね。大丈夫よ。事情はだいたいは把握してるから。原因はそこの変人ね」


 霊夢が指したのは、次元の狭間から顔を覗かせる終作。彼は首を傾げて霊夢を見ていたが、霊夢が手に持っていたお札を見ると、攻撃されると判断して次元の狭間の中へと消えていった。


「全く。さっ、宴を再開しましょ。ウィスプ、ランタン。後……幻真、ちょっと来てちょうだい」


「え? 俺?」


「実際には狼たちも用があるのだけど、今は貴方にだけ話すわ。霊斗、いいかしら?」


「おう。俺も同じ内容さ」


「それに関してだけど、俺も混じるよ」


 手を挙げながらその場に入って来たのは、春姫を肩車した磔だった。


「そうか。まあ、とにかく話を始めようじゃないか」


 霊斗を先頭に、彼らは縁側へと向かって行った。






 幻真を座らせ、話を始めたのは桜だった。なぜかホロウ姉妹はニコニコとしている。幻真はその二人の様子を見てイヤな予感がしていたが、取り敢えず話を聞くことにした。


「そんなに怖がらなくても大丈夫よ。話ってのは、"強化プログラム"についてよ」


「強化……プログラム……?」


 幻真はワケがわからず、頭に疑問符を浮かべながらチンプンカンプンとしていた。その続きを話し始めたのは、ホロウ姉妹だった。


「私たちのお願いを聞いてくれたら、良い武器をあげるよ〜!」


「あげるよ〜!」


 幻真は次々に話が進むため、呆然として話を聞いていた。再び桜が話す。


「なぜかって聞かれたら、貴方を鍛えてあげたいと思ってね。もちろん、狼や想起たちも」


「それで、ホロウ姉妹のお願いって?」


『うん! 遊んで欲しいの!』


 幻真はそんなお願いでいいのかと唖然としたが、顔を振ってワザとらしく笑って見せ、承知した。


「じゃあ、貴方たちは続きに取り掛かって」


『はい!』


 ホロウ姉妹は桜の命令に元気よく返事をすると、人里に向けて飛んで行った。なぜ人里なのか、幻真は悩んでいたが察した。そう、人里には想起の鍛冶屋がある。そこを利用するのだろうと。


「俺が教えるのは、磔や絢斗が使っている超技術と、一つの技、そして……感情爆発だ」


「感情爆発って?」


「その時に教えてやろう。それで、磔は何を教えるんだ?」


 霊斗は磔に視線を向けて問う。


「俺はソウルモード。あと、ソウルドライブモードもだが……まだ厳しいと思うんだ。まあ、なんとかしよう。で、絢斗も教えるらしいが、大丈夫だろうか……」


「因みに絢斗は何を?」


「"鬼道系"さ。その辺は本人に聞けばいい」


「そういう事よ。一日目はランタンたちと遊んで武器を貰いなさい。全員参加よ。二日目は磔と絢斗に教わりなさい。その間に貴方以外を鍛えるわ。そして、三日目は霊斗に教わる」


「超技術って、短時間じゃ習得出来ないだろ?」


 磔が自分の経験から霊斗に問う。霊斗は腕を組んで、そこなんだよな〜と、対策を取っていない言動をする。


「最悪、説明本でも渡すか」


「多分できないぞ。どこかの空間で修行するとか、できないのか?」


 その案は幻真にもあったが、そんな能力を持った者など知らないため、諦めていた。


「おーい、お前ら〜。飯が冷めるぞ〜」


「悩んでいても仕方ないわ。今は取り敢えず、するべき事をしましょう」


 活躍の呼びかけに答えるようにして、桜が話を終える。幻真たちは頷き、社内へと戻っていった。


 その後、宴会は盛大に盛り上がり、タッグバトルの苦痛など忘れて馬鹿騒ぎをしたのであった。






『そんな事やっても無駄よ……私に勝てる者など……この世には存在しないのだから……!』

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