第80話 準々決勝
一週間空いてしまった…
でも、今回は結構長いです。
コラボ13話目。
「さて、予選リーグが終わったわね。それじゃあ、準々決勝の組み合わせを紹介するわ」
アデルが言い終えると、モニターに次のトーナメントが表示される。
○準々決勝
・第一回戦 時龍&相沢絢斗
対
ホロウ・ザ・ウィスプ&想起
・第二回戦 幻真&白谷磔
対
桐月アルマ&星弥喜響
・第三回戦 山上国下&博麗霊斗
対
ホロウ・ザ・ランタン&綿月春姫
なんと、ホロウ姉妹が勝ち上がっている。敗退してしまった参加者も、それぞれの者たちに健闘を祈っている。自分たちの分まで勝ち上がってくれと。
モニターを見て燃えるものがいないことはない。それは、時龍と想起。関係性は深くはないが、二人とも燃えていた。絢斗も少しやる気を出し始める。
他に燃えている者もいた。幻真と喜響だ。喜響は幻真に宣戦布告していた。つまり、この機会が偶然と訪れる。本気で戦うつもりだろう。
もちろん、敗者たちも燃えていた。自分と共に来た友人に対して、勝利を祈っている。
龍人たちも酒を賭けては盛り上がっていた。はたまた一方で、磔はトーナメントを気にせずに春姫を叱っていた。いくら終作でもアレはやり過ぎだと。春姫は深々と反省した様子を見せた。その様子を見た絢斗が磔に話しかける。
「あんまり怒りすぎてもダメだぞ?」
「わかっているが。子供の内に教訓しとかないといけないだろう?」
「そうか。そうだな」
その話を聞いていた狼は、うんうんと頷いていた。彼には子供は居ないが、共感している様子が見られる。
だが、その陽気な気持ちでいられない者もいた。
——終始終作。
先程ニックにも言っていたが、何やら遥か遠くの場所から不吉な気配を肌に直接感じられていた。遥か遠い為、至急対策を練る必要性は薄いが、警戒を絶やさない。
それに気付いていたのは彼だけではない。霊斗に、龍人たち。表向きでは強張る表情をしていないが、内心は警戒を高めていた。それだけ相手は強大な力を持っているという事だ。
しかし、今その心配をしている暇ではない。まずは、このタッグバトルを終えてからの話にしよう。
「それじゃあ、準々決勝第一回戦を始めるから準備よろしくね」
時龍の控え室にて。彼はベットで横になりながら、精神を研ぎ澄ましていた。緊張していては思い通りの戦いができないし、失敗も生じる。何事も冷静かつ慎重に戦いを挑みたかった。
コンコンと誰かが扉を叩く。時龍はベットから起き上がり、扉を開けに行く。その主は絢斗だった。
「そろそろだぞ〜」
いつも穏やかな気持ちで過ごせて凄いなと思う時龍。自分もこんな感情を保ちたい。そう思った。
「どうした?」
「いや、なんでもない。行こうか」
耶麻人はこの世界の幻想郷を観光していた。彼の幻想郷と、これと言った変わりはない。単に見ておきたかったのだろう。それに、負けた事を悔やんでいた。自分の究極能力に太刀打ちしてきた者がいたからだ。
「もっと頑張らないと……」
そう呟き、顔をぶんぶんと振って観光を再開しようとした。そこで、彼は感じた。何か邪悪な気を。そう遠くはない。恐らく屋敷の方だろう。彼は不審に思ってその方向へと飛んで行った。
彼が目にしたモノは、ヒビの入った空間だった。その先からは異常な程の邪悪な気が漂ってきて、近付いてはならない雰囲気を出していた。すると、そこに終作と活躍が空間を移動して現れる。
「ここだったのか……」
「どうする? 終作」
彼らは焦りを見せる。だが、聞ける状況ではないと悟る耶麻人。終作は、このヒビの入った空間についての説明を始めた。
この空間は容易には侵入できない。できたとしても、その先に何がいるのかは未知であり、生存することすら不可能に近い。そして、この先にいる者は神や化物でもない。何がいるのかと聞かれてもハッキリとはわからない。今はそう答えることしかできなかった。
「取り敢えず、この邪悪な気を隠す。霊斗やハイドたちに隠す意味はないが、幻真たちに隠す意味はある。それに、時龍たちに対処してもらう必要が有りそうだしな」
なぜ時龍たちなのか。彼らの中から幻真は省かれていた。それも、恋人である妖夢や友人の霊夢たちの気を使って。彼は元々幻想入りした者。そして、沢山の者たちと交流もしていた。今の状況で行方を眩ませるのは厳しい。そう判断したのだ。
それに、幻真が死んでしまっては元も子もない。第一相手もよくわかっていない。だからと言って時龍たちを派遣するのはどうなのか。そこを問われては、言い返す言葉も見当たらない。
今は難しい事を考えてはいられない。タッグバトルが終わった後に説明しようと、終作は決める。活躍は彼の決断を感じ取ったのか、吹き笑いする。
「お前らしいな。とにかく、頼むぞ」
「言われなくても」
終作は空間へと掌を向ける。特に何も変わらなかった。だが、明らかに気は感じられなくなっている。このヒビが広がる事によって、気を感じられなくするようにした効果も薄れてしまい、これに気付いてしまうだろう。その時は、戦いの時だという事だ。
「あ、耶麻人すまない。気にせずに……」
「大丈夫です。それより、これはいったい……」
「正直俺にもよくわからない。だが、神や化物の仕業では無さそうなんだ。また別のモノ……なんにせよ、警戒しなければならない事に変わりはない」
終作の説明に、活躍は頷いて共感する。耶麻人もだいたいは理解し、同じように頷いた。
準々決勝第一回戦の戦況は、想起とウィスプのチームが押していた。皆武器を持った状態での戦闘。そして、一回戦を勝ち上がってきた者同士。一筋縄ではいかないだろう。
「絢斗さ〜ん、時龍さ〜ん、頑張ってくださ〜い!」
観客席から聞こえてくる妖夢の応援。絢斗は一瞬ドキッとしたが、ニヤリと笑って自身を強化するために構えた。
「解放『ブレイクソウル2』」
絢斗は既にブレイクソウルを使っていたため、先ほどの状態から紫の雷を身に纏う。その刹那、絢斗は想起と自身の得物を交えていた。咄嗟の攻撃に遅れを取るのかと思いきや、想起は応じてきた。
「『武器強化』」
想起の幻夢剣の長さが、幻によって元の長さの二倍へと伸びる。時龍は様々な大きさの弾幕を創造しては、想起へと飛ばし始める。しかし、彼はその弾幕を全て切り、幻へと変えてしまう。時龍はお構いなく、弾幕を飛ばし続ける。
「斬符『蒼連斬』」
絢斗は時龍が作った僅かな時間の内に、下から上に刀を切り上げ、衝撃波で作った多量の弾幕を想起へと飛ばす。彼は一部の弾幕を薙ぎ払ったが、まだ多量の弾幕が残っていた。
「星符『南の金十字』」
ウィスプがそれに応じる。金色の十字剣で弾幕に接近し、ぶった切る。その後、絢斗へと飛びかかって十字剣で薙ぎ払う。絢斗は若干避けそびれて皮膚を切られたが、そんなこと御構い無しにウィスプへと体当たりする。
「斬符『刺突』」
吹き飛ばされていくウィスプに向かって、超高速で突きを放つ。更に、通った道に配置された弾幕がウィスプへと襲いかかる。
「チッ……」
想起は片腕を抑えながら、強く舌打ちする。ウィスプは絢斗の今の攻撃で脱落。二対一は流石に厳しいか。そんなこと想起には関係ない。構わず絢斗に攻撃を仕掛ける。
時龍はチャンスを伺っていた。彼の左の掌には純白の炎、右の掌には漆黒の炎を出していた。更には、空中にそれらの色の弾幕を浮かべていた。そう、チャンスを伺っているのは、これを想起へと飛ばすためだ。
想起は時龍の作戦に気付いていた。しかし、それを阻止したくても絢斗の相手で時龍の弾幕を消せない。つまり、隙を与えないようにする事がカギだと言う事だ。そのために、想起は複雑な戦い方をしていた。
「ここだ!」
「しめたっ!」
訪れたチャンスの内に時龍が想起へと弾幕を飛ばしたが、想起にはそれを絢斗と共に切られてしまう。絢斗は脱落。これで一対一となった。
「絢斗もやられたか。想起も強いな」
想起に対して感心したのは磔だった。あくまで彼は絢斗と時龍を応援していたが、一対一となると勝率がわからなくなってくる。それが面白いのだ。勝敗が予想できないからこそ、戦いは盛り上がる。それをより楽しんでいるのが、龍人たちだ。
「時龍の方に賭けてたけど、想起の方かも……」
「ジラ、今から変えるのはなしだよ?」
初めは時龍と絢斗のチームが勝つと賭けていたジラだったが、絢斗が脱落した事によって自信を無くしていた。だが、今更変えるのは無しだと、ハイドは言う。
因みに、ハイドは想起とウィスプの方にカスミはジラと同じく時龍と絢斗に賭けていた。実際の所、カスミはずっと当て続けている。だが、現在の戦況にカスミは焦りを見せる。ここで記録を途絶えるわけにはいかない。せっかくここまでやって来たのだ。時龍には勝ってほしいものだ——否、勝ってもらわないと困る。
「これで決める。終斬『殺法幻翠』!」
「なら俺も。奥義『観音刀』!」
想起は斬撃をその場で何回も行い、数個の弾幕を加えて時龍に飛ばす。時龍は数本の刀を扇型に空中に広げ、指を鳴らしたと同時に相手へと飛ばしす。
それらはぶつかり合い、爆発が起こる。選手の二人は爆煙の中に飲み込まれてしまった。
少し経つと、爆煙は消えた。その場に立っていたのは——時龍だった。迫力のあった戦いに、観客たちは歓声を上げる。時龍は何が起きたか理解が追い付かなかったが、取り敢えず手を挙げてピースした。
終作たちが屋敷から去った後、一人の男もまたこのヒビの入った空間からの感じる邪悪な気配に導かれてやって来る。
「ここだったのか。来ている最中に気を感じなくなったのは、終作とやらの仕業……」
男——和正は腕を組んで考える。実際に、彼の考えは当たっている。終作がこの世界の住民が騒動を起こさないように、気だけを隠したのだ。だが、これは時間の問題。いずれ、この先から脅威を齎す敵が現れるとされていた。
「どうも和正さん」
「うおっ⁉︎ 急に現れんな!」
和正の目の前に現れたのは、ニック。それに驚いた和正は彼に対して怒鳴る。当の本人はフードの上から頭を掻いて、声を出して笑っていた。
「笑ってる場合か! もういい。それより、お前は何しに来た?」
ニックは和正の問いに、思い出したかのようにここに来た目的を話した。
「あなたと同じですよ。これを見に」
和正はふーんと言って興味を示さず、空間のヒビに近付いていく。
「待ってください!」
「あ? なんだ?」
「その正体がわかっていない以上、勝手な行動は控えてください。危ないですから」
和正は空間のヒビを睨み付けると、呆れたかのように手を振ってその場を去ろうとした。
「あ、そーだお前。龍使い以外のこの世界の連中を集めておいてくれ。一部を除いてな」
和正はそれだけ言うと、屋敷へ続く階段を降りて行った。ニックも敢えて返事をせずに、行動へと移った。
準々決勝二回戦目。試合は既に中盤へと差し掛かっていた。
幻真は真神剣、磔は真楼剣を。喜響は二丁の銃、アルマは自分の心臓を大鎌に変えた武器、ソウル・ザ・グリードを持っていた。
アルマの持っている大鎌には、ギョロギョロと大きな眼がある。持ち手には、右肩から生えた赤黒い鎖が巻きついている。刃の部分は赤い半月を模しており、たまに脈動していた。
既に幻真と磔はアクセルモード3の状態に。更にアルマも感情を解放し、怠惰の状態だった。
幻真は赤と金のオーラを纏い、磔は白銀色のオーラと雷を纏っていた。
アルマは真っ黒な炎をツノから噴き出し、背中から炎の翼を生やして自分の防御力を底上げしていた。更には、弾幕に触れたものの気力を奪ってしまう。
「斬符『氷塊撃』」
幻真は剣を氷漬けにしてアルマに殴りかかる。だが、アルマは剣を大鎌で弾き、更には大鎌を振って幻真を弾き飛ばす。幻真は磔の場所へと吹き飛ばされ、彼も巻き添いを喰らった。
「磔……ごめん」
「大丈夫だ。さあ、反撃と行こうか!」
幻真と磔は体勢を整えると、地を蹴ってアルマと喜響に飛び掛かる。
「幻符『イマジネーションブレード』」
磔は真楼剣に緑色のオーラを纏わせ、アルマに斬りかかる。アルマは若干擦り傷を負ったが、なんて事もない——と思われた。刹那、それは起きた。感情解放で怠惰状態だったが、その効果は一時的に切れてしまう。
「幻真!」
「ああ。終符『終末之光線』」
全ての力が込められた細い光線がアルマに直撃したように見られた。だが……
「なっ、喜響!」
「アルマ、大した事が出来ずに申し訳ない。後は任せたよ……」
アルマを庇った喜響が、力無くしてその場に倒れ込んだ。喜響脱落。アルマは悔しかった。まさか味方に庇ってもらうなんて。
「喜響……後は俺に任せろ。感情解放……憤怒ッ! 更に感情爆破……強欲ッ!」
アルマは赤い炎をツノから噴き出し、雷を纏った炎を口から出す。更に感情を爆破したことによって、ある効果を発揮する。
「幻真、行けるか?」
「ああ。秘符『伝々水魔流』」
幻真は大量の水で出来た弾幕を出現させ、いくつかの青いレーザーをアルマに向けて撃つ。
「秘符『伝々水魔流』」
「なっ……!」
同様にアルマも大量の水で出来た弾幕を出現させ、青いレーザーを幻真が放つレーザーに撃つ。そう、ある効果とは、周囲の生き物の技の真似をする事である。そして、弾幕が幻真の出した弾幕に触れた瞬間、起爆する。
「あれは感情爆破の影響ね」
観客席でパルスィは呟く。その呟いた言葉を聞いた火御利が、興味深そうに問い返す。
「感情爆破?」
「そう。自分の感情を解放し、能力を底上げして特種な能力を使えるようになる。そして、感情によって能力と体から吹き出る炎の色と場所が異なる。だけど、自分よりもその感情が強いと効かない」
パルスィは淡々と説明してみせる。火御利はよく理解できなかったが、うんうんと頷いた。
「頑張ってね、アルマ……」
「——ああ。パルスィ! 死欲『衰退する生命』!」
アルマは周り全ての生命の生気を吸い取り、細胞が朽ち果てるほどの死に追い込み始める。幻真と磔はもがき苦しむ。
「く、そっ……! 俺は……死なんて……怖く、なんか……ないぜっ……!」
幻真は苦しみながらも立ち上がる。アルマは不吉な笑みを浮かべて、幻真との距離を一気に縮める。刹那、アルマは大鎌を大きく薙ぎ払いする。幻真は対応し切れず、吹き飛ばされてしまう。
「もらったッ!」
「なにっ⁉︎」
磔はいつの間にかアルマの背後を取って、剣を振りかぶっていた。
「友符『マスターソード』!」
剣に霊力と想力を込め、更に長さを三倍程伸ばし、アルマを薙ぎ払った。アルマは無念の脱落。
磔は地面に降り立つと、目眩がしてよろけてしまう。そこに、幻真が肩を貸す。
「悪い、幻真」
「いいってことよ」
勝者は幻真&白谷磔ペアとなった。
同時刻。想起は控え室で、ニックとある事について話していた。その内容は、あのヒビの入った異空間への裂け目についてだ。想起は大体の話を把握していた。すると、ニックに呼ばれた狼と火御利がやって来た。
「ニック、話って?」
「今から直接脳内に送ります。まあ、終作さんに聞いた情報を纏めただけですけどね」
彼はそう言うと、何かを唱えた。すると、狼と火御利の脳内に例の裂け目についての詳細が送られる。また別の場所では、時龍、霊妙、喜響の脳内にも情報が送られていた。
「そういや、なんで和正は幻真を除いたのかしら?」
「彼にはしなければならない義務がまだまだある。それを和正さんは伝えたかったのではないでしょう」
なるほど、と手を叩く狼。すると突然、霊妙が解説役を降りて想起の控え室へと飛び込んで来た。
「わっ、霊妙さん!」
「悪いけど、私は無理よ」
「だろうね〜」
どこからか、霊妙が拒否するのがわかっていたかのような反応をする声が聞こえてくる。もちろん、その正体は彼しかいない。次元の狭間の観察者、終作。
「彼女には博麗の巫女がいる。それに、幻真だけ残ってもらっても困るだろ? 第一、幻想郷の者が太刀打ちできるかも心配だし」
「確かにそうですね。霊妙さんには残ってもらいましょう。あ、絶対に幻真には言わないでください。面倒くさい事になりますから」
それには皆共感した。仲間を見捨てない彼に話がバレると、絶対に首を突っ込んでくる。だからだ。
「さあ解説役変わりまして、サテラ・アルレストが送りますよ〜!」
無邪気なサテラが霊妙と変わって解説役に回る。アデルは少し不安だったが、面白そうだと思って任せる事にした。
因みに、今は戦闘の真っ最中。組み合わせは山上国下&博麗霊斗ペア対、ホロウ・ザ・ランタン&綿月春姫。実は試合前に、霊斗は春姫の父親である磔とある話をしていた。
「——本気で戦って大丈夫なのか?」
「ああ。戦闘経験を積ませたいし、霊斗は強いからな。強者との戦い方を見届けたい」
「そうか。わかった、本気でやろう」
既に春姫はアクセルモード3の状態。蒼色のオーラを纏っており、アクセルモードの時の磔と同じ戦闘力となっていた。
「さすが磔の娘といったところだ。済まないが、お遊びはここまでにしよう。龍神王武」
それは、霊斗自身が手がけたあらゆる物を斬り、さらに折れたり劣化することがない刀である。春姫は短刀を持って構えるが、霊斗の圧倒的な速さに手も足も出なかった。
「霊斗、大人気ないな」
「それもそうだな……でも春姫の父親に言われたからな。手加減なしだって」
国下は苦笑する。彼も見ているだけではない。残ったランタンに目掛けて飛んでいく。ランタンはたじろんで身動き取れずに拳を入れられる。
「終わりだ」
国下は妖力を纏わせた拳をランタンの腹部に放った。呆気ないと言っては失礼だが、なかなかの迫力だった。
「さて……後二試合だな」
次回は準決勝。
話がだいぶ進みましたね。今年中に終わらせないと。




