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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第弐章 異世界の者たち
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第79話 予選リーグ 第六回戦

コラボ12話目。

「さて、予選リーグもいよいよ終盤よ。ニック・ヘルスリート&終始終作ペア対、ホロウ・ザ・ランタン&綿月春姫ペア。試合開始」


 アデルの掛け声によって、試合が始まる。だが、終作は腕を組むなり、溜息を吐いた。


「なんでこんなにも可憐な女の子たちと戦わないといけないんだ」


「むー! 私たちを馬鹿にしてるの!」


 終作の挑発らしき言葉に乗ったランタンが頬を膨らませて怒る。春姫も同じ様に、頬を膨らませて彼を睨んだ。


「なあニック。俺辞退するから、後は任せていいか?」


「はい、任せてください——って、ダメですよ! 責めて戦ってください!」


 ニックはノリツッコミをする。終作は笑うのかと思いきや、またもや溜息を吐いた。この調子では、グダグダが続くだけだろう。


「全く。終作の野郎」


 苛立っていたのは活躍だった。負けた事もあってか、腕を組んで終作に怒りを示していた。その隣に座っていた良太は、溜息を吐いて呆れた様子を見せる。


「ほら、これでも食って落ち着いたらどうだ?」


 声の主は、焼鳥を差し出すアルマだった。先程まで散歩に行っており、その帰りに焼鳥などが売っている売店へと寄ったのだった。


「ああ、頂こう……なんだこれ! 美味いな!」


「だろ? 美味すぎてつい五本食っちまった。まっ、一番はパルスィの料理だけどな」


「アルマさん、顔がにやけてます」


「おおっと、失敬失敬」


 頭を掻きながら笑うアルマ。次々に焼鳥を食べる活躍。苦笑する良太。すると、活躍が思い出したかのようにして終作たちの戦況を確かめる。音が聞こえてなかったから、まだ始まっていないのかと思っていた活躍だったが、戦いは始まっていた。


 ランタンは呪いの剣を投げ、銀色の柄杓から追加の怨念弾幕を展開する。春姫は彼女の母親にして磔の嫁である、豊姫から貰ったという扇子を片手に終作たちへと飛びかかる。


「春姫のスタイルはいいな。この機会に撮っとくか。シシシ……」


 不吉な笑みを浮かべながら構える終作。春姫は勢いを止めずに終作へと飛びかかったが、終作の姿は目の前から消えて、春姫の足元にいた。


「隙あり〜」


「キャア!」


 悲鳴をあげる春姫。だが、終作は勢いを止めるどころか増して、次はランタンの方へと向かっていく。


「シャッターチャーンスッ!」


「ちょっと!」


 撮った写真をニヤつきながら確認する終作。一方の観客席で、一人の男がショックを受けていた。


「磔、大丈夫か?」


「後で説教しないとな……」


 磔の心配をしていた幻真が、首を傾げて頭を悩ます。まず思い出そうとしたのは、春姫と初めて会った時の言葉。確か原子レベルで分解するとか……


「ヤバくね⁉︎」


「あのフィールド内なら観客たちには影響がないと思うが、止めに行くべきか……」


 磔はそう言って、席を外した。


「大丈夫かなぁ……」


「ウィスプ?」


 続いて心配していたのは、ランタンの妹であるウィスプだった。


「あの変態さん、焼き死ななければいいんだけど………」


「ちょっと怖い心配だな!」


 突っ込む幻真であったが、笑ってもいられなかった。


「あの〜、終作さん? 何をしてらっしゃって?」


「何って、見ての通り〜」


 ニックの顔は見えないが、恐らく呆れた表情をしているだろう。この者に呆れない人など、ごく僅かしかいないに違いない。だが、そんな余裕をしている場合ではなかった。春姫が先程より怒りを示していたのた。


「原子レベルで……」


「ちょ、春姫さん!」


「ニックさんは離れててください……後で戦いましょう……浄化『リトリフュージョン』!」


 春姫は扇子を振るって、黄色の風の弾幕を放つ。これに当たると、原子レベルまで分解されてしまう。ニックは急いで春姫の後ろへと回り込む。ランタンも春姫の後ろに下がり、様子を伺う。


「あれ、ニック? ちょっ、これ当たったらヤバいやつだよね⁉︎」


 終作はそんな事を言いながらも、あっさりと避けてしまう。


「ならば……月符『アクセルモード』!」


 春姫が宣言すると、彼女は蒼色のオーラを纏う。その様子に思わず終作は驚いた——ように見えたが、ニヤリと笑って指をくいくいっとして挑発する。


「春姫さん、挑発に乗らない様に」


「はい。月符『三日月斬り』!」


 春姫は短刀を取り出してから、弾幕を三日月の形にして、短刀で弾幕を放つ。弾幕を出すスピードは速く、威力もかなり高い。尚且つ速いスピードで連射を行っている。


 その弾幕の中に弾幕を仕込ませたりしているため、二弾攻撃可能。だが、一直線にしか飛ばないため、デメリットもある。


「こんなの避ければ……」


 終作は華麗に避ける。だが、そこにランタンが追撃する。


「星符『北の銀ひしゃく』」


 彼女は柄杓から怨念弾と死の力の鎌鼬を放つ。流石の終作でも、ギリギリ当たりかける。しかし、彼は一汗かいたようにして汗を拭い、両手を広げて叫ぶ。


「さあ、来い!」


「終作さん、何を……!」


 終作はニックの問いには答えず、彼の方を見てニヤリと笑った。それに察した彼は、慌てて叫ぶ。


「まさか本当に辞退——」


「怨符『黒き恨みの閃光』!」


 ランタンは怨念を塗り固めた閃光で終作に向けて薙ぎ払う。それは終作へと命中し、爆発が起こった。ニックからは驚いた様子が感じられる。


「終作は脱落か」


 やれやれと首を振って呟く活躍。アルマも彼には呆れてしまった。相手にならなかったのか、それとも面倒くさかったのか。彼には分からない。


 良太も、まさかあんなに呆気なくして敗北するとは思わなかったため、驚きを隠せないでいた。


「俺にとっては安心したな……」


 一方で幻真が呟く。これ以上終作がやらかしたりしたら、本当に春姫が原子レベルで分解してしまう。いくら復活するからと言っても、考えただけで恐ろしい。


「それじゃあ、本番行こっか」


 ふふふっと笑ってニックに視線を向ける春姫。ニックは彼女の笑みを見つつ、終作の行動にやれやれと呆れてしまう。皆、呆れすぎたと思うが、本当に呆れてしまう。


「まあいいでしょう。気を取り直して試合開始です。多分私の勝ち目はないでしょうけど」


 ニックはそう言いながらも、構えて魔法を発動する。


「『火炎玉(ファイアボール)』」


 彼は唱えると、百度にも及ぶ程の火の弾幕を出現させ二人へと飛ばす。飛んでくる弾幕を春姫は躱すが、ニックが操作しているため避けても追ってきてしまう。


 同じくランタンも弾幕を躱すのだが、やはり操作によって追ってくる。


「もう! 乱符『クールドライブ』!」


 春姫は自分の回りに少し大きい弾幕を配置し、体を三回転させて、扇子で弾幕を叩いてニックに放つ。超強烈な回転がかかっており、弾幕を斬ろうとしたり、弾こうとしたりしたら、弾こうとした刀や手にくっついて弾幕が顔面まで移動して爆発する。


 対処法は避ける以外ないため、ニックはすんなりと避けて春姫の方へと飛んでいく。


「『風矢(ウィングアロー)』」


 ニックは近距離で風の矢を春姫に向かって放つ。だが、彼女は皮膚を掠っただけだった。実際、これは人間の肌を浅く斬る程度の威力しか持たない。なぜニックはそんな真似をしたのだろうか。


「自分もそろそろいいですかね……」


 ニックが自分にだけ聞こえるような声で呟く。彼の目の前にいたのは、ホロウ姉妹。なぜ妹であるウィスプがいるのか、観客たちは唖然とした。


「え、いつの間に!」


 一番驚いたのは、彼女の近くにいた幻真だ。まさか気付いた時にはいなくなっているとは、思いもしなかったからだ。


「黒符『ハロウィンの悪夢』」

「黒符『ハロウィンの悪夢』」


 ウィスプは小死神の鎌、ランタンは銀しゃくしを使い、それらをばらまく。その後、二人とも火の玉になり追いかけっこを開始する。決めるのはホロウ姉妹かと思いきや、そうではない。あくまでこれは芸術なのだ。


「奥義『ライジングノヴァ』」


 春姫は能力でニックの懐に潜り込んでから斬り上げて攻撃をする。そこから連撃を行い、ニックを斬り裂いていく。


「いっけー!」


 春姫は最後にニックを斜めに切り裂く。そのまま彼は脱落した。


「勝者、ホロウ・ザ・ランタン&綿月春姫ペア」






「——それにしても終作さん。良かったんですか?」


「いいのいいの。どうせ勝ち上がっても次の相手は霊斗だし。それに、気付いているかもしれないけど、微かに強力な力を感じるんだよな」


「強力な力?」


「と言っても、なんとかするのは俺たちにはできない。それと、できれば幻真に協力してもらうのは避けたい」


「それってどういう……」

最後の終作とニックの会話は、随分先の話となります。ですが、あくまで予感だと思っておいていただければ幸いです。

今回はなかなか短くなり申し訳ありません。

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