第8話 はじめての弾幕ごっこ
食事中、特に話すこともなく、気づけば完食していた。
「ふぅ〜、食った食った……」
「さてと。幻真、弾幕ごっこするわよ。ちなみに、炎龍はなし、いいわね?」
はぁ⁉︎ 弾幕ごっこするとか聞いていないぞ! というか、なんで炎龍のことを知っている? 寝てたはずだよな……
「覚えたての奴に弾幕ごっこを申し込むって……魔理沙との弾幕ごっこでおまえの強さは把握してる。勝負もままならない気がするんだが」
「とりあえず、腕試しよ」
霊妙さんは縁側に座り、お茶を飲みながら観戦している。勝負は先に倒れたほうが負けとのこと。
「こうなったらやるしかないか。それじゃあ、俺からいかせてもらうぜ! 炎符『炎円弾』!」
俺は炎でコーティングされた弾幕を、円のように撃つ。霊夢はそれを軽々と躱す。
「次は私よ。霊符『夢想封印・散』」
どうやら、夢想封印にはいくつか種類があるみたいだ。俺はスレスレで弾幕を避ける。そして、次のスペルを繰り出す。
「炎符『無造炎弾』」
俺は炎でコーティングされた弾幕を無作為に飛ばす。霊夢は避けるのに苦戦していた。
「やるわね。それなら、これはどうかしら? 霊符『夢想妙珠』」
霊夢は八個の優れた宝珠——妙珠を周囲に展開して飛ばしてくる。ならば、俺はこれで迎え撃つ!
「龍符『三方炎龍』!」
霊夢は焦って叫ぶ。
「え、ちょっと! 夢符『二重結界』!」
霊夢は結界を展開する。しかし、攻撃が当たる寸前で炎龍が消えてしまった。
「はぁ、はぁ、ダメ、だ——」
俺は意識を失い、その場に倒れてしまった。
〈博麗霊夢〉
も、もう! 炎龍は使わないでって言ったのに……幻真の魔力の消費が激しかったみたいで助かったわ。でも、そのうち追い抜かされそうね。
「霊夢〜、幻真を運ぶの手伝いなさ〜い」
「は〜い。もう、困ったものね」
〈幻真〉
えっと、俺はたしか……ああ、気絶したんだったな。はぁ……どうにかして魔力の消費を抑えられないものか。どうにかして霊力を消費して魔力に変換できないだろうか? 霊妙さんと人里へ行ったときより、霊力が増えた気がしたんだが。
俺は溜息とともに体を起こす。
「幻真! 目が覚めたのね!」
そこには、心配した表情をする霊夢の姿があった。状況を整理しようとしていると、襖が開いて霊妙さんが入ってきた。
「目が覚めたのね。よかったわ。それよりも、あなたの弱点は持っている魔力が少ないことね。それをなんとかできれば、霊夢を超えられるかも」
「えぇ⁉︎ 俺が霊夢をですか⁉︎」
まだ使えるようになったばかりなのに、もう可能性があるのか。すると、外の方から見覚えのある少女の姿が目に映る。
「おーっす! ん? 幻真、どうしたんだ?」
それは魔理沙だった。霊夢は俺のかわりに彼女の問いに答えた。
「幻真と弾幕ごっこ……というより、もっと高度な弾幕ごっこをしていたわ」
「そ、そうだな」
霊夢の説明に俺が苦笑いしていると、魔理沙が近くに寄ってきて、目を輝かせながら頼んできた。
「目が覚めたばかりみたいで悪いけどよ、私とも勝負してくれないか?」
おっと、まさかの連戦。まあ、霊力と魔力はある程度回復してると思うし……
「いいよ、やろうか」
「そうこなくっちゃな!」
俺と魔理沙は外へと向かった。霊夢と霊妙さんは、呆れた様子で溜息を吐いていた。
「——ほら、魔理沙からきなよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて私から仕掛けさせてもらうぜ。修行の成果、見せてやる! 恋符『マスタースパーク』!」
魔理沙はいきなり極太レーザーを撃ってくる。一方の俺は、炎龍を召喚する。
そして、攻撃を防ぐためにもうひとつ唱える。
「防符『火之結界』」
炎龍を結界へと変化させた。
「炎龍って、なんでもありなのかしらね……」
霊妙さんが小さな声で呟いたのが聞こえた。今のところは試しでもあるが。
魔理沙のマスタースパークをなんとか受け止めたのはいいが、今のでおおかたの魔力を消耗してしまった。仕方ない、あの作戦を実行しよう。
——霊力を魔力に変換させる。
「幻真の魔力がどんどん増えているわね」
さすが霊妙さん、俺の増えていく魔力を感じとったようだ。それに、成功したようでよかった。
「くっ、ちょっと早いがこれで決めるんだぜ! 魔砲『ファイナルスパーク』!」
マスタースパーク以上の極太レーザーを魔理沙は撃ってくる。炎龍を結界の状態から龍の姿にもどし、俺は構えた。
「炎龍、決めるぞ! 龍符『一撃之炎龍』!」
レーザーのような速さで炎龍が突っ込む。そして、魔理沙が撃ったレーザーも飛んでくる。ふたつはぶつかり合い、爆発を起こした。
〈博麗霊妙〉
そこには、倒れたふたりの姿があった。幻真が召喚した炎龍の姿も消えていた。
「はぁ……お母さん、また運ばないといけないの?」
霊夢が疲れ果てた顔で言う。私は苦笑して頷いた。