第75話 予選リーグ 第二回戦
コラボ8話目。
今回は予選リーグ第二回戦目です。
記念すべき予選リーグ第一回戦目を終え、次の第二回戦目が始まろうとしている。火御利は観客席に戻って、幻真の隣に座った。
「お、火御利。お疲れ」
「ありがとう。彼ら、予想以上に強かったわ」
火御利は溜息を吐き、幻真を見る。幻真は腕を組み、彼女の感想に共感しつつも彼女を宥める。しかし、なんだか妖夢は気不味そうだ。
「妖夢、試合に出れなくて悔しいの?」
「そうですね。でも、今回の大会は見るに限ります! 別の世界から来た皆さんの戦い方を学びたいと思いますので!」
いつも真面目な妖夢。すると、先程火御利たちの相手だった絢斗が拍手をしながら幻真たちに寄ってくる。
「さすが妖夢ちゃん、真面目だな〜。火御利ちゃん、お疲れ〜。なかなか良かったよ〜。君たちの分まで勝ってくるからね〜」
「任せたわよ。負けた以上、応援することしかできないんだから」
「絢斗さん、応援してますよ」
「うっひょ〜! 妖夢ちゃんありがと〜う!」
妖夢に応援され飛び跳ねる絢斗。幻真はジト目で絢斗を見つめる。火御利は呆れていた。
「次は狼と想起よね?」
「そうだったな。俺は両方応援するぜ」
「俺はサテラちゃんとウィスプちゃんだな〜」
燃える三人。妖夢はいつでも始まっていいように、試合場を見つめていた。絢斗は火御利の横に座った。
控え室にて。想起は幻夢剣の手入れをしていた。相手は狼。少しは彼の戦闘方法を頭に入れている。油断さえしなかったら勝てるだろう。そう頭の中で思っていた。だが、大会が始まる前の人里で見た、身体強化。あれは厄介かもしれないと考えていた。
「味方はウィスプ、あの姉妹の妹……」
そして、別世界からやって来たサテラ。彼女の力はまだ未知。油断するわけにはいかなかった。
「お邪魔しま〜す!」
突然入って来たウィスプ。姉のランタンとは同行ではないのだろうか。想起は剣を置いて、ウィスプに視線を向ける。
「なんの用だ?」
「挨拶!」
意外な返答をされた為、少々驚く想起。しかし、気を取り直してウィスプの顔を見る。
「よろしく!」
「……それだけ⁉︎」
大いに突っ込む想起。ウィスプは少し照れる。そして、用事は本当にそれだけであり、部屋から出ていってしまった。
「ま、まあ気不味くはならなさそうだな……」
想起は剣を仕舞って、部屋を出た。
「——ちょっとルール変更ね。相手を殺さないと勝ちにはならないわ。勝利条件は二人を完全に倒すこと。復活については、ある人がやってくれるからね。それじゃあ、予選リーグ第二回戦目、始まるわよ。サテラ・アルレスト&狼ペア対、ホロウ・ザ・ウィスプ&想起ペア。試合開始」
アデルの掛け声に合わせ、戦いは始まる。想起は幻夢剣を取り出し、ウィスプは金色の十字剣を取り出す。そして、更に弾幕を設置。
一方の狼は刀と黒刀を抜く。黒刀の名は蒼悪。サテラは武器具がないため、様子見だった。
「僕から行くよ」
狼は強く地を蹴り、ウィスプに飛び込む。しかし、想起が目の前に現れ攻撃を受け止められる。受け止められている間に、設置された弾幕が狼に被弾。爆発が起こる。
爆発による爆煙が止んだが、そこに狼の姿はない。ウィスプは首を振り回し、必死に探す。だが、よく見るとサテラも先程の場所にはいなかった。
「上!」
「天空『地上に飛び立つ天使たち』」
サテラは両手を広げ、空から弾幕を振り落とす。二人は自分に飛んでくる弾幕だけを斬り、行動を最小限に抑える。
「隙あり。『居合斬り』」
「ぐあぁぁぁあ!」
想起の背後に回った狼が、居合斬りを命中させる。ウィスプはしまったと思い、弾幕を狼に飛ばす。しかし、素早く全ての弾幕が斬られてしまう。
「想起、大丈夫⁉︎」
「俺は大丈夫だ……油断するなよ……」
少々息を荒げながらもウィスプに忠告する。両者共に睨み合う。観客は息を飲み込んだ。どちらが先に動くのか。
——先に動いたのは想起。波動を相手に飛ばし、威嚇させたところをサテラの背後に回る。
「あっ!」
「弾幕『大魔道弾』!」
サテラは想起の放った弾幕に直撃してしまう。狼が唖然としている間に、ウィスプが仕掛ける。弾幕を出現させ、十字剣で狼に斬りかかる。しかし、片方の刀で弾幕を処理され、もう片方の黒刀で攻撃を防がれてしまう。
そして、狼も反撃を始める。ウィスプを弾き飛ばし、攻撃体勢へと移る。
「『投流千華』」
狼は刀と黒刀の柄を片手でそれぞれ持ち、ウィスプに投げる。ウィスプは反射的に二刀を止め、弾幕を設置してから狼に飛び込む。だが、刀を所持していなかったため攻撃をモロに受ける。
だが、実際はそう見えただけ。爆煙が止んだ後、狼は一つの刀を持っていた。
名を、ピアンブロー。創造した長さ百二十センチほどの刀である。彼はこれでウィスプの攻撃を受け止めたのである。
「この! 星符『南の金十字』!」
再び狼との間合いを詰め、十字剣で狼をぶった斬る。更に獄炎弾を彼に飛ばす。しかし、斬撃は受け止められ、弾幕も彼の盾によって防がれてしまう。
「後ろがガラ空きだ」
待機していた想起が狼の背後に飛び込む。だが、想起の背後から飛んできた弾幕によって攻撃を妨害される。その弾幕を撃ったのは、サテラだ。
「私はそう簡単にやられないよ。神力『努力は天才にかなわない』」
サテラは自分のステータスを大幅にアップする。狼もその様子を見て、自身のステータスを上げる。
「修羅解放ッ!」
狼は赤いオーラを纏い、再び想起との間合いを一気に詰め、斬撃を与える。想起は吐血したが、直ぐに切り替えて弾幕を飛ばす。
「私のこと忘れないでね! 焔符『地獄の種火』」
ウィスプは種火を体内に入れ、炎上して火の玉になってサテラに向かって飛んで行く。怨念弾による牽制と行動妨害があるため、厄介である。
想起は狼とサテラが火の玉状態のウィスプを追いつめている隙を狙って、『トリックルーム』を発動する。狼と想起の体が重くなり、行動が鈍る。サテラとウィスプは体が軽くなり、行動が素早くなった。
火の玉状態のウィスプにとっては好都合。素早くなったことによって更に移動が早くなる。行動が鈍った狼にとってはいい迷惑。いくら自分を強化しているからと、体は重い。
それは想起も同じ。見方や自分にも効果が掛かると知りながら発動した。幸運を願って。
サテラは体が軽くなっていた。敵である想起に対して反撃のチャンスであろう。そして、その場を変えてしまう。
「『天空の場』」
辺りの景色は天空へと変わる。観客たちは驚きを隠せなかった。サテラの"場を作る程度の能力"——色々な場を作ることが可能な能力である。
「へぇ、変わった所で害はなさそうだね」
狼は重い体を動かし、想起へと近付いていく。だが、火の玉状態のウィスプによって妨害され、吹き飛ばされてしまう。その隙に想起は空間を操り、狼の近くに移動して攻撃を与える。
「ぐぁぁあ!」
「勝負あったな、狼」
狼は気絶した——はずだった。想起が狼に幻夢剣を突き刺そうとしたその瞬間、突風が起こった。止んだ時、そこには血に塗れた狼の姿があった。
「なっ……」
思わず、耶麻人は声を漏らす。隣に座っていた緋闇も口元を塞ぐ。
「なんだ狼……まだやるのか?」
想起は半分呆れながら狼に問う。しかし、狼は俯いたまま想起に飛び込む。
——トリックルームの効果はどうなっている?
想起は疑問を心の中で問う。自分には効果は残っている、なぜだ。躊躇している間はなく、狼の攻撃を防ごうと試みる。しかし、体が重く腕が上がらずピアンブローの斬撃を受けてしまう。
ウィスプはマズイと思った。今の狼は先程までの狼とは違う。そう、直感した。
「想起!」
火の玉状態で想起が飛んでくる先に待ち伏せし、飛んできたと同時に人の状態に戻って受け止める。
「ウィスプか。助かった……トリックルーム解除。今の狼は風魔神の身だ。さっきまでとは違う」
ウィスプは想起に告げられ、冷汗を流す。だが、その時はまだ油断していた。そう、その時は……
「ウィスプ、決して油断は——なッ⁉︎」
隣にはウィスプの首を持ち上げる狼の姿が。そのままウィスプは意識を失い、消えた。だが、見てる暇はない。その隙を狙って想起は攻撃を繰り出す。
「斬符『幻金夢充斬』!」
狼は対応に遅れ、斬られてしまった。そして意識を失い、消えていった。お互い残るのは一人。サテラ、そして想起。果たして、結末はどうなってしまうのか。
二人は見つめ合う。どちらが先に動くのか。いや、先に動かなければ殺られてしまう。
——そして、動いたのは想起だった。彼は素早くサテラを斬った。
「勝者、ホロウ・ザ・ウィスプ&想起ペア」
観客たちは歓声を上げた。想起は呆れるように得物を収める。
「勝者は想起とウィスプだったな」
「そうだね〜。サテラちゃん可愛かったな〜」
「あんたはやっぱりそこなのね……」
話し合う幻真、絢斗、火御利。そこに、耶麻人と緋闇、磔がやって来る。
「次は俺たちか」
「磔〜、気を抜くなよ〜」
「お前に言われたくないがな……」
四人は控え室へと向かうのであった。
さて、次回は三戦目。一体どのチームが勝ち上がるのでしょうか。