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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第弐章 異世界の者たち
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第70話 疲れと進歩

コラボ3話目。日を空けすぎてしまい、すいません。

 活躍は縁側に腰を掛け、観戦することにした。彼自身、終作が本気を出すことはないだろうと思っていた。実際その通りなのだが。


「二人でかかって来なよ〜」


 終作の煽るような口振りに、妖夢は不安げな思いで幻真に呼びかける。


「幻真さん……」


「妖夢、俺たちの力を見せてやろう。それで、アイツにはさっさと帰ってもらおう」


「そんなこと言わないでくれよ〜」


「ならそんな事をするな……」


 軽く突っ込む活躍。幻真と妖夢も共感するように頷く。終作はその様子に苦笑していた。


「まあ、精々俺を楽しませてくれよ〜」


 終作はそう言って、一瞬で妖夢の目の前に現れる。彼女は体が動けずにいた。幻真は舌打ちをし、真神剣で終作に斬りかかった。だが、攻撃は当たらなかった。避けられたのだ。


 続いて妖夢も反撃を行う。楼観剣を抜いて終作に斬りかかる。しかし、ヘラヘラしながら避けられてしまう。そして彼は妖夢の隙を狙って、デコピンを繰り出す。


「あっ……」


 妖夢は倒れてしまう。幻真は慌てて彼女に駆け寄り、体を起こす。その様子に、終作はニヤニヤとしている。一方の活躍は、彼のふざけた行動に呆れていた。


「くそ……斬符『炎風斬(ウィンドフレイム)』」


 幻真は終作に攻撃を仕掛ける。だが、呆気なく避けられてしまい、悔しそうな表情を浮かべる。彼に続いて、妖夢が追撃に入る。


「獄神剣『業風神閃斬』!」


「効かないよ〜」


 やはり彼女の攻撃も避けられてしまう。活躍は腕を組んで、様子を伺っている。すると、隣にお茶が置かれた。見上げると、そこには西行寺幽々子の姿があった。


「お客さんなんて珍しいわね〜。ここの住人じゃないでしょ〜?」


「まあな」


 幽々子は活躍の隣に座る。よく見ると、彼女は沢山の饅頭を頬張っていた。その相変わらずな様子に、活躍は苦笑した。


「幽々子様、またあんなに食べて……」


「妖夢、余所見するなよ」


 余所見していた妖夢に対して、幻真は声をかける。終作は気持ち悪い笑みを浮かべながら、幻真たちに襲いかかる。幻真は咄嗟に攻撃を防ぎ、その隙に妖夢が攻撃を仕掛ける。


 しかし、なぜか終作は攻撃を避けなかった。呆気に取られていた妖夢は咄嗟に我に戻り、幻真と共に間合いを取った。


「彼は何をするのかしら〜?」


「……発狂じゃないか?」


 言い合う二人。前触れなしに、活躍の言った通り終作は発狂した。幻真と妖夢は息を飲み込み、様子を伺う。


「ふぅ……それじゃあ、俺は帰る」


「え……?」


「二人の思いは受け止めた。頑張れよ〜」


 終作はよくわからないことを言い残し、次元の狭間へと姿を消した。


「よくわからなかったが……活躍、どうするんだ?」


「恐らくだが、あいつは帰っていないな。先に帰って置いて行かれたら困るしな。という訳で、暫しの間同行させてもらう」


「あ……ああ。それは構わない」


 活躍は立ち上がり、取り敢えず冥界を後にすると告げる。


「なら俺も付いて行こう。いいだろ?」


「ああ。妖夢はいいのか?」


「……私も付いて行きます」


 その様子を見ていた幽々子が、最後の饅頭を食べ終え、妖夢に近付く。


「私は大丈夫だから、彼氏とゆっくりするのよ〜」


「ゆ、幽々子様……!」


「照れないの〜。貴方も、宜しく頼むわよ〜」


「ああ」


 こうして幽々子に別れを告げて、白玉楼を後にしたのだった。








 所戻って人里。緋闇と狼の戦闘は、緋闇の勝利となった。人々は感嘆の声を上げた。


「全く、せめて勝ってくれよな」


「想起、そんなカッカと……」


「わかってる。狼を回収してくる」


 想起は狼に近付いていく。一方で、緋闇は一息していた。と、人々の間を通って幼い女の子が緋闇に駆け寄る。その少女、サテラ・アルレストは、洋菓子を口に加えていた。


「この世界に洋菓子はあったか?」


 サテラを見て、疑問に思った想起は呟く。洋菓子がないとなると、恐らく別世界の者。否、どう考えてもそうだった。


「緋闇〜、大丈夫〜?」


「うん。私なら大丈夫」


「良かった〜!」


 サテラの笑顔の可愛さに、男たちは彼女に惚れる。想起は鼻で笑い、狼を担ぐ。


「お兄さん! 私も付いて行っていい?」


 サテラは想起を呼び止め、そう願う。彼は彼女を見下ろしていたが、またもや鼻で笑って、それを許可した。


「やった〜! 緋闇! 早く行こ!」


 全く……無邪気なものだと、彼は思った。








「——どうした絢斗! そんなものじゃないだろう!」


「へへっ、当たり前さ、時龍!」


 こちらは変態たちの戦闘の様子。良太は退屈そうに観戦していた。


「時龍、これを受けてみろ! 斬符『現世斬』!」


「なっ、速い!」


 妖夢の現世斬より遥かに速く、威力も強かった。時龍が攻撃を受け止めた後、更に二回程、居合切りを繰り出した絢斗。時龍は苦戦を強いられる。


「へへっ……次は俺の番だ! 龍派『蒼龍剣』!」


「そんなものが通用するとでも〜?」


「んなっ……」


 振り下ろした龍神剣が呆気なく防がれてしまう。時龍は舌打ちをし、大きく下がる。絢斗はそこを追撃し、刀を斬り払って弾幕を時龍に飛ばす。時龍は慌てて腕をクロスさせ、弾幕を防いだ。


「ゴホッゴホッ……まだまだぁ! 剣技『神炎龍』!」


 龍神剣に炎を纏わせ、力強く地を蹴り、絢斗に飛び込む。そして、時龍の右目には赤い炎が灯る。しかし、攻撃は素早く避けられてしまい、腹部を刺される。


「んなっ——カハッ……」


「あ、やべ〜、時龍ごめ〜ん、今直すから」


 絢斗は自分の能力で、時龍の腹部を回復させる。すると、直ぐに元通りになっていた。


「ふぅ……やっぱり絢斗は強いな。俺も修行、ちゃんと頑張んねぇとな〜!」


「頑張れよ〜。まっ、俺の実力を抜かすことは無理だろうけどな〜」


 二人は笑い合いながら固い握手を交わした。その様子を見て、良太は安心した。これで一息吐けそうだ。


 と、そこに一人の男が現れる。名はジラ・ヘファイストス。少しだけ長い栗色の髪を後ろで束ねており、頭からは金属光沢をもつ歯車の欠片のような湾曲した一対の角が生えていた。


 細めの翼を持ち、また銀色の金属光沢を持ち、尾は金属のアームをより頑丈にしたようなものである。虹彩は青く、瞳は縦割れている。


 服装は灰色の袖や裾がダボダボのフェルト地の服を着ており、そこにこれまたダボダボのオーバーオールを着ていた。


「龍人……か?」


「ええ。貴方とは初対面でしたか? 時龍」


「多分な。てか、なぜ俺の名前を? ……まあいいか。んで、絢斗と良太は会ったことあるのか?」


「うーん、確か〜……忘れた」


 絢斗の返答に、ずっこけそうになる良太。その様子に、ジラは苦笑していた。


「それでは、博麗神社に行こう」


「なぜだ?」


「それは行けばわかるよ」


 ジラが何を企んでいるのか、時龍にはわからなかった。名前を知っているのにも驚きを持ってはいたのだが。








 こちらは火御利の家。彼女もまた、異世界の住人と会話していた。だが、気まずいのはやはり彼女。その理由は、訪問者にあった。


 時間は遡り、数分前の出来事である。誰かが家の扉を叩く。火御利は慌ててそちらに向かうと、そこには二人の人物がいた。


 一人の人物の名は桐月とうげつアルマ。彼は髪の色が赤く、毛先だけが青い。そして癖っ毛の多いショートカットに、二本の小さいツノが生えていた。


 また頑丈に作られた武装ズボンを履き、返り血のような柄の白いタンクトップを着ていた。




 そして、もう一人の名は彼の世界の水橋パルスィだ。


 火御利が出てきた瞬間、パルスィは彼女を睨んだ。彼女は寒気と悪寒で身震いした。


「なんだ? 寒いのか?」


「え……あ、いや、気にしないで」


「そうか。まあ、もう秋だしな〜」


 アルマは大丈夫だと確信する火御利。だが、どうにもパルスィには慣れそうにない。しかし、避けるわけにもいかない。なんとか交友関係を生み出そうと、彼女は決心した。


 そして時は戻り、火御利は気まずい時間に居たのだ。アルマはその様子には勘付いていた。


「パルスィ、この人は大丈夫だって」


 無言のまま殺気を放つパルスィ。アルマはどうしようもなかった。火御利は心が折れそうになりながらも、速くこの空間から脱出したいと思っていた。


「すまない火御利。お茶を淹れてもらえないか?」


「あ……ええ、わかったわ」


 火御利は台所へと向かっていった。アルマは溜息を吐く。そして、パルスィに喋りかける。


「パルスィ? あの人は狙ってなんかいないよ?」


「それはわかっているけれども……アルマに何をするかわからないじゃない」


「大丈夫。幻真の世界の住人はみんないい人さ」


 パルスィはアルマに言われて少し考える。すると、火御利がお茶を持ってきた。


「はい、お待ちどうさま」


「お、サンキュー」


「あ……ありがとう……」


「え……?」


 火御利は驚いた。先程まで無言で睨み続けていたパルスィが、やっと口を開いてくれたからだ。アルマはホッと一安心。


「ありがとうって!」


「うん、どういたしまして」


 パルスィは、火御利に心を開いたのだろうか。








 博麗神社では、霊夢の母親、霊妙がとある二人の相手をしていた。


 一人、ホロウ・ザ・ランタンは黒白の服に白い炎の灯った黒いランタンを周りに浮かべている。


 もう一人、ホロウ・ザ・ウィスプは白黒反転したランタンの服で、黒い炎をむき出しで浮かべていた。


 だが、霊妙はとても困っていた。二人は、幻真と遊びたいと言っているのだ。だが、残念な事に幻真は今、白玉楼にいる。帰ってくるまでの辛抱だった。


「おばさーん、幻真を呼んでよー!」


「呼んで呼んでー!」


「だから今は留守なのよ……」


「おばさんのケチー!」


「ケチケチー!」


 若干イラつきを見せる霊妙。だが、必死に耐える。もう頭が爆発しそうなぐらいに。


「あら。貴方楽しそうね」


「どこがよ……って、貴方は誰?」


 いつの間にかいた一人の少女。彼女の名前は、アデル・フェルス・フリン。彼女は淡い桃色の髪をしていた。彼女もまた、とある男とこの世界にやって来ていたのだ。


「私はアデル・フェルス・フリンよ。幻真という男が来るまで、私がその子たちの相手をしてあげるわ」


「そう、助かるわ」


 霊妙はフラフラと縁側に腰をかけるのであった。

登場していないのは、あと数人かな。

次回は博麗神社へゴーです。

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