第68話 別世界の者たち
コラボ、友情想始動。
ある日、突如他の世界の者たちがこの世界にやってきた。それも数十人以上。
一緒に来たものは一部の者と逸れ、一度訪れた事のあった者は景色を見渡し、別世界から来た者同士合流したりもした。
そこは、木々の生い茂る森。そこに一人の鬼神が八つ当たりに木を殴っていた。それらはどんどん折れていき、鬼神の周りには倒木だらけ。
「相変わらずキレ症だな」
「ああん? 誰だテメェ——って……」
その鬼神、和正が目にした人物。相手も同じく鬼神であり、名前は山上国下。以前にこの二人は手合わせをした事があるが、悉くこの和正は勝っていた。
「確か国下だったな? リベンジでもしに来たのか」
「当たりだ。今回こそ無念を晴らすとき!」
いきなり拳同士が物凄い勢いでぶつかり合う。そこから衝撃波が走る。
和正は相変わらずのキレた表情、国下はニヤリと口を動かす。その瞬間、和正は国下の顔面をストレートパンチ。そのまま国下は大木に激突し、その場に座り込む。和正は表情を変えることなく、イラついていた。
「前の俺とは違うんでな」
「だろうと思った」
いつの間にか、国下は和正の懐へ。そして腹部を思いっきり殴り飛ばす。今度は和正が飛ばされる。国下はそのまま追撃し、アッパーキックで空中に舞い上げる。そして、背部を踵落とし。和正は地面に急落下。
しかし、そこには和正の姿があった。
「俺の能力を教えて欲しいか?」
「……ほう、なんだ?」
「四つあるが……お前に厄介なこの二つを教えてやろう。"不死身"と"引力"だ。まあ、全て厄介だろうがな」
国下は驚く様子も見せず、和正を眺める。そして二人が息を吐いた瞬間、再び拳同士がぶつかり合う。その光景を、これまた一人の人物が眺めていた。それを、彼らが知る由など無かった。
「なるほど……三つ目は力を倍増させてくるか」
「その通りだ。まあ、わかったところでどうしようもないがな」
隙を狙って和正の右フック。国下は吹き飛ばされる。そこを追跡し、ストレートパンチからの頭へと踵落とし。そして、タイミング良く岩にストレートパンチを喰らわす。
砕けた岩に埋もれた国下は、痛みがなさそうに笑っていた。その声を、和正は眉を吊り上げて警戒する。
「おい、手加減なんて無用だ。リベンジにしては優しい事をするものだな」
「お前は……か弱いものは殺さないんだろう?」
国下に言い返された和正は、言葉が詰まる。その隙に、瓦礫から這い出した国下が和正をアッパー。和正は強く舌打ちをし、構える。
「『龍魔拳』」
「受け止めてみせよう!」
国下の能力は"縁を力とする程度の能力"。このお陰で和正と互角を保っている。離れていた一人の人物も、興味深そうに目をやる。
「次は俺だ、鏡面『蜃気楼』!」
国下がそう唱えると、妖力を使って分身する。分身した全員が妖力を乗せた拳を和正に放つ。和正は避けきれず、直撃。そのまま吐血し、地へとふらふらと降りていく。だが、和正が国下を見上げた時には既に元に戻っていた。潰された肉体も。
「そんなに強かったのか」
「だったらどうした、鬼神」
「お前も鬼神だろう」
次は両者の蹴りが顎に炸裂。両者は素早く体勢を整え、ストレートパンチを喰らわせに行く。そして、衝撃波が走ると同時に頭突き。両者は睨み合いながらも、笑っている。
「あの二人、なかなかの腕ですね」
「お〜い良太——って、あの鬼神は……!」
「絢斗さんの知り合いですか?」
「いいや……ただの他人だ!」
ズゴーとこける別世界から来た泊谷良太。そしてもう一人は、相沢絢斗。しかし、良太は絢斗のお目付役となって来ていた。対する絢斗は暇潰し。
「実は知っているけどね〜。俺は女性にしか興味がないから、さっさと可愛い子見つけに行こ〜っと」
「あ、絢斗さん! 仕方ないですね、追いかけるとしましょうか」
良太は名残惜しくも絢斗を追いかけるのだった。
場面は鬼神達の方に戻り、その闘いは五分五分。両者共余裕そうに見えるが、意外にキツそうだ。和正も息を荒め始めている。国下はその瞬間を逃さない。彼は左フックを放ち、右足で反対の帆を蹴り飛ばしストレートパンチを炸裂させる。
随分と和正が余裕そうだが、そうでもなかった。いくら不死身でも、体力は無限ではないからだ。国下はここを狙ったのだろうか。
「どうした、そんなものか?」
「うるせぇよ。こんなハイバトルを久々にしたなと、考え事をしててな……」
「ワザと油断を見せていたのか。以前のはハイバトルじゃないのか? まあ一方的でもあったが」
和正はフッと笑って、国下にアッパーを喰らわせる。
「今は怒りが腫れて清々しいのさ!」
その言葉に、国下はニヤリと口を動かした。そして、こう叫んでストレートパンチを喰らわせた。
「俺もだ!」
場所は変わって人里。ここに一人の鍛冶職人がいた。名は想起。今日は珍しく休んでおり、里をぶらぶら歩いていた。と、見たことのない人物が和菓子店に入ったのを見つけ、咄嗟に後を付けた。
「いた」
さっきの人物を見つけた想起。しかし、先程からたくさんの和菓子を頼んでいるように見える。取り敢えず席に座り、温かいお茶を頂くのであった。
数分経ち、隣に先程の人物が。どうやら女性だった。気になったので、声をかけてみた想起。彼女の名前は霧明緋闇。会話して想起がわかったことは、怖くてツンデレだったことだ。だが、悪そうな人ではないと判断。そして驚くことに、彼女は彼女の世界での魔理沙の先輩だった。
「どうもこんにちは〜。みたらし団子をお願いしま〜す——って、あれ? 想起?」
「俺の名前を呼んだのは狼か? 奇遇だな」
彼の名前は狼。狼天狗という種であり、珍しい類でもある。しかし、彼には独特の好物があり、それがみたらし団子。毎日良くこの店に買いに来ているのである。
「そのお隣さんは?」
緋闇について話す想起。狼は直ぐに納得。一通りの挨拶はできたようだった。
みたらし団子を串三本分皿に乗せて想起の向かい席に座る。想起の目の前ではみたらし団子を食べる狼が、隣では和菓子を頬張る緋闇の姿があった。そんな二人が食べ終えるのを、お茶を飲んで待つ想起だった。
次回は鬼神の対戦結果、絢斗達が始動、緋闇との戦闘、新たなキャラクター登場の予定です。