第67話 モヤモヤ晴らし
またもや日が空きました。今回で文化帖編終了です。
「ほぉ、まだ受け止められるほどの力が残っていたか。だが、お前の体力も底をつく。さっさと諦めろ」
「何度言わせるんだ。俺には大切な……守る人が出来たと言ってるいるだろう! 希眼『橙眼』!」
「回復すると同時に、パワーも上がると……ふんっ、最後の悪足掻きか。闇討『シャドウクロー』」
「槍符『光槍』!」
「——はぁ、はぁ……なんだったんだ今のは……」
「貴方の意思、強く受け取りましたよ」
この声は一体……それに、どこかで聞いたことのある声だ。誰だっけな……
「——思い出した! 霊夢と戦ってた時に空から落ちてきた奴だ!」
「奴とはなんですか。そんな言い方をしないでください。さてと、本題に戻しますが、貴方の意思はキッチリと受け取りましたよ」
もしかして、さっきの悪夢はこの人が見せていたということか? 可能性はあるよな。
「なあ、お前強いだろ?」
「強いですが?」
「一回手合わせしてくれないか?」
その人物はクスクスと声を出して笑い、フードの内側は笑顔のような気がした。
「構いませんよ。というか、貴方は自分の目的を見失っていませんか?」
「目的? えっと、あ、そうだ! 永遠亭に行くんだったな。悪い、また今度な!」
「ええ、いつでもお相手しますよ——」
俺はその人物に手を振りながら、迷いの竹林へと向かうのだった。
「——龍使い」
〈射命丸文〉
さてと、最後は妹紅さんです。確か寺小屋の先生をされていた筈なので、このまま人里に向かいましょう。
「ん? あれは……幻真か?」
「え? 幻真さんですか?」
下の森を指す想起さん。私は目をやる。
「ほんとですね、あれは幻真さんに違いありません。でも、どこに向かっているのでしょうか?」
「たぶん永遠亭だろうな。時龍の様子でも見に行くんじゃないか?」
なるほど、時龍さんですか。確かに自分で軽い傷だって言ってましたけど、実際重症ですからね。
「俺たちは取り敢えず最後の取材を片付けるぞ。文、気合い入れて行けよ」
「はい!」
「——まさかこう都合良く会えるとは……」
「いや〜、私も昼飯にしようと思ってたところでな! 慧音を誘ったら、私は先にすることをするって言って、一人で来てたんだ。いや〜、ほんとここの飯は美味いな!」
今は先に昼食を取るために、先日やって来たお店に来たところ、偶然妹紅さんと会いました。
「で、幻真の話だっけ。そういや彼とは戦ったことが無かったな。一度相手してみるのも良さそうだ」
なるほど、妹紅さんは幻真さんの相手をしたことが無いと……ふぅ、やっと皆さんの取材が終わりましたね。いや〜、長かったようで短かったです。想起さんには感謝永遠ですね。
「ったく、時龍の野郎、見舞いに来たってのにあんな態度だなんて……」
ブツブツと喋る人物が隣の席に座る。
「すいません、いつもので」
「あいよ!」
私はゆっくりと隣を見る。そう、その人物は——
「幻真さん⁉︎」
「ん、文か。それに妹紅と想起も。何してたんだ?」
「取材です。幻真さんについての」
それを聞いて幻真さんはビックリする。それはそうでしょう。コソコソとやっていたんですから。
「取材って事は、纏めるのか?」
「はい! 早くて半日です!」
『早!』
店内にいた皆が、声を合わせ言った。私は舌を出しながら照れる素振りをする。
「でも、配るのは明日です。幻真さんには特別に、今夜その記事内容をお見せしますね」
「お、おう頼んだ」
私は敬礼し、店主にお礼をしてから出口へと向かう。
「あ、想起さん! ありがとうございました! 私……想起さんの事が——好きになっちゃいました」
私は顔を赤らめ、そのまま外へと出て飛んで行った。
〈幻真〉
文、この取材で恋人を作ったとはな。想起も溜息を吐きながらも、顔を赤らめてやがる。すると、妹紅が突然肩を組んできた。
「恋の芽生えって感じだな。あっはっは!」
「幻真……ちょっと一戦、してくれないか……?」
「お、おう。構わんぞ」
かなり照れてらっしゃる。想起の意外な一面って所だな。
俺と想起は店内から出る。里人が道を通る中、位置に着く。
「はーい皆さーん、今からちょっと危ない事をするんで気をつけてくださいね〜」
「時龍? もう大丈夫なのか?」
「平気さ。俺は誘導しとくから、思う存分やっちゃいな〜。ほら〜危ないですよ〜」
時龍にもあんな一面が……意外だ……
銀髪の少女がその人混みを掻き分ける。そこにいるのは、三人の人物。一人は誘導、二人は如何にも今から何かをする様子。と、店内から出てくる一人の少女、妹紅。彼女もまた、その試合を観戦するようだ。
「いくぜ、光明『雷光撃』」
一人の男、幻真は攻撃を仕掛ける。対して、もう一人の人物も攻撃態勢に移り、攻撃に対応する。
「波動『オールインパクト』」
もう一人の男、想起は幻真の出した弾幕を一掃する。周りの里人からは、声援が上がる。そして、銀髪の少女、妖夢も目を疑った。
「まだまだぁ! 氷弾『氷雹弾』!」
「幻夢剣——幻斬『幻界節』」
想起は幻夢剣で幻真の出した弾幕を斬る。すると、その弾幕は想起をすり抜けた。これには皆、またもやビックリ。だが、幻真はニヤリと口を動かす。
「開眼『青眼』からの龍符『炎龍』!」
全長五メートル程の龍が幻真によって召喚される。これにもまた皆ビックリ。だが、妖夢は龍については知っていた。
「雷符『青雷』」
「雷防『雷電結界・肆』からの龍符『三方炎龍』!」
想起の攻撃を防いだ幻真は、その後攻撃を繰り出す。想起は慌てて、空間を作り逃げ込む。その光景に、里人は周りの人と騒ぎ立てる。幻真はそれを見てニヤリと口を動かし、移動する。
「ここだ!」
「ぐふっ……」
幻真が斬りかかった所に、空間を作り出した想起が出てきて斬られてしまう。人々は歓声を上げる。
一方の時龍は、その光景をニヤニヤと見ていた。そしてまた一方で、上空からその様子を見ていた人物がいた。その人物は、狼。今日もまた、みたらし団子を買いに来ていたのだった。
「幻真と想起か……時龍はニヤニヤしながら観てるし、僕も観戦しに行こうかな。もちろんみたらし団子を買ってから」
狼はそのまま、和菓子店へと直行するのであった。
「はぁ、はぁ……喰らえ、弾幕『大魔道弾』」
「あの弾幕は……まずい!」
咄嗟に弾幕にしがみ付く幻真。その様子に妖夢、妹紅は唖然としている。人々はざわざわとしている。時龍は相変わらず、ニヤニヤしている。
「『魔力吸収』」
「吸収……なにっ、魔力が減っていく……」
幻真が使用した技は、あらゆる魔力を含む物を魔力のみ吸収するといった、無敵と言わんばかりの技である。その光景を見た妖夢は一安心。
「幻真の魔力が増えたね」
「あ、狼さん」
「やあ妖夢。僕も偶々この光景に遭遇したもので。あ、みたらし団子食べる?」
「あ、頂きます」
さて、幻真は魔力を吸収した。そして幻真は構える。想起も冷汗をかきながら、幻真の攻撃を待つ。
「これで終わりにするか。斬符『冥抄斬』」
「ならば……斬符『幻金夢充斬』」
幻真の剣にはあらゆる属性が纏い、想起の剣には金色のオーラが纏う。そして、剣と剣が交じり合い爆発が起こった。
数分足らずして、爆煙が止んで空を見上げる。しかし、人の姿は無い。下を見ると、二人を担ぐ一人の男、時龍の姿があった。
「はーい皆さん、二人が気絶しちゃったので今回は終わりでーす。はいはい、かいさーん」
人々はブツブツと話し合いながらも、その場を離れた。人々が減っていくと同時に、妹紅、妖夢、狼は時龍に寄る。
「時龍さん、幻真さんは私が……」
「ん〜? ほいよ、君の彼氏さ——ぐへっ」
時龍が言い終える前に刀で刺される。その光景に狼は溜息、妹紅は苦笑。
「よくその傷で立ってられるもんだ」
「俺はこんなもの慣れてるんでね〜。ほい、幻真。文がいないから想起は俺が運ぶ。じゃ〜な〜」
時龍は想起の鍛冶屋の方向へと歩いて行った。妖夢は幻真を抱えて、白玉楼へと戻るのであった。
「さて、私たちも戻るとするかね」
「そうですね。それでは妹紅さん、また今度」
こうして、文の取材と共に激しい一戦が終わったのであった。
さて、次章から外伝の始まりです。基本的に三人称視点で書きたいと思いますので、よろしくお願いします。