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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第弐章 異世界の者たち
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第66話 覚悟の念

遅れました。今回は伍でございます。

 〈射命丸文〉



 あれからそんなに大きな出来事もなく、気付けば朝になっていました。私が起きた時には既に妖夢さんと想起さんは起きていて、幽々子さんは気持ちよさそうに寝ていらっしゃいました。


「文、朝飯は頂かずに取材を進めよう。妖夢と話は付けてある」


 確かに、取材を進めた方がいいですね。妖夢さんたちに迷惑をかけるわけにもいきませんし。


「と言うわけで妖夢さん、昨夜はありがとうございました。幽々子さんによろしくお伝えください。あと幻真さんにも」


「あの、文さん……取材、引き続き頑張ってくださいね!」


 妖夢さんに見送られ、私たちは白玉楼のある冥界を後にしました。






 私は取材相手の藍さんを呼ぶために、想起さんにスキマを開いてもらっています。因みに、今は迷いの竹林の中にいますね。


「なんだ取材とは。橙にもしていたあの取材か? なら手短に終わらせよう。メモの準備はいいな? 取り敢えず、幻真は強い。私と弾幕ごっこなどをした事はないが、恐らく勝てるか、互角か……自身があるなと思うが、そうでもない。紫様の式神としても、強くいなければならないからな。と、以上だ。私は忙しいのでお引き取りさせていただこう」


 一気に話され焦りましたが、なんとかメモをするのは追い付けたので良かったです。私は背中を向ける藍さんに対し、頭を下げて礼をしました。


「藍の奴、本当に手短だったな……」


「お忙しいところ呼んでしまったわけですし、仕方がないです。それに簡潔でしたし、助かりました。それでは、次へ参りましょう」


 次は永琳さんと輝夜さんですね。お二人共永遠亭におられるはずなので、直ぐに取材ができそうです。さあ、永遠亭へ直行です!


「文、あと何人なんだ?」


「ごく僅かです! 想起さん、遅れないようにお願いしますよ!」


「お、おう……」


 クライマックス直前になってやる気が湧いてきましたよ〜! 勢いのあまりに余所見しないように気をつけなければ! さもないと竹に——あいだ!


「何やってんだよ全く。ほら、大丈夫か。慌て過ぎだ。もう少し落ち着いていけ」


「すいません……そ、それでは気を取り直していきましょう」


 次は安全に進んでいきますよ!






 あれからは何事もなく永遠亭に着きました。それにしても、竹に当たってしまった時に頭を打った所が腫れてしまったようです。自業自得ですね……と、鈴仙さんがいらっしゃいました。


「あ、想起さんに文さん。今日はどうされたんですか? 恐らくですが、師匠か姫様に御用で?」


「ご察しの通りです。どこかの部屋にお二人を呼んでくれませんか? 内容は簡潔に伝えていただければいいので」


「わかりました。それでは、中へどうぞ」






 連れてこられた部屋は、永琳さんがいた部屋。診察室でしょうか。永琳さんは体をこっちに向け、眼鏡を取る。


「診察かしら?」


「いえ、師匠と姫様に御用があるとのことです」


「永琳と私に何か御用かしら?」


 偶々通りかかったであろう、輝夜さんに話しかけられる。私は簡潔に内容を説明した。


「内容は——幻真について? 彼とは最近あっていないわね。試したい薬があるというのに」


「し、師匠、人体実験はダメですよ」


「私はね、もう少し彼の事に付いて知りたいかしら。あまり彼の事を知らないから」


 な、なるほど。永琳さんはちょっと危ないですが、輝夜さんは幻真さんの事をもっと知りたいと……


「永琳さん、輝夜さん、ありがとうございました!」


「お安い御用。あ、そこの貴方。この薬を持って行きなさい。きっと役に立つはず……」


 永琳さんは想起さんに液体の入ったボトルを渡す。変な物じゃないといいのですが……というか、以前に幻真さんにも何か渡してたみたいですけど……まあ、その話は置いておきましょう。


「というか、彼はよかったのかしら?」


「彼? って、お前かよ……」


 隣の部屋から現れたのは、時龍さん。もしかしてですけど、あの時の妖夢さんの取材で……


「ハハッ、軽症で済んだから良かったぜ」


 あれで軽症なんですか⁉︎ じ、時龍さんの体はいったいどうなってるんですか!


「まあ、まだ安静にしておけだってさ。もう普通に動けるんだけどな〜」


「多分、人体実験するつもりですよ。永琳さんは……」


「そんな事しないわよ」


 え、永琳さんの目が……時龍さんには申し訳ないですが、頑張っていただきましょう。


「そ、それでは私たちはお引き取りさせていただきますね。ありがとうございました」


 診察室を後にし、鈴仙さんに出口まで案内してもらった。






「——なあ、文。さっきから浮かない顔をしているみたいだが、次の取材相手、そんなに悪いのか?」


「は、はい。一人はまだしも、もう一人のお方が……」


 現在、三途の川に来ております。ご察しが付いたのではありませんか? そうです、小町さんと閻魔様の映姫さんです。あの時はとても説教をくらいましたからね。嫌な思い出しかないです……


「お、死人じゃないのかい。という事は、四季様に御用だね?」


「はい。小町さんにも用があるのですが」


「移動中なら構わないよ。最近サボり過ぎたせいで四季様に説教喰らってね。手を休める訳にはいかないんだよ」


 小町さんも苦労されてますね……それでは、取材に移りましょう。






「——幻真? あぁ、あの幻想入りした彼だね。最近は会ってないな〜。少しぐらい顔を出してくれてもいいのに」


 何かと面会が少ない人が多い……と。


「取材はあと何人なんだい?」


「映姫さんと、他に三名の方です」


 合計四名ですね。あともう少しです!


「着いたよ。四季様のご機嫌が良ければ大丈夫だと思うけど、頑張るんだよ」


「小町さん、ありがとうございました!」


 私は小町さんに頭を下げ、先へと進んでいった。ご機嫌って、小町さんに掛かっているんじゃ……






「——この部屋ですね。二回程扉を叩いて……映姫さーん、お時間宜しいでしょうか〜?」


「この声は文さんですか? いいですよ、お入りください」


 私は想起さんと共に大きな扉を開け、中へと入る。辺りを見渡しながら、映姫さんに近付いていく。


「今日は何用で?」


 両手で悔悟の棒を顔元で握り締め、問いてくる。私は咄嗟にメモ帳を取り出し、取材に来たと説明する。


「取材ですか……それもいつもとは、また変わった内容……わかりました、お答えしましょう」






「——幻真さんについては、以前に戦闘狂と話しました。しかし、彼には守るべきものができる。そうなると、狂っていてはいられません。きっと変わることだろうと、私は願っています。結果白です」


 結果白と……これは何で決めたんでしょうか?


「映姫さん、ありがとうございました!」


「お安い御用です。引き続き頑張ってくださいね」


 一礼し、大きな扉を開けて部屋から出る。


「なんだ、まともな人じゃないか」


「は、はい。一安心しました」


 さて、ラストスパートとなりましたね。残るは紫さん、妹紅さん、萃香さんとなっていますが……まずは萃香さんを探しに博麗神社に行きましょう。もしかしたら、いらっしゃってるかもしれませんからね。


「幻真は大丈夫なのか?」


「いたら萃香さんだけ連れ出します!」


「お、おう……」


 紫さんも霊夢さんに呼んでいただければ良さげですね。妹紅さんは寺小屋に行けば会えると信じましょう。






 さて、博麗神社の上空に着きました。どうやら霊夢さんは縁側でお茶を飲んでいるようです。霊妙さんは人里でしょうか。幻真さんがおられるかは分かりません。


「やあやあ霊夢。一杯やらないかい?」


「こんな時間から飲んで大丈夫なの? 私は遠慮するわよ」


 案の定、萃香さんがやって来ました。それでは、直行すると致しましょう。


「よっと。どうも萃香さん」


「わわわっ、急に空から降ってきたらビックリするじゃないか。その様子だと、私が来るまで見てたね? 鬼に嘘は隠せないよ」


 異論なしですね。嘘を付く必要もありませんし。


「それでは、取材を行ってもよろしいでしょうか?」


「ああ、構わないよ。何が聞きたいんだい?」


「幻真さんについてです」


「幻真……か」


 萃香さんは何やら考え込んだ後、口を開いた。


「久しぶりに一杯、いや、数十杯したいね。しかも強いし。因みに今日は、どこかに出かけてるらしいね」


 メモメモ……っと。やはり幻真さんは外出されていましたか。


「なあ、萃香。一つ聞いていいか?」


「なんだい人間?」


「星弥和正、星弥喜響の二人を知らないか?」


 想起さんは私が知らない二人の名前を萃香さんに問う。一体誰でしょうか。


「うーん、誰だっけな〜。中々思い出せないや」


「そうか……ありがとう」


 想起さんはやや残念そうな顔をする。しかし、私は何もわからない。


「私のこと忘れてないわよね?」


「あ、はい。霊夢さん、紫さんを呼んでいただいて宜しいでしょうか?」


「別に構わないわ」


 霊夢さんは、お茶を置いて立ち上がり、スゥッと息を吸って叫ぶ。


「紫〜!」


「はぁ〜い!」


 そこから現れたのは、スキマ妖怪の紫さん。


「久々の登場かしら。それで、貴方……取材でしょ?」


「あ、はい!」


「手短に終わらせるわ。幻真のことは、やはり強いと思うわ。いつか幻想郷の危機も救ってくれそうな戦士……以上よ。それじゃあね〜」


 本当に手短でしたね……メモを取るのを忘れかけました。危ない危ない。


「それでは霊夢さん、萃香さん。私たちはこの辺で」


「確か後一人なんでしょ? 頑張るのよ」


「はい! ありがとうございます!」


 私は霊夢さんと萃香さんに手を振りながら、一時の別れを告げました。








 〈幻真〉



「はぁ、はぁ、はぁ……なぜ……こんな事に……」


「お前の負けだ。さっさと死ね」


「ハッ……ヤダね……ぐふっ、かはっ……」


「お前はもう終わりだ。なぜそんなに強情に頑張る。もうここで楽になったらどうなんだ」


「断る……俺には……守るべき存在があるんだ!」


「小癪な真似を……終わりだ、死ね」

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