第56話 少年との手合わせ
コラボ5話目。今回は終作先生の黑狂君と幻真との戦闘後半。そしてとも先生のリク君との戦闘です。
「青い瞳……眼の色が青色になったな」
「それだけじゃないんだよな。攻撃力、共に素早さを一段階上昇させた」
「一段階……という事は、二段階目もあるってことか?」
「さて、どうだろうな?」
俺はそう言って短刀を構える。黑狂は新たに三本の刀を取り、六刀流となった。
「斬符『冥抄斬』」
短刀に現在使える属性全てを込め、黑狂に向かって素早く投げる。黑狂は短刀を弾いた瞬間、俺の懐に飛び込んでくる。
「六刀多重『重居合』」
黑狂は一歩踏み出して、一文字居合を放ってくる。俺は咄嗟に真神剣で防ぐが、吹き飛ばされた。
「ゴホッ、ゴホッ……凄い風だったな……」
俺は立ち上がり、落とした短刀を手に取る。この短刀を上手いこと使えないものか。
「まだまだだぞ幻真。六刀狂い薙『狂乱撃』」
六刀流のまま、黑狂は出鱈目に斬ってくる。だが、出鱈目になるほど強くなっている気がする。
「ぐっ、斬符『水伝斬』」
「うおおおりゃあ!」
俺は真神剣に水を纏わせて斬る。黑狂の刀を一本しか受け止め切れず、後の五本の刀は出鱈目に斬っているため何回か斬られてしまった。
俺は地面に叩きつけられ、息を荒くして黑狂を見上げる。
「ここまでか?」
「いいや……それはどうだろうなっ!」
俺は二段階目の赤眼を発動させる。すると、徐々に斬られた場所が治っていく。そして、瞳は赤色に染まって攻撃力と共に素早さを上げた。
「これが二段階目か。それに赤い瞳……面白いな。まだまだこれからって訳か?」
「ふっ……そうだ。本気出していくぜ」
俺はそう言って、手を構える。
「何をする気だ?」
「しっかり受け止めろよ。炎砲『溶岩熱砲』」
俺はそう叫んで、黑狂目掛けて魔理沙のマスタースパーク以上の強さを誇る砲弾を撃つ。黑狂はかろうじて受け止めている。まさか本気で止めるとは……てっきり避けるかと思ったがな。
「ふんっ、八刀抜刀『八一文字』」
次は八刀流か。黑狂は、一歩踏み出して一文字居合を放ってくる。黑狂は受け止めたからな、俺も受け止めてみせよう。
「こんにゃ——ぎゃぁぁぁあ!」
「馬鹿だなあいつは……」
「全くだな霊斗。リクもそう思っただろ?」
「え……終作さん、僕は幻真さんのこと、凄いと思いましたよ」
「そうか、取り敢えず向かいに行ってやれ」
「え、あのちょっと……ぎゃぁぁあ!」
「あいだだ……」
俺は木の枝に引っかかっていた。誰か助けて……あ、俺飛べたんだった。取り敢えず引っかかった木の枝から脱出して、落ちていた真神剣と短刀を手に取り仕舞う。短刀はどこに備えておこうか。
「ぎゃぁぁあ!」
叫び声と共に誰かが飛んできた。そして俺に直撃。って、ナニスンダァァ!
「あいだだ……誰にぶつかったんだろう……」
「俺だ……俺……」
「あ、幻真さんでしたか。それで、どこに?」
「下……」
飛んできたのはリクだった。俺に気付いて慌てて降りた彼は、必死に頭を下げて謝る。
「す、すいません!」
「まあ気にすんな」
全く……取り敢えず謝るのを止めさせた。
「そう言えば、終作さんに頼まれて呼びに来たんだった。行きましょう」
俺はリクに背中を押されて森から出て行く。場所、わかるかな。あの建物の場所がどこかわかってないないのに……
適当に飛び回っていたら屋敷を見つけた。見た感じ、何やら準備をしている様子だった。
「お、幻真とリクお帰り。今はバーベキューとやらの準備をしているらしいな。まあ、俺は肉を食わんが」
刀哉の説明を聞いたところ、肉を焼いて食べるのだろう。
「取り敢えず、俺は酒だ〜」
国下はさっきから酒しか飲んでいない。よく酔わないものだ。感心するぜ……
「霊斗と黑狂と恵生は、肉とかを食べやすいように切ってるっぽいよ。俺たちはする事ないから火起こしってわけ」
意外にも絢斗が真面目……時龍も団扇で扇いで火起こししているな。終作は縁側で寝ている。疲れたのか? 特に何もしてないと思うんだがな。
「幻真、ちょっと……」
「なんだ想起?」
「絢斗があんな事言っているが、実際は玩具にされてるようなもんだ。玉木にコキ使われているっぽいな」
だから桜はあんな怖い笑みをしていたと。あー、怖い怖い、恐ろしや……
「ねえリク。後であの男と戦ったら?」
「ルカは戦わないの?」
「僕も考えるよ、リクの戦闘を見てね」
この流れはリクと戦う感じか? 腹拵えしとかないとな。腹が減って力が出ないなんてのはゴメンだからな。
「あ、霊斗たちが来たみたいよ」
霊奈が終作が寝ている縁側の奥の部屋からやって来る霊斗たちを指す。色々あるな。肉に野菜類のトウモロコシ。ウィンナーあるじゃん。美味そう。
「早速焼いてくぞー」
「——やっぱ肉だよな、刀哉!」
「霊斗、俺は肉を食わないんだ」
「肉を食わないなら酒を飲め」
「いやいや国下、それは困る。なあ幻真?」
「そこで俺かよ。肉は美味いが、トウモロコシも美味い。おっ、このウィンナーパリパリで美味いな。焼き加減がいい。コショーぶっ掛けてやる。へ、ヘックション!」
コショーはくしゃみの元……なんてな。やはり鼻の奥が刺激されてくしゃみが出る。擽ったくてな。それはいいとして、恵生や絢斗は楽しそうに食べてるな。リクはどうだろう。
「って、反対側にいたのかよ」
「脅かしてすいません。幻真さんってどれぐらいの実力を誇るんですか?」
変わった質問だな。誇るって、そんなのあんまり無いよな。まあ考えてみると、龍を操れるってところじゃないかと思うんだが。
「なるほど……さっき龍を出してなかったですよね? なぜですか?」
「特に理由はないが……単に出さなかっただけだ」
「俺にハンデでも与えてくれたようなもんか?」
黑狂か。ハンデっていうつもりはなかったんだけどな。次の対戦では出してやるか。刀哉の時は出してたしな。
「あの、後でお相手してもらえませんか?」
「ゴホッゴホッゲホッ! な、なんて?」
「だから、後でお相手を……」
咳き込んだのは悪気があったからじゃないぞ。唐突すぎて焦っただけだ。うむ。
「いいだろう。取り敢えず……肉!」
「やれやれ……」
「——いち、に、さん、し……」
俺は今、腹拵えの後、戦闘前の準備体操を行っている。いくらリクでも強そうな感じしかしないからな。気を引き締めていかなければ。
「準備体操とは感心します」
「へへん。リクが相手だとしても手加減は無しでやらせてもらうからな〜」
「大人気ないですね」
なにぃぃ⁉︎ 大人気ないだとぉぉ!
「うおおお!」
「馬鹿かあいつは。無駄にテンション上げやがって……」
「あはは……」
馬鹿にする想起と苦笑する狼。見返してやるぜ。
「じゃあ始めようか。真符『五種之勾玉弾』」
炎、水、雷、闇、光のそれぞれの勾玉弾幕を一秒に三つ生成しリクに飛ばす。
「斬るよ——霊神剣」
リクは剣を抜いて勾玉弾幕を切っていく。なかなかやるな。見直したぜ。
「いくよ……」
いつの間にかリクの剣は十本、十刀流となっていた。これは能力なのか? 刀哉や黑狂にも対応できそうだな。これは苦戦しそうな予感……
「へぇ〜、リクの能力は"武器を操る程度の能力"か〜。こりゃ凄い」
「絢斗、なんでわかった?」
「あらら、時龍わからなかった〜? 普通に考えてそうだよ。それも、剣だけではなさそうだよ」
「その通りだよ。どう見抜いたのかわからないけど。戦闘、見ときなよ」
絢斗と時龍がルカと何やら喋っている。それはいいとして、攻撃してきそうだな。
「おりゃりゃりゃりゃー!」
十本の剣で必死に攻撃してくるリク。しっかり狙いを定めないと無意味……
「ッ⁉︎」
「やった!」
くそっ、頰を掠った。完全に油断したな。反撃タイムといこうか。
俺は真神剣を抜いて技を唱える。
「斬符『炎魔斬』」
炎と闇の属性を剣に纏わせ、切り裂く。微かにリクの頰を掠った気がする。
「あちっ、ってあわわわ⁉︎」
「掛かったな。この技は斬られると視界が悪くなるんだ。まんまとやられたな」
リクは悔しそうな表情を浮かべる。これだと面白くないので、視界を戻した。
「面白くないから戻したぞ。さて、続きだ。斬符『雷鳴斬』」
真神剣に雷を纏わせ、リクの右腕目掛けて斜めに斬る。彼はそれに気付いたのか、一本の刀で受け止めた。彼はニヤリと笑ってみせる。
「剣斬『ソードレイン』」
リクがそう唱えると、無数の剣が現れ俺に向かって次々と飛んでくる。ヤバイ予感しかしないんだが……
「防符『属性結界』」
五属性を結界に含ませて張る。そう長く保たないかもな。
「もうちょっと!」
「チッ、龍符『炎龍』」
俺は咄嗟に炎龍を召喚する。あ、そうだ……
「龍符『水龍』」
「炎龍と水龍……? これが幻真さんの能力……」
リクは感心しているのか驚いているのか、それはいいとして、反撃するぜ。
「龍符『参方龍・炎』……龍符『水々青々龍水龍』!」
「同時に二つ⁉︎ これはどうしようもないよ……」
リクは諦めたのか、炎龍と水龍が攻撃して来るのを見ていた。
「おお、リクよ。ここで終わるとは情けない」
「ルカ、何言ってんだ?」
「煩いよ、時龍」
「す、すまん」
リクは笑って炎と水に飲み込まれた。
「——やりすぎよ幻真」
「そんなこと言われてもよ桜、手加減無しって最初に言ったし……」
「ほら幻真、勝利の酒だ」
「いや、いらない」
さっきからずっと国下は酒を飲んでいたのか? 酒瓶がかなり置いてある。
「幻真、つまんないぞ」
「恵生の言う通りだ、つまんないつまんない」
いやいや、なんで俺が恵生と終作の機嫌取るの。まあ俺もやりすぎたとは思ってるぞ。
「取り敢えずリクは任せるよ。黑狂、和菓子貰える?」
「ほらよ」
ぐぬぬぬ……取り敢えず、リクを運ぶか。
次回はどうしましょうか。考えておきます。