第55話 亭主との手合わせ
コラボ4話目。今回も題名通りですが、前半辺り朝飯。後半戦闘となります。
「んん……ああ、朝か……」
俺は外で倒れたはずだが……刀哉が運んでくれたのだろうか。後で礼を言っておこう。
「お、幻真。いつもはそんな早起きなのか?」
「黑狂か、お前も早いな。別に、いつもはこんなぐらいだぞ。朝飯作るなら手伝うぜ」
「それは助かる。それじゃあ、台所に行って支度しようか」
俺は黑狂の後に続き、台所に向かう。と言っても、すぐ隣だがな。
台所に着くなり、黑狂は頭を悩ませる。
「何を作るか」
「やはり和食だろ。朝と言えば和食……いや洋食かもしれないが、皆和食好きが多いだろうしな」
「そうだな。じゃあまずは白飯を炊こう。幻真、任せていいか?」
「あいよ」
俺は返事をし、米を探す。あちこちの戸棚を開けていると、米袋を発見する。取り敢えず、炊くとしよう。黑狂は焼き魚でも作るのかな? 魚の骨を取っているみたいだが。美味いモノ作ってくれよな。
「黑狂〜、飯は炊いといたぜ。他に何作る?」
「そうだな……味噌汁でも作っといてくれよ」
「了解」
具材はどうするか。人参、大根、豚肉……その他なんか入れとくか。最後に味噌を入れてっと。あ、そう言えば肉入ってるけど刀哉、大丈夫だったかな?
黑狂は何を作ってるんだ? 魚を焼き終わったようだが……お、どうやら卵焼きを作っているようだな。俺も自分で考えて何か作ろう。
さーて、一通り作った。そして並べた。後は皆を起こすだけだな。
「フライパンよーい……起きろー!」
「ぎゃぁぁぁあ! 火事か⁉︎ 地震か⁉︎ 親父か⁉︎」
「いや、津波だ! 皆逃げろぉぉお!!」
「お、おいちょっと待て——」
霊斗と終作は縁側から飛び出して、どこかへと飛んで行ってしまった。
「何やってんだあいつら」
「取り敢えず酒〜」
呆れる恵生。国下、朝から酒はやめたほうがいいだろ。というか……
「今の音でリクは起きないのかよ!」
「いや、よく見てみろ」
黑狂がそう言うので、俺はリクの様子を伺う。あ、あまりにも大きい音で気絶している……だと?
「幻真、時龍と絢斗はいいのか? 女達の部屋に行ったが……」
「想起、本当か? 今から殺ってくる」
「程々にしろよ……」
ったく……あいつら、しつこいんだから。一度痛い目に合わせないとな。
「ここか……」
俺は覚悟して部屋に入る。だが、既に時龍と絢斗は居なかった。え、まさか……
「ねえ……今着替え中なんだけど……」
「す、すいま——」
俺はそこで意識が途絶えた……わけではない。霊奈の峰打はそこまで痛くなかった。もしかして、わかってくれたのか?
「時龍と絢斗はここだよー」
玉木の声がした方を見ると、縄に縛られた時龍と絢斗がいた。結果オーライか。取り敢えず、連れて行くか……
「困ったお二人さんだね。桜もキレてたよ」
ルカ、マジかよ……危なかった……てか、桜はどこいったのやら。
「あ、飯できてるからな」
俺はそう言い残し、縄で縛られた時龍と絢斗を連れて部屋を出て行った。
「全く、少しは反省して……っておいいぃい!」
あいつら、いつの間に解いた⁉︎ 時龍もいつの間にあの早技を? 絢斗が教えたのか? はぁ……もう無視でいいか……
「お、霊斗と終作、帰ってきたか」
「全く、勘違いするじゃないか。そんなに大きな音を出されたら……」
いや、なぜ勘違いする。まあ、急に大きな音を出して驚かせたことは悪いと思うが、外まで飛んでいく必要無くないか?
「取り敢えず、飯を食おう。冷めてしまうぞ」
「そうだな黑狂。よし、皆行こう」
「あ、幻真。外で刀哉が素振りしていたぞ。呼んできたらどうだ?」
見かけないと思ったら、刀哉は外にいたのか。呼んでくるついでに礼を言わないとな。
「じゃあ俺ちょっと呼んでくる。飯、気にせずに先に食べててくれ」
俺は皆にそう言い残して、外へと走って行った。
外では一人の男、刀哉が刀を振っていた。綺麗な振り裁きだな。
「ん、幻真か。大丈夫か? 昨夜はやりすぎた」
「気にするな。この通りピンピンしてる。それにしてもどうした? 刀なんか振って」
「じっとしてても暇……といったところかな」
なるほど、俺と同じだな。
「あ、刀哉、昨夜はありがとな」
「お構いなく。というか、飯か?」
あ、重要なこと言うの忘れてたな。
「ああ、飯だ。早く行こう」
刀哉は刀を蔵う。そして俺たちは適当に雑談しながら食卓へと向かった。
「——うめぇ。国下、それ取ってくれ」
「はいよ霊斗。あ、恵生、その玉子焼き置いてくれ」
「はいよ。黑狂、味噌汁おかわり。お、リクもか?」
「僕もお願いします!」
「幻真くーん、それ取ってくれないかな〜?」
「なんだよ絢斗、馴れ馴れしい……時龍に取って貰えばいいだろ?」
「賑やかだな……刀哉、どうだ?」
「幻真って、料理が上手かったんだな」
想起の質問に対し、刀哉は答える。そう言われると照れるな。というか、終作はどこに行ったんだ? 飛んで行ったきり帰ってこない。霊斗は帰ってきたのにな。
「ねえねえ、あの天狗は誰?」
玉木が急に聞いてきたので、慌てて縁側を見た。そこには狼天狗の狼がいた。その後ろからヘトヘトになって帰ってきた終作がいた。何をやってたんだか。
「狼、飯食ってくか? ちょうど作ってある」
黑狂がなぜか単品の物を余分に作っていたんだよな。凄い偶然だ。
「え、いいの? ありがと幻真!」
「礼なら黑狂に言いな。単品物を作ってくれたんだ。あ、黑狂はそいつで……」
狼に一通り皆の名前を教えた。そして空いてた席に座って丁寧に食べ始める。幸せそうな表情するな〜。
「おーい、酒持ってきてくれ〜」
国下、幾らなんでも飲みすぎだろ。いくら酒に強いからって飲み過ぎはよくないよくない。
「そういえば幻真、昨夜刀哉と手合わせしたんだって? しまったな、先を越された……」
「お、おい霊斗。まさか一人一人俺と手合わせする気じゃないよな?」
そんなことしたら朽ち果てる……
「俺の友人みたいな感じだね。まあ、幻真は俺とはもちろんやるよね?」
「まあやるけどさ……恵生はやってくれるのか?」
恵生は食べていた物を飲み込んでから俺の問いに答えた。
「俺は戦うことは嫌いなんでな。戦っても得はしないだろ?」
それは言えてるけどよ、恵生暇にならないか? 戦闘嫌い……俺とは真逆だな。でも俺は普通に手合わせが好きなだけだが。
「あ、俺もしないからね」
「終作もかよ」
「終作はこんな奴なんでな」
なるほど、しっかり頭に入れておこう。
「じゃあ俺とやるか?」
ん〜? って、黑狂か。いいだろう。準備体操しとかないとな。
「戦いの話は置いといて、早く食べなさいよ」
おっと、桜に叱られた。そうだな、もう冷めかけているが早く食べてしまおう。
食った食った。我ながら味噌汁が美味かった。心配していた刀哉だが、少量なら大丈夫だと問題なく食べていた。
黑狂の作った焼き魚も美味かった。他の単品物も美味かったぜ。後片付けは罰として絢斗と時龍にやらせている。そんなに嫌がっていなかったけどな。
手合わせの相手、黑狂はというと、どこからともなく和菓子を出した後にお茶を点いでいた。見学者、霊斗に刀哉、終作に国下、恵生とリクだ。国下は茶を頂かずに酒を飲んでいる。女性組は何をしているのやら……
狼と想起は何やら武器について話している。そう言えば、狼は武器を使っていなかったな。それはいいとして……どうやら黑狂は茶を点ぎ終わったようだ。それぞれに配っている。
「待たせたな。準備はいいか?」
「おう。あ、ちょっと待ってくれ。想起、火炎刀はどうなった?」
狼と話していた想起はすぐさま気付き、俺に顔を向ける。すると、どこからともなく短刀を出した。
「なぜ短刀だ?」
「唯の短刀じゃない。真神剣で使っている技を使える。まあ、使ってみればわかるだろう」
想起はそう言って短刀を俺に投げた。俺はその短刀を受け取り、刃を太陽に反射させる。綺麗だ。さすが新品。
「幻真、そろそろいいか?」
「悪い悪い、いいぜ。手加減無しで構わない。本気で来てくれ」
「そうか……いくぞ」
黑狂は一本の刀を片手で持って、俺の元へ走ってくる。俺は真神剣を抜き、防御体勢に移る。黑狂が斬ってくると同時に剣で受け止める。
「硬いな……」
コーティングでもしているのか? 明らかに普通の刀より硬い。
「これは俺の能力"硬度を変える程度の能力"だ。柔らかくしたり硬くしたりできる。無論、俺の体もな」
なるほど、変わった能力だ。
「なら、弾幕はどうだ? 炎真『勾玉炎弾』」
「ふんっ」
黑狂は勾玉型の炎弾を刀で素早く切る。避けないのか。だがな、これは斬られても破裂するんだよな。
「粉々にする!」
「なにぃぃぃ⁉︎」
……考えたな。確かに粉々にしたら破裂してもほぼ少量。範囲は狭い。威力も低い、ナンテコッタ。
「ならば、これはどうかな? 熱符『熱火柱』」
俺がスペルカードを取り出してそう言うと、地面から間を空けて火柱が上空に伸びて現れた。これはさすがに斬れないだろう。どれだけ硬くしても溶けるだろうな。
「なるほど。だが無駄だ。一刀横薙ぎ『次元斬』」
火柱の奥で黑狂の刀からオーラが出ている。何やら横斬りをするようだ——横斬り?
「まずいッ!」
俺はタイミングを見計らって降って来る刀を避けた。これ刀の長さが伸びるのかよ。しかも溶けなかったし……俺は火柱を消した。黑狂はもう片方の手に同じような刀を持っていた。二刀流か?
「二刀重ね『居合八方十字』」
黑狂はそう言ってから一歩踏み出し、二本の刀で十字のように居合を放ち斬撃を八方向に飛ばしてくる。危ないな。俺は華麗に避けてみせる。なかなかキツイ。
「やるな」
俺と黑狂は刀をより寄せ合い、互いに見つめる。どちらとも、ド真剣な表情である。
「おらぁぁ!」
「ふんっ」
俺たちは同時に斬る。刃と刃が交じり合う。そのまま素早く下がり、息を整える。その後、先に動いたのは黑狂だった。
「三刀浮動『不規則散刀』」
いつの間にか刀は三本になっており、様々な方向から刀が飛んでくる。全く危ない。よく狙われているな。
「チッ、雷弾『莱雷弾』」
「真ん中が空いているとは、隙がある——って危ない。まさか塞がれるとは」
掛かったな、今だ。
「突符『三尖光』」
俺は槍を三本飛ばし、さっき黑狂がやってたことを真似してみる。黑狂は俺と斬り合いながらも、先程放った弾幕を避ける。
「なんだなんだ? 俺と同じようなことしてるのか」
「そうだ。来やがれ」
俺はニヤリと笑って得物で斬り合う。刀哉は腕を組んで何か呟いた。
「……凄いな」
「刀哉、あいつらはまだまだあんなもんじゃねーぞ。よーく見とけ」
刀哉は霊斗に言われてこっちをよーく見つめた。さてさて、本気出していきますか。
「開眼『青眼』……さて、ここからが本番だ!」
次回の前半今回の続き。後半は昼飯とまたもや戦闘。