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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第弐章 異世界の者たち
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第55話 亭主との手合わせ

コラボ4話目。今回も題名通りですが、前半辺り朝飯。後半戦闘となります。

「んん……ああ、朝か……」


 俺は外で倒れたはずだが……刀哉が運んでくれたのだろうか。後で礼を言っておこう。


「お、幻真。いつもはそんな早起きなのか?」


「黑狂か、お前も早いな。別に、いつもはこんなぐらいだぞ。朝飯作るなら手伝うぜ」


「それは助かる。それじゃあ、台所に行って支度しようか」


 俺は黑狂の後に続き、台所に向かう。と言っても、すぐ隣だがな。


 台所に着くなり、黑狂は頭を悩ませる。


「何を作るか」


「やはり和食だろ。朝と言えば和食……いや洋食かもしれないが、皆和食好きが多いだろうしな」


「そうだな。じゃあまずは白飯を炊こう。幻真、任せていいか?」


「あいよ」


 俺は返事をし、米を探す。あちこちの戸棚を開けていると、米袋を発見する。取り敢えず、炊くとしよう。黑狂は焼き魚でも作るのかな? 魚の骨を取っているみたいだが。美味いモノ作ってくれよな。


「黑狂〜、飯は炊いといたぜ。他に何作る?」


「そうだな……味噌汁でも作っといてくれよ」


「了解」


 具材はどうするか。人参、大根、豚肉……その他なんか入れとくか。最後に味噌を入れてっと。あ、そう言えば肉入ってるけど刀哉、大丈夫だったかな?


 黑狂は何を作ってるんだ? 魚を焼き終わったようだが……お、どうやら卵焼きを作っているようだな。俺も自分で考えて何か作ろう。






 さーて、一通り作った。そして並べた。後は皆を起こすだけだな。


「フライパンよーい……起きろー!」


「ぎゃぁぁぁあ! 火事か⁉︎ 地震か⁉︎ 親父か⁉︎」


「いや、津波だ! 皆逃げろぉぉお!!」


「お、おいちょっと待て——」


 霊斗と終作は縁側から飛び出して、どこかへと飛んで行ってしまった。


「何やってんだあいつら」


「取り敢えず酒〜」


 呆れる恵生。国下、朝から酒はやめたほうがいいだろ。というか……


「今の音でリクは起きないのかよ!」


「いや、よく見てみろ」


 黑狂がそう言うので、俺はリクの様子を伺う。あ、あまりにも大きい音で気絶している……だと?


「幻真、時龍と絢斗はいいのか? 女達の部屋に行ったが……」


「想起、本当か? 今から殺ってくる」


「程々にしろよ……」


 ったく……あいつら、しつこいんだから。一度痛い目に合わせないとな。






「ここか……」


 俺は覚悟して部屋に入る。だが、既に時龍と絢斗は居なかった。え、まさか……


「ねえ……今着替え中なんだけど……」


「す、すいま——」


 俺はそこで意識が途絶えた……わけではない。霊奈の峰打はそこまで痛くなかった。もしかして、わかってくれたのか?


「時龍と絢斗はここだよー」


 玉木の声がした方を見ると、縄に縛られた時龍と絢斗がいた。結果オーライか。取り敢えず、連れて行くか……


「困ったお二人さんだね。桜もキレてたよ」


 ルカ、マジかよ……危なかった……てか、桜はどこいったのやら。


「あ、飯できてるからな」


 俺はそう言い残し、縄で縛られた時龍と絢斗を連れて部屋を出て行った。


「全く、少しは反省して……っておいいぃい!」


 あいつら、いつの間に解いた⁉︎ 時龍もいつの間にあの早技を? 絢斗が教えたのか? はぁ……もう無視でいいか……


「お、霊斗と終作、帰ってきたか」


「全く、勘違いするじゃないか。そんなに大きな音を出されたら……」


 いや、なぜ勘違いする。まあ、急に大きな音を出して驚かせたことは悪いと思うが、外まで飛んでいく必要無くないか?


「取り敢えず、飯を食おう。冷めてしまうぞ」


「そうだな黑狂。よし、皆行こう」


「あ、幻真。外で刀哉が素振りしていたぞ。呼んできたらどうだ?」


 見かけないと思ったら、刀哉は外にいたのか。呼んでくるついでに礼を言わないとな。


「じゃあ俺ちょっと呼んでくる。飯、気にせずに先に食べててくれ」


 俺は皆にそう言い残して、外へと走って行った。






 外では一人の男、刀哉が刀を振っていた。綺麗な振り裁きだな。


「ん、幻真か。大丈夫か? 昨夜はやりすぎた」


「気にするな。この通りピンピンしてる。それにしてもどうした? 刀なんか振って」


「じっとしてても暇……といったところかな」


 なるほど、俺と同じだな。


「あ、刀哉、昨夜はありがとな」


「お構いなく。というか、飯か?」


 あ、重要なこと言うの忘れてたな。


「ああ、飯だ。早く行こう」


 刀哉は刀を蔵う。そして俺たちは適当に雑談しながら食卓へと向かった。






「——うめぇ。国下、それ取ってくれ」


「はいよ霊斗。あ、恵生、その玉子焼き置いてくれ」


「はいよ。黑狂、味噌汁おかわり。お、リクもか?」


「僕もお願いします!」


「幻真くーん、それ取ってくれないかな〜?」


「なんだよ絢斗、馴れ馴れしい……時龍に取って貰えばいいだろ?」


「賑やかだな……刀哉、どうだ?」


「幻真って、料理が上手かったんだな」


 想起の質問に対し、刀哉は答える。そう言われると照れるな。というか、終作はどこに行ったんだ? 飛んで行ったきり帰ってこない。霊斗は帰ってきたのにな。


「ねえねえ、あの天狗は誰?」


 玉木が急に聞いてきたので、慌てて縁側を見た。そこには狼天狗の狼がいた。その後ろからヘトヘトになって帰ってきた終作がいた。何をやってたんだか。


「狼、飯食ってくか? ちょうど作ってある」


 黑狂がなぜか単品の物を余分に作っていたんだよな。凄い偶然だ。


「え、いいの? ありがと幻真!」


「礼なら黑狂に言いな。単品物を作ってくれたんだ。あ、黑狂はそいつで……」


 狼に一通り皆の名前を教えた。そして空いてた席に座って丁寧に食べ始める。幸せそうな表情するな〜。


「おーい、酒持ってきてくれ〜」


 国下、幾らなんでも飲みすぎだろ。いくら酒に強いからって飲み過ぎはよくないよくない。


「そういえば幻真、昨夜刀哉と手合わせしたんだって? しまったな、先を越された……」


「お、おい霊斗。まさか一人一人俺と手合わせする気じゃないよな?」


 そんなことしたら朽ち果てる……


「俺の友人みたいな感じだね。まあ、幻真は俺とはもちろんやるよね?」


「まあやるけどさ……恵生はやってくれるのか?」


 恵生は食べていた物を飲み込んでから俺の問いに答えた。


「俺は戦うことは嫌いなんでな。戦っても得はしないだろ?」


 それは言えてるけどよ、恵生暇にならないか? 戦闘嫌い……俺とは真逆だな。でも俺は普通に手合わせが好きなだけだが。


「あ、俺もしないからね」


「終作もかよ」


「終作はこんな奴なんでな」


 なるほど、しっかり頭に入れておこう。


「じゃあ俺とやるか?」


 ん〜? って、黑狂か。いいだろう。準備体操しとかないとな。


「戦いの話は置いといて、早く食べなさいよ」


 おっと、桜に叱られた。そうだな、もう冷めかけているが早く食べてしまおう。






 食った食った。我ながら味噌汁が美味かった。心配していた刀哉だが、少量なら大丈夫だと問題なく食べていた。


 黑狂の作った焼き魚も美味かった。他の単品物も美味かったぜ。後片付けは罰として絢斗と時龍にやらせている。そんなに嫌がっていなかったけどな。


 手合わせの相手、黑狂はというと、どこからともなく和菓子を出した後にお茶を点いでいた。見学者、霊斗に刀哉、終作に国下、恵生とリクだ。国下は茶を頂かずに酒を飲んでいる。女性組は何をしているのやら……


 狼と想起は何やら武器について話している。そう言えば、狼は武器を使っていなかったな。それはいいとして……どうやら黑狂は茶を点ぎ終わったようだ。それぞれに配っている。


「待たせたな。準備はいいか?」


「おう。あ、ちょっと待ってくれ。想起、火炎刀はどうなった?」


 狼と話していた想起はすぐさま気付き、俺に顔を向ける。すると、どこからともなく短刀を出した。


「なぜ短刀だ?」


「唯の短刀じゃない。真神剣で使っている技を使える。まあ、使ってみればわかるだろう」


 想起はそう言って短刀を俺に投げた。俺はその短刀を受け取り、刃を太陽に反射させる。綺麗だ。さすが新品。


「幻真、そろそろいいか?」


「悪い悪い、いいぜ。手加減無しで構わない。本気で来てくれ」


「そうか……いくぞ」


 黑狂は一本の刀を片手で持って、俺の元へ走ってくる。俺は真神剣を抜き、防御体勢に移る。黑狂が斬ってくると同時に剣で受け止める。


「硬いな……」


 コーティングでもしているのか? 明らかに普通の刀より硬い。


「これは俺の能力"硬度を変える程度の能力"だ。柔らかくしたり硬くしたりできる。無論、俺の体もな」


 なるほど、変わった能力だ。


「なら、弾幕はどうだ? 炎真『勾玉炎弾』」


「ふんっ」


 黑狂は勾玉型の炎弾を刀で素早く切る。避けないのか。だがな、これは斬られても破裂するんだよな。


「粉々にする!」


「なにぃぃぃ⁉︎」


 ……考えたな。確かに粉々にしたら破裂してもほぼ少量。範囲は狭い。威力も低い、ナンテコッタ。


「ならば、これはどうかな? 熱符『熱火柱』」


 俺がスペルカードを取り出してそう言うと、地面から間を空けて火柱が上空に伸びて現れた。これはさすがに斬れないだろう。どれだけ硬くしても溶けるだろうな。


「なるほど。だが無駄だ。一刀横薙ぎ『次元斬』」


 火柱の奥で黑狂の刀からオーラが出ている。何やら横斬りをするようだ——横斬り?


「まずいッ!」


 俺はタイミングを見計らって降って来る刀を避けた。これ刀の長さが伸びるのかよ。しかも溶けなかったし……俺は火柱を消した。黑狂はもう片方の手に同じような刀を持っていた。二刀流か?


「二刀重ね『居合八方十字』」


 黑狂はそう言ってから一歩踏み出し、二本の刀で十字のように居合を放ち斬撃を八方向に飛ばしてくる。危ないな。俺は華麗に避けてみせる。なかなかキツイ。


「やるな」


 俺と黑狂は刀をより寄せ合い、互いに見つめる。どちらとも、ド真剣な表情である。


「おらぁぁ!」

「ふんっ」


 俺たちは同時に斬る。刃と刃が交じり合う。そのまま素早く下がり、息を整える。その後、先に動いたのは黑狂だった。


「三刀浮動『不規則散刀』」


 いつの間にか刀は三本になっており、様々な方向から刀が飛んでくる。全く危ない。よく狙われているな。


「チッ、雷弾『莱雷弾(サークルスパーク)』」


「真ん中が空いているとは、隙がある——って危ない。まさか塞がれるとは」


 掛かったな、今だ。


「突符『三尖光』」


 俺は槍を三本飛ばし、さっき黑狂がやってたことを真似してみる。黑狂は俺と斬り合いながらも、先程放った弾幕を避ける。


「なんだなんだ? 俺と同じようなことしてるのか」


「そうだ。来やがれ」


 俺はニヤリと笑って得物で斬り合う。刀哉は腕を組んで何か呟いた。


「……凄いな」


「刀哉、あいつらはまだまだあんなもんじゃねーぞ。よーく見とけ」


 刀哉は霊斗に言われてこっちをよーく見つめた。さてさて、本気出していきますか。


「開眼『青眼』……さて、ここからが本番だ!」

次回の前半今回の続き。後半は昼飯とまたもや戦闘。

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