第53話 豪華な食事と大浴場
コラボ2話目です。
〈博麗霊斗〉
やけにあっちの方が賑やかだな。黑狂は黙々と料理を作っている。俺もどんどん作っていかないとな。
それにしても、霊奈と言ったか。とてつもない気を感じるた。彼女の世界には行ったことがない。まさかあんな実力者が存在していたとは。
「霊斗、どうしたんだ?」
「あ、いや、ただの考え事だ」
黑狂はふーんと興味なさげに言って料理を続けた。まっ、考える事は後にして料理をしてしまおうか。
〈幻真〉
酒を飲まされた俺だが、なんとか一命を取り戻した。まあ、そこまで酷くなかった。酔ってる連中は煩いし、静かに飲んでいる恵生を見習ってしまうぜ。
俺は見物しながら飲んでいる。桜と霊奈はもう仲良くなったのかな、結構話しているようだ。ルカだっけ。見た目は子供だけど、酒は飲めるんだな。まあ、リクって子は酔っちゃってるけど……
普段は酒しか飲まないけど、ワインも飲んでみたいな。贅沢な気分ってヤツだ。
「よーし、できたぞー」
「お、待ってました!」
霊斗と黑狂が料理を運んでくる。国下と終作は拍手をして喜んでいる。いい匂いだ、早く食べたい。
「さてと、いただきます!」
「いただきます——って時龍⁉︎」
あいつ、いつの間にここに⁉︎ こっちの方を気にせずにバクバク食ってやがる。霊斗と黑狂に感謝しろよな。
「この者は誰だ?」
「俺か? 俺の名前は時龍だ」
刀哉の質問に時龍は答える。全く、気まぐれな奴だ。というか、どうやってきたんだ? というかまず、俺はどうやってここに来たんだ?
「まっ、どうでもいいか。飯食おうぜ!」
俺は箸を手に取り、霊斗と黑狂の手作り料理を口に運ぶ。
「うめぇ! なあ霊斗、この旨すぎる玉子焼きに隠し味とかあんのか?」
「ん、スパイシーな物を少し足してみた。それだけだ」
俺は霊斗に向けて目を輝かせる。さすがだなぁ……俺も料理を上手くなりたいな。
「ほら、みんなどんどん食べてくれよな」
黑狂が勧める。時龍はガツガツ食ってやがる。国下たちもガツガツ食ってるな。俺も食べ比べ勝負してやろうか。
桜や玉木、霊奈やルカは味わって食べている。恵生や酔っ払ったリクも味わって食べていた。というか、リク起きたのか。
デザートは甘い物。パフェやケーキが出されてくる。かなり豪華だな。甘い物好きの桜には堪らないだろう。俺は甘い物は控えた。別に太るとかそういう訳ではないが、遠慮した。
片付けは桜たち女性陣がやってくれるらしい。その間に、男子組は風呂に入るのだが……せめてタオルぐらい巻けよ、時龍!
「それにしても、広い浴場だな。俺が作ったのと同じぐらいじゃないか?」
霊斗の世界に連れてこられた大宴会の時か。確かに、ここも広いな。
「取り敢えず、ダーイビーング!」
終作が風呂にダイブする。あ、そんなに深くないからうつ伏せの状態でダイブしたら……
「うぶっ!」
やっぱり……思いっきりぶつかってるじゃないか。黑狂は爆笑している。そんな笑う奴だっけ。
「お前も落ちろ、幻真」
気付いたら背後には国下がいて、背中を押される。そのまま俺は風呂に突き落とされてしまった。俺は体勢が悪かったため、顔面から落ちた。次は時龍が笑う。ちょっと頭にきた。
「槍符『光槍』!」
「ちょ、幻真やめでぇぇぇ!」
俺は時龍に槍を刺しかけたが、刺さるギリギリのところで消した。
「取り敢えずさ、後で女子風呂覗きに行こうよ」
はぁ⁉︎ 絢斗はいったい何を言っているんだ。変態神降臨か……?
取り敢えず風呂から上がった俺たちは着物に着替えた。俺は仕方なく協力するために、台所に顔を覗かせる。食器を洗っていた四人は、お茶を飲んでいた。俺たちが戻ってくるのを待っていたのだろう。
「あ、幻真。他のみんなは?」
桜が俺に気付いて聞いてくる。俺は隠していた体を出して答える。
「もう直ぐで来ると思う」
すると、後ろから誰かに肩を叩かれる。一瞬びっくりしたが、それは想起だった。
「なぜ俺を呼ばなかった?」
悔しそうな顔をしながら俺に聞く。っていうか俺も誰に連れてこられたのか、まだわかっていないんだが。
「その人、誰?」
玉木が想起を指して俺に問う。俺が答えようとしたが、想起自身が答えた。
「俺の名前は想起、鍛冶職人だ。武器を改造したり作ったりしている。修理なら俺に任せろ」
そういや火炎刀、どうなったのかな。随分と前の話になるんだが。
「ん、幻真、そいつは誰だ?」
風呂場から戻ってきた国下が想起を見ながら問い掛ける。その質問に、想起がさっきと同じように答えた。
「じゃあ、私たちは風呂に入ってくるわね」
女組四人は雑談しながら浴場へと向かって行った。その間、リクが酒を持ってきてくれた。それぞれの杯に酒を注ぐ。黑狂はちまちまと飲みながら、俺に聞いてきた。
「他にお前のような者は何人いるんだ?」
「六人だ。もしかしたら他にもいるのかもしれないが……取り敢えず俺と変態時龍、鍛冶職人の想起。ここに来ているかわからないが、天狗の狼に、未だよくわからない火御利。そして、霊夢の母親である霊妙さんだ」
「なにっ、この世界の霊夢にも母親が……!」
やはり首を突っ込んだのは霊斗。二人に会わせるととんでもないことになりそうだ。
「なあ、絢斗と時龍はどこだ?」
刀哉が辺りを見渡して聞く。まさか……
「どうせ女風呂覗きに行ってんだろ。幻真、見に行ってこいよ」
「はぁ⁉︎ 霊斗、俺を殺す気か?」
桜に見つかったらひとたまりもないし……第一、霊奈って人も強そうだからな。
「じゃあ、そいつ持ってけ」
黑狂が俺の方を指差す。一瞬戸惑ったが、振り向くと、そこには終作が腹を掻いて寝ていた。盾にしろと……俺にはできないわ。
「僕もついて行きましょうか?」
「リク、ここは幻真に任せといて大丈夫だぞ。コイツはこういうのには慣れてるからな」
いやいやいや! あっさりと流すなよ霊斗! てか慣れてるってなんだよ!
「まっ、そういうことだ。幻真、頑張れよ」
「お、おう……っていだぁぁ!」
俺は恵生に蹴飛ばされ、五メートル以上飛ばされた。目の前女風呂じゃねえか!!
俺は心を決めて脱衣所に入る。浴場からは声が聞こえてくる。絢斗と時龍を探していると、上の窓ガラスのような場所が開いているのに気付いた。奥の方を見てみると、そこには絢斗と時龍が今にも覗こうとしていた。
「お、おいやめと——」
俺は終わったとなと思ったな。浴場への扉が開いて、そこにいたのはタオルを巻いた桜だった。
「こ、こんなところでなにしてんのよ!」
俺は顔が真っ赤になって熱くなるのを感じた。時龍と絢斗がいた方を見ると、二人はもういなかった。あいつら……許さねぇ……
「ごめんなさぁぁぁぁぁぁあい!」
俺の声が屋敷中に響いた。
〈想起〉
幻真の声が響いた後、絢斗と時龍が走って戻ってきた。俺は悟った。幻真は終わったなと。
「なあ絢斗……俺ら幻真に殺されんじゃね?」
「なあに時龍、俺に彼の力では勝てないよ。君だって強いだろ?」
「うーん、どうだろな」
時龍と絢斗がそんなことを話していると、部屋の扉が開いて霊奈が入ってきた。よく見ると、彼女は幻真を担いでいた。そのまま部屋にあったソファーに近づくと、そこに幻真を寝かせ、彼女は無言で戻って行った。
「頰にビンタの跡があるな。どうせ桜にしばかれたんだろうけど」
霊斗が気の毒そうに言うが、笑っているようにも見えた。まあ、ドンマイだな……
次回いよいよ戦闘になると思います。でも、夜中の闘いになるでしょう。幻真と…