第51話 月との別れ
今回にて儚月抄終了です。
爆煙の中に立っていたのは依姫。対戦相手の幻真は意識を失って倒れていた。
「やりますね。でも私の勝ち——」
依姫はそこまで言い、意識を失って倒れてしまった。
「依姫様!」
「あ、祇園様の力が……」
咲夜は捕縛されていたが、依姫が倒れたため解除されていた。
「幻真、しっかりして」
咲夜は幻真を揺すり起こす。しかし、気絶しているため無意味だった。
「これはいったい?」
突然一人の少女が現れ、この状況に首を傾げる。
「あ、豊姫様!」
一匹の玉兎が、その女性の名前を言う。
「なぜ依姫が倒れてるのかしら?」
「いろいろあって、そこの人間と戦われまして」
玉兎は幻真を指す。
「なるほどね。取り敢えず、彼らを運んでちょうだい」
玉兎は敬礼し、幻真、依姫、霊夢、魔理沙、レミリア、想起をそれぞれ二人がかりで担架を使って運んだ。
〈時龍〉
ロケットが迎撃された後、戦闘人以外は待機していた。今は幻真たちが運ばれて行ったので後をつけている。因みに俺は戦闘待機だった。
「あ、咲夜。大丈夫か?」
「時龍……」
咲夜は睨んできたが、頷いた。
「取り敢えず、追うわよ」
〈幻真〉
ここは、どこかの部屋? 神社じゃないよな? 一体どこだろう。
「あ、起きた」
監視役なのか、一匹の玉兎がいた。玉兎は立ち上がり、部屋を出て行った。すると数分後、玉兎と一人の少女が入ってきた。
「目覚めたのね」
彼女は腰ほどもある長さの金髪に、金色の瞳を持っていた。
服装は、白くて長袖・襟の広いシャツのようなものの上に、左肩側だけ肩紐のある、青いサロペットスカートのような物を着ている。ボタンが前面中央にあり、膝上くらいからそのボタンを空けているので、スリットのようになって生足が見えていた。
腰に斜めに巻いているベルトのバックル部分には、鏡と思われる紋章があしらってある。月の満ち欠けの内の満月を示すものであろう。
「私の名前は綿月豊姫。貴方は幻真だったかしら? 話は依姫から聞いてるわ」
そこで俺は悟った。この人は依姫の姉なんだと。
「貴方、一週間も寝込んでたのよ。他の人たちは帰るべき場所に返しといたわ」
え? 俺だけ置いてけぼり?
「大丈夫よ、そんな顔しなくても。巫女がいるわ」
巫女って……霊夢か? なぜまだ月に?
「取り敢えず、この服を着なさい。着たら廊下に出てこの子に案内してもらいなさい」
「は、はあ……」
豊姫はそう言って、部屋から出て行った。渡された服は、ジーパンに青色の半袖の服。取り敢えず、着替えるか。
「——さてと、案内よろしく〜」
玉兎は何も言わずに歩いていく。反応が無かった事に気不味さを覚えながらも、俺は玉兎の後を着いていく。
「ここか?」
玉兎は頷き、どこかへ行ってしまった。そこには、霊夢と依姫、そしてお手伝いさんかわからないが数匹の玉兎が居た。
「あ、幻真」
夢中になって食べていた霊夢が俺に気づく。
「ここの料理美味しいわよ」
「こら、物を口に入れたまま喋ってはいけません」
依姫がまるでお姉さんのように注意する。一体何があったんだ?
「仲が良くて何よりよ」
どこからか豊姫が現れ、椅子に腰を掛ける。
「ほら、早く幻真も」
霊夢が急かす。一週間の間、何も食ってなかったしな……そう思うと、腹が鳴った。
「たくさん食べてくださいね」
依姫が微笑んで言う。それじゃあ、お構いなく!
「——ふぅ、食った食った……」
お腹いっぱいだ。一週間分の飯を食ってやったぜ。
「さて、霊夢。幻真も起きたところだし、そろそろ地球に帰さないとね。
「ええ〜、もっといたい〜」
霊夢は子供のように言う。
「またいつでも来ていいから。ね?」
豊姫は言い聞かせる。霊夢は頰を膨らませながらも、頷いて承知した。
「それじゃあ、また会いましょう」
俺と霊夢は眩い光に捕らわれた。
気付いたらそこは、博麗神社の境内だった。
「あら、おかえりなさい」
外で掃除をしていた霊妙さんが、帰ってきた俺たちに気付いて駆け寄ってくる。
「二人とも、お疲れ様」
この声は……紫さんだな。空間が避け、スキマが現れる。そこからひょこっと顔を出す紫さん。
「紫さん、結局この戦いは勝ったんですかね?」
「ええ、勝ったわよ」
紫さんは満足そうに言う。
「それは良かったです」
「さーて、私は寝てくるわ〜」
霊夢は背伸びをして中へと入って行った。起きたばっかりだけど、なんだか疲れたな。一週間寝てたけど、ゆっくりするとしようかねぇ〜。
次回は…ぐふふ。決めてあるんですよね〜