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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第壱章 龍使い
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第46話 若手鍛治職人

 映姫の説教から数日後。彼女が言っていた通り、大量発生した花と幽霊は消えていた。これで異変は解決っと。


 俺は今日、ある人物に会うため人里へ行く。その人物は、人里の離れで鍛冶屋を営んでいて、道具と武器の鍛冶職人だ。会いに行く理由? そんなのヒマだからに決まってる。






 博麗神社から飛行を始めて数分。目線の先には、いくつもの平屋が見えてくる。だが、俺の目的地は人里の離れにあるため、方向を少しずらして飛んでいく。


 そうして、人里の離れにある一軒——鍛冶屋へと到着。俺は扉を開け、例の人物に挨拶をした。


「おーっす!」


「ん……?」


 俺の声に反応した彼こそが例の人物、想起。この鍛冶屋をひとりで営んでいる若手鍛冶職人だ。なんで彼と知り合いなのか。それは以前人里に来たときにこの店を見つけて、話を聞いてみれば鍛冶屋さん。せっかくだから依頼してみようと思い、俺の剣と時龍の剣を作ってもらった。年齢は俺と同じくらいか低いくらいなのに、腕が立つ優秀な人物だ。それに加え戦闘能力にも長けていて、試しに手合わせしたときは互角くらいの強さだった。


 ヒマだから彼に会いに来たわけだが、単に会話だけをしに来たわけではない。一戦交えるために会いに来た。だからここに来たんだ。


 俺はそのことを彼に伝えると、怪訝そうな顔をして誘いを断られた。仕事をしていることもあってか、彼は真面目だ。だが、そんなこともあろうかと秘密兵器を用意してきた。


 それは彼の好物、まんじゅう。相手をしてくれたらあげると言ったら、見事食いついてきた。作戦成功。俺たちは外へ向かった。






 位置についた俺たちは、勝敗の決め方を確認する。それは、先に膝をついたほうが負けというもの。変わったルールではあったが、彼はそれを承諾した。


 確認を終え、さっそく腰に備えていた武器を手にして構える。その武器、剣の名は真神剣。実を言うと、使うのは初めて。つまり、作ってもらった剣を作ってもらった相手で試すってわけだ。こうなってしまったのは、使う機会がなかったから。だが、これはこれでおもしろい。


 闘争心が疼き、俺はにやりと口を動かす。そして、開始を伝える技を叫んだ。


「斬符『炎魔斬(エビルフレイム)』!」


 剣に炎と闇のオーラを纏わせ、彼に向かって斬りかかる。だが、彼は軽々と攻撃を躱し、さらには俺の腹部に手を当ててスペルを唱えた。


「弾幕『大魔道弾』」


 直後、俺の腹と彼の手の間が光りだす。その光の正体は、弾幕。彼はその場から離れて避難し、俺は弾幕に飲まれて攻撃を受けた。


 俺は弾幕が破裂するとともにはじき出される。かなり効いたが、この程度で負ける俺ではない。膝をつくことなく体勢を直す。そして彼の方に視線を向け、反撃に出た。


「炎真『勾玉炎弾』」


 俺は三つずつ勾玉を生成し、一秒単位で彼に目掛けて飛ばす。彼は斬るか避けるかして攻撃に耐えていた。


「まだだ、水真『勾玉水弾』」


 弾幕を追加して合計六つ。想起は必死で攻撃に耐えていた。だが、左手を上げるとスペルを唱えた。


「波動『オールインパクト』」


 刹那にして、彼に飛んできていた弾幕は消滅。彼は俺に驚く暇を与えることなく、次のスペルを唱えた。


「弾幕『スターオブドライブ』」


 彼が出したのは、星型の弾幕。だが、普通の弾幕ではなく光の速さで飛んできた。当然飛んでくる弾幕を目に捉えられることなく、弾幕は腹部に命中した。


 勢いのあまり咳き込んでしまったが、まだ負けていない。ここらで本気を出そうと、炎龍を召喚することに。現れた炎龍は俺の指示を待つように周囲を飛んでいた。


「いくぜ、龍符『参方龍・炎』」


 三体に分身した炎龍は、三方向から想起を目がけて突撃する。炎龍は彼に命中。彼は宙へと飛ばされる。


「どうした想起、そんなもんか?」


 その言葉に反応した彼は空中で回転して体勢を直し、着地して答えた。


「舐めてもらっちゃ困る……魔符『魔界切開』」


 彼はそう言って、黒い弾幕のようなモノを両手に出現させる。すると、体が徐々に引き寄せられていく。さらにその吸引を無視して別の弾幕が飛んでくる。このままでは吸い込まれかねないと判断した俺は、ある手段を思いつく。


 それは、逆噴射による脱出。引力に逆らうといったものだ。


「イチかバチか……炎砲『溶岩熱砲(マグマガン)』!」


 俺はブラックホールに熱砲を撃ち、その勢いで抜け出す。作戦は成功したが、九死に一生を得た気分だ。だが、彼は俺のことを気にも止めずスペルを唱える。


「変景『地獄巡り』」


 景色は一転し、溶岩が吹き出る地形に。すっかり地獄の景色になったが、ただ景色が変わっただけではないようだ。普通に暑さも感じる。足元注意だな。


 用心して動いていた俺だが、おもしろいことを思いつく。地面に手をつくと、それを実行した。


「熱符『熱火柱』」


 盛り上がり始める地面は、まもなくして火柱へと化す。もちろん本物の火柱であり、触れただけで焼け死ぬ。それを目の当たりにした彼もまた、口をニヤリと動かして言った。


「おもしろい……火には火か」


 彼は炎をまとった弾幕を飛ばしてくる。対する俺もスペルを唱えた。


「秘符『伝々水魔流』」


 水を纏った弾幕とレーザーを出現させて、彼に向けて放つ。火柱のせいで視界が悪く、お互いに不利。いくつかの弾幕は火柱の中に飲まれてしまったが、死角からの攻撃で彼は被弾していた。そのせいか、景色が元に戻る。それに合わせて俺も火柱を消した。


 目の前には、被弾した腕を抑える想起の姿があった。彼は息を整えたあと、腰に備えていた剣に手をかける。


「そろそろ決着をつけるぞ……互いの刃で。剣を抜け」


 俺はそう言われ、彼が剣を抜くのに続いて一度収めた真神剣を手にする。それを確認した彼は、剣の刃を見せて説明した。


「これは幻夢剣。幻を生むことができる剣だ。まあ、実践したほうが早いな。裂符『幻現斬』」


 彼はそう言って、幻か実態かわからないような技を繰り出してくる。とりあえず攻撃を受け止めようとしたが、彼の剣は俺の剣をすり抜け腹部へと到達していた。当然、そこから出血。悪態を吐きながらも彼と距離をとり、次の一手に出た。


「俺も本気を出させてもらうからな……怒眼『赤眼』」


 腹部にあった傷を癒し、攻撃力と素早さを二段階上昇させる。彼はパワーアップした俺に感心していたが、油断してるヒマなんて与えない。


「斬符『漆黒斬(ジェットブラック)』!」


 剣に闇の魔力をまとわせて斬りかかるが、攻撃は躱される。さらには効果もお見通しのようで、触れたら視界が暗くなるのだろうと尋ねてきた。俺はその問いに答えることなく、別の技を繰り出す。


「斬符『雷鳴斬(サンダースラッシュ)』」


 どうやらこの技の効果は見通せなかったようで、彼が攻撃を受け止めたことにより麻痺にさせることができた。彼の右腕は痺れ、剣を落とす。勝負あったなと彼に近づくが、彼はまだ諦めていなかった。


「まだ終わってないぞ……幻符『幻界節』」


 彼は左手で持った剣に白銀のオーラを纏わせ、俺に斬りかかってきた。焦った俺だが、冷静に判断して攻撃を躱し、その技はなにかと彼に聞く。どうやら、さっきの技で斬られると幻になってしまうらしい——つまり、存在が消えると? 恐ろしい技だ。


 身震いする俺をよそに、彼はそろそろ決着をつけようと言ってくる。そろそろ良さそうだと判断した俺は、彼の案に賛成した。そして俺たちは、同時に叫ぶ。


「斬符『幻金夢充斬』」

「斬符『終界魔天斬』」


 彼は剣に金色のオーラをまとわせて走ってくる。対する俺は四属性——火、水、雷、闇を剣にまとわせ斬りかかった。直後、互いの剣が交じり合い、爆発が起こった。






 数秒が経過して爆煙が収まる。俺はなんとか衝撃に耐えたが、想起は倒れてしまっていた。俺は彼に近づき、手を伸ばす。それに気づいた彼は俺の手をとり、立ち上がって言った。


「まいった。おまえのほうが一枚上手だったみたいだ」


「想起も強かったさ。それで、勝った褒美というか、頼みたいことがあるんだが——」


 その頼みというのは、俺が所持しているもう一本の武器、火炎刀の作り変えだ。全部彼に任せることにし、俺は帰ることにしたのであった。

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