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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第壱章 龍使い
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第45話 閻魔

 〈時龍〉



 耳が痛む歌とその歌手から逃げてきた俺は、どこからか聴こえてくる綺麗な音色を耳にした。そちらの方へ向かうと、そこには三人の少女がそれぞれ違う楽器を使って演奏していた。見たことのない楽器だな。


 邪魔しては悪いと思った俺は、その場から離れることにした。その途中で騒いでいる妖精たちを見つけた。チルノをはじめとする妖精たちがいたが、面倒事が起きかねないと思って、気づいていないふりをしてその場を通り過ぎた。


 そんなこんなで次の目的地にしたのは、紅魔館だ。以前あそこの従者に手を出してしまったから、行ったら殺されかねないんだよな。まあ、なんとか交渉するか。






 数分歩いたのち、紅魔館に到着。館というだけあって、門番はやはりいるようだ。


 俺に気づいた門番は、何やつと言って警戒する。その門番は、腰まで届く長さの赤髪——そうか、彼女が美鈴か。


 彼女がだれかわかった俺は、軽い感じで彼女に挨拶をする。彼女はしばらく俺のことを見つめたあと、思い出した様子で言った。


「思い出した! あなたは以前の宴会で咲夜さんに手を出した変態野郎! 懲りずにまた悪事を働きに来たんですか!」


「違う違う。今日は異変の調査だ。ほら、このとおり」


 俺は膝をついて両手を挙げる。まさかそこまでするとは思っていなかったのか、彼女は驚いた表情をしていた。そんな彼女は頭を悩ませたのち、わかったと言って納得してくれた。


 ひとまず安心した俺は、美鈴によって開かれた門の先へと進む。建物へは少し距離があるようで、そこに続く道に両脇には庭があった。異変の影響あってか、大量の花が咲いた庭を眺めながら進んでいると、草花の中に座り込んで一輪の花を見つめる金髪の少女の姿を目にした。あの子はたしか、ここの館主の妹で、名前はフランドールだったか。幻真と妙に親しい吸血鬼で、珍しい羽根を持っている。


 彼女の姉には一度殺されかけている。吸血鬼は舐めないほうがいい。バレないようにさっさと建物に向かおうとした俺だったが、その少女と目が合ってしまった。俺に気づいた彼女は、にっこり笑ってみせる。その笑顔から狂気を感じた俺は、本能的にその場から離れようと建物の方に視線を向けた。


「お客様が見えたと思ってきてみたら、あなただったのね」


 そこにいたのは、この館のメイドで俺が以前手を出した咲夜だった。彼女の左手にはナイフがあり、いつでもさせるといった様子を見せていた。


「ま、待て咲夜! 話せばわか——」


 その後のできごとは、思い出したくもない……








 〈幻真〉



 映姫を探すにあたって、一度博麗神社の上空まで戻ってきた俺たちだが、賽銭箱の前に立つひとりの少女を目にした。


 参拝客かと目を輝かせて少女のもとへ向かっていった霊夢の後を追って、境内へと降りた。そして、霊夢は少女に声をかけた。


 彼女は霊夢より身長が高く、向かって右側が長い緑髪。靴や腕には紅白のリボンをつけており、さらに髪留めのような紅白のリボンを頭につけていた。頭には独特な帽子をかぶっており、服は白い長袖のシャツの上に青いブレザーを着用、これまた紅白のリボンが前についた黒いスカートを履いていた。そして、太ももまでの長さがある黒い靴下も履いていた。


 そしてなにより目を引いたのが、彼女が右手に持っていた笏である。そこまで彼女のことを観察した俺には、彼女が何者であるかわかったような気がした。


「留守かと思いましたが、ちょうど帰ってこられたのですね。もしかすると、この異変の調査に?」


「いんや、あなたを探していたんだ——四季映姫」


 俺が彼女の名前を読んだことに驚いた三人。なんで彼女が映姫だとわかったのか、魔理沙が問うてきた。まあ言ってしまえばカンだと答え、映姫の話を聞くことにした。


 彼女の正式名称は、四季映姫・ヤマザナドゥ。四季は苗字で、映姫は名前。その後ろに付くヤマザナドゥは、楽園の閻魔を意味する役職名らしい。


 彼女の種族は閻魔で、昔はどうやらお地蔵様だったらしい。そんな彼女は地獄に存在する是非曲直庁に勤め、死者を裁いているらしい。閻魔の仕事は二交代制なので、こうしていま幻想郷に来ているとのこと。


 そんな彼女が博麗神社に来ていた訳を聞こうとしたが、俺たちが彼女を探していたことが気になったのか、先に俺たちの話から聞こうと言った。


「この異変のことについて知っていることを聞かせて欲しい」


 俺の頼みに動じることなく、彼女は静かに頷いて説明を始めた。


 六十年に一度の間隔で外の世界にて発生する幽霊の増加。三途の川の案内人である死神の仕事の許容量を超える数の幽霊が幻想郷に出現したため、溢れかえった幽霊が花に憑依し、花が咲き乱れる現象が発生した。一方で、妖精は自然そのものであるため、不自然な花に大騒ぎしていたとのこと。つまり、この異変の原因は外の世界にあったのだ。


 この異変は幻想郷の住人が人為的に発生させたものではないため、放置しておいても大丈夫とのこと。先ほど出会った死神——小町が順当に幽霊を彼岸へと運んでいき、次第に季節に関係なく咲いている花が減って、いずれは異変が解決するらしい。


 ひとまずこの異変は危険なものではないとわかり、ひと安心する俺たち。だが、その時の俺たちには知る由もなかった。異変よりも恐ろしいことが、この先待っているということを——


「さて、あなたたちの要件は済みましたし、私の要件とでもいきましょうか」


「おう、どんと来い!」


 意気込む俺だったが、ワケもわからずその場に正座させられる。なにかを悟って逃げようとする霊夢だったが、映姫に捕まって彼女もまた無理やり正座をさせられる。魔理沙はというと、既に姿はなく、いつの間にか逃げていた。


 いまだに状況がわからずにいた俺は、彼女に聞いた。


「これからなにが始まるんで?」


 問われた彼女は答えた。


「もちろん、あなたたちへの説教です。姿勢を正して、よーく聞きなさい」


 その後、逃げることも叶わず、ふたり分の説教もあって正座する時間が本来の倍になり、足が余計にしびれてしまったことは言うまでもない。

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