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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第壱章 龍使い
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第43話 周期異変

六十年周期の大結界異変、始動。

 幻想郷が蘇生した。


 冬の白色は春の日差しに彩られ、幻想郷は完全に生の色を取り戻していた。冬の間眠っていた色の力が目覚め、幻想郷を覆う。 花と同時に妖精たちも騒がしくなる。 その異常な美しさの自然は、幻想郷に住む者すべてを驚かせた。


 彼女たちはいち早くその異変に気がついた。


 桜、向日葵(ひまわり)、野菊、桔梗……まだ春だというのに、それぞれの季節に咲く花が同時に咲き出していたのだ。 多くの人間とすべての妖精は、自然からのプレゼントと受け取ってしばらくその光景に浮かれていた。 だが、幻想郷でもっとも暢気な人間は珍しく慌てていた。


「こんなに判りやすい異変じゃあ、早く解決しないといけないわ。じゃないと、私が怠けているってみんなに言っているようなもんじゃない!」


 幻想郷自体が蘇生した。 彼女たちも自然の一部。妖精の力は自然の力。自然には抗えないことを、皆知っていた。








 〈幻真〉



「ふあ〜、朝か……」


 目を覚ました俺は目を擦り、布団から出る。そしていつものように朝の空気を吸おうと縁側につながる障子を開けた。しかし、そこには目を疑う光景が待っていた。


 外にはたくさんの花が咲いていて、さらには幽霊が多発していた。


 俺がその光景に唖然としていると、空から普通の魔法使い、魔理沙が箒にまたがって飛んできた。すると、俺に気がついた彼女が降下してきて俺のもとへと走ってきた。


「幻真〜大変だ〜! 幻想郷中のあちこちに異変が起こってるんだ!」


「幻想郷中に……⁉︎」


 彼女の報告を受けた俺は、これはただの異変ではないのではないかと思考する。突然咲きだした花々と、湧き出した幽霊。これらが俺たちに害を与えるというのなら、一刻も早く異変を解決しなければならない。


 だが、腹が減っては戦はできぬ。先に腹ごしらえをさせてくれと彼女に頼むと、どうやら彼女も朝食をすっぽかして飛び出してきたようで、いっしょに食べてもいいかと聞いてきた。食事は大勢のほうがいい。俺は彼女も交えて朝食を取ることにした。






 霊夢を起こし、異変のことについて話しながら朝食を取る。ちなみに、霊妙さんは今日も阿求さんのところだ。


 異変解決につながることはふたつ。突然咲いた四季折々の花と、多発する幽霊。そこで俺は、幽霊のことなら幽々子さんに聞くのがいいのではないかと立案する。だが、その案は霊夢が反対。理由を聞くと、どうやら冥界に行くより打って付けの場所があるらしい。


 それが「彼岸」。厳密には幻想郷ではないそこには、幽霊——死者を審判するもの、閻魔大王がいるという。だが、その場所があるのは三途の川の先。渡ると死んでしまう川だ。つまり、閻魔に会うことは難しいというわけだ。


 どうしたものかと考えるが、悩んでいても始まらないため、とりあえず三途の川を目指すことにした。








 〈狼〉



 僕は今、突然庭に咲いた花と発生した幽霊を縁側で眺めている。このできごとが起こった経緯を予想していると、空から烏天狗の文が降りてきた。


「おはようございます。朝早くからすみませんね」


「おはよう。僕に用事があるなんて珍しいね。それで、なにか用?」


 僕の問いを聞いた彼女は、首にかけていたカメラを見せて言った。


「この異変のネタ集めに協力していただこうと思いまして。あなたといっしょに行ったほうが心強いですからね」


 なるほど、僕を付き添い人として雇いに来たってわけか。まあ、僕もこの異変に興味があるし、彼女に付き合ってあげるとしようかな。たぶん幻真たちも動いてるだろうしね。








 〈火御利〉



 目が覚めて外の空気を取り入れようと窓を開けてみれば、目に映ったのは大量の花と多発する幽霊。これまた急に起こるわね。


 この異変の真相を明かすために当てなければいけない焦点は、花か幽霊。そこで私は、だれよりも花を愛すフラワーマスターに話を聞きに行くことにした。


 目指すは「太陽の畑」——さあ、行くわよ。








 〈時龍〉



 おはよう。目が覚めてみれば大量の花と幽霊。これはもしかして、異変だろうか。ん? 俺がどこにいるかだって? そうだな、墓地みたいなところにいるかな。霊夢に追い出されたんだよ。


 とりあえず、腹ごしらえのために人里に行くことにした。






 俺が向かった店は、和食店。店に入るなり、店主に和食定食を注文して席に着いた。ちなみに客人は少なく、おそらく里に住んでる人間だろう。


 たしか幻真が和食好きだったと思うが、俺はべつに好物というわけではない。食えればなんでもいいんだ。


 しばらくして、黒いお盆に乗せて運ばれてくる定食。それが俺の目の前に置かれると、両手を合わせて挨拶をした。そして箸を手に取り、食事を始める。


 ホカホカの白ごはんに具材たっぷりの味噌汁。大根の漬物も米に合う。朝から贅沢な気分だ。


 そんなこんなで味わいながら食べていると、いつのまにか完食してしまっていた。俺は箸を置いて両手を合わし、挨拶をする。駄賃を店主に渡すとともに礼を言って、店を後にした。






「——なんだこの丘?」


 人里から離れて探索をしていると、鈴蘭の咲く丘へとやってきた。俺はその丘が気になり、試しに登ってみる。苦労することなく丘を登りきった俺は、そこに立っていたひとりの幼い少女を目撃する。


 彼女の髪は金色でウェーブのかかったショートボブであり、瞳の色は青かった。頭には赤いリボンが蝶結びで結ばれており、トレードマークとなっていた。服は黒と赤を基調としたものを着ていて下はロングスカートを履いており、リボンを胸元と腰につけていた。リボンの色は胸元は赤で、腰は白。腰のリボンは大きく存在感があった。また、彼女の傍らには彼女の小さい版のような人形が飛んでいた。


「私はメディスン・メランコリー。もともと人形だった私はこの無名の丘に捨てられ、長年鈴蘭の毒を浴びて妖怪になったの」


 突然語り始めたことに戸惑いを感じたが、俺は彼女の話を聞いた。


「私の能力は『毒を操る程度の能力』でね、その効果は遊びから死ぬまでの毒を操れる」


 毒に遊びもクソもあるかと言いたくなった俺だが、さすがに毒を受けて平気ではいられない。俺は彼女の様子を伺った。


「私の毒、感じて。毒符『神経の毒』」


 彼女がそう言うと、体が神経毒によって痺れ始める。このままでは体が動かなくなるのではないかと危惧した俺は、スキマから龍神剣を取り出して強行突破を図る。


「龍派『連界異真斬』!」


 俺は毒に耐えながらメディスンに向かって走っていき、剣を振るう。だが、直前のところで視界が霞んで攻撃を外してしまう。だんだん体が毒に侵されていき、熱を感じるほどになってきた。このままではまずいと思った俺は、次で必ず決める勢いで剣を構えて地を蹴った。


「これで終わりだ! 龍派『真怪斬』!」


 剣を縦に振ったことによって起こったオーラをまとった弾幕は、彼女を襲った。弾幕に被弾した彼女は悲鳴を上げて、その場に倒れこんだ。俺を襲っていた毒はしだいに薄れ、痺れや熱さも引いていった。


 命を奪うほどの攻撃は与えていないから大丈夫だろうと判断した俺は、剣を仕舞ってその場を後にした。

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