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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第壱章 龍使い
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番外編 母の日宴会(後編)

 おっす、幻真だ。まずは軽く前回のおさらいといこうか。


 母の日ということで、霊妙さんにお礼の気持ちを伝えるためにサプライズを兼ねた宴会を計画した俺たち。会場はここ博麗神社。俺と火御利は料理を担当。狼と時龍は人を集めに行き、霊夢は準備のための時間を稼ぐためにに霊妙さんと外出。


 そんなこんなでそれぞれの仕事をこなし、宴会を開始することに。






 今回の宴会は料理が多いため、いくつかの長机を用意した。机の並べ方は横長の「ロ」の形だ。左の先端には霊妙さんが座っており、その両サイドには霊夢と阿求さんが座っている。霊夢列は魔理沙、咲夜、レミリア、パチュリー、こあ、美鈴、フラン、チルノ、大ちゃん、ルーミア、狼、時龍の順で、阿求さん列は幽々子さん、妖夢、鈴仙、永琳さん、輝夜さん、てゐ、ミスティア、リグル、妹紅、慧音、火御利、俺の順番だ。右の先端は空いている。


 一通り参加者が席に着いたのを確認した俺は、皆に声をかけて視線を仰ぎ、注目を集める。そして、宴会の始まりの挨拶として集まってくれたみんなへの感謝と霊妙さんへの感謝の一言を交え、乾杯した。


 乾杯の後、各々が料理へと箸を伸ばす。皆が美味しそうに食べてくれているのを確認し、俺も料理を口に運ぶ。


「うむ、我ながらうまい」


 俺が鼻の下を伸ばしていると、隣に座っていた火御利が肘でつついてきて言った。


「あら、それを作ったのは私よ? 感謝しなさい」


「なんでそんなに上から目線なんだよ。これは俺も作っただろうが」


「喧嘩しなーい! せっかくのパーティーが台無しだよ?」


 言い争いになりかけた俺たちに対し、注意するフラン。大人げないと思った俺たちは小さくなって謝った。


「わはー。怒られたー」


 俺たちの様子を見ていたルーミアはそう言って俺たちを煽る。それも仕方ないかと横目で彼女を見ていたが、同様に煽られていた火御利がいつのまにか彼女の目の前にいた。堪忍袋の緒が切れたのではないかと慌てて火御利を止めようとしたが、どうやらそれは誤解だったらしい。ルーミアはくすぐられて笑っていた。


 肝を冷やした俺だったが、余計な心配をしたことをチルノに煽られ、火御利と同じようにしてチルノにもくすぐり地獄を味あわせてやった。そんな光景を両となりで魅せられていた大ちゃんは呆れた様子を見せていた。そんな彼女の反対の席でこの光景を見ていたリグルは、隣に座るミスティアに楽しそうだねと話していた。


 そのことを聞いた時龍がリグルをくすぐるためにたったのかと思いきや、彼はまったく関係のない咲夜に触れていた。当然彼は殴り飛ばされ、外へと飛んでいく。


「いたたた……いや〜誤解だ誤解。俺は決して変態なんかじゃ——」


「それ以上口を開くな。私の従者を手にかけた罪は重いぞ」


 飛んでいった彼を追いかけたレミリアが追い打ちをかける。主としての威厳があるだろうが、このままでは彼が殺されかねないと判断し俺は彼女を落ち着かせた。


 そんなハチャメチャなできごとを目の当たりにして霊夢が黙ってるはずがなく、中から怒鳴ってきた。そんな彼女を魔理沙がなだめると、外に出てきて出し物大会でもしようと皆に言った。


 とりあえず場が収まったのでよかったが……彼女はいつの間に計画を練っていたんだ……?






 魔理沙の案で舞台は外に。だが、日が落ちていたため周囲は暗く、視界が悪い。そこで、霊夢が俺に明かりを出すように要求してきた。以前も能力をこんな使い方をされていたことを思い出し、俺は嫌がった。


「それなら、私の力を貸そう」


 そう言って、明かりとなる炎を灯したのは妹紅だった。彼女も炎を使うことができるのか。霊夢は彼女に礼を言った。


「さーてと、出し物はだれからだ?」


 魔理沙の呼びかけにいち早く反応したのはチルノだった。彼女はだいちゃんとルーミアと協力して、あるものを持ってくる。あれはたしか、チルノが意地を張って持ってきていたやつか。


 彼女は持ってきた箱を地面に置いて、その中身を取り出して言った。


「ジャジャーン! 打ち上げ花火機〜! これは河童に作ってもらったんだ!」


「河童、か……」


 河童という言葉に反応する狼。なにか関係でもあるのだろうかと疑問に思っていると、準備を終えたチルノたちがカウントダウンをしていた。


 削れていく花火の銅線。彼女たちの数えるカウントがゼロに達したとき、筒から空に向かって発射される花火玉。やがてそれは爆発し。見事な花火が打ち上がった。


 それを見た俺たちは、思わず感動して声を上げる。花火を持ってきたチルノたちも、無事成功したことに喜んでいた。これには作成者の河童の技術力に驚かされたな。


 一通り花火が打ち上がった後、感動からの拍手が起こる。しばらく続いた拍手が止むと、魔理沙が咳払いをして次の出し物を皆に聞いた。花火という大きめの出し物に関わらず、次に挙手したのは永琳さんだった。


 彼女は霊妙さんのもとまで行くと、小瓶に入った丸薬を彼女に渡した。どうやら、その薬は美容薬らしい。それを受け取った霊妙さんは喜んで礼を言った。


 次はだれの出し物だろうかと視線を動かすと、狼がいくつかのきのこを乗せた籠を持って霊妙さんのもとへ行った。


「次は僕から。これは山で採れたきのこ。焼いて食べるのもよし、具材として使うのもよし。ぜひ食べてね」


 彼が説明のあとに籠を渡そうとしたが、目線を感じてその手を止める。その目線の正体は魔理沙で、目を輝かせながらそのきのこを見ていた。


 彼女の望みを読み取った彼は、霊妙さんにいくつか分けてもいいかと聞く。彼女は快く認め、彼は三つほど魔理沙にきのこを渡した。受け取った彼女は礼を言って、どのようにして食べようかと悩んでいた。


 狼に続いて霊妙さんのもとへとやってきたのは火御利だった。彼女はどうやら俺と同じように花をプレゼントしたようだ。


 火御利を最後にその場にいた人たちの出し物は区切りがついた。中に戻ろうとしたその時、鳥居の方から声が聞こえてきた。


 その正体は勇儀さんと萃香さんで、ふたりは箱に入ったたくさんの酒を持ってきていた。それらはどうやら宴会用と霊妙さんへのプレゼントらしい。プレゼント用の酒は霊夢と狼が受け取って、倉庫の方へと運びに行った。


 あんなにたくさんの荷物を持ってきてさぞかし疲れただろうと鬼ふたりに視線を向けたが、そんなことはなく陽気に騒いでは、チルノたちを巻き込んで酒を飲んでいた。


 これはまた地獄を見るかも知れないとその場を離れようとした俺だったが、勇儀さんに捕まって酒を無理やり飲まされるハメにに。いくら酒に強くなったからって……


「勘弁してくれー!」








 そこは、奇妙な目がいくつもある空間——スキマ。八雲のスキマ妖怪とその式神が、スキマから宴の様子をのぞきながら酒を飲んでいた。


 大勢はイヤだと言って、宴会の場には参加しようとはしないスキマ妖怪。だが、実際のところ自らが参加するよりも、物事の行く末を見る方が好みなのである。


 そんなスキマの先の光景を見ながら、彼女はつぶやいた。


「なにごとも、平和が一番ね」


 人々を脅かすできごと、異変や事件。それらが起こるよりも、平和が続くのをこの世界の住人は願っているだろう。

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