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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第壱章 龍使い
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番外編 異世界からの来訪者(悟編)

 俺は今、博麗神社の縁側で暢気に寝そべりながら日向ぼっこをしていた。夢の中の異変解決から数日が経ち、あれから異変や事件が起こることなく平和な日々を過ごしていた。だが、そのせいで同じような日常を送る毎日。霊夢と霊妙さんは里へ買い物に行っていて留守。しばらく神社に住むことにした時龍の姿は見当たらない。どこに行ったのやら。


「……気分転換にお茶でも飲むか」


 俺は居間のちゃぶ台に置いてあった急須を手に取り、蓋を開けて中を確認する。中は空だったため、お茶を沸かしに土間へ向かおうとしたその時、外から声が聞こえた。気になった俺は、その声がした方へと向かった。


 声がしたのは賽銭箱に続く参道からだった。すると、そこにはひとりの少女の姿があった。こちらに気がついた彼女は、丁寧に礼儀正しく挨拶をした。


「礼儀と挨拶は大切だからね」


 そうそう。出会ったとき、まずは挨拶から——え? もしかして、俺の心を読まれた?


「私、さとり妖怪だよ。えっと、まずは自己紹介だね。私の名前は椿つばき。君は?」


「俺は幻真だ。ここに居候してる」


 正直なところ、そろそろ住む場所を探さないとふたりに迷惑だと思っている。


「そうなんだ。いろいろ大変だね〜」


 どうやら、さとり妖怪だということは事実らしい。それにしても、この子は何をしにここへ来たんだ?


「それがね〜、気づいたらここにいたんだよね〜。それよりも、その……お腹すいちゃって」


 気づいたらここに? 幻想入りしたのだろうか……いや、そんなことより、お腹がすいてるらしいし、お茶と和菓子でも出してやるか。え? 霊夢と霊妙さんに怒られるんじゃないかって? 大丈夫だ、たぶん問題ない。


「和菓子、食えるか?」


「うん、大丈夫だよ」


 俺は彼女に確認した上で、串団子を彼女に渡す。それを受け取った彼女は、その団子にかぶりついた。いい食べっぷりだ。俺も食べるとするか。


「君は幻想入りしたの?」


「ああ、恐らくだけどな。ここでの暮らしには、もう慣れた。まだ幻想郷で会ったことない人もいるだろうから、楽しみだったりする」


 これは事実だ。幻想郷の住民たちと親しくなり、俺は皆の人気者に——


「へぇ〜、人気者に——」


「心を読むなぁ!」


 さとり妖怪、なかなかやるな……そう思いながらとなりを見ると、彼女は団子を食べ終えお茶を飲み干していあた。


「ごちそうさまでした、っと。それじゃあ、君にお礼をしないとね。『デビッドアイズ』」


 椿が急に俺の真隣でスペルカードを唱える。というか、こんな狭いところでやったら社殿が吹っ飛んで霊夢に殺されちまう。


「チッ……炎防『灼熱結界・参』」


「防がれちゃったか。それなら、これはどうかな? 『アイシクルデビル』」


 少し間を取った後で、彼女はまたもやスペルカードを発動する。弾幕の速度が早すぎて行動に焦りが出てしまう。


「クソッ、雷防『雷電結界・参』」


 強すぎるから参じゃないと防ぎきれないな。


「ういっと……強烈だな。だが、やられっぱなしは性に合わない。龍符『水龍』」


 さあ、反撃開始だ。


「龍符『伝青流々弾幕縁起(オーメンバラージ)』」


 水龍一体を相手に向かって放ち、弾幕をいくつか飛ばして追加の攻撃を行う。しかし、水龍と弾幕はいとも簡単に斬られてしまった。


「神霊剣……さあ、君も腰の剣を取って」


 神霊剣って……俺の剣で太刀打ちできるのか? 勝てる見込みはないかもしれないが、やれるだけやってやる。俺は意志を奮い立たせ、鞘から武炎剣を抜く。さらに、身体向上と治癒を施す怒眼『赤眼』を初動。地を蹴って技を叫ぶ。


「斬真『炎之夜叉』」


 これは初めて使う技だ。武炎剣に炎をまとわせ、相手を斬る。だが、彼女は無傷だった。


「無駄だよ。私に傷ひとつ……いや、触れさせもない」


 まいったな。どうあがいても勝てなさそうだ。


「諦めないで。もっと私を楽しませてよ」


 それもそうだな。せっかくヒマだった俺の相手をしてくれてるんだ。全力を尽くそう。


「わかった。剣符『暗黒之龍剣』」


 俺は武炎剣を鞘に収め、刃が白く、黒い小さな物体がふよふよと出ている剣を手元に出現させた。


「そうこなくっちゃ。『奇跡の絶望的なる夢想封印』」


 夢想封印……霊夢のスペルと似たような感じか。しかも同時に神霊剣を片手に突撃してくる。俺は弾幕を処理するために闇龍を召喚し、龍符『呉散闇龍』を唱える。そして彼女の猛威に反撃するために斬符『暗黒斬(ダークスラッシュ)』を使う。


 弾幕と闇龍は彼女に命中しなかったが、斬撃は当たった——はずだった。この攻撃は触れた相手の視界を奪うはずなのに、どうも彼女の様子に変化は見られない。さっきの斬撃で切れたであろう服の部分は確認できたのだが……


「ボーッとしてちゃダメだよ! 『スピードデビルシャワー』!」


 彼女はお構いなしに速度の速い弾幕を飛ばしてくる。これは相殺するのが賢明か。


「炎砲『溶岩熱砲(マグマガン)』」


 熱を帯びた砲撃によって、彼女の弾幕を相殺する。


「さすがだね。でも、これでおしまい。『暗黒ファイナルマスタースパーク』!」


 魔理沙のファイナルマスタースパークの暗黒版か。受けて立つ。


「龍符『幻暗龍真泊(ビジョンダーク)』」


 巨大な闇龍がレーザーを突き抜ける思いで飛んでいくが、そのレーザーの威力は凄まじく、闇龍と俺を飲み込んだ。






「——おい! しっかりしろ!」


「んあ?」


 俺はだれかに揺すり起こされ、目を覚ます。目に映ったのは、時龍の顔。俺を起こしたのは彼だったのか。


 時龍の話によれば、俺がレーザーに飲み込まれて気絶した後、ちょうど彼が帰ってきて椿は俺を預けて帰ったらしい——


「ちょっと待て。帰ったってどこに?」


「そりゃあ、自分の世界にだよ」


 それはつまり、別の世界ってことか? そんなことってあるのか。まあでも、時龍も似たようなものか。


 時龍は腕を頭の後ろに組んで、夕飯を食べに居間へと行ってしまった。残された俺はそこに居続ける理由がなかったため、彼と同じように居間へ向かった。






 メシを済ませた俺は、先に風呂に入らせてもらった。


 食事中聞いた話だが、時龍がいなかった理由は霊夢たちと人里に行ってたからだそうだ。俺もついていけばよかったか。しかし、その場合彼女と会うことはなくなっていたかもしれない。あれは偶然にして必然のできごとだったのだろうか。


 湯船に十分浸かった俺は、浴室を出て着替える。なんだか今日は酒が飲みたい気分だ。


 俺は土間にいるであろう霊妙さんに酒があるか確認しようとしたが、まるで考えを見透かしていたかのようにお盆に酒瓶と杯を用意していた。


 だが、それは違ったようで縁側に腰掛けていた時龍が頼んだものだった。俺に気がついた彼は、酒飲みに誘ってくれた。


 霊妙さんの代わりに彼女が用意してくれたお盆を時龍の待つ縁側まで持って行き、さっそく杯を交わした。


 飲んでいる途中、暗闇の中にだれかがいるのを時龍は察知する。気づかれたその人物は、ゆっくりとこちらに近づいてきた。


「いや〜、バレちゃったか〜」


 そこにいたのは、帰ったはずの椿だった。まだ帰っていなかったのか。というか、どうやって帰るつもりなんだ?


「おまえはさっきの少女じゃないか。どうだ、いっしょに飲まないか? ほら、杯ならひとつ余ってるぞ」


 それは、自分も飲みたいから先に用意しとくように言っていた霊夢の分の杯だった。


 ふたりは俺が割って入る前にどんどん話を進めていた。挙句の果てに、椿は時龍に注いでもらった酒を飲んでしまう。


「ごくっごくっ……ウプッ、なんだか変にゃ味ぃ……」


 様子が変だが、まさか酒が飲めなかったんじゃ……心配する俺をよそに、彼女はそのまま縁側で寝てしまった。


「あー、後で紫に頼んで向こうの世界に帰しとく」


 やれやれ。それにしても、強かったな椿。次会った時は、勝てるほどに成長しておかないとな。


 そんなこんなで、突然現れた異世界からの来訪者との奇妙な話は幕を閉じた。

コラボお相手【梨瑚先生】

登場キャラ《椿つばき

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