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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第壱章 龍使い
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第42話 老人

 〈狼〉



 僕は風魔神の力を解放したことによって、周りに突風が吹き荒れる。


「いくよ、風符『辻斬(ウィングエアー)』」


 風のカッターを黒魂に目がけて飛ばす。攻撃は奴らにに命中し、体が二つに切れて爆発する。


「まだまだ。風符『竜巻嵐(トルネードラッシュ)』」


 追い打ちをかけるように放った竜巻は黒魂たちを飲み込み、木っ端微塵に粉砕する。


「キリがないね。風符『緑風弾(グリーンウィング)』」


 緑色の弾幕が突風に飛ばされ、黒魂たちに命中。


「よし、なんとか撃退。あっちは大丈夫かな?」








 〈火御利〉



 さてと、いくわよ。


「容赦はしない。『永遠の苦しみ(エターナルペイン)』」


 私がそう唱えると、周りに大量のナイフが出現する。一本一本……いや、数十本いくわよ!


「はぁっ!」


 先ほどのかけ声で出したナイフと白金のナイフを飛ばす。そのナイフは黒魂の体を次々と切り裂いてき、終いには百当分以上に切り裂かれた。


「まだまだよ!」


 私は金色のナイフを一本一本、正確に黒魂へと命中させて倒していく。ちなみに、ゴールドナイフは脆いが威力は強い。


「次から次へと湧いてくる……『切り裂き魔小刀(ダーリングマジカル)』!」


 このナイフはすべてマジカルナイフ。つまり、魔法のナイフ。どんなことが起きるかわからない。まあ、どんな効果を発揮させるかは自分で決められるけど。


 大きくなったナイフや変速したマジカルナイフが黒魂たちを斬り裂いていく。これであらかた倒せたわね。


「みんなは無事かしら」


 早めに合流しないと心配ね。








 〈幻真〉



 俺は時龍と協力しながら黒魂を倒している。しっかし、キリがないな。このままだと消耗戦だし、コイツの力を借りよう。


「龍符『炎龍』」


「炎龍……やっぱりおまえが俺の後継者だったか」


 時龍は興味深そうに俺を見てくる。そんな暇と余裕はねぇっての!


「よっと。幻真、この異変を解決した後、剣術を教えてやろう。ただし、俺の教え方は下手だからな。期待するなよ」


 その約束を聞いた俺は、やる気がみなぎってきた。


「まじか! それじゃあ、こいつら早く倒そうぜ。怒眼『赤眼』!」


 俺はそう唱え、治癒を施しつつ攻撃力と素早さを上昇させる。


「食らえ! 龍符『七方神炎龍』!」


 七体に増えた炎龍が黒魂たちを倒していく。


「んじゃ、俺も召喚するか。召喚『神炎龍』」


 時龍が唱えると、炎龍より大きい龍が現れた。


「いくぜ。龍技『炎之舞』」


 その技が唱えられると、神炎龍が弾幕とともに突撃していき、わずか一瞬にして黒魂たちを倒した。


「すげぇな。それなら、龍符『水龍』」


「おお、水龍も召還できるのか。これは驚いた。それなら、俺も召喚だ。召喚『清水龍』」


 俺に続いて時龍も水龍を召喚。その龍も神炎龍と同様に大きかった。


「次は水龍の出番だ。龍符『水々青々流水龍(アクアシードドラゴン)』!」


 水龍が黒魂に目がけて飛ぶと同時に、青々とした弾幕を飛ばして周りの黒魂も排除する。


「やるな! なら、龍技『水之舞』!」


 三体に分身した清水龍が三方に散り、黒魂たちを倒していく。


「ほっほっほ〜、お主たち、よく倒したねぇ」


 黒魂が全滅した直後、上空から男の声がした。そちらを見ると、そこには年取った背のい老人が笑いながらこちらを見ていた。


「わしじゃ、わし。異変の犯人は」


 その言葉を聞いた俺と時龍は、同時に身構える。


「なになに? どうしたの?」


「あのおじいさんだれ?」


 黒魂を倒した狼と火御利も集まってきた。


「ほほう、四人かのぉ。束になってかかって来ても、わしは構わんぞ?」


「なら、束で」


「そこは遠慮するところじゃろ!」


 時龍が言った台詞に対し、老人はツッこむ。緊張が走る俺たちに、笑っている余裕はなかった。


「みんな、ここは俺がいく」


 俺は右手を上げ、老人に近づく。手短に終わらせたいところだな。そう思いながら、俺は左腰の鞘に備える武炎剣と右腰の鞘に備える火炎刀を抜いて、二刀流の状態になる。


「ほほう、二刀流なのかね。ほな、相手になろう!」


 老人が叫んだと同時に俺は武炎剣を振る。


「なにっ⁉︎」


 あろうことか、刃が素手で止められた。そう、それは白刃取り。そういえば、時龍にも白刃取りをされていたな。ん? 待てよ。もしかして、この人……


「やっぱりか」


 下で見ていた時龍が呟いたのが耳に入る。俺はすべてを察する。そう、この老人は——


「白刃取りを時龍に教えた師匠か!」


「ああ、そうだ。長年合わないと思ってたら、こんなことしやがって……」


 時龍は怒りを噛み締め、俺の隣へとやって来る。


「すまんな幻真。俺に戦わせてくれ」


 俺は軽く時龍に押され、後ろへと下がる。


「師匠、許さないからな。あんたにはしっかりと反省してもらう!」


 時龍は叫びながら夢龍剣を振るう。しかし、時龍の師匠だけあり、いとも簡単に白刃取りされてしまった。


「まだまだぁ!」


 時龍は怒号し、夢龍剣を振り回す。だが、刃は通らない。


「くっ、こうなったら……龍派『古龍剣』」


 時龍は龍のような勢いと速さで斬り裂いていく。


「早いわね。でもあの老人、すべて躱すか白刃取りで対処してるわ」


 ほんとだ、超人じゃないか。


「その程度か! これでも食らえ!」


 その老人は時龍の頭部目がけてチョップをする。焦った時龍は夢龍剣で攻撃を受け止めたが、老人のチョップによって夢龍剣の刃が折れてしまった。


「夢龍剣が折れちゃった!」


「チッ、マジかよ師匠」


 悪態を吐いた時龍は、刃の折れた夢龍剣を鞘に収める。


「終わりかね?」


 老人の問いに答えることなく時龍はゆっくりと落下し、地面に膝をつく。そして、両手を挙げた。


「お、おい! 時龍⁉︎」


 叫ぶ俺に対し、時龍は黙ったままだった。本当にあきらめてしまったのか?


「すまんな、我が弟子よ。ここで終わりじゃ」


 老人が刀で時龍の首を切ろうとした瞬間、なにかがその攻撃を防いだ。


「へっ、俺はあきらめねえよ」


 そう言って立ち上がった彼の手には、剣が握られていた。彼はその剣で老人の攻撃を防いだのだ。


「夢龍剣、お気に入りだったんだけどな〜。また鍛冶職人の誰かに作ってもらうとするか。ちなみにこの剣の名前は、創龍剣だ」


 彼はそう言って、剣を構える。


「手短にって言ったが、手短にならなかったな。だが、次で決めてやる。龍派『脈龍剣』」


「あの技はたしか、さっき勝負したときの……」


 老人は素早く避けた。しかし、攻撃は命中。


「ぐふっ……なんじゃこれは……」


 引っ掛かった。やっぱり初見殺しだな。


「わしの負けじゃ。異変を終わらせて、わしは消える。時龍、おまえは……しっかり生きるんじゃよ」


 その言葉とともに、視界が真っ暗になった。






「——ん、ここは……」


 仰向けの状態で、俺は目を覚ます。隣には狼と火御利と——時龍⁉︎ あっちの世界から来たのか?


「……幻真、この人はだれ?」


 霊夢が時龍を指しながら訪ねてくる。ひとまず俺は、整理も兼ねて夢の中であったできごとを彼女に話した。






「——なるほどね。だいたいわかったわ」


 ちなみに、霊妙さんもいっしょに話を聞いていた。


「信じがたい話ね。でも、彼がここにいることがすべてを物語っているわ」


 霊妙さんの言葉を聞き、時龍の方に視線を移す。ほんと、不思議なものだ。常識なんてありはしない。なにか詳しいことが裏にありそうだが、今は休みたい気分だ。おいおい調べるとしよう。


 こうして、ちょっと不思議な夢の中での異変は幕を閉じたのであった。

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