第4話 弾幕ごっこ
幻想郷のことについて、霊夢が話し終えた後。
「このお茶、美味いな」
幻真と霊夢は、二人でお茶を飲んでいた。
「そうでしょ? 私も気に入ってるの」
霊夢が自慢気に言う。すると、箒に跨った少女が空から現れた。
「よお、霊夢! ん? 誰とお茶してるんだ?」
その少女は金髪で黒白の服を着ており、背はやや低めであった。
「あ、俺は幻真です」
「私の名前は霧雨魔理沙だぜ。あ、丁寧に話さなくていいからな。幻想郷の連中はそんなに人を見下さないからよ。たぶん……」
最後の言葉に違和感を持ちながらも、幻真は頷く。そして彼は、彼女を魔理沙と呼ぶことにした。
「えっと、君は人間……だよな? もしくは魔法使いだったりするのか?」
幻真が問う。見た目は人間。だが、箒に乗って浮かんでいたことを考えると魔法使いの可能性が高い。
「私は人間だぜ。魔法の森に住む、普通の魔法使い」
魔法の森に住む普通の魔法使い……彼はまたややこしいと思った。魔法使いに普通も何もあるのかと。互いの自己紹介が終わった後、霊夢が魔理沙に聞く。
「今日も弾幕ごっこをやろうって言うの?」
半分あきれている霊夢に対して、魔理沙は答えた。
「もちろん! 霊夢に勝つまでやるんだぜ!」
彼女たちの会話を聞いていた幻真は、やっぱり知らない単語があったため霊夢に問う。
「弾幕ごっこってなんだ? 弾幕になるのか?」
霊夢は苦笑いして言った。
「弾幕にはならないわよ。いわゆる勝負よ。その勝負にはスペルカードルールというものがあって——」
弾幕ごっことは、幻想郷内での揉めごとや紛争を解決するための手段とされている。
人間と妖怪が対等に戦う場合や、強い妖怪同士が戦う場合に、必要以上に力を出さないようにするための決闘ルールが「スペルカードルール」である。
そのほか、細かな取り決めでは決闘の美しさに意味を持たせる。意味のない攻撃はしてはいけない。事前に使用回数を宣言する。
このルールで戦い、負けた場合は負けをちゃんと認める。余力があっても、スペルカードルール以外の別の方法で倒してはいけない。
「——うん、わからん」
「とりあえず、そこで見ときなさい」
霊夢はお互いのスペルカードの使用回数を三回と決め、弾幕ごっこを始めた。
「まずはこれよ。霊符『夢想封印』!」
霊夢がそう唱えると、色とりどりの大きめな光の弾幕が次々と飛び出す。それらは魔理沙めがけて飛んでいった。
「おお、スゲェ!」
幻真は思わず声を漏らす。一方の魔理沙は、飛んできた弾幕を素早く避けてみせた。
「次は私の番だぜ! 恋符『マスタースパーク』!」
魔理沙はそう唱え、六角形の形をしたモノから極太レーザーを放つ。それは迫力が凄かった。レーザーを避けた霊夢がにやりと笑みを浮かべたかと思うと、挑発するような言葉を発した。
「幽香のスペルカードをパクったくせに〜」
パクった、とはどういうことだろう。話を聞きながら幻真は疑問に思う。
「ぱ、パクってねえし! 教えてもらったんだぜ!」
慌てた声で言い返す魔理沙。幻真は幽香とはだれだろうと思った。そんな言い合いはあったが、勝負は続いた。
「次はこれよ! 夢符『封魔陣』!」
霊夢は赤色のお札弾を八方向に展開。その一列あたりが五方向へと分かれ、さらに間隔を空けるように広がる。
「それなら私はこれだ。符の壱『スターダストリヴァリエ』!」
魔理沙は星の形をした弾幕を放つ。そして、二人の弾幕がぶつかり合う。
「スゲェ〜」
その弾幕は、やはり美しかった。観戦していた幻真もまた、それらに見惚れる。
「魔理沙、前より強くなったんじゃないかしら?」
「当たり前だ! なんて言ったって、師匠に鍛えてもらってるんだからな!」
師匠とは幽香のことだろうと、幻真は推測した。
「これで最後よ。霊符『夢想封印・集』!」
霊夢は夢想封印と似たようなスペルを唱える。
「これで終わりだ! 魔砲『ファイナルスパーク』!」
魔理沙もまた、マスタースパーク以上に迫力がある極太レーザーを放つ。それらはお互いにぶつかり合い、爆発を起こした。