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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第壱章 龍使い
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第39話 水龍

 一通り修行を終えた俺は中へ戻る。息が切れるほどやったのは久しぶりだな。いや〜疲れた〜。


「あら? なにしてたの?」


 風呂から上がってきた霊妙さんが髪を拭きながら俺のもとに歩いてくる。俺が雷龍を召喚していたことを彼女に伝えると、頷きながら感心した様子を見せた。


「雷龍ねぇ……あんた、雷も使えるようになったのね」


 その声の主は、霊妙さんと同じように髪を拭きながら歩いてきた霊夢だった。いま使える属性は炎と闇に加えて雷か。龍の召喚と属性の使用に何かしらの関係があるのなら、ほかに使えそうな属性は——


「それより、もう一回お風呂に入ってきたら? すごい汗よ」


 霊妙さんに言われ、シャツが汗でぐっしょりなのを感じ取る。霊夢が小声で順番が逆だと呟いたのが聞こえたが、まったくもってその通りだ。失敗したな。


「それじゃあ、そうします」


 俺は本を置き、風呂場へ向かった。






「——さてと……一日二回も風呂に入るなんてな。それも数分後にもう一回入るっていう」


 あー、くっそぉ。なんで風呂に入る前にしなかったんだ。いまさら後悔しても仕方ない。とりあえず、湯船に浸かろう。


「ふぅ……二回目だが、やっぱ風呂は気持ちいいな」


 どんな疲れでも吹っ飛ばしてくれそうな感覚になるんだよな。さすがに一日に何回も入りたいほどではないが、風呂は好きだ。


 俺は湯船から一度上がり、頭を洗い始める。一通り洗った後に湯を流す。ついでだからもう一度体も洗っておいた。


「よし、もう一回浸かってから上がろう。そして本を読もう」


 早く寝ろ? ソンナコトシリマセン。


 俺は風呂から上がり、体を拭いて服を着る。すると、突然水が飲みたくなったので、その思いのまま台所へと向かった。水道を使ってコップに水を入れ、それを一気に飲み干す。特に味はないが、風呂上がりの水は美味い。


 準備は整った。さあ、読書の続きを……


「幻真、早く寝なさいよ?」


 ありゃー、霊妙さんに言われてしまった。こりゃ寝るしかないな、というか眠い。いや、早く寝たい。え? 気が変わったなって? いやいや、最初から俺はそのつもりでしたよ?


「そういや、霊夢は?」


「霊夢ならとっくに寝たわよ」


 霊妙さんが指したところには、布団の中で寝ている霊夢の姿があった。俺が風呂に入ってる間に寝たのだろうか。


 俺はしぶしぶ寝室へ行き、枕元に本を置く。それを確認した霊妙さんは挨拶をしてから消灯し、布団にもぐった。読書の続きは明日にして、今日はもう寝よう。俺もまた布団をかぶり、眠りに就いた。






 ……ん? ここはどこだ? それに、あそこにいる人はいったい——いや、待て。もしかしてこの景色、あの本の——


「危ない!」


 その叫び声を聞いた俺は、咄嗟に後ろを振り向く。そこあったのは、大きな黒い影——






「——はぁ、はぁ……な、なんだったんだあれ……」


 夢……だったのか? いや、そんなことよりあの人物。おそらくだが、本に描いてあった人じゃないか? もう一回見てみるか。


「ふむ、ん? このページ……二十ぐらいか? 夢で見たあの人物が描いてるな。もしかすると、見開き一ページを使って描かれていた絵に描いてあった人物と同一かもしれないな」


 一番気になるのは夢の続き、背後にあった影だ。襲われると思って目を閉じたら目が覚めたんだよな。いったいどうなってんだ?


「ん……幻真? 汗かいてどうしたのよ? またお風呂に行くのかしら?」


 霊夢が起きて冷やかしてくる。あ〜、ほんと気になる。なんならもう一回寝てやる。


「……起きなさいよ」


「いだぁ⁉︎」


 俺は霊夢に叩かれた頰を抑えて床の上を転がる。せっかく夢の続きを見ようと思ったのに、目が覚めたわ。というか、もう朝だったんだな。








 〈狼〉



「おいしい〜!」


 やあ、狼だよ。僕は今、紅魔館の食堂で住人のみんなと朝食をとっていてね。ごはんを食べたら家に帰るつもり。あまりお世話になりすぎたら迷惑だからね。


 ちなみに、朝食は和食だよ。洋食かと思いきや、そうでもないんだね。意外だな〜。


 食事を終えた僕たちは、手を合わせて挨拶をした。


 パチュリーさんとこあは大図書館に戻り、レミリアさんとフランは自室に。美鈴さんは門番の仕事のために門へ戻り、咲夜さんは食器の後片付けを始めた。


「あ、咲夜さん、僕も手伝います」


 何もしないわけにはいかないため、咲夜さんの手伝いをすることに。それを見た咲夜さんは、笑顔で礼を言った。






 一通り食器を台所へ運び終わったので、さっそく洗い始める。流し台は大きいので、ふたりでも十分に使えた。


「あ、そうだ咲夜さん」


 あることを思い出した僕は、夢で見たことについて彼女に話す。夢で見た内容は、目の前に人がいたて、その人に声をかけられて後ろを振り向いたら謎の物体が迫ってきていたんだけど、そこで目が覚めちゃって……


「……なるほど。いったいなにかしら。不可解で不思議な夢ね」


 咲夜さんは首を傾げてそう言った。悩んでも解けなさそうだったので、その話は忘れて楽しい話をしながら食器を洗った。








 〈火御利〉



 私よ、火御利。少し口調を変えてみたわ。


 そういえば、妙な夢を見たわ。とある人物がいて、振り向いたら謎の物体が迫ってきて……で、目が覚めたっていう。この夢の真相、気になるわね。続き、見れるかしら?








 〈幻真〉



 朝食をとった後、召喚の続きを始める。


「幻想郷には海がないのか」


 海って、水が広がってる場所だったか。一度泳いでみたいな。まあ、幻想郷には一応湖はあるんだけどな。


「よし、できた」


 召喚陣を作った俺は、雷龍の時と同じように召喚を始めた。


「水龍ッ」


 そう唱えると、滝水と共に青色の龍が現れた。


「水龍か——って、ふえっ⁉︎」


 水龍が急に口から水鉄砲を吐いてきた。


「雷防『雷電結界・参』……あぶねぇ。こんな威力のある水を食らったら、腹突き抜けるぞ」


「そうね、危なかったわね」


 どこからともなく聞こえてきたその声は、紫さんのものだった。すると、後ろにスキマが現れて紫さんと藍さんが姿を現した。


 ふたりに挨拶をした俺だが、橙ちゃんの姿が見えなかったので彼女はどうしたのかと尋ねた。それに答えたのは藍さんで、返ってきた答えはまだ寝ているとのこと。


「それよりもあなた、かなり強くなってるわね。その本も人里で借りたそうじゃない」


 紫さんは縁側に置いてあった本を指す。正解だけど、なんで知ってるんだ?


 そんな疑問を残しつつ、召喚陣の描かれているページを見せながら、龍の召喚ができることをふたりに教えた。


「これは興味深いな。でも、まだ全部は召喚していないのだろう?」


「はい。これから試していくつもりです」


「ますます強くなりそうね。でも、むりはしちゃダメよ?」


 そう言われた俺は、むりはしないと彼女と約束をする。それを確認したふたりは、スキマの中へ戻っていった。


「そんじゃあ水龍、修行開始だ。剣符『水流剣』」


 俺は水を纏う剣を生成する。


「よし、斬符『水伝斬(アクアスラッシュ)』」


 俺はそう言って、剣を振り回す。


「次、斬符『流水斬(ウォータースラッシュ)』」


 剣を突き刺すと、濁流が発生。一瞬にして地面は水でビショビショに濡れた。


「よっしゃ、次は弾幕のスペルをやるぞ」


 俺は剣を消し、スペルを唱える。


「秘符『伝々水魔流』」


 それは、水をまとった大量の弾幕とレーザーを放つといったもの。


「待たせたな水龍。龍符『水々青々龍水流(アクアシードドラゴン)』」


 水龍が正面から突撃し、周りから青々とした水をまとう弾幕を飛ばす。


「ぶっ続けでいくぞ。龍符『伝青流々弾幕縁起(オーメンバラージ)』」


 水龍とともに水をまとうレーザーを放つ。なかなか好調だ。それじゃあ、次で最後にしようか。


「龍符『清・水龍』」


 紺色の弾幕と水色の弾幕を大量に飛ばすとともに、水龍を放つ。うむ、上出来だ。


「……すごいわね」


 ん、木の方から声がしたようだが。


「あ、火御利か。どうした?」


「実は——」


 




「おかしな夢……そういや俺も見たな、その夢」


 どーなってんだよ。これは異変の予兆だったりするのか?


「話はそれだけよ。それじゃあ」


 火御利は手を振って、どこかへ走り去っていった。


 夢の謎を解く手がかりは、あの本だ。

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