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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第壱章 龍使い
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第38話 雷龍

 俺は今、幻想郷上空を飛行中。空はすっかり橙色に染まっている。ちなみに、上空にいるのは博麗神社へ帰っている途中だからだ。居候? ああ、そういえばまだ居候してたんだったか。


「ただいま〜っと。お、うまそうな匂いが……」


 俺は匂いに誘われるがまま、中へと入る。


「おかえりなさい。いま夕飯を作ってるから、もうすこし待っててちょうだいね」


 霊妙さんが台所で料理を作っていた。やっぱり、俺の母親みたいだな。


 俺は返事をし、霊夢を探すことに。まったく、母親の手伝いぐらいはしろよな。まあ、居候の俺が言えないか。


 改めて霊夢を探そうとしたそのとき、俺は鈴奈庵で借りた龍の冊子を思い出し、懐から取り出す。見た感じ、この本はかなり古そうだ。字、読めるかな?


「炎龍……んだこりゃ」


 思わずつぶやいてしまった。どうして炎龍のことが書き記されているのか。表紙に龍の絵が描いてあるその本の名は――「龍史伝」。漢字から題名の意味を説くと、龍の歴史と伝説についてでも書かれているってところか。目次は本書の表紙の裏の次のページ――仮に一ページ目としよう。そこに書かれているようだが、かすれていてうまく読めなかった。仕方ない。順番に読み進めよう。


 俺は縁側に腰を掛け、さっそく読み始める。日が落ちてきて、外はいっそう暗くなってきた。


 弾幕の明かりを頼りに読み進めると、二ページ目に炎龍らしき絵が描いてあるのを見つける。隣の三ページには、闇龍……って書いてあるのか?


 ペラリとめくり四ページ。んん? この龍の周りには、雷らしき絵が描いてあるな。


 隣の五ページ。この龍は水面の上で飛んでいて……下は渦潮が起きてるみたいだ。相変わらず説明文らしき文字が読めずに絵でしか判断できない。


 次のページをめくると、なにやら人と龍のようなものが見開き一ページ分を使って描かれていた。俺はそこに書かれている文字を読もうとしたが、霊妙さんに呼ばれて読むことはできなかった。俺はしぶしぶ本を閉じ、食堂へ向かった。






 食事の最中、さっきのページになにが書いてあったのか気になって仕方がなかった。


「幻真、なにか考えごと?」


 俺の様子が変だったからか、口に入っていた食べ物を飲み込んだ霊妙さんが俺に尋ねた。


「あ、いえ……鈴奈庵で借りたあの本を読んでいて、続きが気になって仕方ないもので」


「あんた、意外と本を読むのね」


 霊夢は意外そうな目で俺を見る。失礼だな。俺だって興味のある本ぐらい読むさ。


「とりあえず早く食って——」


「お昼言ったでしょ?」


 昼みたいに怒られるのは勘弁してほしいので、俺はゆっくりと味わって食べた。






 そんなこんなで食事を終えた俺たちは、手を合わせて食後の挨拶をした。だが、どうしても本の続きが気になって仕方なかった俺は、頭を下げて霊妙さんに片付けのことを話す。


「いいわよ、私と霊夢で片付けするから」


 俺は彼女の気遣いとその優しさに感謝をする。一方で、霊夢は驚いた顔をしていた。自分が巻き込まれたこと対する驚きだろうか。


 霊夢にも悪いと思いながら縁側に戻った俺は、さっき読んでいた本の続きのページを開く。次は……六と七ページだったか。どれどれ……あれ? このページ、人と龍がいっしょに描かれているだけなのか。それに、妙に見づらい。


 次のページにでも何か描いているのか? そう思った俺は、次のページを開く。


「お、なんか書いてある」


 そこには、文のようなものが書かれていた。たぶん、龍を操る……って感じか。炎は違うようだが、俺と繋がりがあるような気がする。ん、待てよ……? 炎龍と闇龍のことについて書いてあったということは、さっき描かれていた人の次世代が俺だったりするのか? この人の能力を俺が継承したおかげで、龍を召喚できているとか。


 俺が召喚できる龍の数は、現状二体。前のページに二体の龍が描かれていてが、そいつらも召喚しようと思えばできるのだろうか。


 隣のページ、九ページを見てみると、光り輝く龍の様子が描かれていた。また、次の十ページには氷龍、その隣の十一ページには風龍が勇ましい様子で描かれていた。


 現時点で龍の数は七体か。ん? この技は……死地宝神炎龍? 読み方は俺の使っているスペカと同じだな。


「幻真〜、先にお風呂入る〜?」


 お風呂の方から霊妙さんが尋ねて来た。


「……あっ! 入ります!」


 俺は彼女に聞こえるぐらいの声で返事をした。キリがよさそうなところまで読めたし、お風呂で少し整理してみようか。






 俺は脱衣し浴室へ入って湯を浴びてから湯船に浸かる。いや〜、暖かい。


「さてと、整理するか」


 えーっと、まず……龍に関しては、現在俺が操っている二体の龍だけでなく、まだ何体かいるっぽいということ。炎、闇、雷、水、光、氷、風……まあでも、もう少しで読み終わりそうだし、寝る前に読んでしまおう。






 風呂から上がり、布団の引いてる部屋へ向かう。俺と入れ替わるようにして、霊夢と霊妙さんは風呂へ行った。


 俺は本を持って布団の上に座り、さっきの続きから読み始める。


 十二ページ。これは……神龍? 文字だけ見たら神の龍みたいだが……


「……のど乾いた」


 俺は本を持ったまま台所へ向かい、急須に入れてあったお茶を湯のみに淹れて、机の方へと持っていく。


「ふぅ、うまい。んで、続きを……」


 湯のみを置き、隣のページに書かれていた文を読む。「与えられし神の力」……? なんだこりゃ。よく分からないが、昔なにかあったのだろうか? まあ、この話は置いておこう。


 次の十四ページの上部分には「雷龍召喚の陣」と書かれていた。その下には、召喚陣らしきものが描かれていた。どうやら石を使って作るらしい。


 俺は縁側から裸足で外に出て、その形通りに石で陣を作り始める。


「んで? あ? え? んん? あ、入るのか」


 なんとか作った召喚陣。次の指令はその中に入ることだった。すると、次第に電気のような力を感じ始める。そして俺は召喚最後にやること、龍の名前を呼んだ。


「……雷龍ッ」


 すると、電気を帯びた一体の龍が目の前に現れる。この龍はおそらく、あの本に描いていた雷龍だ。雷を纏っているし、間違いはないはずだ。俺はもう一度、本に目を通す。しばらくほかの龍の召喚陣が続いて次の見開きの左ページを見てみると、なにか書かれていた。


「『龍を操りし者、召還できん』……へぇ。んじゃ、俺は後継者に選ばれたってことか?」


 そんなわけないか。いや、あるかもしれない。これは仮説だが、幻想入りする際に先代が亡くなり、能力が俺に受け継がれたとか……


「……夢が大きすぎるな。まあ、雷龍よろしく」


 俺は手を差し出し、雷龍の頭に軽く触れようとする。しかし、雷龍はなぜか身を引く。


「ん? どうした? あ、もしかして感電するから危ないとか思ってくれてんのかな?」


 こいつ、めっちゃいいヤツだな。だが、心配は無用。俺は雷龍の頭を撫でる。すると、触れている手からなにか力を感じるとともにある考えが浮かび、それを実行する。


「やってみるか。剣符『雷鳴之龍剣』」


 俺は雷龍の力が込められた剣――灼熱之龍剣などと違った属性が込められている――を手にする。さあて、試しに斬ってみるか。


「斬符『雷鳴斬(サンダースラッシュ)』」


 雷を纏った剣を斜めに思いっきり振る。いい感じだ。どんどんやっていこう。


「斬符『雷魔斬(エビルサンダー)』」


 これは炎魔斬の雷版みたいな技だ。単純でわかりやすいだろ?


「ふぅ〜。じゃあ、こっちのほうもいくか」


 あることをするため、俺は身構える。


「雷防『雷電結界・壱 』」


 灼熱結界の雷版みたいなもの。もちろん、触れたら感電する。だいたい十万ボルトぐらいか。ちなみに、弐と参もあるからな。ボルト数は変わらないが結界の強度は変わる。


「龍符『雷龍渾身一発(ブロウ・ザ・サンダー)』」


 次は雷龍が大量の雷を纏い、とてつもない速さで対象にに突っ込むというもの。受け止めたとしても、痺れが襲いかかるだろう。


「ふう……久々に魔力の消耗を感じた」


 んじゃ、次で最後にしようか。


「龍符『雷魔終縁金(エビルゴールド)』」


 どんな技かと言うと、単純に先ほどのスペルを強化したものだ。


「はぁ、はぁ、はぁ……疲れた……」


 俺は過呼吸で息を整える。雷龍のスペルは魔力などの消費が非常にツラい。克服していかないと使い物にならなさそうだ。

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