第33話 俺はもっと強くなる
俺の弱さのせいで狼を巻き込んでしまった。これ以上後悔しないためにも、もっと強くなってやる!
「霊夢、ちょっと付き合ってくれないか?」
「いいけど、なにをすればいい?」
「ひたすら弾幕を飛ばしてくれ」
「わかったわ」
結界の精度を上げ、さらには回避による俊敏差を上げる特修行だ。
「いくわよ!」
霊夢は色とりどりの弾幕を飛ばす。
「炎防『灼熱結界・壱』」
「いち?」
そう、壱だ。灼熱結界は現段階で参まである。今の霊夢の弾幕なら壱で十分溶かせる。参は魔理沙のマスタースパークを溶かせるんじゃないかな。霊力を最大限に使わないといけないが。
「よし、霊夢も修行がてら、これを食らえ」
「はぁ? って、ええ⁉︎」
地面から火柱が出たことに彼女は驚いた。
これは熱符『熱火柱』。普通に千度は超えている。触れただけで真っ黒焦げだ。
「よし、次。炎砲『溶岩熱砲』」
「溶岩⁉︎ 夢符『二重結界』!」
霊夢は慌てて結界を展開するが、その結界はだんだん溶かされていく。このままでは結界がもたないと判断した彼女は、すぐさま横に避けた。
「どんどん行くぞ。炎真『勾玉炎弾』」
「このっ! 霊符『夢想封印』!」
霊夢も反撃してくる。というか、戦闘になってきてるな……まあ、構わない。
「炎防『灼熱結界・弐』」
「溶かされて……もうっ! それじゃあ無敵じゃないの!」
無敵ではないと思うがな。だいたいのスペルカードは防げるって感じで……
「そ、それじゃあ次はこれだ。炎弾『苑炎弾』」
「なによこれ、真ん中を通ればいいだけ……ッ⁉︎」
まあ普通はそう考えるだろうな。これは標的に近づくと、空いていた部分が大の字のように閉じる。油断すると被弾するぞ。
「ぐぅ……」
霊夢は避けきれずに被弾してしまった。すると、それを見越した人物が俺の目の前に現れる。
「私と選手交代だ、霊夢」
「魔理沙、いつの間に?」
「ついさっきだ神社にもう一回来てみたら、おまえたちがなにかやっているのを見てな。弾幕が霊夢に当たったのを見て、今この状況」
詳しい説明ありがとう。
「んじゃ、霊夢は縁側で休んでな。よし、魔理沙いくぞ。龍符『炎龍』」
俺は霊夢に言い聞かせ、炎龍を召喚した。
「私との戦闘でいきなり本気ってことか。受けて立つぜ!」
よぉし、魔理沙も本気なようだし、いっちょやるか。
「魔理沙、耐えて見せろよ! 龍符『参方龍・炎』!」
「ちょっ、それはマズ——」
魔理沙が言葉を言い終える前に、炎龍の攻撃が命中する。
「あ、ヤベ……魔理沙〜大丈夫か〜?」
「あんたねえ、やりすぎよ」
うむ、そう言われてみると……いや、普通にやりすぎた。うん。反省してる。
「私は……大丈夫だ、ぜ……」
魔理沙は残った力でそう言い、気絶した。
「あ〜、ヤビィ……」
「何がヤビィよ。さっさと魔理沙を中に運びなさい」
俺は返事をして、魔理沙を中へと運ぶ。
「どうすっか……」
魔理沙と狼は気絶、霊夢も負傷。まだ試したいスペルカードがあるんだけどな〜。
「南無南無……」
ん? だれだ? 聞き覚えのある声だけど。
「妖夢、なにか用?」
んん? 妖夢?
「あ、こんにちは。幻真さんがいるかなあと思って寄っただけで」
ふむ、そう言うことか。なら、好都合。
「妖夢、俺とひと勝負しないか?」
俺は炎で具現化した剣を持ち、妖夢に言った。
「構いませんよ。やりましょうか」
よし、交渉成功。最近、剣を振っていなかったからな。楽しみだ。
「あんた、体力は大丈夫なの?」
「ああ、問題ない」
よっしゃ、気合入れていくか。
「——よし、妖夢、刀抜きな。二刀だぞ」
「いいんですか? ずいぶんと自信があるようで」
ふふん、ここらで一本取ってやりたいからな。妖夢は白楼剣と楼観剣をそれぞれ抜く。俺も刀と剣を取り出す。
「その刀は?」
「こっちの長い方が火炎刀。と言ってもサブだがな。で、こっちが武炎剣だ。手加減なしだぞ?」
「もちろんです。いきますよ! 私に斬れないものは……あんまりない!」
その掛け声とともに、妖夢は刀を振ってくる。俺はそれを二本の得物で受け止める。
「やりますね。それでは、これはどうでしょう」
妖夢は後ろに下がり、スペルを唱える。
「これはあの時も使いましたっけね。幽鬼剣『妖童餓鬼の断食』」
あの時、か。
「受けて立つ。斬符『炎魔斬』」
刃と刃がぶつかり合う中、俺は飛んでくる弾幕を躱す。だが次第に刃の部分に纏っていた炎は消え、不利な状況へと追い込まれる。
「チッ……」
俺は軽く舌打ちをし、刀を押した反動で後ろに下がる。
「なかなかやりますね」
現状はこんな感じか……
「んじゃ、二刀流のスペルを使わせてもらおうか。斬符『回炎斬』」
「うぐっ……」
回転してから与えた攻撃を、彼女は受け止める。だが、炎を纏わっていることもあって、彼女は熱さに苦しむ。
「しまった、炎が……あうっ……」
炎に触れた妖夢は体勢を崩し、地面に倒れこむ。
「いつの間にこんなに強くなったんですか……」
ほんと、いつの間にかだな。自分でも思う。なぜヤツに勝てなかったのか。
「とは言っても、霊妙さんには及ばないかな」
俺は苦笑しながら言った。すると、縁側に座っていた霊夢が妖夢に言う。
「妖夢、疲れたでしょうし休憩していきなさいよ」
「いいの? それじゃあ、お言葉に甘えるね」
俺と妖夢は霊夢の隣に座り、彼女が淹れたお茶を飲む。魔理沙はまだ気を失ったままであった。