第29話 力試し
〈幻真〉
まったく……昨日は酷い目にあった。永琳さんに薬を飲まされて眠ってしまって、起きたらなぜか狼と魔理沙が帰らずに寝てるし……こいつら何する気だ? 霊夢も近くで寝ちゃってるし。
「久しぶりの登場かしら。霊妙よ」
「霊妙さん? どうしたんですか?」
霊妙さん、いつも阿求さんのところに行ってるらしいけど、さすがになぁ……
「というわけで幻真、私と弾幕ごっこしましょ。あなたがどれだけ強くなったのか、見させてもらうわ」
おっと、霊妙さんと初めての弾幕ごっこ……だよな? 絶対強いだろうな〜。
「いいですよ。その前に、朝ごはん食べませんか? お腹空いちゃって」
「そう言うと思って作っておいたわ。はやく食べましょ」
俺と霊妙さんは食堂へ向かった。
席に着いた俺たちは、挨拶をして食べ始める。
「あなた、最近活躍してるらしいわね。霊夢が楽をし過ぎてないか心配だわ」
「大丈夫ですよ。霊夢もちゃんと戦ってくれてますから」
そのことを聞いた霊妙さんは安心した表情を浮かべた。その後、適当な雑談をしながら食事を堪能した。
食事を済ませた俺たちは、食器を台所へと運んで洗い始める。
「霊妙さん、手加減無用ですからね」
「あら、すごい自信ね」
勝てる確証はないが、本気で戦ってもらいたいと思ってな。俺だって異変解決に貢献してきたんだ。簡単には負けない
「俺も手加減なしで戦いますからね?」
「ふふ、もちろんよ」
俺は早く戦いたいがため、手を早く動かす。そのせいで手を滑らせて危うく皿を落としかけたなんて、恥ずかしくて言えやしない。
「——片付け終わったわね。さあ、外に行きましょ」
濡れた手を拭き、霊妙さんと外に出る。
「位置に着いた? それじゃあ、あなたからきなさい」
「いいんですか? それでは、遠慮なく……炎符『炎之勾玉』」
いきなりだが、スペルカードを使う。
「甘いわよ!」
彼女は飛んでくる弾幕を素早く避けながら俺に接近してくる。
「ぐっ……」
距離を詰められた俺は、彼女の蹴りを受けてしまう。
「霊妙さんは格闘技ですか」
「そうね、どちらかと言うと格闘派。昔はこれで妖怪を退治していたわ」
食らったらマズイな。俺は距離を空けて、別のスペルカードを発動する。
「炎符『炎円弾』」
これは隙があるからな〜。霊妙さんなら素早く避けてしまうだろう。
「こんなものかしら?」
やっぱりお見通しだったか。だったら、そろそろ本気でも出すか。
「龍符『炎龍』!」
「今から本気かしら? いいわ、かかってきなさい! 夢符『封魔陣』!」
ははっ、こんなもん……
「龍符『龍神炎一魔災狂獣』」
なんだかややこしい名前のスペルだなって? いやいや、カッコいいだろ?
どんなスペルなのか説明すると、龍神が出てくるってわけじゃないけど炎龍は炎龍で……魔力が増加された炎龍だ。わかりにくい? 悪い、俺もわかってない。
「これはマズそうね。境界『四重結界』」
四重……二重結界よりもさらに二重の結界を重ねた結界か。俺の放った龍は難無くと防がれる。
「どんだけ硬いんすか」
これはキツイなぁ。でも、相手の霊力も消耗してきてるはずだ。すべて消耗させるのもアリかもしれないけど、俺がもちこたえられるかどうか……
「いくわよ! 神技『八方鬼縛陣』!」
うおっ、神技だとぉ⁉︎ いかにもヤバそう……
「見真似だが……『二重結界』」
霊力を出せる限り出し切って、二重結界を展開。俺は必死の思いで霊妙さんの攻撃を防ぐ。
「二重結界を使えるとは……やるじゃない」
見真似なんだけどな……さてと、次は俺の番だ。
「霊妙さん、いきますよ。龍符『三方炎龍』」
スペルを唱え、三方向に炎龍を放つ。
「そのスペルね。神霊『夢想封印・瞬』」
あれはたしか、霊夢も使ってたスペルだっけ。炎龍、いけるか?
俺は心の中で炎龍に問う。まあ、炎龍は喋らないんだけどな、心で通じ合う仲間ってな。
だが、不思議なことに返事が聞こえてきたような気がした。耳を疑った俺だったが、ひとまず勝負に集中することにした。
炎龍は弾幕を腕で薙ぎ払い、霊妙さんの方に向かう。でも、なんか変だな。反撃してこない気が……
「神技『天覇風神脚』」
様子を伺っていると、彼女は突然連続で昇天脚を繰り出してきた。
「しまっ——」
爆発音と共に爆風が起こった。
「——ぐっ、ゴホッゴホッ……」
危ねぇ、死んだかと思った……
「思ったよりやるようになったわね。もしかしたら、霊夢に勝てるんじゃないかしら?」
やっぱり霊妙さんには敵わないか。霊夢に勝てるかも怪しくなってきたかも……
「なんだなんだ? すごい爆発音がしたけど」
魔理沙か。さっきの爆発で起こしちゃったか。
「ビックリして起きちゃったじゃないの。どうやら、お母さんと幻真が犯人みたいだけど」
「さすが霊妙さん。幻真じゃ相手にならなかったみたいだね」
むっ、言ってくれるな狼。
「さて狼、弾幕ごっこするぞ!」
「うん、やろうか」
魔理沙と狼が意気揚々と外に出てくる。
「霊夢、ここ借りるんだぜ」
「いいけど、あんまり境内を荒らさないでよ〜」
霊夢はそう言い残して中に戻った。
「さてと、俺はお茶でも飲みながらふたりの弾幕ごっこでも見ようかな。霊夢〜お茶くれ〜い」
戻ろうとしていた霊夢を呼び止めて注文する。
「なによその頼み方。まあいいわ、私もその気分だったし。魔理沙、呆気なく終わったらぶっ飛ばすわよ」
「れ、霊夢ぅ……暴力はダメだぜ……」
魔理沙は霊夢に脅され、肩を竦める。
「まあまあ。僕もヘナチョコみたいに弱くないから心配しないで」
おいおい、自分で言うのかよ。まあ、狼は弱くないけどな。
「弱かったら困る。とりあえず、位置に着こうか」
魔理沙がそう言ったあと、ふたりは位置に着いた。