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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第壱章 龍使い
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第25話 夜雀と寺子屋の先生

「さて、異変の犯人でも探すかな〜」


 虫の妖怪、リグルを倒した俺は捜索を再開する。


「ん? なんか聞こえてくる……歌かな?」


 な、なんだ⁉︎ 体が勝手にそっちのほうへ……


「空きあり。夜雀『真夜中のコーラスマスター』」


 だれかの声が聞こえた後、いくつもの弾幕が飛んでくる。我に返った俺は弾幕を躱す。


「おっと、危ねぇ。ついうっかりしてしまった」


 すると、ひとりの少女が現れる。


 彼女は禍々しいデザインの服に身を包み、さらに異形の翼、爪、羽の耳を持っていた。


 頭部の装備らしきものには羽根の飾りが付いていて、靴にも同様の飾りがあった。左耳にはピアスを、右耳には黒いピアスをつけており、靴下の色はライトグリーンで、妙に目立った。


 彼女が履いていたジャンパースカートは、表すなら雀のようにシックな茶色だが、曲線のラインにそって蛾をイメージしたような、毒々しさを感じさせる紫のリボンが多数あしらわれていた。


「俺は幻真。君は?」


「私は夜雀、ミスティア・ローレライよ」


 へぇ、夜雀ね〜。やっぱり夜は妖怪が多いな。


「そんで、俺に何か用?」


「私は歌ってただけだったのに、あなたが勝手に来たんでしょ?」


 ああ、そっか。


「なんで俺に攻撃を?」


「なんとなく」


 彼女も気まぐれな妖怪だ。


「じゃあ、俺は行くから——って、ちょっと?」


 去ろうとした俺に、ミスティアが弾幕を飛ばしてくる。


「弾幕ごっこなら構わないぞ?」


「ふん。それなら遠慮なく食らいなさい! 毒符『毒蛾の鱗粉』!」


 何やら粉のようなものが撒かれる。


「なんだこれ、鱗粉? あ、鱗粉か。って、ヤバッ……」


 俺は鱗粉が目に入らないようにする。


「へぇ、勘がいいわね。これが目に入ると鳥目になるのよ。さっきの歌も聞いたら鳥目になるはずなんだけど……あなたには聞かなかったようね」


 んな、鳥目……それに俺、耐性持ちか?


「危ない危ない。やられっぱなしは性に合わない。俺も反撃させてもらおうか。夢符『勾玉弾幕(ジュエルバラージ)』」


 俺はスペルを発動する。


「キャッ! 危ないじゃないの!」


 いやいやいや、おまえが弾幕ごっこをするって言ったじゃん。


「俺は急いでいるんでな。これで終わらせる。火符『炎弾』」


「あっ――」








 〈博麗霊夢〉



「ねえ、紫……」


「そうね」


「なんでそんなに暢気なのよ!」


 私たちは今、本来ならあるはずの人里の上空にいる。なぜ「はず」かって? それはというと——


「人里がないじゃない!」


「おまえたちか? 人里を襲いに来たのは」


 声のした方を見ると、そこにはひとりの少女がいた。


 彼女の特徴として、髪は腰まで届こうかというまで長い青のメッシュが入った銀髪。頭には頂に赤いリボンをつけ、六面体と三角錐の間に板を挟んだような形の青い帽子を乗せていた。また、その帽子には赤い文字のような模様が描かれていた。


 衣服は胸元が大きく開き、上下が一体になっている青い服で、袖は短く白。襟は半円をいくつか組み合わせ、それを白が縁取っていた。また、胸元に赤いリボンをつけており、下半身のスカート部分には長く幾重にも重なった白のレースがついていた。


「あんたは?」


「私は上白沢かみしらさわ慧音けいね。寺小屋で里の子供たちに歴史を教えている」


「そう。私は博麗霊夢。博麗神社の巫女をやっているわ。で、こっちが……ってあれ?」


 紫がいない……逃げたのかしら?


「ま、まぁいいわ。それで、あんたが人里を消したのかしら?」


「正確には、里の歴史を食べて隠した」


 ……は? 食べて隠した?


「あんたの能力は……」


「『歴史を食べる程度の能力』だ。食べるといっても、隠したような感じだがな」


 へぇ、変わった能力ね。


「とりあえず、退治させてもらうわよ」


「やるのか? はぁ……仕方ない」


 彼女はどこか乗り気じゃない様子で溜息を吐いた。


「なに? 弾幕ごっこは嫌い?」


「いや、嫌いというか、なんというかだな……」


 いったいなんだって言うのよ。


「どうなっても知らないわよ。霊符『夢想封印』」


「やれやれ……産霊『ファーストピラミッド』」


 彼女は三角形に布陣を組んだ魔法陣のような使い魔から丸弾を撃たせつつ、私を狙って大玉を三方向に発射してくる。


「くっ、夢符『二重結界』」


 私は素早く結界を展開した。


「やるな、さすが巫女と言ったところか。だが、私にも事情があるんでな。早く終わらせる。始符『エフェメラリティ137』」


 彼女は使い魔の集団を投げつけて弾けさせ、小さな無数の丸弾に変えて拡散させてくる。


「あらそう。だったら私もこれで決めるわ。神技『八方龍殺陣』!」


 近寄る者すべてを阻む大結界を組み上げ、私を中心とした広範囲を攻撃する。


「くっ……不覚……」








 〈狼〉



「あーもう! ここどこ!」


 僕は今、竹林にいる。僕だって、幻想郷を完全に知ってるわけじゃないんだから。


「ねえねえ、そこの君」


「え? あ、僕?」


 だれかに呼ばれる。僕はそっちの方を見ると、そこには癖っ毛の短めな黒髪と、ふわふわなウサギの耳、もふもふなウサギの尻尾を持つ幼い女の子がいた。


 服は桃色で裾に赤い縫い目のある半袖ワンピースを着用しており、足には装飾品が無く裸足だった。


「えっと、僕は狼」


「私は因幡いなばてゐ。この迷いの竹林の最長老さ」


 ここ、迷いの竹林っていうんだ。


「君、迷子かい?」


「迷子というか、まあ迷ったというか……」


「あら? あなたは……」


 後ろから、誰かの声がする。


「吸血鬼と……メイド?」


「ええ、そうよ。私はレミリア・スカーレット」


「私はお嬢様に仕えるメイド、十六夜咲夜よ」


「ひぃ! 吸血鬼!」


 てゐはそう言って、レミリアさんに対して怯える。だが、怯えるなり恐怖を押し堪えて僕たちに言った。


「ま、まぁいいわ。ほら、外に案内してあげる」


「……怪しいわね、この竹林」


「ギクッ⁉︎」


 レミリアさんが何かを察知する。何が怪しいのか、僕は彼女に聞いてみる。


「レミリアさん、怪しいって?」


「その兎、何か隠してるわよ」


「か、隠してなんかいないよ!」


「ふーん……」


 すると、レミリアさんはてゐの顔の前に自分の顔を寄せ、威圧を掛ける。その圧に、てゐは震える。


「わ、わかったよ! 案内すればいいんでしょ! だから勘弁して……」


 僕たちはてゐに連れられ、迷いの竹林を進む。レミリアさんって、見た目は幼いのに結構怖いな……








 〈幻真〉



「おーい、幻真〜!」


 この声は魔理沙か。隣にはアリスもいる。


「おまえも異変解決のために動いてるのか?」


「まあ、そうだな」


 霊夢と紫さん、魔理沙とアリス……か。調査に出ているのはこの二組だけじゃないような気がするな。


「魔理沙たちは何か手がかりを?」


「特にないんだけど、強いて言うなら怪しい竹林を見つけたわ」


 怪しい竹林か。


「わかった、そこに行ってみよう」


 俺たちは、その竹林へと向かった。








 〈魂魄妖夢〉



「幽々子様、いつの間にか変な竹林に来ちゃいましたけど、大丈夫なんてすか?」


「大丈夫よ〜、妖夢ったら臆病なんだから〜」


 お、臆病ってわけじゃないですけど……


「あら〜? あなたたちは……」


「あら、奇遇ね。西行寺幽々子」


 そこには兎耳の幼い女の子と、吸血鬼レミリア・スカーレット、その従者である十六夜咲夜、そして獣耳の少年がいた。


「あなたたちもこの迷いの竹林が怪しいと?」


「え〜っとね——」


「そ、そうなの! 怪しいと思ってきたのよね!」


「ちょっと妖夢〜?」


 私は幽々子様の言葉を阻んで答えた。


「ふーん、そうなの。それで、てゐだったかしら? ちゃーんと案内頼むわよ」


「わ、わかってるよ!」


「レミリアさん、なにもそこまで怖がらせなくても……」


「いいのよ。嘗めた態度は取らせたくないから」


 彼女は怖い笑みを浮かべながら、てゐと呼ばれる女の子について行った。私たちもその後を追った。

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