第22話 二組の弾幕ごっこ
〈博麗霊夢〉
「じゃあ、俺は妖怪の山に行ってくる」
「気をつけてね」
幻真は今日、狼っていう妖怪に会いに山へ行くらしい。だから、神社にいるのは私とお母さんだけ。お母さんも今日は家にいるらしい。
「することがないわね〜」
縁側でお茶を飲んで少し残った桜を見るだけで、時間が過ぎちゃいそうだわ。
「霊夢〜!」
あら、この声は魔理沙ね。
「霊夢! 久しぶりに弾幕ごっこするんだぜ!」
「ええ、いいわよ」
「そう言わずに——って、おいおい霊夢、なにかいいことでもあったのか?」
「え? なんでそうなるのよ?」
「なんかいつもと違うというか……いつもならいやいや弾幕ごっこの相手になってくれるのにな〜と思ってよ」
まあ、今日はヒマなのよね。
「とりあえず、始めるわよ」
私と魔理沙は外に出て、さっそく位置につく。
「いくわよ。霊符『夢想封印』」
私はスペルカードを唱える。魔理沙はミニ八卦炉をこちらに向けて唱えた。
「恋符『マスタースパーク』!」
彼女の掛け声とともに、ミニ八卦炉から極大レーザーが放たれる。
「夢符『二重結界』」
私は空かさず結界を展開し、なんとかレーザーを防いでみせる。
「霊夢、油断しちゃダメよ」
お母さんが縁側で指導する。私はそちらを見ずに、耳に聞き入れた。
「次はこれだ。彗星『ブレイジングスター』!」
こちらにレーザーを放ち、星弾をばらまいてくる。これは結界では防げそうにないわね。
「宝具『陰陽鬼神玉』」
私は超巨大な霊力弾を前方に形成し、放つ。
「なっ……⁉︎」
弾幕がぶつかり合う。ぶつかった衝撃で、小さな爆発を起こした。
「次で決めるわよ」
「受けて立つぜ!」
お互いスペルカードを取り出して、唱えた。
「神霊『夢想封印・瞬』!」
「魔砲『ファイナルスパーク』!」
私はお札弾を残して拡散させる。魔理沙はマスタースパークより一回り大きいレーザーを放った。
〈幻真〉
俺は今、妖怪の山に向かっている。目的は、狼天狗の狼に会いに行くこと。手土産のみたらし団子を忘れていない。
到着した俺は、狼の家の扉を叩いた。
「はーい。あ、幻真」
「よお、遊びに来たぜ」
「いらっしゃい、どうぞ上がって」
俺は狼の家にお邪魔する。
「ほい、みたらし団子」
「あ、ありがとう! いっしょに食べようよ!」
狼が誘う。まあ、断るのもアレだし……
「ああ、食べようか」
「——弾幕ごっこ⁉︎」
「うん、やらない?」
団子を食べ、お茶を飲みながら雑談していたらそんな話になった。たしか狼の能力は『自然を操る程度の能力』だったよな。
「もしかして、僕に勝てないと思ってるのかな?」
「そんな弱気なこと思ってねえよ!」
まったく、狼もこういうヤツなのかよ……
「わかった、やろう」
俺たちは位置につく。
「俺からいかせてもらうぞ。炎符『無造炎弾』」
俺は無作為に炎弾を飛ばす。
「へぇ、ランダムかぁ。風符『辻斬』」
「なっ……」
狼による強烈な風で、飛ばした弾幕がこちらに返ってくる。
「チッ、夢符『勾玉弾幕』」
俺は勾玉の弾幕を飛ばしている間に体勢を整える。
「幻真、まだ能力を使ってないのかい?」
「ああ、まだだな」
まだ使う必要は無いかと。でも、こんなこと言ってられるのも今のうちかもな。
「甘く見ないでよね! 葉符『葉斬』!」
彼はカッターのように尖った葉を飛ばしてくる。
「くそッ……」
避けきれず、それは俺の服を切る。仕方ない、炎龍。
「展開!」
俺は火之結界を展開し、なんとか狼の攻撃を防いだ。
「やっとだね、能力。君は珍しいことに二つの能力を持っているみたいだけど」
「そんなことはどうでもいい。いくぞ……龍符『三方炎龍』!」
俺は三方向に炎龍を撃つ。
「水符『水弾』」
一方で、狼は水のような弾幕を撃ってくる。
「炎龍ってこんなものなのかい?」
くそっ、水の弾幕で弱められたか。狼もなかなかの戦闘マニアだな。
「おまえの能力、結構ずるいじゃねぇか」
「そんなことないよ。風符『風竜』」
スペルカードを唱えてきたか。
「霊符『一筋弾幕』」
前も言ってやつだが、魔理沙には及ばないほどのマスタースパークのような弾幕を撃つ。
「水符『水壁』」
結界か。小癪だぞ、まったく。
「ああもう! いい加減これで終わらせる! 龍符『七方神炎龍』!」
これを使ったら何日間か魔力を使えなくなるんだが……仕方ない。ちなみに、これはいわゆるラストスペルだ。
「しまっ——」
炎龍は狼に直撃した。
〈霧雨魔理沙〉
「ゴホッ、ゴホッ……今回はいい線いってると思ったのに……」
「ええ、なかなかだったわよ」
さすが霊夢なんだぜ。前よりも強くなってる気がしたんだが……気のせいか?
「霊夢、修行とかしたのか?」
「ええ、したわよ。幻真に抜かされないためにもね」
ほお……次は幻真と戦いたくなったんだぜ!
「霊夢、ありがとな。私も強くなるために、帰って修行するよ」
私は箒に跨って、魔法の森にある私の家へと飛んでいった。
〈幻真〉
「ん、ここは……」
目を覚ました俺は、なぜか布団の上で寝ていた。
「起きましたか」
そこには、鴉のような翼を生やし、片手にカメラを持つ少女がいた。
「えっと、俺は幻真です」
「私は射命丸文です。文々。新聞を営んでおります」
へぇ〜、新聞記者か。
「文さんが俺たちを運んでくれたんですか?」
「タメ口で大丈夫ですよ。私はですね、いい記事が書けるかと思ってあなたたちのことを上空で見ていました。それで、二人が倒れてしまったので運んだということです」
若干言葉に引っかかったが、とりあえず彼女には礼を言っておいた。すると、隣から呻き声が聞こえてきた。狼も目を覚ましたのだ。
「狼さん、起きましたか」
「うん。文、ありがとう」
彼女が運んだってよくわかったな……
「さて、おふたりの目が覚めたところで……幻真さん、取材させてもらいますよ!」
「……ええっ⁉︎ いきなり⁉︎」