表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第壱章 龍使い
21/155

第21話 三日おきの宴会

萃夢想、始動。

 長かった冬も、短いながら盛大だった春も、幻想郷から過ぎ去ろうとしていた。


 あれほど山を薄紫色に染めていた桜はなりを潜め、すでに深い緑に包まれていたが……


 人間、妖怪、その他もろもろが集まるお花見だけは、いまだ繰り返されていた。


 そのお花見は、幻想郷の少女を集めるだけではとどまらなかった。


 宴会を行うたびに、幻想郷に得体の知れない不穏な妖気が高まっていたのだった。




 ——だが、妖気は高まる一方だったが、まだなにも起きていない。


 犯人は? 動機は? 全てがわからない。その目的すらわからなかった。


 妖気が高まろうと、だれひとり、繰り返される宴会を止めようとしない。


 こうなると、宴会に来る人間、妖怪、全員が怪しく見えるのも仕方がないだろう。


 次の宴会まであと三日しかない。


「次の宴会までには、必ず私がこの妖気の原因を突き止めてやる!」








 〈幻真〉



 日は変わり翌日。


「ん、朝か……」


 俺は白玉楼で目を覚ます。


「そういや、今日また宴会やるとか言ってたな」


 三日前にやったのに、なんでまたなのかはわからないけど。まあ、早くも桜は緑色になってしまったが。


「そろそろ手伝いを終わろうかと思ってたしな。妖夢もだいぶん疲れは取れただろう」


 とりあえず、朝飯作るか。






 手を合わせ、食事前の挨拶をする。


「今日で幻真の手料理が食べれなくなると思うと寂しいわね〜」


「幽々子さん、いつでも作りに来ますよ」


 俺がそう言うと、彼女は喜んだ。


「妖夢、この前はありがとな」


「いえいえ! 上手く教えられていたのならいいのですが……」


「うん。わかりやすかったよ」


 俺の返事に、妖夢は顔を赤くする。


「妖夢〜、何照れてるの〜?」


「ひえっ⁉︎ い、いえ! べつに照れてなんかいません!」


 妖夢も可愛いところあるな。


「な、なんですか幻真さん⁉︎ 早く食べないと冷めちゃいますよ⁉︎」


「え、ああ……」


 まるで恥ずかしさを隠すようにして、彼女はごはんを勢いよく食べ始めた。






 雑談を交えながらも、食事を終える。


 食事後の挨拶を済ませ、食器を台所へと持っていき洗いものを始めた。






 一通り後片付けを終えた後で、俺たちは身支度を済ませる。


「よし、じゃあ博麗神社へ行こうか」


 妖夢にもらった日本刀を左腰に装備し、博麗神社へ向かった。






 博麗神社に到着。どうやら、すでにたくさんの人妖が集まっているようだ。


「よっと……おっす、霊夢」


「来たわね。ちょっと来なさい」


 俺は霊夢に人目のつかないところへと連れて行かれる。


「ねえ、怪しい妖霧を感じないかしら?」


「妖霧? そう言われてみると、たしかに何か感じる」


 なんだかイヤな予感がするな。


「で? どうするんだ?」


「もちろん、そいつを倒すわ。神社が宴会場になってて困ってるんだから」


 あー、それは大変だな。


「それで、だれが怪しいと思うんだ?」


「私が思うには、前に異変を起こしたレミリアか幽々子ね……」


 霊夢の候補を聞いた俺だが、彼女が挙げた二人は犯人ではないと、彼女の予想を否定した。


「私じゃないわよ!」


「いいや! おまえに違いない!」


 近くでだれかが揉めていた。俺はそちらへと駆け寄る。


「レミリアに咲夜、それに魔理沙じゃないか」


「幻真! 絶対こいつが犯人なんだぜ!」


「あなた! お嬢様にどんな口の聞きかたをしてるのよ!」


「いや、俺はレミリアじゃないと思う」


 魔理沙は唖然とした表情で俺の顔を見た。


「なんでそう思うんだよ?」


 魔理沙が聞いてくる。


「たしかに、レミリアは以前に異変を起こしている。でも、また別の異変を起こすと思うかい? それに、宴会を何回も開く理由が無いじゃないか」


「たしかに、そう言われてみるとな……」


 魔理沙は納得したらしい。レミリアは安心した表情を浮かべた。


「咲夜も妖霧を感じて?」


「ええ。この妖霧を不審に思ってお嬢様といっしょに」


 霊夢以外にも不審に思っている人は多いんだな。


「魔理沙、犯人は見つかったの?」


 魔理沙に声をかけたのは、人形のようなものを宙に浮かべた金髪の少女だった。彼女はこちらに寄ってくる。


「えっと、君は?」


「私はアリス・マーガトロイド。魔法の森に住んでる人形使いよ」


 魔法の森……たしか魔理沙もそこに住んでるって言ってたな。


「アリスさんも妖霧を不審に?」


「アリスでいいわ。まあ、そんなところね」


 不審に思ってる人は、やっぱり多いみたいだな。


「咲夜、パチェは?」


「パチュリー様ならお休みになられています」


「パチュリーも来てるのか?」


 魔理沙の問いかけを聞いた俺はパチュリーが来ていることに物珍しさを感じ、咲夜の返事を聞いてみる。


「ええ。普段は自分から行動されることは滅多にないのだけれど」


 パチュリーも事の重大さを感じたのかな?


「幽々子様、一通り斬っていきます」


 妖夢の声がした。ひとりひとり斬っていくのだろう——って、斬っていく⁉︎


「よ、妖夢! そこまでしなくても!」


「そうですか? わかりました」


 妖夢は斬るのをやめてくれたらしい。別に俺は困らないんだけどね。いや、いろいろと困るか。


「ねぇ、幽々子はどうなのよ?」


「いや、幽々子さんもないと思いますよ」


 レミリアの考えを否定する。


「そう……まあ、一度異変を起こしてる者が犯人なわけないわよね」


 レミリアも納得してくれた。


「あら、あなたたち楽しそうね」


 どこからか声が……まあ、あの人だろうけど……


「紫さん」


「ごきげんよう。それで、犯人は見つかったのかしら?」


「いえ、まだよ」


 紫さんはつまんなさそうな表情を浮かべてスキマの中へと消えていった。いったい何をしに来たんだろう。


「まあ、犯人を探すとするか」






 いろいろあって、犯人と思われる人物を追い詰めた。


「おまえが犯人か!」


 頭には長くねじれた二本の角が生えていて、金色の髪で後頭部には大きな赤いリボンを結んでいる少女……そう、あの酒好きである。


「はぁ、バレたかい」


「萃香……あんたねぇ……!」


「待ってくれ! 話を聞いてくれよ!」


 とりあえず、彼女の話を聞くことに。






 幽々子さんが幻想郷の春を集めてしまったせいで桜の季節が梅雨前の短い期間だけとなり宴会が減ったことを不満に思い、能力で人を集めて霊夢たちに三日おきに宴会を行わせ、その騒ぎでほかの鬼たちを幻想郷に戻らせようとしたらしい。


「反省してるの?」


「うん……」


 霊夢に責められる萃香さん。どうやら心底反省しているみたいだ。


「はぁ……宴会は異変解決後のときだけでいいでしょ」


「うぅ……わかったよ、ごめん」


 こうして、三日置きに行われた宴会のナゾは解決したのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ