第19話 亡霊姫の従者をお手伝い
白玉楼にて。
「妖夢〜、ご飯まだ〜?」
相変わらず食いしん坊な亡霊姫の幽々子は、庭師を急かす。
「はーい、ただいまー!」
それに飽きつつも、元気よく返事をする半人半霊の剣士であり庭師の妖夢。彼女は今日も大変そうだ。
ところ変わって博麗神社。
「ふぅ……」
神社の境内で何やらしている青年——幻真。彼はいったい何をしているのかと言うと、修行をしていた。博麗の巫女である霊夢は、縁側で暢気にお茶を飲みながらそれを見ていた。
〈幻真〉
「よし」
今日の修行はこんなもんでいいかな。
「霊夢、人里に行ってくる」
俺は霊夢に伝える。
「わかったわ」
彼女はお茶を飲むのを止め、返事をした。
特に用があったわけじゃないが、人里へとやって来た。
「ん、あれは……」
俺は見たことのある人物を見つける。
「妖夢〜!」
「あ、幻真さん!」
そこには、買い物カゴを片手に俺に手を振る少女、妖夢がいた。
「やあ妖夢、買い物かい?」
「はい。幽々子様の料理を作ってたら、あっという間に食材がなくなっちゃうんですよ」
妖夢が溜息を吐きながらがっかりした表情になる。そんな彼女を見て、俺はふと思いつく。
「妖夢、もしよかったら手伝おうか? ひとりじゃ大変だろうし」
なぜそんなことを言ったのだろう。そのときの俺は、深いことなんて考えていなかった。
「えっ、いいんですか⁉︎」
妖夢は目を輝かせ、こちらを見る。こりゃあ、いまさらやめられないな。もちろん、やめる気なんてないが。
「ああ。ほら、買うもの買ってさっさと帰ろう」
「はい!」
彼女の返事の後、俺たちは八百屋へと向かった。
買い物を終え、白玉楼に到着。
「幽々子様、ただいま戻りました〜」
「あら妖夢、お帰りなさ〜い。あら……? あなたはたしか、幻真だったかしら?」
相変わらずふわふわしてる幽々子さん。ペースが持っていかれそうだ。
「はい、合ってます。今日は妖夢を手伝いにお邪魔させてもらってます」
「そう。良かったわね〜、妖夢〜」
幽々子さんは妖夢を見ながら微笑んだ。
「それでは幽々子さん、失礼しますね」
俺は彼女がいた部屋を出た。だが、さっそく妖夢を見失ってしまった。
「幻真さん、こっちです」
手招きする妖夢を発見。それにしても、この屋敷もまた広いな〜。建物自体は一階だけしかないが、入り組んでて迷っちゃいそうだ。
「妖夢、俺はどうすればいい?」
「そうですね。もう直ぐ夕食なので、そちらの準備でもしましょうか」
「わかった」
俺は妖夢に台所まで案内してもらう。
「では、私はお風呂を沸かしてきます。あ、食事は五人前でお願いしますね」
五人前? 俺と妖夢と幽々子さんで……幽々子さんが三人前も食べるのか。妖夢はそのまま風呂場へと向かった。
「さてと、作るか」
それから、なんとか五人前のメシが完成した。
「よぉし、できた!」
我ながらすごい量だな。
「幻真さん、できましたか?」
妖夢が戻ってきた。
「ああ、バッチリ!」
「ありがとうございます。それでは、運びましょうか」
俺は妖夢と協力し、食事を食卓に並べた。
食事を運び終え、座って挨拶をした。
俺は食事を食べる前に、幽々子さんと妖夢から味の評価を聞くことに。
「おいしいわ〜」
「うん、おいしいです!」
よかったよかった、二人に満足してもらえたみたいだね。上機嫌になった俺もまた、料理を口に運んだ。
食事を終えて挨拶をする俺と妖夢。幽々子さんはまだ食べていた。そりゃあ三人前だからな。といっても、残りは一人前程度だったが。
「幻真さん、先にお風呂をどうぞ」
妖夢に風呂を勧められる。
「いいのか? なら、遠慮なく」
俺は風呂へ向かおうとしたが、場所がわからない。
「妖夢、風呂はどこだ?」
「案内します。ついてきてください」
妖夢に案内されて、脱衣所へと向かった。
脱衣所へと着いた俺は、衣服を脱いでからから浴場へと入り、体を一通り洗って湯船へと浸かる。
「いや〜、意外にもこの仕事いいかもね」
疲れるけど、楽しいっていうか、なんていうか。まあ、そう言うこと。
「……そろそろ上がろう」
後片付けをしていなかったなと思い、台所へと戻る。
「あ、幻真さん。上がられましたか」
そこには後片付けをする妖夢がいた。
「妖夢、あとは俺がやるから風呂に行きなよ」
「え? いいんですか?」
「別にこんなもんならチャチャッと終わらせれる。ほら、行ってきな」
「ありがとうございます! それでは、行ってきます——あっ、そうだ」
妖夢はなにか思いついたのか、俺の横に来て言った。
「明日、剣術を教えましょう」
「えっ、本当か⁉︎」
妖夢から剣術を学べる。と言っても、俺は剣や刀を持っていない。まあ、その辺はなんとかなるか。
「じゃあ、明日よろしくな!」
「はい!」
よぉし、後片付け頑張るぞ〜!