第17話 お花見宴会
「ふあ〜、よく寝た……」
翌朝。俺は布団の上で軽く伸びをする。隣ではまだ霊夢と霊妙さんが寝ていた。
「外の空気でも吸いに行くかな」
俺は障子を開け、外に出た。
「ん……お、桜が咲いてる」
ちゃんと異変は解決できたんだな、よかった〜。異変解決して帰ってるときには、まだ咲いてなかったから焦ったよ。
「今日はどうせ宴会だろうな」
「お、鋭いね幻真」
「そりゃ異変解決後だし——って、萃香さん」
萃香さん、朝早いな。
「花見しながら宴会だよ〜。こりゃ楽しみだね〜。というわけで、私はみんなを呼んでくるよ。じゃあね!」
今回も萃香さんは宴会の参加者を集めてきてくれるらしい。それじゃあ、俺は買い物にでも行こうかな。
——よし、人里に到着。
「そういえば、朝飯食ってなかった……お、和菓子屋発見。寄って行こうかな」
以前霊妙さんと来た時に寄って帰ったけど、霊夢に全部あげちゃったせいで結局食えなかったんだよな。今日はちゃんと食べていこう。さて、なにを食べようか……
「おじさん、みたらし団子ください」
ん……あの人、誰だろう?
「あいよ。お前さん、ほんとみたらし団子が好きだね〜」
常連か? でも、なんかあの人変わってんな。なんというか……人じゃない?
「うん、好きだよ。それじゃあ、また来ます」
その人物は俺の横をすれ違い、そのまま外へと出た。俺は思わず追いかけるようにして外を見たが、その人物の姿はすでに無かった。
「だれだったんだろうか……」
とりあえず、俺もなんか買おう。
「——よし、酒買ったし、花見用の団子買ったし、買い物はこれくらいでいいかな。俺は花より団子だ」
道端で買い物のメモを見ながら歩いていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「はぁ、幽々子様ったら……」
「あれ? 妖夢?」
「ん? ——あっ、幻真さん!」
やっぱり妖夢か。
「妖夢、なんでこんなところに?」
「それが、異変が解決されたっていうのに幻想郷と冥界の行き来が楽になったままだったんです! なので、食材を買いに来ました!」
冥界との? まあ、便利になったぐらいなら問題ないのかな。
「あ、妖夢。今日は博麗神社でお花見を兼ねた宴会をするから、幽々子さんといっしょに来なよ」
「お花見ですか⁉︎ 幽々子様もきっと喜ばれると思います! 博麗神社ですね。買い物が終わったら行きますね! それでは!」
なんか嬉しそうだな。反応が美鈴と似てる。
「それじゃあ、俺も帰るか」
博麗神社に到着。
「あら幻真、おかえり」
「おかえりなんだぜ!」
俺が帰ってくると、霊夢と魔理沙の二人が縁側でお茶を飲んでいた。
「団子買ってきたんだけど、食べる?」
「食べるわ! 早くちょうだい!」
お前はどんだけ和菓子が好きなんだよ。
「わかった、じゃあ俺のお茶も頼む」
「それならもう沸かしてあるわよ」
気遣い上手の霊妙さんが、お茶を持ってきてくれた。
「ありがとうございます。あ、萃香さんがみんなを呼びに行ってくれてますよ」
「そう、ならまた飲まないとね!」
日が昇ってる時間から飲んで大丈夫なのか……?
あれから数分後。
「わはー」
「はーるですよ〜」
チルノやルーミアといった、顔見知りの妖精や妖怪たちが集まってきた。というか、春ですよ〜って言ってた妖精は誰だろう。
「なぁ、霊夢——」
「リリーホワイトよ。春告精とも言われてるわ」
へぇ、この前の異変で一番最初に会ったあの妖怪みたいに季節限定なんだな。
「綺麗な桜ね」
「わっ、紫さん!」
いつの間にか、隣で紫さんがお茶を飲みながら花見をしていた。
「紫さん、いつの間に……」
「いま来たのよ」
気配は感じなかったけどな〜。さすが紫さん。
「じゃあ私はお酒だけいただくわ」
彼女はそう言い残し、スキマの中へと消えた。
「幻真さーん!」
お、この声は妖夢かな?
「あらあら、こんなにたくさん」
幽々子さんも来てくれたらしい。
「桜、綺麗ね」
「お、レミリアに咲夜」
レミリアは日傘を差し、咲夜はお供として花見に来たようだ。
「さあさあ! みんな飲もうよ!」
萃香さんが酒の入った瓶を持ちながら呼びかける。
「さあて、私も飲むわよ〜」
霊夢も飲むのか。俺はお茶でけっこうだな。
「ほらほら! 幻真も飲みな!」
ヤバい、勇儀さんだ! また飲まされる!
「勇儀さん、ごめんなさーい!」
「あ、おーい! まったく、仕方ない。ほら、そこの子! あんたも飲みな!」
「えっ、私ですか? ゆ、幽々子様……」
「いいわよ〜飲みなさ〜い。今日はたーっぷり楽しんでいいわ〜」
「幽々子様、ありがとうございます!」
勇儀さんから逃げてきた俺は、社殿のの瓦屋根の上でお茶を飲んでいた。ここは高さもあって景色がいいな。遠くがよく見える。
「幻真、お疲れ様」
「あ、紫さん」
紫さんがスキマから顔だけ出し、俺の見ていた方向を見ていた。鳥居の先——人里の方面だ。
「綺麗ですね」
「そうね。ほら、幻真もお酒飲みなさいよ」
「あ……それじゃあ、お言葉に甘えて……」
俺は紫さんにお酒を入れてもらった。断るわけにもいかないしな。下の方は相変わらず賑やかだ。
こうして、花見という名の宴会は夕方まで続いた。