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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第壱章 龍使い
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第16話 幻想郷の春を取り戻せ

「くっ……!」


 俺は今、魂魄妖夢と剣を交えての戦闘をしている。


「なかなかやりますね。なら、これはどうでしょう。幽鬼剣『妖童餓鬼の断食』」


 彼女は左右に移動しつつ、横一文字の斬撃を繰り出してくる。その剣閃からはいくつもの放射状の楔弾の一団が発射され、俺に襲い掛かる。


 その攻撃を、俺は上手いこと避けたり食い止めたりする。


「やるね。なら、これはどうかな? 斬符『炎斬』」


 炎を剣に纏わせ、妖夢に斬り放つ。


「遅いですよ!」


 だが、呆気なく避けられてしまう。俺には難しいか。


「次はこれです! 餓王剣『餓鬼十王の報い』!」


 さっきと似ているが、それを強化したかのようなスペルを発動してくる。


「なっ⁉︎」


 そのスペルは速度変化を起こした。


「ぐあっ!」


 命中した。攻撃を受けた腹部を見ると、赤い血が流れていた。俺は傷口を抑えながら立ち上がる。


「どうしますか? 降参しますか?」


 妖夢が刃を向けて聞いてくる。


 ここで降参するか? それは霊夢たちの足手纏いになるということだ。俺は負けるのか? ここで終わるのか?




 ——いいや、自分はまだやれる!


「悪いが、まだ終わらん」


 俺はふっと笑って彼女に返答した。


「そうですか。しかし、今のあなたの体では極めて不利。次で決めます! 断霊剣『成仏得脱斬』!」


 妖夢が二本の刀を同時に振り、 目の前に上空へと伸びる巨大な桜色の剣気を作り出す。


「斬真『炎真斬』!」


 俺は剣を真っ直ぐ振り下ろした。






「——ふぅ、終わったか」


 傷口を抑えながら呟く。


「うぅ……ゆゆこさまぁ……」


 彼女は倒れながらも、誰かの名前を呟いたのが聞こえた。


「さてと、霊夢たちのところに急ぐか」








 〈博麗霊夢〉



「長かったわね……」


 ようやく頂上に着いた。飛んできたものの、あまりにも長かったから疲れてしまったわ。


「これはなにかしら?」


 そこには、咲きかけの綺麗な桜の木があった。


「あらあら、お客さん?」


 声とともに、桃色の髪の少女が現れる。


「あなたはだれかしら?」


「私は西行寺さいぎょうじ幽々子(ゆゆこ)よ」


 咲夜の問い掛けに答えた幽々子という名の少女。なんだか、この人の考えてることが読めないわね。


「とりあえず、あんたを異変の元凶と見なすわ。それで、幻想郷の春を返してもらおうかしら」


「それは無理なお願いね。『西行妖』の封印を解くために、春を集めて花を咲かせようとしているんだから」


 この桜のことかしら?


「ほお? なんのために封印を解くんだ?」


 魔理沙が問う。


「何者かが封印されているらしいのよ。それで、この西行妖が咲かないのはその封印のせいだと思って、幻想郷中の春を集めたの」


 何者かが封印されている……? いったいなにが……


「……とにかく、春は返してもらうわよ。あんたたちは下がってて」


 私は手で合図する。言われた通り、咲夜と魔理沙は下がる。


「春は返さないわ」


 幽々子は弾幕を飛ばしてくる。その弾幕を、私は素早く避ける。


「喰らいなさい! 霊符『夢想封印』!」


 私はスペルカードを発動する。しかし、彼女には当たらず、私の放った弾幕が、どこからか飛んできた別の弾幕で相殺された。


「霊夢! 桜が咲き始めたんだぜ!」


 なっ⁉︎ 西行妖が⁉︎


「ふふふ……もうちょっとよ。もうちょっとで!」


 彼女を倒せばなんとかなるかしら……




  反魂蝶 -一分咲-




「魔理沙! 咲夜! なんとかして西行妖の放つ弾幕を除去してちょうだい!」


 つまり、私の援護をして欲しいってこと。


 二人が返事をしたことを確認し、再び戦闘態勢を取る。


「これはどうかしら! 夢符『封魔陣』!」


「そんなのが通用するわけ——」


 弾幕は直撃。呆気なかった気もする。とりあえず、なんとか幽々子を倒したが……


「霊夢! 西行妖が放つ弾幕が止まないんだぜ! それに咲き続けてる!」


 なんで⁉︎ 幽々子を倒したはずなのに!


「ふぅ、着いた着いた……って、うわぁ!」


 声の主、幻真は驚いてその場に尻餅をつく。


「この木はなんだ? それに、なんで弾幕を飛ばしてきてんだ?」


 幻真が問う。


「わからない! それよりも、早くなんとかしないと!」




  反魂蝶 -参分咲-




「すでに三分経ってる。急がないと……」








 〈幻真〉




  反魂蝶 -伍分咲-




 くそっ、いったいどうすれば……


「幻真! 危ない!」


 しまった! 弾幕が――


「式弾『ユーニラタルコンタクト』」


 時計回りに回転する青針弾と、反時計回りに回転する赤針弾が交互に展開され、俺に飛んできた弾幕へとぶつかる。


「これはいったい——って、藍さん⁉︎」


「間に合ったか。幻真、こっちに」


 俺は手招きする藍さんのいたスキマへと入る。そこには、紫さんの姿があった。


「紫さん、どうしてここに?」


「話は後。それよりも、私と藍と霊夢の三人で西行妖を封印するわ。協力してくれるかしら?」


 俺は大きく頷いた。


「助かるわ。さあ、行きなさい!」


 紫さんに言われ、俺は勢い良くスキマから飛び出した。


「咲夜、魔理沙! 西行妖を封印するから手伝ってくれ!」


 俺の呼びかけに二人は同時に返事をし、俺たちは西行妖の周りを回り始めた。




  反魂蝶 -八分咲-




「霊夢、藍、急ぐわよ!」


「わかってるわよ! 幻真、頼んだわよ!」


 霊夢の言葉に、俺は威勢良く叫ぶ。そして、スペルカードを発動した。


「夢符『勾玉弾幕(ジュエルバラージ)』!」


 俺は西行妖が放つ弾幕に弾幕をぶつける。


「恋符『マスタースパーク』!」


 魔理沙は極大レーザーを撃ち、正面の弾幕を一掃する。


「幻符『殺人ドール』!」


 咲夜は周りに巨大なナイフを大量に出現させた後、それらを弾幕に向かって飛ばした。






「——終わったわよ!」


 激闘のすえ、なんとか封印できたみたいだ。


「うーん……」


 すると、幽々子らしき人物が唸りながら目を覚ました。


「幽々子、目が覚めたのね」


 紫さんはホッと安心する。


「藍さん。その……紫さんと幽々子さんは知り合いなんですか?」


「ああ、何年もの昔からの友人だ。幽々子様はそこまでの記憶を無くされておられるが、今でも二人は仲のいい友人同士だよ」


 そうだったのか。ついでに霊夢から聞いた話も聞いておこう。


「西行妖には誰が封印されてたんですか?」


 藍さんは表情を暗くして言った。


「——幽々子様だ」


「……え?」


 俺は彼女の言っていることがわからなかった。


「でも、幽々子さんはここに……」


「ここにおられる幽々子様は亡霊だ」


 ぼ、亡霊? ということは、この人が亡霊姫……でも、なんで手足が?


「幽々子様! ご無事ですか⁉︎」


 先ほど戦った妖夢が、階段の方から声を荒げて走ってくる。


「妖夢、幽々子さんなら大丈夫だよ」


「そうですか、よかったです!」


 彼女は安堵の表情を浮かべ、微笑んだ。


 こうして、春雪異変は幕を閉じたのであった。

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