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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第壱章 龍使い
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第15話 終わらない冬

雪春異変、開始。

 辺境から暖かさが奪われ、永い冬が訪れた。白銀の悪魔は幻想郷の人間を黙らせた。


 時は経ち、次第に春の香りが訪れるころになった。いつもなら、幻想郷は白い吹雪から桜色の吹雪に変わるはずだったのだ。


 そして——春はまだ来ない。








 〈幻真〉



「はぁ……あったかい……」


 俺と霊夢は今、炬燵こたつに入って暖まっている。


「結局、まだいるのね……」


 居候の話か。


「しょうがないじゃん。行く宛てもないし」


「霊夢! 異変だ!」


 襖が開き、見覚えのある少女が入ってくる。


 ——誰かと思えば、魔理沙か。というか、寒い寒い。冷気が入ってくるから閉めてくれ。


「やっぱりそうなのね。通りで寒いと思ったわ」


「……なんか勘違いしてないか? 春が来ないんだぜ!」


「春が来ない? なんでだ?」


 疑問に思った俺は魔理沙に聞く。


「それはおそらく、冥界に住む亡霊姫の仕業ね」


「さ、咲夜⁉︎」


「いったい何を企んでるって言うの?」


「そこまではわからないわ」


 冥界? 亡霊姫? まったく意味がわからないんですが?


「ん〜、まあとりあえず行くか! 早くしないと、どうなっちまうかわからないしな!」


「はぁ、こんな寒い中を……幻真、炎使って」


「俺は暖炉かよ!」






 猛吹雪の中、冥界を目指す。普段は空を飛んで結界の上を跳び越さないと行き来ができないらしいが、この異変の影響なのか今は幻想郷から直接冥界へ行けるらしい。すると、向かう道中で一つの人影がこちらに向かって飛んできた。


 ある程度近づいたことによって、人影の正体が少女であることを知る。


 彼女は薄水色のショートボブに白いターバンのようなものを巻き、ゆったりとした服装をしていた。また、下はロングスカートにエプロンらしきものを着用している。そして、首には白いマフラーを巻いていた。


「どこに行くの?」


 彼女は俺たちに尋ねてくる。


「冥界よ。さっさとこの冬を終わらるためにね」


 霊夢が答える。しかし、彼女は怒ったかのようにして弾幕を飛ばしてきた。


「うおっ⁉︎」


「私の幸せを奪う気なの?」


 冬が好きなのか? それとも亡霊姫の手先か?


「この妖怪は冬にだけ現れるみたいね」


 冬限定みたいな感じか。というか、妖怪だったのか。まあ、普通の人間が吹雪の中を飛んでるはずないもんな。


「でも、季節は変わるものよね……」


 彼女はそう言い残し、どこかへと飛んで行ってしまった。


「なんだったのかしらね。まあいいわ、先を急ぐわよ」


 霊夢の言葉を受け、俺たちは冥界へと急いだ。






 吹雪の中を飛んでいる最中、俺は気になっていたことを咲夜に尋ねた。


「なんで咲夜も来たんだ? 人数が増えたほうが楽になるけどよ」


「ああ、そのことね。実は紅魔館の暖房に使う燃料が尽きそうだったのよ。それに、お嬢様に頼まれたわ。早くこの冬を終わらせてって。それと、あなたたちが動くなら利用する価値はあると思ってね」


 やっぱり、レミリアも気づいていたのかな。そんな会話をしていると、目の前になにやら怪しげなモノが見えてくる。


「あれが冥界への入り口よ」


 明らかに異質だな。


「あなたたち、冥界へ行くの?」


 声がした方を見ると、そこにはバイオリン、トランペット、鍵盤楽器をそれぞれ持った三人の少女がいた。


「えっと、君たちは?」


「私たちはプリズムリバー三姉妹。私は長女のルナサ・プリズムリバーよ。こっちは次女のメルラン。で、こっちが三女のリリカ。私たちはプリズムリバー楽団として音楽活動をしているわ」


 へぇ〜、三姉妹なのか。それに音楽活動もしてるんだ。


「私たちは白玉楼に出向く途中だったんだけど……」


「冥界って、普段はここにはないのよね?」


「はい、いつもは結界を飛び越えて行き来していて……」


 結界を飛び越えられるのか、ある意味凄いな。


「ねえ、なんで亡霊姫がこんなことをしているのか知ってるかしら?」


 霊夢が聞く。聞かれた三姉妹はお互いの顔を見て確認を取る。そして、ルナサが答えた。


「ごめんなさい、私たちは何も知らないわ」


 やっぱり知らないか。これは直接会いに行って確かめるしかないな。


「ありがとう。気をつけるのよ」


 俺たちは三姉妹に手を振って、冥界へと入って行った。






「——ここが冥界か」


 入った直後、目に映ったのは長い階段だった。いや、長すぎだろ!


「あなたたち、何をしにきたのですか?」


 階段の上から声をかけられる。声をかけてきたのは少女で、ボブカットの白髪に、頭には黒いリボンを付けていた。


 また、白いシャツに青緑色のベストを着ており、下半身は短めの動きやすそうなスカートからドロワーズが覗いていて、白靴下に黒い靴を着用。胸元には黒い蝶ネクタイを付けていた。


 そして、彼女に纏わり付くようにして白い霊魂が浮かんでいた。


 さらには刀らしきものを二本所持しているようで、片方の刀を左肩から右腰にかけて背負い、もう一本の刀は左腰に備えていた。


「俺は幻真だ。君は?」


「名乗られたからにはお答えします。私は魂魄こんぱく妖夢ようむ、剣術指南役兼庭師です。それで、あなたたちはなぜここへ来たのですか?」


 妖夢と名乗る少女は、腰の刀に手を当てて警戒した様子で聞いてくる。


「幻想郷の春を返してもらおうとね」


「それは幽々子様の計画を阻止するということですね。ならば、問答無用!」


 そう言って、彼女は二本の刀を抜く。


「こちらの長いほうの刀——楼観剣ろうかんけんは、妖怪が鍛えた刀だと伝えられています。そして、この短いほうの刀——白楼剣はくろうけんは魂魄家の家宝です!」


 二刀流なのか。だが、俺は刀を使えないな。というか、使ったことがない。このままだと相手ができないな。ここは炎龍に任せるか。


「霊夢たちは先に行ってくれ。龍符『炎龍』」


「わかったわ。むりは禁物よ」


 霊夢がそう言い残し、彼女ら三人は階段のほうへと走っていった。妖夢はそれを横目に、俺に聞いてきた。


「……あなたは剣士ですか?」


「正確には剣士じゃないが……まあ、ちょっと見ててよ。剣符『灼熱之龍剣』」


「なっ⁉︎」


 結界に変形したときと同じようにして、炎龍が剣へと姿を変える。


「これで戦えるな」


「おもしろいですね。それでは、尋常に勝負……私に斬れぬものなどあんまり無い!」


 彼女の掛け声とともに、互いの刃が交じり合った。

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