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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第肆章 新たなチカラ
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第136話 魔界奮闘劇

 時は遡ること数分前。幻真が助ける一人の人物、ユウゲンマガンが突然の襲来。黄色いワイヤーフレームで形成された人型の周りに五つの目玉を持つ彼女は、いかにも魔眼といった禍々しい様子を醸し出していた。


 そんな彼女の襲来を予期できず、致命的な攻撃を受けてしまう彼らであったが、直ぐに体勢を直し、幻真は彼女と対峙せんとばかりに剣を振っていた。


 室内で繰り広げられる戦闘。近くにいた夢子も加勢しようとするが、場所が悪いと判断。彼に外へ誘導することを提案した。幻真はユウゲンマガンを引き連れて、夢子の後を追った。






 やって来たのは、なにもない魔界の上空。ここなら周りに被害が及ぶことなく暴れることができる。


 彼らは人型に具現化したユウゲンマガンと対峙し、それぞれの剣を構える。そんな中で、夢子は隣で剣を構える幻真に対して言った。


「それにしても、不幸中の幸いだったわ。三人同時に来られたら、正直勝ち目はなかった」


「まったくもってその通りだ。だが、後の二人が事態を見て来ないとは限らない。こちらが有利なうちに、彼女を倒そう」


 彼はそう言って、自我を失った彼女の瞳を見つめる。彼女の瞳には光が無く、ただ一つの感情だけに操られたような黄色い瞳をしていた。


 そんな硬直状態の彼らであったが、高まる心拍数の鼓動を合図に、時は動き出した。




 初めに動いたのは幻真であり、彼は一瞬にしてユウゲンマガンのもとへと辿り着いたかと思うと剣を振り下ろしており、その攻撃は人型の彼女には入らず、再びワイヤーフレームで形成された彼女のワイヤーに触れていた。


 ジリジリと音を鳴らし、反動を利用してお互いが下がる。そして、休みも与えないうちに夢子による追加の攻撃が繰り出される。


 背後に回っていた彼女は隙をついてユウゲンマガンに斬りかかったものの、ワイヤーフレーム状態の彼女に攻撃が入ってるとは思えなかった。


 夢子もまたユウゲンマガンとの間合いを開け、幻真と共に彼女を挟んだ状態となる。




 どうしたものかと考える彼らであったが、幻真はふと彼女のワイヤーを形成する際に発生させている五つの目へと視線が行く。正直言って、ワイヤーフレーム状態の彼女には攻撃が効かない。だが、例え最強の防御であったとしても、どこかに弱点がある筈だ。


 ということは、現在の彼女にとっての弱点は——


「夢子!」


 突然名前を呼ばれ、動揺はしたものの返事をした彼女は彼の視線を見て感じ取る。彼の作戦を。


 それを伝えられた彼女は、彼に頷いて返事をする。それを見た彼も頷いて確認し、頃合いを見る。


 再び高まる心拍数と心拍音。緊張が過ぎる中、彼は動く。


 瞬時に移動した彼はユウゲンマガンの頭上へと現れ、ワイヤーフレームを出す一つの眼へと斬りかかる。その攻撃は見事命中し、その眼は怯んだことによって、ワイヤーフレームの形成を停止。少し彼女の人型の状態が明らかとなった。




 そんな怯んだ彼女に追い討ちをかけるべく、下方から回り込んだ夢月がもう一つの眼に攻撃を与える。そしてその眼もまた怯み、ワイヤーフレームの形成を停止させた。


 彼らは彼女を更に追い込む為に他の眼へと斬りかかろうとしたが、突如彼女の身に電撃が迸り、周囲に放つ。近距離であり、突然のことであったため当然受け身を取ることもできず、彼らは致命傷を負わされてしまう。


 電撃を浴びた彼らの服は、所々熱によって焼かれてしまっていた。だが気にしている場合ではなく、痛みに耐えながらもユウゲンマガンのもとへと戻ってくる。


「ぐっ、油断した……」


「大丈夫か? だが、結果的に彼女のワイヤーフレームを形成する眼を二つ怯ませることができた。弱点も発見できたし、あとは油断せずに残りを倒すだけだ」


 彼の言葉に勝利への希望を持ち、夢子の剣を握る手に自然と力が入る。



 ——救ってみせる、私が彼女を。



 だが、彼らは驚かされる。怯ませた眼が独立してビームを放ってきた事に。


 いち早く予期した幻真は、夢子の身を庇って攻撃を躱す。突如自分を抱き寄せたことに戸惑った彼女であったが、直ぐに事態を把握した。


「どうやら、奴らにも攻撃手段があるようだ」


 彼のその眼差しに、夢子はポカンとしてしまう。だが首を振って我に帰り、彼同様に攻撃してきた眼に視線を移す。彼女はその眼を見ながら、ある事を考える。


「ねえ、あなたに危険を押しつけるようで悪いのだけれど……」


 彼女はそこまで言って言葉を止める。どうしたのかと思って彼女の方を見た幻真は、その事実を知る。


「いつまでこうしてるの? それと、近いんだけど……」


「わ、悪い。つい無意識に」


「こういうのはあなたの大切な人にやってあげるものよ。あなたにもいるでしょ? なによりも大事な人が」


 彼女は幻真と少し距離を開けながら話し、その言葉を言い終えたときには彼の方へと視線を戻していた。


 そんな話を聞いた彼は、自然と拳に力が入り、彼女に思いをぶつける。


「ああ、いる。俺の愛する、なによりも大事な人が。だがな、夢子。君はもう俺の大事な人なんだ。だから、殺させやしない」


 彼のその思いを聞き、言葉が出ない夢子であったが、突然として吹き出し、彼は辱めを受けてしまう。


「なんかおかしいことでも言ったか?」


「ううん、ただ……嬉しくって。そんな言葉、初めて言われたから、どう反応したらいいかわからなかったの」


 流れる彼女の涙には、嬉しさのほかにどこか寂しさを覚える幻真。彼は彼女の方へと近寄っていき、そして、優しく抱き締めた。


 きっと彼女は仲間を失ったことと人質を取られ脅されていたことから、絶望と悲しみに心を貪られてしまっていたのだろう。


 同時に彼は、責任感を抱く。自分のせいで彼女に辛い思いをさせた。否、自分の弱さと愚かさによって彼女らにあってはならない絶望を与えてしまった。


 彼は自身に対し、嫌悪感を抱いた。そして、改めて心を決める。



 ——この命に代えてでも、彼女らを救う。



「それで夢子、俺に危険を押し付けるっていうのは?」


 彼女は涙を拭い、気持ちを切り替えて彼にその詳細を話す。


 その詳細とは、幻真に攻撃を集中させ、ユウゲンマガンを怯ませた瞬間に弱点を突くというもの。彼はその作戦にあっさりと合意し、夢子は不信感を抱かない彼に疑問を投げかける。


「そんな簡単に承諾していいの? 私がまだ裏切る可能性が残ってるっていうのに」


「いいや、君は俺を裏切らない。俺が君を信頼しているなら、君も俺を信頼しているはずだ……って、これは極論すぎるか」


 彼のその言葉に呆れつつも、彼女は笑顔を見せて言った。


「ええ。私は——あなたを信じてる」


 その言葉を境に、彼らは戦闘態勢へと戻る。まるで好意からか、彼らの様子を見守っていたユウゲンマガンは怯まされた二つの眼の眼差しを彼らに向け、戦闘態勢へと入る。


「夢子……いいか?」


「いつでも大丈夫よ」


 彼女の返事を聞き、幻真は動く。手始めにユウゲンマガンのもとへと真っ直ぐに突撃。もちろん彼女が手を出さないはずはなく、二つの眼光が彼に向けられる。


 彼はそのことに気づいてはいたものの、御構い無しに突撃していき剣を振るう。だが、やはりワイヤーフレーム状態の彼女には攻撃が通らず、反撃(カウンター)のごとく彼に二本のレーザーが放たれる。


 攻撃を受けた彼であったが、そんなことを気にする様子を見せずつい口が緩む。そして、彼は言い聞かすように彼女に言った。


「君は焦り過ぎた。俺を仕留めようと二つ同時にレーザーを放ったようだが、それが仇と出たな。君は次の攻撃を防ぎきれない」


 彼が言葉を言い終えた直後、彼女の身がよろける。ワイヤーフレームを形成する三つのうち二つの眼が怯み、彼女の人の状態が鮮明になる。


 この戦況に彼女も苦しい表情を見せる。



 ——いける。



 二人は互いにそう思った。しかし、その希望は束の間の出来事と化す。


 突如、幻真はなにを思ったのか、ただ同じ景色が広がる空の先に視線を向ける。彼の様子の変化に疑問を持った夢子もまた、彼の見つめる方へと視線を移す。


 すると、キラリとなにかが二つほど輝く。それらが段々近づいてくるに連れて彼女は恐怖を覚え、そして絶望を感じた。


「そんな……嘘ッ……」


 彼らが最も恐れていたこと、それは——多勢に無勢の戦況である。人数差はあまり無いものの、明らかにあるのは戦力差である。また人数差が戦況を左右しないわけでもなく、苦戦を強いられることは目に見えていた。


 口元に手を当てて絶望感を隠しきれないでいる夢子。幻真もまた、あまりにも不幸な出来事に晒され、苦しい表情をせざるを得なかった。




 鮮明になる二つの人影。片方の人物は長い金髪にリボンを付け、髪の左側に花飾りらしきものを付けていた。


 耳は長く尖っていて、また左の頬に星の模様があり、それ以外にも顔に線状の赤い模様が付いているように伺える。


 そして背中には、自分の身長と同じくらいの大きさの紫色のコウモリの羽が生えていた。


 そしてもう一人の人物は、青白い肌と背中に生えている六枚の翼が特徴的であり、また、髪の長さは棚引いてはいたものの、とても長いように思えた。


「くそッ……どうすれば……」


 僅かな短時間で策を考えようとする幻真であったが、焦りと共にその思考は纏まらない。そして、事は必然的に三対二の状況を作り出す。


「やるしかないか」


 良い案がなにも浮かばず、当たって砕けろの戦法でいくことを決めた彼だが、一方で夢子の状態が大変マズかった。


 彼女の寂しさと悲しさは、彼の優しさだけでは埋めきれなかった。絶望感に支配されてしまった彼女の心は、ただ絶望に貪られていくだけだった。




 そんな彼女を見て、不吉に笑い出す加勢にきた二人。彼は屈辱的な思いをさせられた。


 今できることは、彼女を正気に戻すこと。急いで彼女のもとへと寄ろうとする幻真であったが、その行動は悪魔のような羽を持っていた人物へと遮られ、一方の六枚の天使のような羽を持つ人物は周りを見れていない夢子のもとへと近づき、腹部に打撃を与えた。


「ぐえっ……」


 突然走った痛みに、彼女は痛みに対する言葉しか発することができなかった。そして腹を抑えて体を縮こませた彼女の背中に、今度は踵落としを繰り出して地面へと急降下させる。


「夢子ぉぉぉ! クソッ! どきやがれ!」


 彼女が痛みに晒される姿を見て、怒りだけを表に出す幻真を不吉な笑みで眺める天使。彼はただ怒りだけを覚え、正常な判断もできぬまま悪魔に動きを止められる。


「離せ! 邪魔をするんじゃないッ!」


 彼のあまりにも凄まじい勢いに圧倒され、悪魔は彼に振り解かれる。悪魔を振りほどいた彼はすぐさま夢子の元へと飛んでいき、彼女の体を抱きあげて状態を確認する。


「夢子ッ! しっかりしてくれ……!」


「げん、ま……ごめん、私……怯えすぎてた……自分が、情けないよ……」


「無理に話すな……! 怯えて当然だ……! 怖がって当然だ……! 力量も知れぬ相手を何人も相手するんだ。恐がらないほうがおかしいんだ……!」


 彼女の手を握りながら涙を流す幻真。そんな彼の涙を彼女は指で拭い、笑顔を作ってみせた。


「泣かないで……あなたは、なにも悪くない……寧ろ、私が悪かったんだ……私が油断、しなければ……あなたを、巻き込むことなんて……」


「違うんだ……巻き込んだのは俺のほうなんだ……君達は何も悪くない……俺が……俺が存在していなかったら——」


 彼のその先の言葉を遮るようにして、彼女は彼の口元に指を当てる。そして、優しく彼の頬を撫でた。


「私の……無念を晴らして……」


 彼女はその言葉を最後に、力無く倒れた。だが、彼はその現実を受け入れられずに彼女の回復を試みるが、効果はなかった。


「そっか……そうだよな……」


 背後から近づいてくる一つの殺気。その殺気は、パイプのような硬い棒で彼を殴らんとばかりに振り下ろす。だがその直後、その棒はなにかによって潰されて粉々に砕け散る。


 なにが起こったかわからなかった天使だったが、突き出された彼の拳を見て事を理解する。




 ——彼の計り知れぬ握力によって破壊されたのだと。


 これにはさすがの天使も恐怖を覚え、つい身を一歩、二歩と退く。そんな彼女を視界に入れることなく、彼はゆっくりと立ち上がって俯いた状態で言葉を発した。


「想符『アクセルモード』ッ……」


 彼を中心に突風が起こったかと思うと、彼は水色のオーラと雷を身に纏っていた。上昇した彼の戦闘力を目前にし、彼女はつい体を震わせる。


 そして彼の視線が彼女に向けられたとき、彼の姿は彼女の視界にはなく、気づけば背部に強烈な痛みを感じ、衝撃と共に吹き飛ばされていた。


 一瞬の出来事に驚きを隠せないでいた悪魔であったが、彼女は怯むことなく彼のほうへと襲い掛かる。


「ムダだ」


 さきほど同様、彼の姿は視界にはなく、気付けば彼女の背後にその姿はあった。彼女は彼のその動きに対し、忌々しさを覚えた。


「悪いな。これ以上犠牲を出さないためにも、手荒にいかせてもらう」


 直後、彼の姿はそこにはなく、気づけば彼の拳が悪魔の腹部にめり込んでいた。


「あがっ……ごほっ……」


 あまりにもの突然の衝撃と強烈な痛みに、彼女は気を失って倒れる。それを彼は受け止め、地面へと下ろす。


 残された負傷を患うユウゲンマガンは恐怖に臆することなく、自身のワイヤーフレームの形成を中止し、それを形成するために使用されていた五つの眼光の視線を彼へと向ける。


「戦うことだけを奴らに言われたんだな。本来ならあってはならないこの戦い、これで終わらせ——」


 突如として彼は言葉を止める。否、正確には止めさせられたと言うべきであろう。彼は言葉を発するのを止められた真相を知るべく、腹部に目をやる。そして、彼は知る。一つの槍の様なものが、自身の内臓と共に腹を突き破っていたことを。


「ゴフッ……」


 それを知った直後に、猛烈な痛みにより口元を抑えて吐血する。


「くそッ……サリエルッ……!」


 この事態を起こした張本人である天使——サリエルの名を彼は叫ぶ。そんな彼の目の前に、無様だと言わんばかりに不吉に笑いながら彼女は現れる。


 だが、彼女の登場だけでは終わらない。先程気絶させたはずの悪魔、エリスもまた彼の背部へと姿を現したからだ。






 そして、話は現在に至る。三対一の絶望的状況へと。


 彼は腹部に刺さった槍を抜き、穴の空いた腹部に回復を施す。彼の魔力が不足気味だったせいか、内臓の修復はできたものの、出血を抑えることはできなかった。


「やられるのも時間の問題か……」


 囲まれる彼は、自分に言い聞かせるようにしてそう呟く。今の彼は絶望的状況に立たされていたとしても、臆することなく冷静である。だが、痛みと疲れから息は荒く、平常であるとは言い難かった。


「飛ばしていくぞ。開放『ソウルモード』」


 彼は目を閉じてそう唱える。すると、纏っていた水色のオーラが消えて、額に赤と金の混じった炎を灯した。


 ただ様子が変わっただけではなく、さきほどまで使用していたアクセルモード以上の身体能力の向上を施す。


 彼はまだ目を閉じたままで、神経を研ぎ澄ます。相手が攻撃してこないというならばと、彼と対峙する三人は一斉に飛びかかる。


 対する彼はその出来事を察知してはいたものの、まだ動かない。今ならまだ避けられるというところでも、まだ動かない。このままでは攻撃が当たるというところでも動かない。


「うぐっ……」

「がはっ……」

「うっ……」


 刹那、彼が攻撃を受ける寸前にして、彼女らは突如打撃を受ける。皆、腹部に強烈な痛みを覚え動きが怯む。


「かはっ……無理し過ぎたか……」


 その一瞬の動きをした事による反動で体が追いつけずに、彼は再び吐血する。ヨロヨロと降下していき、地面へと着地。そのまま力無く膝をつき、また顔も上げるチカラも残っていなかった。


 一方で、彼を追いかけるようにして三人も降下してくる。しかし、彼女らのうちの一人ユウゲンマガンは、さきほどまでの戦いによる致命傷からかその場に倒れて気絶してしまう。


「どうやら、勝負はあったようね」


 打撃を受けた腹部を苦しそうに抑えながら、天使サリエルは言う。一方のエリスもまた、苦痛の表情を浮かべていたが、操られた黄色い瞳には殺気だけしか感じ取ることはできなかった。


「死ぬ覚悟はできたかしら?」


 禍々しい鋭い刃が尖った凶器を振りかぶりながら、彼女は問う。正にいまから殺される彼は、どうしても動かない自分の体に対して必死に動けと命じ続ける。


 だが、彼の体はどうしても動かない。本当にもう終わりなのか。無念も果たせないまま自分は終わってしまうのか。そんな屈辱的な思いを胸に、死刑用の凶器が振り下ろされる。




 だが、それは上手くいかなかった。金属製のモノがお互いにぶつかり合った音がしたかと思うと、サリエルは気を失うようにして背中から倒れてしまった。


 なにが起こったのか確認するために首を横に向けようとした彼であったが、殺されると言う絶望と緊張が解けたせいか、その場に倒れ込んでしまう。


 そんな朦朧とする彼のもとに、二人の少女が寄ってくる。片方の少女は黒い服を着て黒い帽子を被り、横から後ろまでが肩にかかる長さの金髪で、もう片方の少女は白い服を着て背中に白い翼が生えていて水色の髪の後ろが肩よりも長めであった。


 彼女らのうち白い服を着た羽の生えた少女が幻真へと手を翳し、なにかを唱え始める。苦しさから息を荒げていた彼であったが、次第に落ち着いてすっかり調子を取り戻す。


 回復した彼に一安心した黒い服の少女は、安堵の表情を浮かべながら彼に言った。


「よかった、なんとか間に合ったみたい。マイ、この人の回復ありがとう。それと、お兄さんもありがとう。私たちのために戦ってくれてたみたいだけど……」


「ああ……いや……それより、マイって言ったか? 確かユキとマイは奴らに捕らえられてたんじゃ……」


 イマイチ状況が読めない彼は、聞いていたことを疑うようにして彼女らに問う。彼女らはお互いに顔を見合わせ、そしてお互いに微笑する。


「そのことなら大丈夫。私たちは既に自由の身。神綺様のおかげでね!」


 その神綺と呼ばれた名前を聞き、彼は気づく。彼女たちへ逃げてきたのだと。そしてサリエルに殺られそうになったとき、助けてくれたのは——


「ごめんなさいね、迷惑かけたわ」


 その女性は銀髪のロングヘアーに、サイドテールが特徴的であった。


 また、肩口のゆったりした赤いローブのようなものを着用しており、悪魔のような六枚の翼を背中から生やしていた。


 そんな彼女の片手には、槍のようなものを持っていた。


「もしかして、あなたが魔界の主——神綺か……?」


「自己紹介は後。残った彼女を倒して正気に戻すわよ」


 そう言って彼女はエリスのほうへと矛先を向け、戦闘態勢へと入る。一方の幻真もユキとマイに離れるように言ってから、神綺に続くようにして身を構えた。

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