第14話 成長する幻真
その日の夜。俺と霊夢は今、布団の上に座りながら雑談をしていた。
「ねえ、幻真?」
霊夢が何やら聞いてくる。
「いつまで居候するつもり?」
俺は頭を悩ませる。そういえばそうだったな。家とかないから神社で過ごさせてもらってたけど、さすがに霊夢と霊妙さんにも迷惑だよな。
「家とかないしな……」
「それなら、紅魔館とかどうかしら」
紅魔館か。よさそうだけど、フランが毎日飛びついてきそうだな。嬉しいけど、さすがにあっちにも迷惑かな。
「はぁ……まあいいわ。私にとっても、あなたがいてくれたほうがいろいろと役に立つし」
ムムッ、それはどういう意味で……まあ、そういう話なら別にいいか。
「それじゃあ、おやすみ」
霊夢は布団の中へ潜った。ちなみに、霊妙さんは阿求さんのところに泊まっているらしい。
「おやすみ」
俺も布団の中へと入り、眠りに着いた。
翌朝。目を覚まして襖を開けると、外は雨が降っていた。実は昨晩からかなり曇っていたのだ。
「結構降ってるな……」
外から雨の降る音がしきりに聞こえていた。俺は布団から出て、上着を羽織ってから台所へと向かう。
「さてと、飯でも作るか」
霊妙さんがいないので、俺が朝食を作ることに。
「ほいっと。意外に俺の能力、結構使えるな」
なんと言っても、俺は炎を扱えるんだから。
「燃費がいいってやつか」
もちろん魔力も消費する。これぐらいの家事程度なら、そこまで消費しないが。
「できた。それじゃあ、霊夢を起こすとしようかな」
俺は布団が引いてある部屋へ向かう。
「霊夢、起きろ。飯できたぞ」
俺は彼女を揺さぶり起こす。
「ん〜おはよう……もう朝?」
「おはよう。ほら、飯食うぞ」
霊夢は眠たそうに目を擦りながら、台所へと向かった。俺は彼女に続いて、台所へと向かうのであった。
食事を進める俺たちだったが……霊夢、寝ぼけてんのかな? うたた寝しながら無言で食べている。結局、お互い食べ終えるまで無言であった。
「ごちそうさま……っと」
「そういえば、今日は雨なのね」
霊夢が今さら聞いてくる。
「弾幕ごっこの相手になってあげようかと考えてたのよ。まあ、ただの弾幕ごっこじゃなくなるだろうけど」
弾幕ごっこか。そういえば、最近してなかったな。異変のときにフランとしたっきりか。とは言っても、生憎の天気。火を扱う俺には不利か。
「なに言ってるの? あんたは炎無しでも弾幕やら龍は使えるでしょ?」
なっ……俺が龍を操れるといつ知った?
「濡れてもいいのなら、後でしない?」
勝手に話が進んでいたが、なんだかんだ面白そうだ。
「おう。片付けが終わったらやろう」
片付けを終えた俺たちは、外に出てお互い位置に着く。
「準備はいいかしら?」
雨がすごい勢いで降っていたこともあって、外に出てすぐに濡れてしまった。
「いつでも来い!」
「じゃあいくわよ。霊符『夢想封印』」
霊夢おなじみのスペルカード。俺はそれに対応する。
「夢符『勾玉弾幕』」
スペルカードを唱え、勾玉の形をした弾幕を飛ばす。
「あのときのスペルカードね。夢符『二重結界』」
霊夢は結界を展開する。
「結界ねぇ……龍符『炎龍』」
「何を考えているの? こんな雨の中で炎龍を呼ぶなんて。あなたには不利なんでしょ?」
ふっ、炎龍ではない。そう、俺は龍を操れるんだからな。
「炎龍! 消炎!」
炎龍の纏っている炎が消える。
「いったいなにを——まさか!」
「そう、そのまさか。龍符『闇龍』」
炎を消し、闇龍へと姿を変えたのだ。
「なるほど。これがあなたの能力……」
「見せどころはまだまだあるぞ! 龍符『三方闇龍』!」
炎龍のときに使っていたスペルの闇龍版だな。
「くっ! フル展開よ! 夢符『二重結界』!」
霊夢は霊力を最大にして、結界を最大防御で展開する。
「なっ、ヒビが! うぐっ……」
霊夢は結界にヒビが入ったのを見て、咄嗟に後ろへと飛んで避ける。
「どうだ。以前の俺とは違うだろ?」
戦闘には慣れてきた。これはタダの弾幕ごっこじゃないぞ……もはや戦闘だ!
「そうね。でも、そんなものじゃないでしょ? 霊符『夢想妙珠』!」
ほう。なら、俺はこれだ。
「夢符『無造弾幕』」
無造作に弾幕を撃ち、霊夢の弾幕に当たったり、霊夢の邪魔をしたりする。
「面倒くさいわね! 神霊『夢想封印・瞬』!」
霊夢は一定のラインにお札弾を残して、拡散させていく。
「ラストスペルか……なら、俺もこれで決める! 龍符『五方神闇龍』!」
それらはぶつかり合い、爆発を起こした。
〈博麗霊夢〉
「ふぅ……」
爆煙が止み、雨が降り注ぐ音だけが聞こえる。幻真はどうなったのかしら?
「はぁ、はぁ……」
「あら、なかなかやるようになったわね」
どうやら、魔力の過度な消耗は克服できたみたい。
「でも、私にはまだまだ追いつけないわよ」
私も油断してると、いつかは負けそうね。
「今回はいい線いってると思ったんだけどな〜」
幻真はニシシと笑って言う。
「結構良かったと思うわ。これからも精進するのよ」